No.824179

艦隊 真・恋姫無双 97話目

いたさん

赤城の話が、なぜか続いてしまいました。

2016-01-10 13:40:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:911   閲覧ユーザー数:809

【 蠢動する一航戦 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 内城 通路 にて 〗

 

 

厨房より逃げ出した赤城は──獅子奮迅の動きを見せた!

 

ーー

 

磯風「しまったっ! こんなところでぇ──っ!!」

 

 

島風「───ああっ! ……あ、ああ……あうあうあうぅぅぅぅ」

 

 

高雄「──きゃっ! な、何よ……それで勝ったつもり!?」

 

愛宕「いやーん! んも~失礼しちゃうっ!!」

 

 

陸奥「………………やるじゃない!」

 

ーー

 

磯風の制止を振り切り、島風の追撃を易々と突き放す!

 

騒ぎを聞き付けた高雄、愛宕の挟撃を見事な切り返しで躱し、前に立ちはだかる陸奥の防壁を難なく突破!

 

過度の空腹に因り『妖怪 食っちゃ寝』化した赤城にとっては、回避、索敵、速力、耐久、運が軒並みに上がり、空母とは思えぬ機動力、推進力を得て、自分を拿捕しようとする僚艦から逃れ出る! 

 

正に………『無敵艦隊』と呼ばれた一航戦赤城の活躍ぶり?だった!

 

《 (作者注 妖怪食っちゃ寝化の事は、第五話目を参照に…… 》

 

しかし、その赤城にも──遂に最後?が訪れた。

 

ーー

 

明命「どうしたんですかっ!? 赤城さんが暴れているって聞いて、慌てて此方に来たんです! い、いったい何がぁ───っ!?」

 

「「「「「 ──────!! 」」」」」

 

ーー

 

騒ぎを聞いて駆けつけた明命が、途方に暮れている磯風達の前に現れたのだ。

 

その姿を見て、喜んだのは磯風──では無く、愛宕だった!

 

ーー

 

愛宕「あらっ、貴女が周幼平ちゃんね~? 聞いていた以上に勇ましくって可愛いわ~、うふふふっ!」

 

明命「えっ? ────ウプッ!?!?」ギュウゥゥゥゥ‼‼

 

ーー

 

愛宕からの急な抱擁で、明命は逃れる事が出来ず、象徴的な胸部装甲へと顔を強制的に埋めさせた。 驚いた明命は、直ぐに脱出しようと試みるが、まるで拘束器具のようにガッチリして抜け出す事ができない!

 

しかも、柔らかく温かい無駄な肉(明命談)が、鼻や口を覆い呼吸が出来ない状態! 後、どれくらい持つのか分からないのだ!

 

任務とかであれば、呼吸を調節して長く息を止める事も出来るだろう。 だが、準備も出来ていない、急いで来たから呼吸が乱れている。 そんな状態で息を止められたら………どうなるかは想像に難なくない。 

 

ーー

 

愛宕「やあ~ん、お人形さんみたいで可愛いぃぃぃぃっ♪」

 

明命「ーーー ヾ(;≧皿≦)ゝ」ジタバタジタバタ‼

 

ーー

 

まるで、自分を窒息させるような行動! 

 

なぜ、こんな事をするのか困惑する明命!!

 

明命が必死に両手をバタつかせて、周囲へ自分の危機を伝えると、姉である高雄が気付き愛宕に注意して解放させた。

 

ーー

 

高雄「ちょ、ちょっと──愛宕!」

 

愛宕「───あらっ、ごめんなさいね~?」

 

明命「─── (# ◎□◎)」ハァハァ ハァハァ

 

ーー

 

………涙目の明命が、魚のように口をパクパクさせて空気を取り込み、愛宕を睨みつけるのだった。

 

★☆☆

 

愛宕「ごめんなさいねぇ~、あんまり貴女が可愛いから、ついつい強く抱き締めちゃったの。 身体は大丈夫? どこか痛いとこは無い~?」

 

明命「……………………心が………痛いです………」

 

愛宕「───ほんとぅに、ごめんなさぁい~!!」

 

ーー

 

愛宕から解放された後、明命は機嫌を悪くして顔を横にする。 愛宕が謝罪するが、冷たい返事が返ってくるだけ。 どうやら明命は、怒りを解いてはくれないようだ。

 

ーー

 

