No.828725

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク 改訂版

soranoさん

第7話

2016-02-05 09:00:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:878   閲覧ユーザー数:813

 

リベール王国の工業都市『ツァイス市』――――王都グランセルを守る『レイストン要塞』が近郊にあり、また東の大国カルバード共和国の領地と隣り合っている土地でもあり、ツァイス地方にある『エルモ村』は東方の文化も取り入れた村であり、また温泉がある事から観光地としても有名な場所であった。そしてツァイス地方に降り立った遊撃士協会の次代を背負う事を期待されている2人を迎えるかのように一人の赤い作業着を身につけ、赤い帽子を被った金髪の少女が嬉しそうな表情で2人に近づいてきた。

 

~ツァイス・発着所~

 

「レンちゃーん!」

「あら、この声は。」

聞き覚えのある声を聞いたレンは目を丸くし

「どうやら向こうの方から来てくれたみたいだな。」

ルークは口元に笑みを浮かべた。

 

「ハア、ハア……」

「うふふ、ティータったら慌てん坊さんね?レンはどこにも逃げないわよ?」

自分達の目の前に到着し、息を切らせている少女―――ティータをレンは苦笑いをしながら見つめていた。

「で、でもでも……!レンちゃんにはちょっとでも早く会いたかったし。」

「うふふ、相変わらずティータはレンにとって嬉しい事ばかり言ってくれるわね。―――まあ何はともあれ、久しぶりね、ティータ。」

「うん、久しぶり!」

レンに微笑まれたティータは無邪気な笑顔を浮かべ

「よ、ティータ。また背が伸びたんじゃないのか?」

「えへへ、そうですか?あ、それと挨拶が遅くなりましたね。―――お久しぶりです、ルークさん!」

「ああ、久しぶりだな。」

ルークに声をかけられたティータはレンに見せたように無邪気な笑顔を浮かべてルークを見つめた。

 

「そう言えば、どうしてレン達がこの時間の定期便に乗って来るって知ってたの?」

「それに俺達がツァイスに来る事も何で知っているんだ?」

「あ、はい。昨日たまたま帰り道に出会ったキリカさんにお二人が来ることを教えてもらったんです。」

自分達が来ることを知っていた事に不思議そうな表情をしているルークとレンにティータは意外な答えを口にした。

「あいつがか?冷酷女に見えて、意外と気が利く奴だなぁ。」

「ふえ、そうですか?キリカさん、優しい人だと思いますけど。」

「うふふ、お兄様。それにそんな事を口にしたら、後でキリカお姉さんに何か言われるかもしれないわよ?」

首を傾げているルークの話を聞いたティータは目を丸くし、レンはからかいの表情で見つめて忠告し

「う……あいつならあり得そうで洒落になっていないぜ……」

忠告を聞いたルークは異様に鋭いツァイスの受付の顔を思い浮かべて表情を引き攣らせた。その後3人はギルドに向かった。

 

~遊撃士協会・ツァイス支部~

 

「……そう、やはりレンも一緒に来るのね。ええ、ええ……」

東方独特の服を身に纏った腰までなびかせている黒髪の麗人―――ツァイス支部の受付であるキリカ・ロウランは通信機で誰かと通信をしていた。そしてキリカが通信を終えたその時、ルーク達が支部内に入って来た。

「来たわね、ルーク、レン。それにティータも。」

「相変わらず勘のいい奴だな……」

「うふふ、お久しぶりね、キリカさん。」

「あのあの、こんにちはです、キリカさん。」

自分達に背を向けたまま、自分達の事を口にしたキリカにルークは驚き、レンとティータは気にせずそれぞれ挨拶をした。

「こんにちは、レン、ティータ。―――ツァイス常駐のブレイサーが出張の関係でしばらく離れることになったから人手が増えて助かったわ。貴女も来たという事は勿論、貴女も数に数えていいのよね、レン?」

「うふふ、特別扱いで準遊撃士扱いされているんだから、働くのは当たり前じゃない。これもブレイサーを目指す者としての義務よ。」

キリカの問いかけにレンはいつものような小悪魔な笑みを浮かべて答えた。

 

