No.823796

ガンパレードマーチもう一つの小隊

神無月さん

処女作です
ガンパレードマーチの二次創作になります
タイトルにもありますがもう一つの小隊ということで、基本オリジナルキャラが出ます
ですので、そういうのが許せない方は見ないことをお勧めします

2016-01-08 16:24:02 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:791   閲覧ユーザー数:791

 

ガンパレードマーチもう一つの小隊 1話

 

1945年

全世界規模で行われた人類同士の戦い、すなわち第2次世界大戦は、意外な形で終幕を迎えることとなった。

黒い月の出現。

それに続く、人類の天敵の出現である。

人類の天敵。

これを、幻獣と言う。

神話の時代の、獣達の名を与えられた、本来、我々の世界にありえない生物である。

生殖もせず、口もなく

幻のように現われ、身に貯えられた栄養が尽きるまで戦い、死んで幻に帰る。

 

ただ、人を狩る、人類の天敵。

 

人は、それが何であるかを理解する前に、そして人類同士の戦いの決着を見る前に、まず自身の生存のため、天敵と戦うことを余儀なくされた。

 

それから、50年――――。

 

戦いは、まだ続いている。

 

1945年から続く幻獣との戦いは、ユーラシアでの人類の後退という形で、続いていた。

焦土作戦を採用し、核の炎で自らの街を焼きながら後退するユーラシア連合軍は、ついに海岸線に追いつめられた。

 

同年4月 仁川防衛線。

人類は4千万の死者を残してユーラシアから消滅した。

人類の生存圏は、南北アメリカ大陸とアフリカ南部、そして日本のみとなる。

 

同年9月

自然休戦期明け、ユーラシアからついに人類を駆逐した幻獣は、ついに九州西岸から日本に上陸を開始。

ここに人類と幻獣の幾度目かの防衛戦争が開始された。

 

1998年

もはや恒常化した日本国内における幻獣との戦争において、一つの事件が起きる。

 

記録的な惨敗である。

 

九州地洋南部の八代平原で行われた、この会戦において、投入された自衛軍の兵は陸自のほぼ全力にあたる48万。

一方の的幻獣は1400万。

人類は、生物兵器を使って同地の8割を焦土のして戦術的勝利をものにしたが、同時に30万以上の将兵を、一挙に失うことになった。

人は、この穴を埋めるために、あがきつづけることになる。

 

1999年

日本国国会において二つの法案が可決された。

一つは、熊本要塞を中心とした防衛ラインの設置である。

本州への幻獣上陸の絶対阻止を計る時の政府は、時間稼ぎのために設置する熊本県を中心として戦力増強を行う。

こうして、単なる47都道府県の一つであった熊本は、本州防衛、その最後の砦となった。

例え九州の他の全県が陥落したとしても、幻獣は熊本と言うトゲを陥せない限りにおいて、つねに後背に刃を向けられることになるはずである。

 

もう一つの法案は、少年兵の強制召集である。

14歳から17歳までの、徴兵規定年齢に達していない子供たちが、学籍のまま、かき集められた。

その数は十万人。

これを即席の兵士として熊本要塞に投入し、本土防衛のための「大人の兵士」が練成されるまでの時間を稼ぐ。

これらの少年兵のほとんどが1999年中に死亡すると、政府は、そう考えていた。

1999年3月10日

川尻-宇土戦区

 

幻獣との幾度目の防衛戦。

今日、4度目の出撃の隊がある。

第6512小隊。

ここまでの戦闘はひどいものだ。

初陣ともいえる1度目の戦闘は死者は出ずまずまずといった感じだった。

だが、2度目からがひどかった。

2度目の戦闘で隊長と戦車兵3人を失った。

3度目の戦闘で新隊長と戦車兵、スカウト合わせて11人を失った。

立て続けに続く仲間の死、何かの陰謀ではないかと疑いたくなるが、今の世の中では珍しくないと隊のほとんどが思っていた。

そう、今日の4度目の戦闘までは・・・

 

宇土市白山 〇九〇〇

 

