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真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第八十回 第五章A:御遣処刑編⑨・御遣いには一度死んでもらうのが良いかと思います

stsさん

みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして!

さて、今回は曹操軍メインのお話です。

一刀君がいったいどういうことになっているかが明かされます。

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2015-12-20 00:00:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4283   閲覧ユーザー数:3518

 

――――――一刀は、死んでない・・・

 

 

 

<―――でも大丈夫、オレは死なない。というか死にたくないし、恋たちとずっと一緒にいたい>

 

 

 

――――――一刀は言った・・・死なないって・・・だから、一刀は、死んでない・・・

 

 

 

<だから、必ずこの乱世を生き抜こう。みんな、誰ひとりかけることなく>

 

 

 

――――――月の時は、恋が落ち込み過ぎたから・・・仲間がもっと、死んじゃった・・・けど、今度は、誰も死なせない・・・恋が、

 

しっかりしないと・・・ちゃんと、笑って『おかえり』って、言うために・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

【豫州、潁川郡、許城】

 

 

時は少しさかのぼり、城下の広場で偽天が公開処刑された数日前の事。

 

ここは曹操の本拠地許城の謁見室。

 

そこには、本来いるはずの献帝の姿は今はなく、代わりに部屋の最奥には一人の少女が座っていた。

 

金髪のウェーブがかったツインテールを、スカルを模した銀の髪飾りで結い、紫紺を基調にした服に紫のスカートを穿いている。

 

その碧眼から圧倒的な覇王のプレッシャーを放つその少女の名前は曹操である。

 

 

 

曹操「はぁ、まったく、あのちびっ子はなぜいつも勝手にウロチョロしているのかしら?まぁ、今はその方がやりやすいのだけれど」

 

 

 

曹操は少しも恐れるそぶりも見せず、平気な顔で献帝をちびっ子と称すると、うんざりしながら嘆息していた。

 

 

 

曹操「もう待っていても戻って来ないでしょうから、さっさと本題に入りましょう」

 

 

 

そして、通常であれば、国政にかかわる重大な話をするときは献帝も同席することになっているのだが、

 

戻って来る気配がないため、そのまま曹操は話を進めることにした。

 

曹操軍の面々が注目する中、部屋の中央には北郷が縛られた状態で跪かされていた。

 

 

 

曹操「あなたと話すのは下邳以来、これで2回目かしら?」

 

北郷「・・・・・・・・・」

 

 

 

曹操の問いかけに、しかし北郷はきっぱりとだんまりを決め込んでいるのか、或は、

 

曹操の絶対的な覇気に当てられ何も答えられないのか、どちらにせよ、何も反応もなく、ただ曹操を睨み付けていた。

 

 

 

曹操「ふふ、怖い顔ね。別に取って食おうという訳ではないわ。あなたに聞きたいことがあるの」

 

北郷「・・・・・・・・・」

 

 

 

北郷の反抗的な無反応に、曹操は嗜虐的な笑みを浮かべると、構わず質問を続けた。

 

 

 

曹操「あなた、かつて下邳で私の頭痛を言い当てたわよね?そもそも、あの時我が軍の兵糧不足を看破したのも、恐らくはあなたの入れ

 

知恵ね?それに、合肥ではこちらの絶望的な戦況を聞いても一切驚く素振りも見せず、むしろ、まるで知っていたかのような様子だった

 

という報告を受けているわ」

 

 

北郷「・・・・・・・・・」

 

 

 

曹操の一方的な語り掛けに、北郷は依然沈黙を貫くが、その内容の方向性から何か嫌なものを感じ取ったのか、

 

こめかみ辺りから一筋、冷たいものが垂れ落ちていた。

 

 

 

曹操「そして、極めつけはあなたが成都領主に就任して以来、成都近辺で使われ始めたと思われる聞き慣れない言葉の数々、すたいる、

 

つんでれ、つりいくらいみんぐ、くおりてい、てら・・・実に興味深いわ」 

 

 

北郷「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

止まることのない曹操の不穏な語りに、北郷の嫌な汗は、徐々に全身へと波及していく。

 

 

 

曹操「これらの情報を整理すると、一つの仮説が浮かび上がる」

 

 

 

そして、ついに曹操の口から決定的な言葉が飛び出した。

 

 

 

曹操「あなたには、何かしらの方法で未来を見る能力があるか、或いは、私たちの想像をはるかに超えた、文明の発展した未来の世界に

 

おいて、過去の世界へ戻る技術が存在するのであれば、あなたは未来人であるとも考えられる。前者であれば未来予知でそれらのことは

 

