氷刃は月と詠から真名を受取ったのだが、
月から真名を貰った際に氷刃が握手を求めた
その時、月は顔をあからめていた。
「へぅ…///」
しかし、それを氷刃は自分の血だらけの姿だと勘違いし
すぐに謝ったのだが
当の本人は別の事に顔を赤らめただけなので
氷刃がごめんと言えば
月は慌ただしく違いますと否定するのだが
それの繰り返しで詠がそれを止めるまで何度も
互いに謝り続けていた。
その後、華雄と互いに自己紹介をした。
「私は華雄だ。あと私には真名がないのでな」
「それって一体?」
「ずっと昔に捨てただけだ…」
華雄の表情はどこか寂しげだった。
「そうか…なら俺が深く関わるべきじゃないな」
「そう言ってもらえると助かる」
その後、4人は城に向かう。
城に着いた時にはもう月が頂上まで登ろうとしていたため
話したい事が山程あったのだが
この日、一日で多くの出来事があったため
話しは明日するということで決まった。
氷刃が自分に用意された部屋に向かう途中だった。
「なあ詠、俺が預けた女の子は今どうしてるんだ?」
「あの子なら、ほかの部屋で休ませてあるわ。でも、まだ眼を覚ましそうにないから
今日はそっとしておいてあげなさい」
「ああ、そうするよ」
「あと、あんた今日初めて会った時と随分と態度が違うけどどっちが本当のあんたなの?」
「あれは人様向けの態度っていえばいいのかな。詠も知ってる通り俺は化け物みたいな
存在だから少しでもその恐怖を無くすためにしてるんだけど…やっぱり慣れない事は
疲れるよ」
「つまり、今のあんたが本当ってことでいいのね?」
「そうだよ」
「ふん、まあいいわ、今日は助けてくれてありがとね。さっさと今日は寝なさい明日は
今日以上に忙しくなるんだから」
そう言って、詠は踵を返し自らの部屋と帰った。
「ありがとうか…そんなの言われたのいつぶりだ…」
氷刃は自嘲的な笑みを浮かべると、自らも部屋へと向かった。
チュンチュン…
外では、小鳥が囀り
「どうしてなのよーーーーーーー!!!!!」
中では詠の絶叫が響き渡っていた。
「詠ちゃん、どうしたの!?」
それを聞いたは月は飛んでくるように詠の下へ走ってきた。
「ふむ、朝から賈詡は何を叫んでいる?」
華雄も詠の叫びを聞き彼女も下へ来ていた。
「どうもこうしたもないわよ!こいつが原因よ!!」
詠が指差す方へと2人は視線を向ける。
そこには昨日とは全くの別人かと思うほど安らかな顔を浮かべ
未だ夢の世界へ旅立っている氷刃の姿があった。
「御主人様がどうかしたの?詠ちゃん」
「こいつ折角、このボクが起こしに来てあげたのに全く起きないのよ。
それより、月ぇ~こんなやつのこと御主人様なんて言っちゃダメだって」
「…詠ちゃん、私思うんだ――――――――――なんだって、それでも駄目かな詠ちゃん?」
月の説得は長かった、軍師でさえその長さに途中からどうでもよくなってしまう程に…。
「…分かったわよ、月。はぁ~」
「なあ、賈詡よ、お前は氷刃を起こしに来たのではないのか?」
「そうだったわ…、華雄、一回こいつを殴ってみて力一杯でいいから。手加減なんていらないわ」
「しかし…いいのか?」
「詠ちゃん…」
詠は頭を掻きながら言う。
「とにかく、やってみればわかるわ…」
「まあ、賈詡がそう言うのならば」
そう言って華雄は氷刃に近づき、拳を振り上げ
それを地面に叩きつけるように振り下ろした。
華雄の拳は見事なまでに氷刃の顔面へと吸い込まれる。
それを見て、月は思わず目を瞑ってしまう。
振り下ろした拳を華雄はゆっくりと引き上げる。
が、そこには先程と変わらず安らかな顔をした氷刃の姿があった。
しかし、違う点をあげるとするならば、氷刃の鼻からは夥しい量の血が噴き出していたことだけを
除いて…。
「理由はわかってもらえたかしら?」
「あぁ…わかった気がする…」
「…でも、これって御主人様は大丈夫なの?」
月の言う通り、氷刃の鼻からは今も血が流れ続けているのだ。
