アールアル国革命(後編)
C11 玉璽
C12 襲撃
C13 来襲
C14 作戦会議
C15 職人の意地
C16 若気の至り
C17 夜戦
C18 治世
C19 不祥事
C20 梨の花
C11 玉璽
アールアル国。離島レイキュラ。バデュ港。バデュ商店街。8O8店。ゴーブにゴブラ、集う漁師達。
ボクノボウ『悪いな。本当に助けてやりたい気持ちはやまやまなんだ。でも、俺達にも金はなくてな…。はぁ。』
ゴーブ『分かっているさ。』
ボクノボウ『暗黒大陸連邦と自由貿易協定が結ばれた時からおかしくなちまったんだ。』
ゴーブ『嘆いても仕方がないさ。』
ボクノボウ『仕方がない事があるか。オルモは息子を殺された上に賠償金を請求されたんだろ。それを通す政府も政府だ!
俺達、国民よりも外国人を優遇しやがる!いったい何の為の国籍だ!』
眉を顰めるゴブラ。
カヲの声『明日がある。明日がある…。明日があるさぁ…。』
ゴブラは8O8店の方を向く。
ゴブラ『カオさん。大丈夫かな。僕達…自己破産するって。』
頷くゴーブ。去って行く漁師達。ゴーブはゴブラの方を向く。
ゴーブ『少しエントロンスのところへ行ってくる。』
ゴブラ『エントロンスさんのところへ。』
ゴーブ『ああ。』
去って行くゴーブ。
朝。アールアル国。離島レイキュラ。バデュ港。バデュ商店街。8O8店。窓から畑を見るゴブラ。
ゴブラ『カヲさん。まだ来ているよ。』
ゴブラの横に立つゴーブ。彼は、新しい場所を耕すカヲを見つめる。固い音が鳴り響き、カヲの動きが止まる。カヲを見つめるゴブラ。
ゴブラ『カヲさん…。どうしたんだろう??』
しゃがむカヲを見つめるゴーブ。カヲは手に光り輝く物を持ち、高く上げる。
カヲ『お、おおおおおおおおおお!』
カヲをみつめるゴブラ。カヲはゴーブとゴブラの前に走ってくる。
カヲ『お…おおお、おい。見てくれ!新しいところを耕してたら、こんなもんがでてきたんだ!』
ゴーブはカヲが持っている光り輝く物を見つめる。
ゴーブ『これは…。』
カヲ『分かんねえけどよ。結構、価値のある物なんじゃねえかな。ゴーブさん。どうだい?』
ゴーブ『これは…見たことがあるぞ。』
ゴーブは店の奥に行き、暫くして古い書物を持って来る。
ゴーブ『…こいつだな。』
ゴーブは旧字体で書かれた書物と図を指さす。
カヲ『なんて書いてあるんだい?』
ゴーブ『…獣魔帝国の玉璽。』
カヲとゴブラ『獣魔帝国の玉璽!!』
ゴーブは光り輝く物を見つめる。
ゴーブ『分からんが…。ともかく似ている。エントロンスを呼ぼう。判子屋の奴なら何かわかるかもしれない。』
C11 玉璽 END
C12 襲撃
昼。アールアル国。離島レイキュラ。バデュ港。バデュ商店街。8O8店。集うカヲとルーやオルモをはじめとした農家や漁師たち。店の奥で獣魔帝国の玉璽を鑑定するエルフで判子屋のエントロンス。エントロンスを見守る一同。大きな咳をするエントロンス。
エントロンス『ごほん。これは…本物の獣魔帝国の玉璽ですな。』
顔を見合わせる一同。
ゴーブ『そうか。』
暫し沈黙。
立ち上がる農家A。
農家A『これは何かの兆しじゃねえか。』
漁師B『俺達が追い詰めてられているときに、俺達の先祖である獣魔帝国の玉璽が見つかった。』
ゴーブは周りを見回す。
ボクノボウ『ゴーブさんの所で見つかったということは、ゴーブさんが玉璽に選ばれたんだ。』
頷く一同。
カヲ『俺達が苦しんでいるときに手を差し伸べてくれたのはゴーブさんだからな。』
拳を上げるオルモ。
オルモ『今こそ、あいつらを追い返す時なんだ!』
歓声を上げる一同。
一同『よし!奴らを追い払え!追い払うんだ!!』
眼を見開くゴブラ。
ゴブラ『ちょっと皆さん。そんなことをしたら…。』
ゴブラの肩を押さえるゴーブ。
ゴブラ『父さん…。』
大歓声が上がる。
ゴーブ『もうやるしかあるまい!』
頷くゴブラとゴブエ。