「隊長、戦車隊準備完了です。」

その通信に隊長と呼ばれた水野は不機嫌に「うむ」と返した。

水野の横に鵜沼紘(うぬまこう)が駆け寄ってきた。

「隊長、スカウト隊準備完了です。」

「わかった、行くぞ。」

水野は隊の方へ向かっていった。

鵜沼は水野の後姿を見ながら不安に思っていた。

この隊は大丈夫なのだろうかと、立て続けに隊長と仲間の死、今の世の中じゃ珍しくはないがそれにしては続きすぎだ。

もしかしたら今日、自分が死ぬのではないかと不安に駆られる

「鵜沼!何をしている早く来い!!」

「す、すみません、すぐ行きます!」

水野に怒鳴られ、鵜沼はとりあえず今は考えるのをやめようと気持ちを整理し、隊に向かった。

一〇三〇

 

戦闘が始まって1時間半が経過した。

状況は均等。

だが、6512小隊はひどい状況になっていた。

4台あった戦車が2台に減り、15人いたスカウトが5人減っていた。

「隊長、これ以上は無理です。撤退しましょう!」

鵜沼が岩陰からアサルトライフルを撃っている水野に走り寄って言った

「だめだ!これ以上敗退は許されない!何のために整備の連中をスカウトに異動させたと思っているんだ!」

水野の言葉に鵜沼は絶句した。

そんな理由で整備班10人をスカウトに異動したのか、まともな戦闘訓練を受けていない連中を戦場に送り込んだのか。

「それに、もうすぐ友軍が援軍に来る。それまで絶対にここを守勢するんだ!」

狂っている。

鵜沼は水野を見てそう思った。

どう考えても今の状態では援軍など来るはずがない。

来たとしても連携など執れずに被害がさらに増えることになる。

「こちら、4号車!1号車がやられた!!これ以上は無理です!撤退命令を!」

「援軍がもう少しで来る、それまで持ちこたえろ!」

この人はもう駄目だ・・・、戦車1台とスカウト5人で持ちこたえるなんて出来るわけがない。

この隊はもう駄目だ、そして自分も、もう駄目なんだろうな・・・。

でも、こんな事で、こんなところで死にたくない。

鵜沼はそう思い、生きるための悪あがきをするため水野のそばを走り去った。

俺は、死にたくない、生きたいまだ生きたいんだ、じゃあどうすれば?

鵜沼が生き残るためにどうすればいいか考えながら走っていると、爆発音がした。

しかも、さっきまで自分がいた場所だ。

鵜沼は引き返した。

あそこには、隊長の他に3人の仲間がいる。

いったい何があった、何が起こった、嫌な予感がする、隊長は?みんなは?

嫌な予感が当たってしまった。

鵜沼がそこに辿り着くと最悪な状態だった。

あたりは焦げ臭いにおいが漂っていた。

鵜沼は生存者を捜した。

みんながこんなところで死ぬはずがない。

何かの間違いだ、そう何かの間違いだ。

だが、誰も見つからない。

「そ、そんな・・・、まさか・・・、そんな・・・」

鵜沼が絶望しかけたその時

「う・・・うぅぅ・・・」

うめき声が聞こえた。

鵜沼はその声の聞こえた方へ走った。

生きていた、誰か生きていた。

「おい!だいじょう・・・ぶ・・・か・・・」

鵜沼は息をのんだ。

そこにいたのは、下半身を失っていて左半分の皮膚がただれている仲間だった。

「ぁ・・・ぅ・・・そ、その・・・声は・・・う、鵜沼・・・か?・・・」

鵜沼は言葉が出なかった。

仲間のこんな姿を目のあたりにして動揺していた。

なんでこんな事に、なんで・・・

「へ、へへへ・・・せ、生体ミサイルに・・・や、やられたよ・・・お、お前以外スカウト隊は・・・ぜ、全滅だ・・・お、俺も、もう・・・」

「な、何を言ってるんだ!大丈夫助かる!」

嘘だ・・・、助かるはずがない。

それは鵜沼も分かっていた。

でも、こんな言葉しか出なかった。

「・・・ば、馬鹿だなぁ・・・鵜沼は・・・で、でも・・・もう無理だ・・・何も見えないんだ・・・う、鵜沼ぁ・・・そこにいるか?・・・お、俺・・・し、死にたくない・・・死にたくないねぇよぉ・・・ま、まだ・・・し、死にたく・・・」

鵜沼は立ち尽くしていた。

四回の戦闘で全滅、なんでこうなるんだ、俺たちが何をした。

もう、このまま死んでしまおうか、そんな考えが頭の中に思い浮かんだ。

いや、まだ死ねない、死にたくない!

鵜沼はそう思うと4号車に無線を送った。

「鵜沼百翼長より4号車へ、スカウト隊は自分を除き全滅。この戦域を撤退する」

 

 
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