「お、言うようになったな、レン。」

「わぁ、レンちゃんカッコイイ。」

「うふふ、だってレンは”仮”とは言え、遊撃士なんだもん。」

「そう、ならいいわ。後貴女が来たら本部から貴女に渡す物を預かっていたから、渡しておくわ。」

レンの答えを予め予想していたキリカは小箱をレンに渡した。

 

「?何かしらこれ?」

「おい、まさかとは思うが……」

渡された小箱にレンが首を傾げている中、先日同じ光景を見た事があるルークは目を丸くした。

「ええ、ルークの予想通りよ。―――開けて中身を確認してちょうだい。」

「わかったわ。」

小箱の中には先日エステル達が手に入れた準遊撃士の紋章(エンブレム)が入っていた。

「あら、準遊撃士の紋章じゃない。これをもらったら、レン、本当の意味で”準遊撃士”になるけどいいのかしら?」

「ええ。私達の方で本部に掛け合っておいたわ。貴女の実力を知っている私達としてもいつまでも”仮”扱いは勿体ないと思うし、本部の方でもA級クラスの実力を持っていながらいつまでも”仮”扱いにする訳にはいかないって事で、規定年齢に達していないけど、貴女を”特例”として正式な準遊撃士に任命する事にしたわ。―――今この時点を持って貴女は協会の一員として人々の暮らしと平和を守るため、そして正義を貫くために働くこと。」

「うふふ、勿論わかっているわ♪」

キリカの宣言に頷いたレンは服に準遊撃士の紋章を付けた。

 

「わあ……!おめでとう、レンちゃん!」

「よかったな、レン。」

「うふふ、二人ともありがとう♪」

大好きな親友と兄に祝福されたレンは嬉しそうな表情で微笑んだ。

「それにしてもよく本部の上層部達は規則を破ってまでレンを準遊撃士にする事をよく決めたよな?」

「まあ、エルナンさんの話では正遊撃士でしかわからない問題も混ぜた筆記試験も満点を取った上、”生誕祭”の闘技大会ではあの”武神”モルガン将軍を破った上”剣仙”直々から二つ名を貰った事が一番の要因でしょうね。」

ルークの疑問にキリカは静かな表情で答え

「ふえ~……レンちゃんって、本当にすごいんだね!」

「ありがと、ティータ♪頑張った甲斐があったわ。」

親友に感心されたレンは嬉しそうな表情で答えた。その後ルークとレンはそれぞれが受ける依頼を決めた後ティータと共にギルドを出た。

 

「さて、本当はもう少し話したいけどお仕事があるからティータとは一端お別れしなくちゃね。お兄様、泊まる所はどうしようかしら?」

「俺が仕事の間に予約しておくよ。」

「あ、その事なんだけどお2人に提案があるんです。」

残念そうな表情をした後すぐに気を取り直したレンがルークに尋ねたその時、ティータは目を輝かせながら二人を見つめて言った。

「ん?なんだ?」

「えっと、えっと…ツァイスにいる間は私の家に泊まっていきませんか?」

「あら。」

「へ?いいのか?俺達は適当な値段の宿を探してそこでしばらく泊まろうと思っていたんだが……」

ティータの提案を聞いたレンは目を丸くし、ルークは不思議そうな表情で尋ねた。

 

「はい、大丈夫です。二人がツァイスに来る事を知って昨日、お爺ちゃんに相談したらいいって言われましたから大丈夫です。えっと、もしよかったら私の家に泊まりませんか?勿論、お代とかもいりません。」

「お兄様、レンは賛成よ。いいでしょ?」

「そうだな……せっかくの好意だし受けておくか。」

「わあ……!今日からしばらくいっしょだね、レンちゃん。」

「うふふ、そうね。本当に楽しみだわ。何だったら一緒のベッドで寝る?」

「うん、勿論!」

その後3人はそれぞれの仕事に取り掛かる為に一旦別れ、仕事を終えた後ティータの実家に向かい、家に入るとティータが台所で食事の用意をし、作業着を身に纏った老人―――――”導力革命の父”と称されるアルバート・ラッセル博士が椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。

 

 

 

 

~ラッセル家~

 