それを見ていた月は近くにいた侍女に布を取ってくるように頼み。
持ってきて貰った布を氷刃の鼻元にあてた。
「こいつ、どうすればいったい起きると思う?」
「私に、聞かれても困ることだ…」
そんな風に途方にくれていると一人の侍女が失礼しますと部屋に入ってくる。
「董卓様、賈詡様、華雄様、お食事の準備ができました」
3人は侍女へと視線を向ける。
「わかったわ、今行くから」
詠の言葉を聞き終わると一礼して侍女が部屋を出て行った。
「さて、どうしようかしらこいつ…は…」
「どうしたの?詠ちゃん」
詠がゆっくりと手を指さす。
その先には、今までいたはずの氷刃の姿が消えていた。
「ねぇ、月…ボク今、凄く下らない展開がこのあとありそうなんだけど気のせいだよね…」
「…そんなことないと思うよ、ね?華雄さん…」
月はオドオドしながら華雄に訪ねる。
「残念ながら、私も賈詡と同様の事を考えていたところだ…」
「ご飯…行こうか…」
3人は食堂へと向かった。
そして、そこには案の定というべきなのか氷刃が一人食事を貪っていた。
尚、鼻には小さく丸められた包帯を詰め込み処置が完了していたばかりでもなく
しっかりと身支度も整えられていた状態でいた。
氷刃は食堂に入ってきた3人に気づき口に入っていた物を一気に飲み込む。
「3人ともおはよう」
しかし、声を掛けられた3人は苦笑いを浮かべていた。
氷刃は挨拶をしたあとも、3人に目もくれずに再び食事を貪っていた。
その後、氷刃の食欲にかなり気を引きながら3人は食事を済ませた。
3人より食事を速く済ませた氷刃は、侍女に場所を聞き昨日助けた少女の部屋へと
来ていた。
氷刃は、少女の寝顔を伝っていく涙を指で掬い取る。
少女の顔には未だ青痣などが目立っていたが、それも大分良くなっていた。
歳は自分のちょっと下くらいだろうか、栗毛色の長い髪が特徴的な子だった。
ゆっくりと割れ物を触るように少女の頭を撫でる。
「ひとつ、教えてあげる。その子はねもう家族はいないわ。あの賊に襲われた時に全員殺されたみ
たい…。
あんたはその子をどうするのよ」
「食事、終わったんだな」
部屋の入口には詠が立っていた。
「あんたもおかしな人だよね、さっきは目を輝かせて食事を食べてるかと思えば
今は悲愴な顔浮かべているんだもん」
「仕方ないだろ、俺は少し壊れているんだから…」
「まぁ、そんなこともうわかっているからいいけど。実際この子をどうするの?」
「詠、この子をお前が面倒を見てくれないか?」
「ちょっとあんたそれどういうことよ!?」
氷刃は詠へと視線を向ける。
「この子の母親を殺したのは俺のようなもんだからさ…。この子の母親が殺されそうになった時
実際俺は、助けようと思えば助けれたんだよ、この子の母親のことをね…
でもそれを俺はしなかった。
俺は、この子の母親をこの世界が別世界だって理解するために利用したんだ、実際そのお陰で
ここが俺がいた世界とは別だって理解したんだ。だか「ッ!氷刃!!」ら…」
氷刃は後ろに人が動く気配に気づき後ろを振り返る。
そこには、こちらを自らの真紅の瞳に怒りを映しだしこちらを睨み
目に涙を溜めいた少女がいた。
「お前が!お前が助けてくれれば母様は…母様は死なずに済んだのに!!!」
そう言って少女は寝台から立ち上がり裸足のまま駆け出す。
だが、氷刃は動こうとしない。
「ちょっと、あんた何突っ立ってるのよ…早く追いかけなさいよ!」
「だけど…」
「…ッ!だけどもない!あの子は今この世界にたった一人なの。あんた言ったわよね
俺があの子の母親を殺したって、だったらその責任をとりなさい!あんたがあの子の
支えになりなさい!それとも、あんたはあの子の母親だけじゃなく、あの子まで殺そ
うっての?この世界はね子供一人で生きていくのに優しい場所じゃないのよ!」
詠は鬼気迫る勢いで言葉を続ける。
「あんただって考えればわかるでしょ?子供が一人で生きていく難しさが!!!
