「――うおらぁああ!」
俺の”何度目かの必殺パンチ”が怪人の頭部を捉え、衝撃でメダルが飛び散る。
「…っが…」
怪人がメダルをまき散らしたかと思うと、気付けば倒れているのは普通のスーツの男。今の怪人、メダルでできてたのか。
俺が苦労してひとりめの怪人を倒している間に、既に他の二人(アクエリアスとゲイザー)は多くの敵怪人を片づけ、そして。
【
【
【ブドウ! セイ! ハァーッ!】
【イッテイイヨー!】
散弾のことをグレープショットというが、アクエリアスが龍弦を使って放ったのは、まさにそれ。
拡散するエネルギーが怪人たちに降り注ぎ、ゲイザーがカメンライドした斧が怪人たちにトドメを入れ、戦いが終わった。
二人とも本来の白と青のライダーに戻り、俺の近くに駆け寄って来た。
「無事かい? 悠貴くん」
「…心配とかしないでくれ。なんか怪人をひとり倒すのに苦戦してたのが情けなくなる」
ふたりの動きを見ていると、やはり俺は“ライダー殺し”に特化した改造人間であるらしい。
怪人相手にした場合、痛めつけることは出来てもなかなかトドメに繋がらない。
「怪人ひとりで町一つ滅ぼせるような奴らだ。お前も立派な仮面ライダーだよ」
「俺は仮面ライダーじゃない、仮面ライダーってヤツは…こう、もっと、なんていえば良いんだ?」
俺が殺した仮面ライダーのこと、そしてV3のことが…というよりV3をコピーしていたワームの男が思い浮かぶ
仮面ライダーというのは、ただ戦士を指す名前じゃないということは分かる。分かるが、それがどういう意味なのかが分からない。
「…ま、お前が仮面ライダーを名乗るかどうかは好きにしろ。良いと思う。多分、俺の兄貴分も仮面ライダーって言葉は大事に…」
良い話をしながら変身を解こうとする白仮面ライダーを、士樹(アクエリアス)が手で制す。
「…? どうした?」
「静かすぎる…ように思う」
そのときだった。何かが飛んでくることに俺達が認識したのは。
一秒前まで俺たちが居たアスファルトが吹っ飛んだ。爆撃の様な威力。俺たちは飛んできた方向に意識をを向ける。
そこに居たのは蛇の意匠を持つスーツの様な怪人…変だな、こいつ、どこかで…?
「誰だ、あんた?」
「名乗らせていただきましょう。私はエイジャ。とある財団の職員です」
「どこの世界に怪人が役員やっている法人が有る…って聞こうと思ったけど…」
「そうですね、前杉士樹さん、あなたの学校も似たような法人ですものね?」
「!? なんでっ!?」
士樹の驚いたような様子。俺も聞いていないが、どうやら士樹が来たという世界も色々なことがある世界のようだ。
「おや? 他の財団員たちから聞きませんでしたか…? それは失礼、あなたの世界に他の世界のアクエリアスを送り込んだのは我々財団でして…」
「どうやって…いや、どうして、あんなことを…」
「様々な世界で暴れまわる無数のアクエリアスは危険でして。“処分”のためにあなたの世界に送らせていただきました。彼らが守っていた世界は我々の研究に必要だったもので」
「研究? 研究って何の話だ!?」
「それは…“傍観者”にでも聞きなさい」
傍観者? なんの話だ?
どうやらエイジャは“私”の存在に気付いているらしかった。
そもそも、彼らの“財団”…。
便宜上・財団Xとしておくが、彼らは私が以前居た次元において、九人のサイボーグ戦士が戦ってたブラックゴーストという兵器会社と同じく、金稼ぎが目的の死の商人だと思っていた。
しかし、そもそも財団Xはおかしい。おかしすぎる。
財団Xが所有しているガイアメモリやNEVER、メダルにスイッチ、これらの技術はそれぞれに核ミサイルに匹敵する危険性が有る。
世界を征服しようとするならば既にできるだけの力が有るように思うのだが、財団Xはその力を販売することしかせず、力を貯めている。
では、財団Xは貯めた力によって“なにを得ようとしているのか?”
云うならば、それはこの私と“同じような目的”であると考えたならば…合点が行く。
「士樹! それ以上は喋っても無駄ってことだ! あとは体に聞こうぜ!」
代々木悠貴=改造人間サカビトが前に出る。悪役然とした態度だが、この切り替えの速さは他の二人にはない長所だった。
サカビト、アクエリアス、ゲイザー。緑と青と白の戦士がそれぞれに戦闘態勢を整える。
「おやおや、三対一ですか? ひとりずつにして頂けませんか? 緑のライダーさん? あなたからお願いします」
「…弱い奴から、って意味か? 上等だぜ」
「おいおい、先に大勢で仕掛けてきたのはそっちだろ? それでそっちが人数が減ったら合わせろ、ってのは都合が良いんじゃないか?」
「なるほど。ゲイザー様…でしたか。返す言葉もございません。では…先ほど私が失礼させていただいたものが何か、ご存知ですか?」
先ほど三人を襲った先制攻撃のことだと気付いたサカビトが、そちらを観る。
抉れたアスファルトの中、爆心地にあたる位置を見下ろす三人、そして飛び上がったのはサカビト一体だった。
「フェイタル・キィイイイック!」
「いらっしゃいませ!」
エイジャは待っていたとばかりにサカビトのキックを避け、その足に合わせたカウンターパンチをサカビトの腹部に叩き込んだ。
「ぐぁあっっ!」
「さて…それでは、御二方、お相手願います!」
残るふたりとも気炎を上げている。地面に打ち込まれているのは、弾丸でも武器でもない。
それは赤い赤いV3Dのヘルメットだった。
首の部分からはワームの緑色の血液が溢れており、ヘルメットの“中身”が入ってることを意味していた。
仮面ライダーV3を模し、借り物の正義で戦っていた男のあっけなさすぎる死の告知。
「趣味が、悪いな…!」
「弁明させていただければ、全ては彼が悪いのですよ?
我々財団を利用してディケイドライバーを量産したかと思えば、それを引き渡さず、それどころか敵対的な行動を取った…。
それに彼は人間どころか、この地球上の生き物ですらないのですから」
「そうかもしれませんが…気に入らないね」
アクエリアスとゲイザーが構える。
「私は気に入っていますよ。この力を、ね」
エイジャは懐からカードデッキを取り出し、見せつけるようにふたりの前で振って見せた。
「ライダーカード!?」
「違いますよ、もっと良いものです」
デッキから取り出したカードを振ると、そこから映像が浮かび上がり、実体化する。
【
【
現れたのは二体の怪人。
黒と銀
「さあ…殺し合いましょうか…!」」
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全仮面ライダー映像作品を同じ世界観として扱い、サカビトを中心に各々の謎を独自に解釈していく。
サカビト=代々木悠貴は改造人間であるが、仮面ライダーではない。
仮面ライダーを倒すために悪の科学者によって拉致・改造され、子供を庇った仮面ライダーを殺害してしまった一般人だ。
人々から英雄を奪った罪を贖い、子供たちの笑顔を守るため、サカビトは今日も戦うのだ。
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