No.827739

真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第一話


 しばらくぶりの御無沙汰にてございます。

 これより始まるは少々珍妙な特技を持った御遣いの

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2016-01-30 22:56:28 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5376   閲覧ユーザー数:4005

 

「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!ここに見えましたるこの人形、今より

 

 見事にこの段を降りきりましたらならば拍手ご喝采~!!」

 

 時は後漢末期、兗州の州都である陳留の街の一角にあるとある店の前にて、今までに

 

 無い見せ物が行われようとしていた。

 

 その店先に掲げられた旗には大きく『絡繰興行』と書かれており、そこには一人の青

 

 年が得意気に人形を掲げている姿があった。その青年の話では店先に設えられた三段

 

 の階段をこの人形が見事に降りるというのである。

 

 そこに集まった観客達は興味はあるものの、本当に人形が段を降りるなどとは本気で

 

 考えてはいなかったので…。

 

「嘘をつけ~!人形がそんな動きをするわけねぇだろ~」

 

「本当にそんな事が出来たら裸で逆立ちして街中を一周してやらぁ!」

 

 などという野次が飛んでいたのであった。

 

 青年はそんな野次にはお構いなく、人形を段の上にセットする。するとその人形は青

 

 年の手を離れた瞬間、くるくると動きながら見事に階段を降りていく。その動きに観

 

 客は度肝を抜かれたような表情を見せる。そして、段の下に人形が見事に着地を見せ

 

 ると、一瞬の静寂の後に割れんばかりの拍手が沸き起こる。

 

「凄ぇ、本当に人形が段を降りたぜ!」

 

「しかもあんな動きをする人形なんて初めて見たぜ!!」

 

「まるで妖術でも見せられたかのようだぜ!!」

 

 そして口々に興奮を隠しきれないかの如くに囃し立てる。

 

 

 

 それを青年は満足そうに見つめていたが…。

 

「そういえば先程『人形が段を降りたら裸で逆立ちして街中を一周する』とか言ってい

 

 た御方がいらっしゃったように聞こえましたなぁ~」

 

 突然横からかけられたその声でその場に沈黙が訪れる。

 

 その声をかけたのは、興行を見せていた者とは別の青年である。その青年は何処か学

 

 者のような風貌を見せながらも、何処か斜に構えたような雰囲気も見せている。

 

「そ、そ、そうだな!!お、お、俺の耳にも、そ、そ、そう聞こえたんだな!!に、に、

 

 人形は段を降りたんだから、さ、さ、さっさと裸になるんだな!!」

 

 それに同調するのは、その声をかけた青年の後ろに立っていた他の者より身体も声も

 

 一回り大きい男である。

 

 言葉は少々舌足らずながらもその男の迫力に裸宣言をした男の顔がひきつる。

 

「さ、さ、さあ、ど、ど、どうなんだn『やめろ、胡車児。こちらの方が怖がっている

 

 だろう』…す、す、すまねぇ、ほ、ほ、北郷の兄貴」

 

「それに公達、お前もわざわざ挑発するような事を言うな。折角の場の盛り上がりが台

 

 無しじゃないか」

 

「すまん、すまん、つい思った事を口走ってしまった。許せよ」

 

 興行を張っていた青年に諭され、その巨体を縮こませるかの如くにすまなそうな態度

 

 を取る大男とは対照的に青年の方は本当に反省しているのかどうか分からないような

 

 態度を取っていた。

 

「知り合いが失礼な事を申しました、誠に申し訳ありません」

 

「いや、こっちこそ兄さんに失礼な事を言っちまったし…それよりもう一回今の見せて

 

 くれよ!俺、あんなに興奮したの久しぶりだったんだ!!」

 

 

 

「はい、何度でも!他にも色々びっくりするような物がありますから、心ゆくまで楽し

 

 んでいってください!!」

 

 青年がそう言うと再び観客達から歓声があがったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「さあ、今日は俺の奢りだ。心ゆくまで…とは言えんが食ってくれ」