磯風「申し訳ない明命! この磯風から詫びを入れさせて貰う! それに、この件は提督に申告し、それなりに処置を頼むようにする! この磯風の名において誓おう! だから、機嫌を直してくれ!」 

 

高雄「先程は妹の不始末で失礼しました。 愛宕の姉『高雄型 1番艦 重巡洋艦 高雄』と申します。 どうぞ、高雄と御呼び下さい」

 

島風「ふーん、あなたって……駆けっこ速そうだね? 私? 私は『島風型 1番艦 駆逐艦 島風』だよ。 『速きこと、島風の如し』って言われる島風と勝負してみない? 約束してくれるなら『島風』の名前、呼んでいいからね!」

 

陸奥「あらあら、よく長門が我慢……あっ、此方の話よ。 気を悪くしないでね? 私は『長門型 2番艦 戦艦 陸奥』──長門の妹になるのよ。 陸奥と呼んでくれれば嬉しいわ。 姉の長門共々……よろしくね?」

 

愛宕「え~と、私………ああっ! ごめんなさい、顔を横にしないでぇ~! 私は『高雄型 2番艦 重巡洋艦 愛宕』よ、愛宕と呼んでね~」

 

明命「…………わかりました。 私の名前は───」

 

ーー

 

こうして、明命と艦娘達は名前を名乗り(真名も全員に預けた)、呼ぶ事を許可した。

 

そして、その直後──愛宕達より依頼をされる。

 

───『乱心した赤城を捕縛する事に、力を貸して貰いたい!』と。

 

 

◆◇◆

 

【 赤城 捕縛 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 内城 通路 にて 〗

 

磯風「だから──明命! 頼むっ!! お前の力を、我々に貸して貰いたいのだ!!」

 

明命「あ、あの~事情は解りましたが………磯風さん達が無理だったのに、私が敵うわけ………」

 

高雄「それは……勿論承知してるわ。 私達が期待してるのは、明命さんの『敵を捕縛する知恵』を示唆して頂きたいんです!」

 

愛宕「そうなの~。 金剛さんから、ニンジャみたいなスゴい子が居るって、聞いていたから明命ちゃんの事は知ってたわ。 だから~、その力を見込んで私達を助けて貰いたいなぁ~って思ってたの──ねぇ?」

 

島風「島風より速いんだよっ! 明命が、赤城さんより速い訳ないじゃない! べ、別に………明命が赤城さんを追い抜くの………怖がっている訳じゃ──ないもんっ!!」

 

磯風「ああ……本来ならば、赤城の監視を怠った磯風の責ゆえ、我々だけで……解決したかったのだが……! 頼む! 司令にも多大の迷惑を掛けている! 何とか……力を貸して貰えないだろうか!!」

 

陸奥「捕らえた後の事は、心配しないで大丈夫! 私達が総掛かりで押さえるわ。 もし、危なくなったら……明命は逃げて頂戴。 これ以上、巻き込む訳には行かないわ!」

 

明命「………………分かりました! 私の力が及ぶ範囲ですが、出来る限り頑張ります! そ、それに……私を頼って下さるなんて、嬉しいですから……。 必ず、赤城さんの暴走を止めるようにしますっ!!」

 

ーー

 

そんな訳で、赤城捕縛対策委員会(仮)が急遽結成され、各々準備を始めた。

 

★☆☆

 

高雄「これ………ですか?」

 

島風「えぇ~!? 幾ら何でもぉ…………」

 

明命「はいっ! 皆さんからの情報を集めますと、これで間違いなく──引っ掛かると思いますっ!」

 

磯風「確かに異論はあるかも知れないが、磯風達には打つ手は無い。 如何なる奇抜な手でも、明命を信じるしかないのだ!」

 

愛宕「私も賛成~!」

 

陸奥「──しっ! どうやら来たわ。 重要な場所に向かう通路は、全て閉鎖して貰ってあるから、此処に来るのは赤城だけよ。 それに、餌には提督手作りの『スイート』を仕掛けてあるもの。 ───必ず、掛かるわ」

 

「「「「「 ………………ゴクッ 」」」」」

 

明命達が集めた材料を使い、遂に完成させた『対赤城専用捕獲罠』を通路に設置し、曲がり角で身を潜め、様子を窺う関係者達。

 

明命作の出来上がった罠を見て、余りの奇抜さに『これで大丈夫か?』との心配の声も上がった。 

 