…だから、…だからあの子を一人にしないで…お願いだから」
しかし、最後には懇願のように変わっていた。
氷刃は無言で頷き少女の後を追った。
少女は城を抜け城下町にまで来ていた。
足は傷だらけになっている。
当たり前だ。裸足で走ってきたのだから
…私が目を覚ました瞬間、信じられないことを聞いてしまった。
この子の母親が殺されそうになった時、実際俺は助けようと思えば
助けれたんだよ、この子の母親のことをね。でもそれを俺はしなかった。
私は信じられなかった。
助けれる命を助けなかった…。
もし、あの時と考えると余計、悲しみと怒りが込み上げてる。
ポンッ…
肩に何かが乗る。
振り返れば私の母様を殺した奴がいた…。
「やっと、見つけた。お願いだ…一度城に戻ってくれないか?」
ふざけるな…
「どうしても、君に聞いてほしいことがあるんだ」
私に触れるな…
「お願いだ、一緒に来てくれ」
お前の顔なんか見たくない…
気付いたら私はあいつを突き飛ばし再び走り出していた。
足がいくら傷つこうと関係ない。
とにかく、走り続けた。
息が切れても、体力が無くなっても走り続けた。
一体どのくらい走ったのだろうか、いつのまにか路地裏に入ってしまったようだ。
城を抜けてから我武者羅に走っていたからわからなかったのだろう。
一度、腰を降ろし休むことにした。
だが、これが間違いだった。
気付いた時には何人もの柄の悪い男達に囲まれていた。
私の母様をそして、私を嬲り続けた男の姿が被る。
体が震え、助けを呼ぼうにも力が入らない。
「ヘヘ、お譲ちゃんこんなところに一人で来ちゃだめじゃないか」
下卑た笑いを浮かべ近づいてくる。
こんな世界、腐ってる…。
どうして私だけがこんなめに合わなければならない
何故こんなにも嫌な思いを知らなきゃいけない
苦しみを味わなければならない
どうして…どうして…
「いや…離して…」
男が私の手を掴んでくる。
足掻こうとしても力がはいらない。
こんなやつらに穢されるくらいならいっそ死んでしまいたい。
力が入らないのは分かってる、それでも必死に抵抗する。
「チッ!暴れるんじゃねぇよ!」
男が私が身動きをできなくするように首と体を抑えてくる。
私は男の腕に噛みついた。
「ッ!!」
男が私を手放す。
地面を這うようにして男達から逃げ出す。
「このガキ!殺してやる…、オイ、それを貸せ」
別の男から槍を奪い私に近づいてくる。
嫌だ…
来るな…
来ないで…
誰か…誰か助けてよ…
男が槍を構える。
私は目を閉じた。
おかしい…、いくら経っても予想してた痛みがこない
私は恐る恐る目を開く。
そこにはあいつがいた。
私の母様を見殺しにした奴が…
私に覆いかぶさるようにして守ってくれていた。
そして、その肩には槍が深く突き刺さっていた
「どうして…どうしてお前が私を助けるのよ!」
「ある人に言われたんだ。
あんたが君のお母さんを殺したと思ってるなら俺が君を支えてあげなさいって…。
俺もそう思う…。
こんなことでしか罪を償えないと思う。
でも、そんなの君にしちゃふざけるなって思うよね…
それでも、俺は君に赦しを貰うまで、謝り続ける。
罪を無くしてほしいなんて言わない、これは俺が背負わなきゃいけない物だから誰かに
取り除いてもらえるものじゃないから。
でも、君の心を軽くすることはできる!
そのためだったら俺は命を賭けてでも君を守る。絶対に!