 

 それから二刻後、興行を張っていた青年は公達と呼ばれた青年と胡車児を呼ばれた男

 

 と共に食事をしていた。

 

「しかし何時見ても北郷の人形は凄いな、あれだけの観客を引き付けるのだから。興行

 

 は大成功でおひねりも上々…やはり思い切って陳留まで連れてきて正解だったな。や

 

 はりああいうのは村の祭りでやるのも良いが、こういう大きな街でやる方が実入りは

 

 良いようだな」

 

「さ、さ、さすがは、あ、あ、兄貴なんだな」

 

「…そう思うなら途中で水を差すのはやめて欲しかったがな」

 

 青年は二人からの賛辞に苦笑を浮かべながらそう言うと、

 

「それについては謝る。つい思った事が口に出てしまうのは自分でも悪い癖だとは思っ

 

 ているのだがな」

 

「お、お、俺はあいつらが兄貴の言葉を、し、し、信用しなかったから…」

 

 二人は申し訳なさそうな顔をしながらそう答えていた

 

「まあ、良いけどね。ところでこれからどうするんだ?」

 

「ふむ…そういえば、あまり考えていなかったな。帰るにはまだ少々早い時間だしな…」

 

「そ、そ、そういえば前にこの街の領主様に、こ、こ、公達の兄貴の親戚が仕えている

 

 とか聞いたな」

 

「ほぅ?それは前に言っていた荀彧さんの事か?」

 

 

 

「ああ、その荀彧の事だ」

 

「なら、ちょっと位会っていったりしないのか?」

 

「やめておく。あいつとは前に少々やりあってから碌に口も聞かない間柄だからな」

 

「やりあった?」

 

「ああ、あいつは昔から男嫌いでな…親戚だろうとお構いなしにな。あまりにも顔を合

 

 わす度に『男は女を見ればすぐ妊娠させる事しか考えない』だの『何時も何時も嫌ら

 

 しい眼で見てんじゃないわよ』だのとピーチクパーチク悪口雑言ばかり言うものだか

 

 ら『何うぬぼれた口を叩いてんだ!俺にだって女を選ぶ権利位あるわ、ボケ!』って

 

 言ってやったら、それまで見た事も無い位に顔を歪ませやがってな…それ以来まとも

 

 に口を聞いた事も無い。それに俺は一族の集まりにだってもう二年以上出てないしな」

 

「…公達らしいな」

 

 公達の話を聞いた青年はやれやれと言った表情でそう呟く。

 

「な、な、なら、どうするんだな?」

 

「まあ、用事も無いなら少々早いが帰るとしようか」

 

「ああ、そうだな。北郷一刀殿の言う通りにしておこうか」

 

「か、か、帰るんだな!」

 

 そして三人は家路についたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「興行はもう終わった?」

 

 その次の日、青年が興行を張っていた店に来ていたのは、陳留の領主である曹操であ

 

 った。

 

「へぇ、知り合いに頼まれて昨日一日店を貸していただけでして…」

 

 領主の前であるせいか、店主は通常以上に身を縮こませながらそう答えていた。

 

「そう、残念ね…その者達が何処から来たかは知らないの?」

 

「西の山向こうから来たとしか…頼んで来た知り合いは今朝洛陽に向かってしまった所

 

 なもので…申し訳ございません」

 

 

 

「仕方ないわね…その知り合いの者が帰って来たら曹操が興行を張っていた者達の事を

 

 知りたがっていたと伝えなさい、良いわね?」

 

「は、はい!確かに!!」

 

 ・・・・・・・

 

「…というわけで、もし何かその『絡繰興行』とやらを張った者達の情報を知っている

 

 者がいたらすぐに報告するように」

 

 その次の日、曹操は朝議の席で居並ぶ家臣達にそう言っていた。

 

「真桜、お前は何も知らんのか?」

 

「残念ながらウチも何も知らんのですわ…でも。その興行ホンマに見たかったわ~。そ

 