しかし、委員長格の磯風が黙らせ、この罠を実行を決断! 昨日の夜戦で白波賊を次々捕縛する手腕、仲間の金剛より聞いた活躍を信じての行動である。 

 

どうなるかと思案する間もなく、設置して直ぐに………対する相手は、既に罠へと刻一刻……近付いていた。

 

ーーー

ーー

ーーーー

 

赤城「………………………」ヨロ…ヨロ…

 

普段の赤城と変わらないが、目は虚ろで視線は彷徨うばかり。 

 

幽鬼のような、酔っぱらいのような千鳥足で歩き、これが磯風達を翻弄した赤城とは、到底信じらない。 

 

赤城「お腹が…………空き……ました……」

 

───赤城から半開きの口から、そんな言葉が漏れ聞こえた。

 

ーー

 

愛宕「(あらぁ………もしかして、空腹で動きが冴えないのかしらねぇ?)」

 

高雄「(可能性は、ありそう……)」

 

島風「(今なら赤城さんを──ひゃああ……ウググググッ!)」

 

陸奥「(────大声出しちゃだめぇ!)」

 

磯風「─────!?」

 

ーー

 

赤城「………提督……ごは…………………∑(ρ゜!!」

 

ーー

 

そんな彼女の目が、急に飢えた狼のように鋭くなり、とある料理を捉えた。

 

赤城「ご、ごごご…………御馳走!」

 

赤城の目が大きく見開き……半開きに開いた口から、一筋の涎が流れ落ちる。

 

そこにあるのは………一刀が作った料理。

 

大豆を擂り潰して砂糖をまぶした白玉団子が、皿に乗る。 モチモチした状態が実に食欲を誘う。 まるで、『私を食べてぇ~』と言わんばかりに。

 

そして………すぐ傍には、大きな籠が斜めに立ててあり、一本の棒が籠を支える。 棒の根元には紐が結ばれており、その紐の末端を辿れば………明命が緊張した顔で、赤城の一挙一動を注視している。

 

もう、お分かりであろう。 

 

赤城が食べ物に食い付けば、明命が棒に付いている紐を引き、籠が被さる。 

 

………よくある鳥を捕まえる『あの』仕掛けだ。 

 

 

赤城「……………………(゜ρ ̄;」

 

愛宕「(あ、後………少し…………)」

 

赤城「…………? …………??」

 

高雄「(あっ………! でも、さすがに一航戦ね、警戒して後ろに下がったわ!)」

 

赤城「──── ( ̄皿 ̄;」ジリジリジリジリ

 

島風「(でもでも、見てっ! 何か葛藤しているけど、食い気に勝てないみたい! 今にも飛び掛かろうとしているよぉ───!?)」

 

赤城「──── 〔 ∞ ⊂(▼Д▼; 」

 

明命「────今ですっ!!」グイッ!

 

ーーーーーーーバタン!!

 

赤城「────  /⊂∑(゜皿 ̄;」

 

磯風「───掛かったぞ! いくぞ、赤城を取り押さえろっ!!!」

 

ーー

 

こうして………赤城は、とうとう捕らわれてしまった。 ちなみに皿の白玉は……綺麗に無くなっていたそうだ。

 

後に、この罠で捕まったと聞いた関係者は、一様に唖然としたという。

 

★★☆

 

現在、赤城は────厨房の外に正座中。 

 

勿論………そのままにしておけば、赤城が乱入する可能性があるので、赤城の額に『大食艦赤城絶対碇泊急急如律令』と書かれた……長30㌢の符が張り付く。

 

隼鷹が認めた(したためた)赤城専用呪縛符であり、これを付けられると、身体が動けなくなるという。 逆に『赤城の動きが3倍速くなる』札も存在するらしいが……見た者は居ない。

 

それは、さておき………何故、厨房の外で正座しているかと言うと………

 

 

赤城「ああっ……天麩羅蕎の香ばしい匂いが! はうぅぅっ、こっちからは甘く煮詰める香りがぁ~! て、提督ぅっ! もう、赦して下さいっっっ!!」

 

 

赤城に料理の匂いが漂い迫るごとに、身体の中から悲鳴が上がる。 調理中の音、食材を切る音が赤城の後ろから響き、赤城の精神を苛(さいな)む。

 

具体的には『グゥ~』とかの擬音が連続して鳴り響き、赤城の頭には、様々な食材の調理音により、その料理の完成予想図が的確に浮かび上がる。 だが、それらは──赤城の口には一切合切入らない物ばかり。 