ボクノボウ『警官隊が動き出したら面倒だ。俺達が海岸でちょっくら暴れておびき寄せてやらあ!』
去って行く漁師達。農具を手に持つ農家達。
カヲ『奴らを追い払え!行くぞ!!俺達には獣魔帝国皇帝がついている!!』
昼。アールアル国。離島レイキュラ。ラハン食品会社の玄関を破壊する農家達。逃げ惑うラハン食品会社の従業員達。
警備員達が駆け付け、銃を向ける。警備員達を睨み付け、突撃する農家達。逃げ出す警備員達。彼らを追い、捕縛する農家達。
昼。アールアル国。離島レイキュラ。食品工場の外の海岸に捕縛されたラハン食品会社の従業員と警備員達。彼らを見下ろすゴーブとゴブラに農家達。
ゴーブ『お前達のせいでこの国はグチャグチャだ!もうこの島に二度と来るな!』
ラハン食品会社の工場長の前に立つオルモ。身をかわすラハン食品会社の工場長。オルモは農具を振りかぶる。オルモの前に立つゴブラ。
ゴブラ『やめるんだ。オルモさん。』
舌打ちをして、眼をそらすオルモ。
オルモ『とっとと行きやがれ!』
逃げていくラハン食品会社の従業員に警備員達。彼らは、食品運搬船に乗り込んで去って行く。
ルー『次は市庁舎だ!』
歓声が上がる。
C12 襲撃
C13 来襲
夕方。アールアル国。離島レイキュラ。雄たけびを上げて市庁舎に乗り込む農家達。彼らは市庁舎の内部に入り、周りを見回す。
農家D『…誰もいねえな。』
農家C『警官隊とやりあうと…覚悟はしてきていたが…。』
前に進むゴーブ。
ゴーブ『これはいったい。』
彼らの後ろから現れるボクノボウをはじめとした漁師たち。
ボクノボウ『よう。ここの政府の連中は皆逃げちまったぜ。警官隊もだ。』
頷くゴーブ。
ゴーブ『そうか。しかし、妙だな。何で逃げる必要が??』
ボクノボウ『さあな。』
テレビをつけるルー。テレビにうつるニュースキャスターB。
ニュースキャスターB『…キュラ離島において、暴動が発生。カン大陸連邦の食品工場の従業員達が逃げ出してきました。この土地の所有者であるカラカラ氏は数百の船団を率いて、レイキュラ離島に向かっています。この事態を重く受け止めた政府は、軍をレイキュラ離島に派遣することを決定…。』
顔を見合わせる一同。
カヲ『まさか…。』
ルー『そんな…。ふざけるな!俺達の生活を散々蹂躙しておいて!』
漁師C『なんで国民の方を討つんだ!』
カヲ『どうすりゃいいんだよ。ゴーブさん。』
ゴーブは頷き、周りを見る。
ゴーブ『反乱の主導者は俺だ。不利ならば、俺を殺せばいい。』
顔を見合わせる一同。
ボクノボウ『そんなことできるか!』
ゴーブ『まずは、軍と話し合おう。話はそれからだ。』
頷く一同。
アールアル国。離島レイキュラ。バデュ港に現れる。駆逐艦、巡洋艦をはじめとした数十隻の艦隊。港に座るゴーブ。停泊した巡洋艦からボートが発進する。ボートには司令官でホブゴブリンのホブラにホブラの部下2名が乗っている。海岸に辿り着くボート。ホブラはボートから降り立ち、ゴーブの前に立つ。
ホブラ『お前が、獣魔帝国皇帝か?』
ゆっくりと頷くゴーブ。
ホブラ『そうか。』
跪くホブラ。
ホブラ『これより我が軍は、獣魔帝国指揮下に入る。』
瞬きする一同。ホブラを見つめるゴーブ。
ホブラ『ふん。我々も反乱に参加させてもらう。もはや、政府は外国人や金持ちを優遇し、国民を虐げる悪党だ!我慢ならん!』
顔を見合わせ、歓声を上げる一同。
C13 来襲 END
C14 作戦会議
アールアル国。離島レイキュラ。バデュ港に停泊する艦隊を見つめるゴブラ、横にはカヲとルー。
カヲ『何時間ぐらいだい?親父さんがいってから…。』
ゴブラ『2、3時間は経ってる。』
ルー『心配だよな…。でも、あのホブラって奴が加勢してくれるにしろ、カラカラが率いる艦隊はその十倍だろ。どう対処するんだろうな。』
ゴブラ『…でも、もっと心配なのは、政府が次の軍勢を投入してくることかな…。』
騒音。ゴブラ達の横をバイクに乗り駆け去って行く皮のジャンバーを着、モヒカンの梨の妖精のシスヌフを初めとする学生運動家達。耳を抑えるゴブラ達。