 ないな面白い事がある知ってたら、新兵の教育なんか後回しにしてすぐにでも行った

 

 んに…」

 

「真桜、華琳様の御前で堂々とサボり宣言をするな!!」

 

「沙和も昨日は阿蘇阿蘇の発売日だったから早く帰りたかったのに我慢してたの~」

 

「沙和まで…お前ら、やはり一度じっくり話し合う必要がありそうだな」

 

「三人共、そこまでにしておけ。凪がさっき言った通り、此処は華琳様の御前だ」

 

「はっ!」

 

「は~い」

 

「へ~い」

 

「でも、街の人みんなその興行の話ばっかりでしたよ!」

 

「そうなのか、季衣?」

 

「はい!本当に生きているんじゃないかって位に人形が動いていたって言ってました!」

 

 

 

「妖術ではなくか?」

 

「はい、どうやって動いているかちゃんと説明までしてくれたって言ってました…話の

 

 内容はいまいち分からなかったらしいですけど」

 

「だとすると、やはりあれを作ったのはその者達で間違いないようね」

 

「あれとは何ですか?」

 

「桂花にはまだ話してなかったわね。この間、橋玄様のお屋敷に行った時に奇妙な形の

 

 塔みたいな物があってね。これは何かって聞いたら、丁度夕刻だったからってそこに

 

 明かりをもらったら通常の明かりの十倍以上の明るさを出していたのよ。何でもたま

 

 たま立ち寄った店に来ていた者に見せてもらって即金で買ったらしいのだけど…『無

 

 尽灯』とかいうそうよ」

 

「尽きる事の無い灯りですか…」

 

 曹操の話を聞いた一同は半信半疑の表情を浮かべていた。

 

「それ以来、八方手を尽くしてそれらしき情報を探していたのだけど…一昨日の『絡繰

 

 興行』とやらの話を聞いてもしかしてと思って昨日すぐに行ってみたのだけど、空振

 

 りに終わったというわけ。もし、その『無尽灯』とやらが手に入れば夜でも仕事がは

 

 かどるかと思ったのだけど…残念だったわ」

 

 曹操はそう言って本当に残念そうな表情を浮かべる。

 

「ともかくそういうわけだから、もしそういう情報を得る事があったらすぐに報告する

 

 ように」

 

『はっ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっくしょん!」

 

「ど、ど、どうしたんだな?か、か、風邪でもひいたのかな?」

 

「大丈夫、風邪じゃない」

 

「ならば興行を見た者達が噂でもしあっているんだろう。おそらく今日辺りは街中の噂

 

 になっているだろうからな」

 

「そうか?なら次はもっと大がかりな物を作ってみるかな」

 

「て、て、手伝うんだな、北郷の兄貴」

 

「ならば俺も手を貸そう。俺の知恵は北郷の役に立つぞ」

 

「ありがとう、荀攸、胡車児。頼りにしてるよ…さあ、とりあえずは村の人に頼まれた

 

 仕事が先だ!」

 

 三人はそう言いながら仕事へと向かっていった。三人と曹操達との出会いはまだしば

 

 らく先の事である。

 

 

                                続く…かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 

 しばらくぶりでございます!mokiti1976-2010です!

 

 長編にするかどうかは未定ですが、とりあえず思いつ

 

 いた話を一つ投稿してみました。

 

 今日の所は細かい話を省いたので、色々と疑問に思う

 

 事はあったとは思いますが、今後このssが続く事に

 

 なったらその辺りからやっていきますのでご容赦の程

 

 をよろしくお願いします。

 

 とりあえず第二話では一刀が外史にやってきた所から

 

 の予定です。

 

 

 それでは一応…第二話でお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 作中で出て来る絡繰は一応江戸時代レベルが中心

 

    になる予定です。

 

    そして実は現段階ではメインヒロインを誰にする

 

    かは未定です…普通に考えれば一択なのかもしれ

 

    ませんが。

 

 

 


 
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