 

全部が運ばれて、諸侯や他の艦娘の口に入る料理だから。

 

しかも念のため、首から胸に掛けてある板には、『餌をやらないで下さい! 駄目、絶対!』と看板まで付けてある徹底振りである。 

 

それが、一刀からの罰なのであった。

 

ーー

 

「「「「 ……………………… 」」」」

 

赤城「グッ、グスン………一航戦の誇り、こんな事で………失うわけには………」

 

ーー

 

明命「あ、あの───赤城さんは、どうなされたんですか!? あの鬼気迫る妖のような者が、あの時の優しく頼もしかった赤城さんと……同じだなんて、信じられませんっ!!」

 

磯風「………まあ………発作というか……なんというか……な?」

 

明命「あぁ──成る程……『お酒を呑まれた春蘭さん』みたいなものですか。 分かりました、人には話したくない事情があると思います。 赤城さん………くれぐれも飲み過ぎには………注意して下さいね?」キラキラキラ

 

赤城「…………純真な目に見詰められてぇ………痛いぃ、痛過ぎますぅぅぅっ!」

 

ーー

 

陸奥「前の世で………あれほど輝いていた………一航戦『赤城』って、どこに行ってしまったのかしらね………」

 

愛宕「うふふっ、此処に居るじゃない~!」

 

高雄「…………不定はしませんけど………」

 

島風「なんで………私の時ばっかり………」

 

ーー

 

磯風達は、様々な想いを抱きつつ赤城を見詰めた後──大厨房の横の控室に入って行く。 

 

明命も用が済んだ後、雪蓮達の下へ戻る予定だったのだが、磯風達より一刀に会ってくれと頼まれ、招待を受けたからであった。

 

 

◆◇◆

 

【 禍福は糾える縄の如し の件 】

 

〖 洛陽 都城 大厨房外 にて 〗

 

北上「──さてと、この料理を部屋に運ぼうかねぇ……大井っち?」

 

大井「はいっ、北上さん! 何処までも付いて行きますわ! 例え、萌える地の果て、暁に映える水平線の彼方でも、北上さんとならぁぁぁ!!」

 

北上「あはははっ……大袈裟だよ、大井っち。 この料理を持って行くだけだからさ? あっ、そうだ──場所と行き方は分かる? 場所が分かんないと、持って行っても無駄だし、提督や駆逐艦達に聞くのも…………何だかね……」

 

大井「大丈夫です! この厨房からの行き方、目的の部屋、北上さんの下着の色も──全部把握していますから!」ムフゥ!

 

北上「なら、安心できるよ。 それにさ、大井っちが頼りになるから……つい頼ったゃうんだ。 駄目だよな………あたしは……」

 

大井「もう──北上さんったら、可愛い!! もっと頼っても………あら、こんな所に大食艦が。 北上さん、早く料理を持って行きましょう? せっかくの料理が不味くなってしまいますわ───」

 

ーー

 

漣「うひょー! 料理の神キタコレ!! これってマジに超絶品! ご主人様も気に入るよぉ、曙ちゃ~ん!!」

 

曙「う、五月蝿い! あたしはね、ちょっと助言と手助いをしただけ。 料理を実際に行ったのは、潮の努力の賜物なんだから。 そもそも誰が、あんな……くそ提督なんかに、料理を作ってやらなきゃなんないのよ!!」

 

潮「ううん……曙ちゃんが調理方法を詳しく教えてくれたり、材料も揃えてくれた御蔭だよ! 普通に『秋刀魚の塩焼き』を行うつもりだったの。 曙ちゃんが、手助けしてくれなきゃ……こんな美味しい物できなかった!」

 

曙「自分の実力を認めなさいよ、潮。 いくら、あたしが横から指図したり材料用意したとしても、思っていた物を作らせるなんて出来ないわ。 だいたい漣なんか、あたしが全部教えても、絶対に変な料理を作るわよ!?」

 

漣「解ってねぇな……裏切りは女のアクセサリーだぜぇ。 なあ、とっつあん? にひひひひひ………」

 

朧「───えっ? 朧のこと?」

 

曙「ちょっと、何が『とっつあん』よっ!! そもそも、あんた──似てもしてないのに、『世界一の大泥棒』みたいな口真似してるの!? 料理は、普通に美味しく食べれるなら、それで良いじゃない!!」