カヲ『ああ、うるせえ。うるせえっ!あのがきどもバイクをさっきから乗り回しやがって…。』
ルー『あんな奴らを使わなきゃならねえほど悲惨とはね。』
巡洋艦からタラップが降ろされ、降りて来るゴブラにホブラと金型職人ヨッシォを初めとする技術者達。
ゴブラ『父さん。』
頷くゴーブ。
ゴーブ『安心しろ。政府の増援は来ない。この国の各地で反乱がおき、それどころではないらしい。』
ゴブラはヨッシォを初めとする技術者達を見る。
ゴブラ『この人達は?』
親指で後ろを指すルー。
ルー『また、あいつらみたいのじゃないよな。』
一歩前に出るヨッシォ。
ヨッシォ『失礼だな。俺達は技術者集団だ。カラカラを倒す。必勝の兵器。砲Kを製造する。』
ゴブラ『砲K??』
振り向くヨッシォ。
ヨッシォ『時間がねぇ。行くぞ。』
去って行くヨッシォ達。彼らの背を見つめる一同。ゴーブはゴブラの方を向く。
ゴーブ『作戦会議を行う。全員を集めてくれ。』
頷くゴブラ。
アールアル国。離島レイキュラ。バデュ港に集う反乱軍。彼らの前にはゴーブ、ホブラ、ホブラの配下のグレムリンの参謀A。一歩前に出るホブラ配下のグレムリンの参謀A。
ホブラ配下のグレムリンの参謀A『集まっていただきありがとうございます。今回、我々が相手をするカラカラは500隻の船でこちらへ向かってきています。そこで彼らを少しでも足止めするために、漁船をハリボテでカモフラージュして大船団がいるように見せかけて欲しい。無論、漁船には爆弾を仕掛けて、障害物として最大限に利用します。』
手を上げるボクノボウ。
ボクノボウ『それからどうするんだ?足止めしてもどうせ奴らはやってくる。他にすることは??』
ホブラ配下のグレムリンの参謀A『時間があれば機雷も散布します。』
頷くボクノボウ。
ボクノボウ『分かった。』
ホブラ配下のグレムリンの参謀Aはラハン食品工場の廃墟の方を向き、指さす。
ホブラ配下のグレムリンの参謀A『あの土地に我々は砲Kを建てます。技術者が出したスペックはこの作戦に耐えれるものです。第一照射は相手も感づいていないため成功するでしょう。しかし、砲Kはチャージに時間がかかるため。第二照射までに砲Kを死守しなくてはいけません。我々は砲Kが第二照射するまで、粘ります。』
頷く一同。一歩前に出るホブラ。
ホブラ『そういうことだ。だから、これから毎日砲撃、戦闘の訓練を行う。』
ホブラを見つめる一同。
C14 作戦会議 END
C15 技術者の意地
昼。アールアル国。離島レイキュラ。市庁舎。ゴーブにゴブラ、ホブラにホブラの配下の兵士達数名。モニターに映るバデュ港。水平線上に現れるカラカラ艦隊。彼らは囮の漁船に攻撃を始める。モニターに映る見張り台に立つホブラ配下の兵士Aは手を上げる。
ホブラ配下の兵士A『敵が来たぞーーーーーっ!』
ホブラはサイレンのボタンを押し、無線機を取る。
ホブラ『敵来襲。敵来襲。総員戦闘配置につけ!』
ホブラは砲Kが映るモニターの方に目をやり、無線機を口に近づける。
ホブラ『砲K発射準備はいいか?』
両手で丸を作るヨッシォ。
ホブラ『作戦通り。これより、砲Kを発射、チャージが終わり次第第二照射を行う。』
頷くヨッシォ。
ヨッシォ『これより第一照射を行う。目標カラカラ艦隊。』
砲Kの先が光、ピンク色の光がカラカラ艦隊に横一直線に照射される。沈んでいくカラカラ艦隊の船大多数。歓声を上げる反乱軍の人々。
モニターを見つめるホブラ。
ホブラ『半数程か。よし。』
無線機を口に近づけるホブラ
ホブラ『これより我が軍は第二照射まで砲Kを死守する!』
ゴーブとゴブラの方を向くホブラ。
ホブラ『皇帝と皇太子は陸の砲撃部隊の指揮を頼む。我々は艦船の指揮をする。』
頷くゴーブとゴブラ。彼らは連絡機をもって市庁舎から出ていく。
砲弾が飛び、無数の水柱が立つ。駆けながら無線機を口に当てるゴーブ。