「お、帰ってきおったか。」

「あ、お帰りなさい、レンちゃん、ルークさん。」

ルーク達に気付いた祖父の声に反応したティータは振り返って笑顔で居候となる二人を出迎えた。

「ただいまティータ。しばらくお世話になるわね♪」

「博士、久しぶり。俺達の為にわざわざ寝床を用意してくれてありがとうな。」

「博士、ありがと♪」

「な~に、エリカ達は留守にしてベッドは余っているし、何よりカシウスの子供達なら大歓迎じゃ。それにリベールでも有数の遊撃士である名高き”焔の剣聖”と”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”がウチにおったら、防犯も完璧じゃしの。」

「ハハ……いざとなったら、任せて貰って大丈夫だぜ。」

「うふふ、宿代代わりにしっかりと二人を守るから安心してね♪」

そしてその日はレンが正式に準遊撃士になった事で話題が盛り上がった。

 

「ほう、まさかギルドの本部が長年守り続けた規則を曲げてまでレンを遊撃士にするとはのぉ。闘技大会でモルガン将軍を破った事といい、相変わらず型破りな娘じゃな。」

「まぁ、レンの日ごろの熱心な仕事っぷりを知ったから、本部もレンの事を”特例”扱いにしたと思うぜ。」

話を聞き終えたラッセル博士は興味深そうな表情で幼き天才剣士を見つめていた。

「うふふ、レンは遊撃士を目指す者の一人として当然の事をしたまでよ。」

「わあ……!レンちゃん、カッコイイ……!」

一方ティータは親友の謙虚さに目を輝かせていた。

 

「ふむ……しかしそれはそれとして、お主の才能を知る儂としては勿体ない気分じゃ。導力技術や開発の点でもお主はティータ……いや、ティータ以上の才能を持っているしの。」

「お、おじいちゃん。わたしに才能があるなんて、言い過ぎだよ。」

祖父の称賛の言葉を聞いたティータは冷や汗をかきながら苦笑したが

「あら、その年でもう工房見習いをしているんだから、ティータには導力技術者や開発者として才能が秀でているとレンは思うわよ?」

「えへへ、そうかな?あ、そう言えばレンちゃんが書いた論文、みせてもらったけど凄かったよ!」

親友から褒められると嬉しそうな表情をした後ある事を思い出して表情を輝かせてレンを見つめた。

 

「ろ、論文!?レン、お前、いつの間にそんな物を書いて世に出したんだよ?」

一方初耳のルークは驚いた後レンを見つめた。

「時間ができた時に暇つぶしに書いたのを提出したのよ。勿論、ティータや博士にも読んでもらって感想をもらってから出したわ。」

「正直、お主の歳であれほどの内容を書けるとは思わなかったぞ。」

「わたしは半分くらいしか理解できなかったけど……それでも凄いって事だけはわかったよ!」

「ハ、ハハ……(俺が読んでも絶対半分も理解できねぇぜ。そんな難しい文章を半分もティータも十分、スゲェって。)」

レンが書いた論文を幼いながらも半分も理解しているティータをルークは渇いた声で笑いながら見つめていた。

 

「うふふ、ちなみにだけどその論文を提出したら、博士号をもらっちゃったわ♪受賞式はめんどくさいからパスしたけど、後日賞状が郵送されてきたわ。」

「ふえっ!?」

「ハアッ!?は、博士号!?」

「やはりか。しかしそれじゃったら、エプスタインあたりからスカウトが来なかったのか?」

レンの口から出た予想外の言葉にティータとルークは驚き、ラッセル博士は納得した様子で頷いた後ある事が気になって尋ねた。

「ええ、来たわよ。エプスタインに加えてラインフォルトとヴェルヌからも来たわ。勿論、”丁重に”お断りしたけどね。(Ms.Lであるレンの正体を知っている上層部の人達がレンをスカウトしたなんて話を知ったら、驚くでしょうね♪)」