 

朧「それにしても、潮……よく『カレー粉』や『秋刀魚』とかあったね?」

 

曙「────!」

 

潮「うん、びっくりしちゃた。 簡易式冷凍庫に入って、適切に保存してあったんの。 海まで遠征に出かけるなんて……今は滅多にやらないのに。 それにカレー粉は、曙ちゃんが…………」 

 

曙「ほ、ほらっ! アンタ達、早く料理を持って行くわよ! 冷めたら美味しくなくなるじゃない! さっさと行きなさい!!」

 

潮「お、押さないでぇよぉぉ!? 料理が落ちちゃうぅぅ!」

 

朧「潮は、もう少し料理を顔近くまで上げきゃ! 御自慢の胸で当たっちゃうんでしょ? まあ………朧達は関係ないんだけど…………」

 

曙「───憐れんだ目で見るなぁあああっ!! こ、こんな胸、胸ぇ!!」

 

潮「ひやぁあああっ! 曙ちゃーん! やめてぇ、やめてぇえええっ!!」

 

ーー

 

漣「もう………曙ったら相変わらずツンツンですか。 生を楽しむコツは、どれだけバカなことを考えられるか………なんだけど? でも、漣達もそうかなぁ……本心を隠してバカするの、男じゃなくても辛いのよね………」

 

ーー

 

厨房から足早に料理を運ぶ艦娘達。

 

その厨房には、まだ残っている者が居るようで、物音や話し声が聞こえてくる。 

 

中に居るのは、鳳翔、紫苑、雛里、数名の艦娘達。

 

菊月が雛里の指導で菓子を作り、鳳翔の方法を見ながら紫苑が手伝う。 扶桑や山城が準備に駆け回る。 こうして、最後の準備に取り掛かっていた。

 

そんな、料理の追い込みに入る厨房内から、一刀達は邪魔しないように外へ出て、隣の部屋で磯風達から話を受けていた。

 

ーー

 

一刀「よく捕らえてくれた! このまま被害が王朝にまで広がると、王允から責を問われ、俺達や力を貸してくれた皆にも被害が及ぶところだったよ!」

 

磯風「いや、監視を頼まれながら失念していたのは磯風の責。 功は協力してくれた愛宕達、罠を仕掛けてくれた明命へ。 罰は、今度こそ慎んで磯風が受けよう………司令!」 

 

一刀「ならば、今回……赤城捕縛の指揮を取り、見事に成功させた勲功も引かせて貰えば、丁度いいかな? 赤城は、まだ反省させなきゃならないけど」

 

磯風「あ、甘いぞ……提督、それでは皆が納得───」

 

一刀「…………と言うが、どうかな? この裁きは?」

 

天津風「信賞必罰……それで良いじゃない?」 

 

磯風「───しかし!」

 

天津風「………そもそも、磯風みたいに生真面目な艦娘か居なきゃ、仕事が捗らない(はかどらない)わ。 確かに甘いかもしれないけど……赤城みたいな罰を受けて止まられるより、働いて償って貰う方が遥かに良いわよ!」

 

如月「そうね……『結果良ければ全て良し』って言うものねぇ。 それに、何も罰だけが償いじゃないわ。 司令官の為に功績を挙げるのも、如月達……艦娘としての償い方じゃないかしら……」

 

「「「「「 ─────コクッ 」」」」」

 

ーー

 

集まった者が皆が皆、一刀の裁きに賛同の意見を上げるが、一隻が別の意味の言葉を投げ掛け、波紋が広がる。

 

ーー

 

イク「イクも賛成なのぉ! イクも此処に来たのは、まだ間もないから、事情がよく分からないなのね。 だからー頼りになる磯風が居てくれば、安心して提督に甘えられるのねぇ!」

 

如月「なによ………この娘。 ちょっと如月より大きいからって……」

 

イク「…………提督は渡さないなの!」

 

天津風「あ、あんた達、こんな所で止めなさいよ!!」

 

一刀「天津風の言う通りだ。 如月もイクも五月蝿くするなら部屋を退出しろ。 これは磯風にとっては大事な話なんだぞ?」

 

如月「…………し、失礼しました………」

 

イク「ごめんなさい……なの」

 

天津風「……………ふん……」

 

磯風「…………司令………」

 

ーー

 

提督として司令官として、決然たる態度を示して矜持を正した。

 