ゴーブ『訓練通り撃てばいい!砲Kの第二照射まで持ちこたえるんだ!』
砲撃音が連続して響き、海に水柱が立つ。カラカラ艦隊の砲撃は砲Kの方角へ集中する。
ゴブラは砲Kの方を指さす。
ゴブラ『父さんあれ…。』
砲Kの上段下部に登るヨッシォ。
ゴーブ『何をしているんだ!危ないぞ!』
ゴーブは連絡機を出し、モニターをつける。モニターに映るヨッシォ。
ゴーブ『ヨッシォ!直撃をうけるぞ!』
カラカラ艦隊を見下ろし、飛び跳ねてガッツポーズをするヨッシォ。
ヨッシォ『見たか!お前達が首にした職人の力を!見ろ!安い外国人労働者とは比べ物にできんだろう!これがお前らが解雇した俺の力だ!これこそが…。』
ゴブラ『ヨッシォさん。そこは危険です。すぐに逃げてください!』
ヨッシォ『この砲Kは俺の技術の忰をあわせたものだ!そう簡単には壊れねぇ!見たか!クソ野郎ども。これが俺の実力だ!外国人にはまねできんだろう!これが俺の…。』
ゴーブ『砲Kは頑丈でもお前はそうじゃないだろ!はやく逃げろ!!』
ヨッシォは顔を上げ、カラカラ艦隊を睨み付ける。
ヨッシォ『…そんなの関係ねぇ!そんなの関係ねぇ!!オ…。』
爆音が響き、モニターに映る画面が目まぐるしく変わり、割れ、地面を映したままになる。砲Kの先が光、ピンク色の光がカラカラ艦隊に横一直線に照射される。
大爆発し、艦隊の大多数が撃沈される。遠くから方を撃っていたホブラ艦隊が動き出し、カラカラ艦隊の残存部隊に向かって行く。
夕日に染まる海岸を見つめるゴーブとゴブラ。
大歓声が上がる。
C15 技術者の意地 END
C16 若気の至り
アルアル国。陸地のシーレイス湾。シーレイス港に並ぶヴェルクーク級人型機構とイッツェ級起動城塞。ホブラの巡洋艦のブリーフィングルームにはゴーブにゴブラ、ホブラに各地の反乱の主導者のオライエン、セブレムト、ゲッツダンディ、サルトモト達が並ぶ。
ゴーブ『我々は野蛮人ではない。この地に住む外国人をむやみやたらに迫害する必要は無い。』
ゴーブを睨むセブムレト。
ゴーブ『今回のことは政府が外国人を優遇しすぎ、暗黒大陸連邦の企業のいいなりになったから起こったことだ。我々は、自由貿易協定にしろ、難民受け入れにしろ、もっと話し合って、問題点を指摘し、対処案を出していくべきだった。』
オライエン『陛下どのはそういうが、時間は十分あったのに、まったく説明の議論の場も与えなかった政府が悪いだろう。解決する時間はいくらでもあった。対処案を出せる時間は十分に取れた。しかし、政府はそれをしなかった。おかげで問題が起こったが、全ては政府の自業自得だ。』
頷くゴーブ。
ゴーブ『確かにそうだが、我々も政府に説明を求めるべきだった。ただ何も考えずに流されるままだった。我々には政府との交渉の用意がある。』
サルトモト『それはする必要は無いのでは。もはや彼らに統治能力は無い。我々の時代だ。』
ゴーブ『確かにそうかもしれない。しかし、もし、ここで政府を無視すれば、我々は前政権以下になる。』
頷く一同。
一同『分かった。』
周りを見回すホブラ。
ホブラ『しかし、これまで交渉に応じなかった政府が果たしてのるかどうか。』
ゲッツダンディ『その時はその時だ。』
モニターに映るアールアル国大統領の顔。ゴーブ達は彼を見つめる。
ゴーブ『大統領。我々には講和の意志があります。』
アールアル国大統領はゴーブ達を見つめて頷く。
アールアル国大統領『…分かった。こちらにもその用意がある。』
机を勢い良く叩くアールアル国大統領。
アールアル国大統領『ふぅ…暗黒大陸連邦の奴らは自身の利益が優先で我々の国益などどうでもいいのだと…。ははは。ははははは。はぁ…。講和の場所はアールアル国議事堂だ…。』
頭を掻きむしり、俯くアールアル国大統領。
ゴーブ『分かった。』
消えるモニター。
アールアル国。内陸部の議事堂へと向かうイッツェ級起動城塞とヴェルクーク級人型機構の大軍で構成された反乱軍。旗艦の艦橋内で腕を組み、正面を見つめるゴーブ。その隣にはゴブラ。