「ふええええええええええっ!?」

「オイオイオイッ!?どれも大企業ばかりじゃねえか!?」

幼いながらも才覚を見せる少女を大企業はほおっておけず、それぞれスカウトしようとしたがレンは頑なに遊撃士になる事と家族と一緒に暮らしたいからという事を理由に断り続け、ある者は才能の無駄使いと言い、その際に保護者として一緒に聞いていたレナを説得しようとしていたが、レナはレンの人生はレンだけが決めるものと言って説得に耳を貸さず、更には業を煮やしたレンがさらけ出す膨大な殺気やレナがさらけ出す膨大な威圧を纏った微笑みに圧され、逃げ帰ったという逸話もあった。

「ねぇねぇ、レンちゃん。ずっと気になっていたんだけど、どうして遊撃士になろうと思ったの?」

「ふむ……それはわしも常々疑問に思っていたな。お主程の才能があれば選択肢は色々あったろうに何故、その年で危険な仕事でもある遊撃士を選んだのじゃ?」

孫娘の疑問を聞いたラッセル博士は頷いた後首を傾げてレンを見つめた。

 

「そうね……お兄様やパパの背中を見て選んだっていうのもあるけど、一番の理由は遊撃士がレンに”本当の幸せ”をくれたことよ。」

「ふえ……?”本当の幸せ”??」

「む……?」

レンが口にした訳のわからない答えにティータとラッセル博士はそれぞれ不思議そうな表情をした。

「ティータになら前に一度話してあげた事があるでしょ?レンの”偽物の家族”のことを。」

「あ……………」

以前親友と親友の家族であるルークやカシウスと全然似ていない事を疑問を抱き、その事をレンに聞いた後、レンの口から語られた”昔の家族”の話を思い出したティータは気まずそうな表情をし

「…………………」

カシウスやルークからレンの”事情”を聞いていたラッセル博士は真剣な表情で黙ってレンを見つめていた。

 

「”あの人達”に捨てられてから、レンはずっと願っていたの。”本当の家族”が迎えに来ますようにって。そうしたら遊撃士のお兄様がレンを迎えに来てくれて”本当の家族”――――レンの”本当の幸せ”をくれたの。だからお兄様がレンを迎えに来たきっかけを作ってくれた遊撃士には感謝しているのよ。」

「レン………」

「ふむ……それがお主が遊撃士になる事を決めた”きっかけ”という事か?」

レンの話を聞いたルークは静かにレンを見つめ、ラッセル博士はレンに問いかけた。

「ええ。―――勿論、他にも理由があるけどね。」

「ふえ、まだあるの?」

「ええ。遊撃士は色々”しがらみ”があるとはいえ、他の組織と比べると”自由”だし、それに天才美少女遊撃士ってステキだと思わない?」

「レ、レンちゃーん。」

「ハア、自分で”天才”とか”美少女”とか言うか、普通……?」

「しかもそ奴の場合は、事実だから洒落になっていない所が笑えないの。」

重々しい空気を吹き飛ばすかのように笑顔で答えたレンの話を聞いたティータは冷や汗をかいて脱力し、ルークは呆れた様子で溜息を吐き、ラッセル博士は苦笑していた。

 

「そう言えばお兄様。エステル達の事、博士たちに言わなくていいのかしら?」

「っと、そうだったな。実は……」

レンに促されたルークは自分達と同じカシウスの子供であるエステルとヨシュアが準遊撃士になり、修行で各都市を回る事になる二人がいづれツァイスに訪れる事を説明した。

「ほう。ようやくカシウスの残りの子供達の顔を拝める訳じゃな。

「わぁ……レンちゃんのもう一人のお兄さんとお姉さんが来るんだ。一体どんな人達なのかな?ドキドキ……」

話を聞き終えたラッセル博士は目を丸くし、ティータはまだ見ぬ親友の家族の顔を思い浮かべていた。

「うふふ、エステルはそそっかしいけど笑顔が似合う明るいお姉さんで、ヨシュアはカッコイイお兄さんよ?」

「もし二人が何らかの理由で博士を頼ってきたら、できれば聞いてやってくれねぇか?」

「ふむ、まあいいじゃろう。」

その後ルークとレンはしばらくラッセル家の世話になりつつ依頼をこなしていった。

 

そんなある日、カシウスより手紙が届いたことにより、2人が今、静かに動き始めているリベールの闇にかかわることになる…………

 

 

 

 

 


 
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