流石に、このような態度を見せられば…………二隻は黙るしかない。 周りの艦娘達や明命も押し黙り、一刀の様子を窺う。 

 

ーー

 

一刀「さて───他の皆からも許可を得た。 この件は保留で置いておくよ。 更なる活躍を示して雪辱を果たすように!」

 

磯風「…………了解した。 ならば磯風は、粉骨砕身して働かせて貰うぞ。 以後も皆、改めてお願いする!」

 

ーー

 

磯風は、そう言って腰を曲げ綺麗な一礼をし、皆に感謝と誓いを行う。 そして、愛宕達に改めて赤城捕縛の礼を述べた。

 

ーー

 

磯風「赤城には………本当に手間を掛けさせてくれた。 一航戦の肩書きは伊達ではなかったよ。 貴艦達──陸奥や愛宕、高雄、島風が居てくれて助かった。 協力の礼を言わせてくれ! ………ありがとう!!」

 

 

高雄「力になれて良かったです。 私達は、会場の準備が出来たので、提督にお知らせしようと出てきただけですよ。 でも、私も初めて拝見しましたわ。 赤城さんの『妖怪食っちゃ寝化』っというものを…………」

 

愛宕「あの島風ちゃんが負ける速さ、私達数隻で捕手に回っても衰えない回避運動、正しく怪物化ですね~」

 

陸奥「まるで、大和みたいな迫力があったわ。 信じられないけど………」

 

島風「…………タービン周りを整備すれば………今度こそ勝てるのかな………?」

 

ーー

 

磯風が礼を述べてる間に、一刀は愛宕達より少し離れた場所に居る、明命に声を掛ける。 赤城捕縛の最大の功労者に、礼を述べる為だった。

 

★☆☆

 

磯風が礼を述べてる間に、一刀が明命に礼を述べる。

 

今の一刀には明命の記憶は……残念ながら無い。 しかし、先の戦いや今回の捕縛の件でも活躍して貰っている。 漢中鎮守府の長としても、一人の男としても、何かしら御礼を考えるのが当然の事だ。

 

ーー

 

一刀「……………明命、何度も俺達の危機に駆け付けて、必ず助けてくれてありがとう! 借りを返すための催しが、このようになるとは──」

 

明命「そ、そんな! わ、私は──皆さんが困っている様子でしたので、助っ人に駆け付けたまでですっ! それに、この事は雪蓮様や冥琳様にも関わりがありますので、私が動くのは当然! け、決して……お気にする事など!!」

 

一刀「いや、結果的には助かったが、一歩間違えていたら………更に酷い派閥争いに巻き込む可能があった。 だから………救ってくれた君に借りが増えた。 俺のできる範囲での願い事があれば、叶えさせて貰うよ。 必ず…………」

 

明命「───か、かかか、必ず──ですかぁぁぁっ?」

 

一刀「ああ……………」

 

明命「そ、それなら────」

 

ーー

 

明命は一刀に『数日間でいいから、孫呉に来て貰いたい』と願いたかった。

 

今の一刀を連れて、自分達の地に戻すのは無理かも知れない。 だけど、天の技術講習を受けるとかで、数日止まって貰えれば………と。

 

『………雪蓮様、穏様なら好奇心で賛同。 蓮華様、シャオ様も大丈夫、思春殿は蓮華様を認めれば否は言えませんし、祭様も雪蓮様を信用されていますから頷いてくれます。 他の反対意見は、冥琳様が押さえてくれますから……』

 

瞬時に、王と重臣達の説得方法を算出し──考え出された結果である。

 

───しかし、そうは上手く行かなかった。

 

ーー

 

磯風「──すまんが明命、至急聞きたい事が出来た。 分かる範囲で教えて貰いたいのだ!」

 

明命「は、はいっ! 私に分かる範囲ならば!」

 

ーー

 

磯風より問われ、驚きながらも応える。

 

磯風としては、天津風達より聞いた事実のが衝撃的であり、一縷の望みを賭けて明命に教えて貰いたかったのだ。

 

ーー

 

磯風「実は、赤城の食べた被害は予想より大きかった。 用意していた調理の十人分が食べられていたのだ。 そのため、今は五十人分の準備しかないのだが、この量で足りるのか───心配なのだ!」

 