ゴブラ『父さん。これで終わるんだね。』
頷くゴーブ。反乱軍オペレーターAがホブラの方を向く。
反乱軍オペレーターA『議事堂から通信です。』
頷くホブラ。
ホブラ『繋げ。』
モニターに現れるアールアル国大統領。爆発音が鳴り響き、逃げ惑う側近達。揺れる画面。
アールアル国大統領『話が違うではなか!』
唖然とする一同。
アールアル国大統領『貴様ら!騙したな!』
一歩前に出るゴーブ。
ゴーブ『どうした?何が起こっている!!』
壁が打ち破られ、現れるメタリックな塗装がされたヴェルクーク級人型機構。眼を見開くゴブラ。
ゴブラ『あ、あれはシスヌフ達の…。』
舌打ちをするゴーブ。
ゴーブ『何をやっている。シスヌフに早く繋げろ!早く!!』
反乱軍オペレーターA『は、はい。』
アールアル国大統領を握りしめ、持ち上げるシスヌフ機。
ゴーブ『シスヌフ!何をやっている!止めろ!!』
ゴーブはオペレーターAの方を向く。
ゴーブ『まだつながらんのか!』
反乱軍のオペレーターA『は、はい。駄目です…。』
ゴーブ『シスヌーフ!!!!』
アールアル国大統領の頭を掴んでねじり切る、シスヌフ機。流れる放送。
シスヌフの声『聞こえているか!我が同胞達よ。』
歯ぎしりをするゴーブ。
反乱軍のオペレーターA『全部隊放送です…。』
シスヌフの声『今、我々が憎き独裁者を倒したのだ!』
握り拳を震わせるゴーブ。
ゴーブ『何ということをしてくれた!』
ホブラ『馬鹿な奴らだ。』
ゴーブはホブラの方を向く。
ゴーブ『目標はシスヌフ達だ!あいつらを捕まえろ!!』
頷き、全部隊通信のスイッチを押すホブラ。
C16 若気の至り END
C17 夜戦
アールアル国。破壊された議事堂の周りを調査する反乱軍の人々。議事堂を見つめるゴブラ。
反乱軍の兵士A『ひでえことしやがるもんだ。』
ゴブラは反乱軍の兵士Aの傍らに寄る。
ゴブラ『調査の状況はどうですか?』
首を横に振る反乱軍の兵士A。
反乱軍の兵士A『この近くにはいねえな。今、追跡部隊が追跡しているところだ。だが、国境から外にでれば…お終いだな。』
頷くゴブラ。
ゴブラ『そうですか…。』
駆けて来る反乱軍の兵士B。
反乱軍の兵士B『たっ、たっ、大変だーーーーーーっ!』
後ろを振り返るゴブラと反乱軍の兵士B。
反乱軍の兵士A『どうした?』
反乱軍の兵士B『どうしたもこうしたもねえよ。ロメン、メルミン、ルソタソ、ゼムド、セレノイア、が俺達に宣戦布告しやがったんだ。』
眉を顰めるゴブラ。
反乱軍の兵士A『あのクソ梨の野郎…。余計なことしやがって。』
反乱軍の兵士B『今、協議にはいってるぜ。』
夜。アールアル国。破壊された議事堂の前に立つゴーブ。周りには反乱軍達。
ゴーブ『最高責任者に選任されたゴーブだ。』
反乱軍の兵士A『よっ!皇帝陛下!』
頷くゴーブ。
ゴーブ『これより、我々は侵攻軍に夜襲を仕掛ける。オライエンはロメン、セブムレトはメルミン、ゲッツダンディはルソタソ、サルトモトはゼムド、そして私がセレノイアを攻める。斥候から得た情報に寄れば、兵力は少なく彼らの進路や時間はバラバラで連携がとれていない。幸い、シスヌフの追跡部隊が各地方面に散らばっている。我々は彼らと連携して侵攻軍を倒す!追跡部隊が陽動を仕掛ける、合図があれば我々が仕掛ける。』
ゴーブは玉璽を高く掲げる。
ゴーブ『君達には、獣魔の証を持つ私がついている。絶対に勝てる。カラカラの時もそうだった!行くぞ!!』
一同『おおーーーーーーーっ。』
ヴェルクーク級人型機構に乗り込む、ゴーブとゴブラ。ゴブラはゴーブの方を向く。
ゴブラ『…敗戦すれば、全ての責任は父さんに行く…。』
頷くゴーブ。
ゴーブ『そうだな。』
ゴブラ『それを承知で…。』
頷くゴーブ。
ゴーブ『不利だが致し方が無い。やれる事をやるしかない。』
ゴーブを見つめるゴブラ。