だから、言うよ…
君のお母さんを見殺しにしてしまってすみませんでした…」
どうしてよ…。
どうしてそんなこと言うのよ…。
「…だったら…だったら私は誰を恨めばいいのよ!?」
「さっきからゴチャゴチャと何言っ「だまれっ!!!」て…」
男は氷刃の肩に突き刺さっている槍から手を放し後ずさる。
「だったら、誰も恨まなければいい。ただ幸せを感じていればいい…
これも俺の身勝手な願いだと思う。でも…
そのためにも俺はなんだってする。だから、人を恨みながら生きる
なんてことはしないでくれ…」
そんな風に体を張って…
そんな必死な顔で…
そんなことまで言われたら…
あんたのこと許しちゃいそうになるじゃない…
「いいよ…まだ全部許した訳じゃない…だけど、それでもほんの少し許してあげる…」
「ありがとう…」
氷刃が頭を下げる。
「言いたいことは全部おわったか?」
気付けば、何人もの男の仲間が私達を完全に囲んでいた。
その数はさっきの比ではなかった。
「立てるかい?」
そんな中、氷刃は何事もないように声をかけてきた。
「ねぇ…どうするのよ…」
「安心していいよ、さっきも言ったけど君には傷一つつくことはないから」
不思議とその言葉は信じられるような気がした。
私は差し出された手を握り立ちあがった。
氷刃はゆっくりと私の手をとり歩き始めた。
きっと私を気遣ってくれているのだろう。
「さっきからお前は何様なんだよ!!」
男が自らの剣を持ち飛びかかってくる。
そして、その仲間達も一斉に飛び出した。
しかし、氷刃は自らの肩に刺さっていた槍を引き抜くと
一度、私の手を放しその槍を横に払った。
それだけで、敵の半分が吹き飛ばされる。
「良かったね、この子がいて…いなかったら俺は間違いなくお前たちを殺していたよ…」
氷刃が男たちに言葉を残す。
そして、槍を持ち直し、再び私の手を取って歩き始めた。
敵は私達を追ってくるようなことはしなかった。
城に帰る途中、安心したからか私は体中の力が抜けてしまった。
「ちょっとごめんね」
そう言って氷刃は私を抱き上げた、世に言うお姫様抱っこという形で
しかし、ここは天下の大通り余りにもこれは恥ずかしいものだった。
「ちょっと、降ろしなさいよ」
「だって、降ろしたらあるけないでしょ?」
「そうだけど…」
「…ねぇ、名前なんて言うの?」
「俺は、結城 氷刃」
「ゆうき姫?」
「違う違う、結城 氷刃。性が結城で名が氷刃だよ」
氷刃はほんの少し微笑んでいた。
「わたしの名前は凌統、字が公積、…真名が愛華よ」
「…いいのか?俺なんかに真名を教えて」
「たしかに氷刃は、私の母様を見殺しにしたけど…私のことを
2回も助けてくれた。これでもう充分よ」
こんな風にまだ、ぎこちなさが残っていたがそれも城に戻るまでには
なくなっており。
後日、氷刃は正式に愛華に謝罪をおこなった。
その後、氷刃は月に詠の昔のことについて聞かされた。
詠は元々名のある家の子だったのだが、両親は暗殺され
一人、途方に暮れたそうだ。
そして、仲が良かった月の家が彼女を保護したときには
詠は痩せ細っており、とても危ない状態だったそうだ。
だから
この世界はね子供一人で生きていくのに優しい場所じゃないのよ!
あんただって考えればわかるでしょ?子供が一人で生きていく難しさが!!!
あんなことを言っていたのだろう。
自分の昔の姿と愛華の姿を重ねて。
あとがき
真・恋姫無双~For your Heart~第4話いかがでしたでしょうか?
今回、新たなオリキャラとして凌統をだしてみました。
正史では、凌統は親を甘寧に殺されてますが。
その親の殺し役を氷刃に押し付けてみましたw
今後、凌統こと愛華にはいろいろなところでがんばってもらおうと
思います。
そこで、ここでひとつ予告を
設定では愛華はヤンデレである!!!!
と、まあ作者の戯言は置いといて、今回も最後まで読んでいただきありがとうございます
それではまた次回wよろしくおねがいしま~す><
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4話目の投稿となりました><
今回は前の戦いで救った少女を中心に書いてみました。それではどうぞ!