明命「────に、人数は大丈夫ですが、五十人分じゃ少な過ぎます!! 私の仕える国は大丈夫ですが、他の国の配下の方に何十人分を平らげる猛者がいらっしゃいます!!」

 

磯風「ああ………天は、この磯風を見放したぁあああっ!!!」

 

高雄「…………それでは、私達はボーキを食べて我慢しましょう。 主賓である諸侯の方々を持て成す事が主旨。 陪席して主賓を飢えさせるなど、私達の誠意が疑われる事になりますよ?」

 

明命「そ、それでは困ります! 呼んでくれた方が質素な食事をされ、客の私達が豪華な食事など──皆さんが心配しますし喜ぶ事などありませんっ!」

 

磯風「くっ………それにだ。 此方には、赤城以上に食べる加賀が居たな。 あいつも桁が違うから……………」

 

愛宕「あら、大変! 提督、早く追加の準備しないとぉ!」

 

一刀「確かに不味い! 天津風……北上達を急いで呼んで来てくれ!」

 

天津風「───直ぐに向かうわ!」

 

 

陸奥「………皆、手伝って! 残りの材料を全部出して、取りあえず調理して貰わなきゃ!」

 

「「「 ─────了解! 」」」

 

如月「だけど、食材はどうするの~?」

 

愛宕「買ってくるしかないわよねぇ~」

 

明命「わ、私も! お手伝いします!! お店の場所も、幾つか知っていますから!」

 

高雄「そんな、主賓の方に手を煩わせるなんて───」

 

島風「そ、その前に………食材を用意する……『お金』はあるのぉ?」

 

「「「「「 ──────!? 」」」」」

 

ーー

 

島風の一言で、その場に居た者達の足が止まり、一刀は……頭を抱え込む。 

 

一刀の財布の中に、そんな大金は──持ち合せていない。 

 

何故なら、一刀達にとって、交通費は財政に負担にならないのだ。 

 

普通の官職持ちの者なら、国元から洛陽に出る場合、多くの兵を率いて遠方より出向する。 当然、日数が掛かるので、食事代や宿泊費やら金を準備しなければならない。 無論、別に糧食等も準備してだが。

 

だが、一刀達は……最初こそは益州の険しい山河を越えて、一週間も掛けて洛陽に向かった。 しかし、今は漢中に集まった後、夜に河を利用して洛陽へ向かうため、一日も掛からず洛陽に到着できる。

 

それに、基本的に『贅沢は敵』との考えもあり、普段の生活も質素にしている。 だから、高価な物を買う予定も無かったので、余分な金を用意する必要もなかったのだ。

 

では、金を用意するには『借りる』しか無い。

 

しかし、誰かに借りると言っても………無闇に借りる事も出来ない。 高位の官職による借財は、賄賂の始り、失脚の種であるだ。

 

しかも、一刀達の名前は洛陽では多くの者に知られている。 請えば貸してくれる者は数多だが、逆に言えば災いの種を自ら撒き散らすもの。

 

この借財を諸侯に頼むのは本末転倒、何進達に願うのは言語道断、陛下に頼むなど畏れ多い。 文字通り四面楚歌……である。 

 

その時……………部屋の入り口より声を上げる者が居た。

 

ーー

 

??「えぇ~と、益州州牧の北郷さんは、此方にいらっしゃいますかぁ~?」

 

一刀「───お……わ、私が北郷ですが───!?」

 

??「………………ぬ、主様………」

 

一刀「…………はい?」

 

ーー

 

あまりに慌てていたため、扉が開いていたようで、一刀達は慌ててその場所を凝視した。 そこには──にこやかに笑う女性、金髪の髪を棚引かせ顔を下に向ける女の子が立っている。

 

ーー

 

??「はいはぁーい、事情は御聞きしましたぁ! 是非、私達にも手助けさせてもらいませんか? 御返しなんかいりません、私達も前の『北郷一刀』さんより………お世話になった者ですから。 そうですよねぇ……お嬢様?」

 

??「………………………」コクッ

 

一刀「えーと、失礼ですけど…………」

 

明命「あ、貴女は───!?」

 

ーー

 

そこに居た者は、明命の主『孫伯符』、その更に上の主となる『袁公路』主徒が、入り口で立っていたのだった。

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

 

ネタが浮かばず、書き直していたために、結構過ぎてしまいました。

 

黄巾の本格的な戦いは、二話後辺りから始めますので。

 

もう暫く、お付き合い下さい。

 

 


 
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