アルアル国国境。停止する2隻のブラブラ級起動城塞を岩陰から見つめるゴーブのヴェルクーク級人型機構軍。
ゴブラ『2隻…。』
ゴーブ『本腰は入れていない。各国ともな。混乱に乗じてアールアル国の利権を得ようとする火事場泥棒みたいなものだ。』
ゴブラは2隻のブラブラ級起動城塞を見つめる。
砲撃音。夜空に舞う閃光。
ゴーブ『追跡部隊が仕掛けたな。合図が出るまで待機だ。』
ゴーブ機がジェスチャーで、ゴーブ軍に指示する。ブラブラ級起動城塞から発進するセレノイア軍のヴェルクーク級人型機構。回頭する2隻のブラブラ級起動城塞。遠ざかる、反乱軍の陽動部隊を追いながら砲撃を繰り返す。
ゴーブ軍の近くに移動する2隻のブラブラ級起動城塞。反乱軍の陽動部隊が花火を上げる。ブラブラ級起動城塞2隻に襲い掛かるゴーブ軍。装甲を切り、艦橋を撃ち抜く。爆発するブラブラ級起動城塞。セレノイア軍のヴェルクーク級人型機構部隊は爆破するブラブラ級起動城塞の方を向いた後、国境方面へ撤退していく。セレノイア軍を見つめるゴーブ。ゴブラは機器の方を向く。
ゴブラ『あ、父さん。通信だよ。』
頷くゴブラ。
オライエン『ロメンを撃退した。』
セブムレト『メルミンを撃退。』
ゲッツダンディ『ルソタソを撃退。』
サルトモト『ゼムドを撃退。』
ゴブラ『セレノイアを撃退した。だが…。』
オライエン『ああ、2、3隻程度だろう。本気は出してきていないな。』
頷くゴーブ。
ゴーブ『方法はある。捕虜を使う。捕虜交換する条件に講和を結ぶ。』
オライエン『分かった。捕虜は丁寧に扱えということだな。』
頷くゴーブ。
ゴーブ『そうだ。』
C17 夜戦 END
C18 治世
アールアル国。TVに映る講和文章に調印するゴーブとロメン、メルミン、ルソタソ、ゼムド、セレノイアの外交官達。
ゴーブ『各国の皆さん。我々と講和を結んでいただき、ありがとうございます。我々は、ただ蹂躙し、蹂躙されたこの国を復興したいだけだ。大統領は一部の過激派に殺されたのだ。我々は実行犯を許さない。彼らを捕まえる為に各国と連携することが決定しました。』
野外のカフェでコーヒーをすするゴブラ。
女学生A『あのゴーブさんの息子さんですか?』
女学生達の方を向くゴブラ。
ゴブラ『君たちは?』
女学生B『私達、アールアル女学院の生徒です。』
ゴブラ『学生さんか。』
女学生C『すごいよね!』
首を横に振るゴブラ。
ゴブラ『父さんと僕は違うよ…。』
コーヒーを啜った後、破壊された建物を修復する人々や露天の市場が開かれ、近場の農家や漁場から運ばれる食べ物を見つめるゴブラ。
アールアル国。議事堂近くのサレモプラザホテルの大ホール。集う反乱軍の指導者達。
ゴーブ『我が国は、移民、難民、外国人に対する暴力行為とヘイトスピーチを禁ずる。』
セブムレト『それではあの外国人を野放しにするだけではないか!』
ゴーブ『前政権は、暗黒大陸連邦の甘い囁きに何の考えなしに乗り、結果として国民を無視した外国人と金持ちを優遇した政策をしたに過ぎない。悪いのは自分の利益の事しか考えない暗黒大陸連邦の企業連中であり、外国人全てに否があるわけではない。我々は野蛮人ではない。』
大歓声が上がる。舌打ちするセブムレト。彼の肩を叩く、オライエン。セブムレトは握り拳を震わせ、ゴーブを睨み付ける。ゴーブを見つめるエントロンス。傍らにはゴーブ。
エントロンス『俺も出世したと言えばしたが…。』
ゴーブ『今はレイキュラと陸地を周辺の陸地の代表者ですからね。』
頷くエントロンス。
エントロンス『しかし、ゴーブさんは偉く出世してしまったな。』
ゴーブを見つめるエントロンス。ゴブラはゴーブの方を向く。
ゴブラ『エントロンスさん。でも、父は父です。』
エントロンス『そうだな。あれだけ権力の中枢にいて…腐敗することも、暴虐になることも、腐ることもまるでない。本当にうらやましいよ。』
目を細め、ゴーブの座る椅子を見つめるエントロンス。オライエン、ゲッツダンディ、サルトモトはゴーブの椅子を目に映す。
C18 治世 END
C19 不祥事
朝。アールアル国。ゴーブの屋敷を取り囲む反乱軍に民衆達。
ゴブエ『なんだか騒がしいわね。』
ゴブラ『いったい何が…。』
眉を顰め、喉を鳴らすゴーブ。彼は椅子から立ち上がり、テラスへと向かう。反乱軍に民衆たちの後方にはオライエン、セブムレト、ゲッツダンディ、サルトモトにエントロンスが控える。テラスに出るゴーブ。
ゴーブ『これはいったい何なのだ?』
ゴーブに一斉に投げられる石。
民衆A『今まで俺達を騙しやがって!』
民衆女A『何が皇帝陛下よ!』
ゴーブを指さすエントロンス。
エントロンス『あの男は、自身が権力の座を得たいが為に俺に偽物の獣魔帝国の玉璽を作らせたのだ!』
ゴーブはエントロンスと他の反乱軍指導者達を見つめる。
ゴーブ『そうか…。』
エントロンス『俺は確かにあの男の口車に乗って玉璽を作った。だが、それは民衆を憂い手の事だ!だが、奴は権力を手中に収める為だけの行動だったのだ。今の治世も、善政を偽って、独裁制を作るための礎でしかない!奴は我々を欺いているのだ!』
ゴーブを睨み付ける反乱軍に民衆達。ゴーブを見つめるゴブエにゴブラ。
ゴーブ『…玉璽が偽物というのは本当だ。あの惨状を脱却するためにはそれしか方法が無かった。だが、俺は独裁制など考えていない!』
民衆B『嘘をつけ!』
石を投げる民衆B。
民衆C『なら、なぜ偽物の玉璽を出す必要があった。混乱を見据えたうえでの権力奪取の行動だろう!』
民衆女B『おぞましい!』
ゴーブは民衆と反乱軍を見つめ、ため息をついて自宅の中に戻り、椅子に座る。ゴーブに駆け寄るゴブラにゴブエ。
ゴブラ『父さん!それは本当なの?』
ゴブエ『あなた…。』
頷くゴーブ。
ゴーブ『…ああ。』
顔を見合わせるゴブラとゴブエ。
ゴーブ『他にどうすればよかった?国土は蹂躙され、外国人に有利な条件ばかりで裁判が行われる。蹂躙されたこの国…、故郷を救うためには他にどうすればよかったというのだ。政府も我々の声にすら耳を傾けなかったじゃないか。他にどうしろと。誰かがやらなければならないことだった。』
ゴーブを見つめるゴブラ。
ゴーブ『すまんな。』
眉を顰めるゴブラ。
ゴブラ『…父さんはよくやってると思う。それは玉璽の偽物を作ったことはいけないことだと思うけど…。この国の為に…。』
ゴーブ『こうなることは、あいつらが負け戦になりそうな時に、俺を最高責任者にしたことで分かっていた…。』
ゴーブはゴブラとゴブエを見つめる。
ゴーブ『すまんな…。つきあわせてしまって…。』
ゴーブを見つめるゴブエ。
ゴブエ『あなた…。』
ゴーブの屋敷に火をつける反乱軍と民衆たち。
C19 不祥事 END
C20 梨の花
アールアル国。燃え盛るゴーブの屋敷を取り囲む反乱軍と民衆達。ベットに座るゴーブにゴブエ。
ゴーブはゴブラの方を向く。
ゴーブ『ゴブラ。辛い事をさせてすまんな。』
ゴブラはゴーブとゴブエを見つめる。
ゴーブ『分かってる。父さんと母さんの首を…あの指導者達に渡せばいい。』
頷くゴーブ。
ゴーブ『ああ。お前だけでも助けてくれるだろう…。』
ゴブラはゴーブとゴブエを見つめる。
ゴブラ『ああ。』
ゴブエはゴーブの方を向く。
ゴブエ『そういえば、新婚旅行で見たでしょ。あの花綺麗だったわ。梨の花。』
ゴーブ『ああ、梨畑の…。』
ゴブエ『残念ねえ。今は花が咲く季節じゃないもの。最後に見ておきたかったけど…。』
ゴーブ『そうだな…。』
二人より添い、毒盃を煽るゴーブとゴブエ。盃が床に落ちる。ゴブラは彼らを見つめる。
ゴブラ『…少ししたら僕も行くよ。』
涙を流しながら剣を振りかざすゴブラ。
燃え盛るゴーブの屋敷から出て来る。ゴーブとゴブラの首を持ったゴブラ。彼を見つめる反乱軍と民衆達。
ゴブラはゴーブとゴブエの首を掲げる。
ゴブラ『…お前らが独裁者という我が父ゴーブと我が母ゴブエの首だ。』
ゴブラは反乱軍と民衆を睨み付ける。後ずさりする反乱軍と民衆達。
ゴブラ『誰かうけとるものはいないのか!』
オライエンが反乱軍の兵士Cに目くばせする。ゴブラの前まで駆けて行く反乱軍の兵士C。彼はゴブラからゴーブとゴブエの首を受け取る。
駆けていく反乱軍の兵士C。ゴブラは彼の持つゴーブとゴブエの首を見つめ、民衆と反乱軍に背を向けて、燃え盛るゴーブの屋敷に足を進める。
セレノイア王国のヴェルクーク級人型機構が現れる。ざわめき。後ろを振り返るゴブラ。コックピットのハッチが開き、降り立つセレノイア王国議長のクランケンシュタイン。
唖然とする反乱軍の指導者達。一歩前に出るエントロンス。
エントロンス『これはこれはクランケンシュタイン様。会談は明日でありましょう。』
クランケンシュタイン『早く来た。』
クランケンシュタインはゴーブとゴブエの首を見、ため息をつく。
オライエン『今は取り込み中だ。たとえ他国と言えど…。』
民衆を掻き分け、ゴブラの下に向かうクランケンシュタイン。
ハイデイル『ちょっと、お兄様!』
セレノイアのヴェルクーク級人型機構のコックピットのハッチから駆け出て
クランケンシュタインの後ろをついていくセレノイア王国議員で女性の容姿をしたヴォジャノーイの
ハイデイル。
ゴブラの前で止まるクランケンシュタイン。
クランケンシュタイン『ゴーブの息子。ゴブラだな。』
ゴブラはクランケンシュタインを見つめる。
ゴブラ『そうですが…。あなたは?』
クランケンシュタイン『私は、セレノイア王国議長のクランケンシュタイン。我々は君の才能を高く評価している。』
眼を見開くゴブラ。
ゴブラ『それはありがたい事ですが、私は父母の下に参らなくてはなりません。父母は助かることを望んでいましたが、これはけじめです。』
クランケンシュタインはゴブラを見つめる。
クランケンシュタイン『君はその才能をここで終わらせていいのか。』
クランケンシュタインに背を向けるゴブラ。
クランケンシュタイン『君の才能でこの世界で苦しんでいる人たちが助けられるかもしれないのだぞ。今の君は逃げているだけだ。』
眼を見開き、振り返るゴブラ。彼はゴーブの首を暫し見つめる。
クランケンシュタイン『我々と共に来たまえ。』
ゴブラに手を差し伸べて、頷くクランケンシュタイン。眼を閉じて、頷くゴブラ。
ゴブラ『…分かりました。あなた方がそこまで言うなら…。』
眼を開き、クランケンシュタインの手を握りゴブラ。
クランケンシュタイン『彼の身柄は我々が預かる。』
セブムレト『内政干渉だ!』
ホブラ『セレノイアがなぜしゃしゃり出て来る。我々の問題だ。』
サルトモト『そいつは殺すべきだ!我々を欺いていた…。』
エントロンスはオライエンに耳打ちする。2、3回頷くオライエン。
オライエン『セレノイア王国議長殿。その男を好きにするがいい。しかし、明日の会談、覚悟はしておけよ。』
オライエンを見つめ、頷くクランケンシュタイン。
エントロンス『セレノイアとはいい関係を続けていかないといけませんな。』
セレノイアのヴェルクーク級人型機構に乗り込むクランケンシュタインにハイデイルにゴブラ。彼らを見つめる一同。
セレノイア王国ヴェルクーク級人型機構のコックピットの内部。ハイデイルはクランケンシュタインの服を見つめる。
ハイデイル『お兄様。』
クランケンシュタイン『何だ?』
外を見つめるゴブラ。
ハイデイル『まさか、この時期に梨の花が咲くなんておもいませんでしたね。服についてますよ。』
クランケンシュタインは服についた梨の花の花弁を払い落とす。
クランケンシュタイン『辺り一面だったな。妙なこともあるものだ。』
ゴブラはコックピットの内部の床に落ちる梨の花の花弁を見つめる。
C20 梨の花 END
END
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