知り得たでしょうし、後者であれば、今のこの時代は過去、歴史上のことになるのだから知っていても何ら不思議ではない。まぁ、史上

 

に残るような乱世であるというのは喜ばしくないのでしょうけれど。それに、聞きなれない言葉も未来において生まれた言葉というので

 

あれば説明がつくでしょうし。どう?」

 

 

 

その刹那、北郷は内臓すべてを掻き回されたかのような嘔吐感を覚えた。

 

全身から嫌な汗が噴き出す。

 

 

 

北郷(近い・・・というより、ほとんど当たってる・・・曹操のやつ、いったいどういう頭をしているんだ・・・!?)

 

 

 

肝を冷やすなどという表現すら生易しい。

 

この世界において、北郷の本質にたどり着こうとする人物など本来いるはずがないのである。

 

当事者たる北郷ですら、なぜ自分がこの世界にいるのかすら分かっていないこの現状を、

 

しかし曹操は、わずかな状況から分析し、そしてことの真相に仮説のみでたどり着こうとしているのである。

 

 

 

曹操「どうしたの?先ほどから私ばかり話しているじゃない。そろそろあなたの話も聞きたいのだけれど?」

 

 

 

曹操の表情は穏やかなものだが、しかし、その瞳が放つ強烈な覇気は簡単にあらがえるような代物ではない。

 

さらに、先ほど曹操に本質を言い当てられたことも相まって、ついに北郷は観念して重たい口を開いた。

 

 

 

北郷「曹操、あんたに話すことは何もない。オレは呂布軍の天の御遣い。ただ、それだけだ」

 

荀彧「この無礼者!あんた、自分の置かれている立場というものが理解できていないようね!」

 

 

 

しかし、観念したと言っても全面的に降参したわけではなく、北郷がようやく口を開いたかと思えば、

 

出てきたのは不遜極まりない不愛想なものだっただけに、曹操の隣に控えていた荀彧は目を三角にして憤慨した。

 

 

 

曹操「呂布軍の天の御遣い、か・・・北郷一刀、一つ聞くけれど、あなたの目的は乱世を鎮めることではないかしら?」

 

北郷「・・・・・・・・・」

 

 

 

曹操の再度の問いかけに、その真意をつかみあぐねた北郷はひとまず再度だんまりを決め込む。

 

 

 

曹操「単刀直入に言うわよ。北郷一刀、私のモノになりなさい。あなたの天の力があれば、私が天下を治め、やがて太平の世が訪れるわ。

 

もちろん、呂布ほか関係者にも手出しはしない。まぁ、あなたが私のモノになれば、呂布達も我が方に従うでしょうから手を出す必要は

 

なくなるでしょうし、天下を治めるのも早まるわ。あなたは乱世を終わらせるために天からやって来たのでしょう?だとしたら、呂布に

 

拘る必要はないのではないかしら?」

 

 

 

すると曹操は、回りくどい言い方などせず、率直に北郷に降るよう宣告した。

 

天の御遣いの本分が太平の世を生み出すことであるのなら、何も呂布軍で実行しなければならないことはなく、

 

自分の下でもよいのではないのかというのが曹操の主張である。

 

 

 

北郷「君には分からないさ、力でねじ伏せて作り上げた太平の世なんてのは、本当の平和とは言わない。覇道の先にあるのは、虚しさと

 

争いの再発だけさ」

 

 

 

しかし、今回の北郷の答えはすばやく、そしてはっきりとしたものであった。

 

北郷ははっきりと曹操の勧誘に対してNOを突き付けた。

 

 

 

曹操「ならあなたは劉備と同様、誰の血も流さずして太平の世を築くなどと言い出す愚か者なのかしら?」

 

 

 

北郷の物言いに引っかかるところがあったのか、曹操は北郷が部屋に連れられて以来、初めて不機嫌そうな表情をした。

 

 

 

<己が覇道のために何でも力でねじ伏せて。そんなことでは天下は統一できませんよ?>

 

<力でねじ伏せた上で成り立つ天下に平和は訪れません。本当の平和とはそのようなものに頼ってはいけないと思います>

 

 

 

頭を一瞬よぎったのは、かつて虎牢関で自身が葬った、哀れな少女の光の灯った憎らしい顔。

 

 

 

北郷「そこまでは言わないさ。平和な世界っていうのは、多くの犠牲の上に成り立っていることぐらい、オレも分かっているつもりだ。

 

オレが言いたいのは、君みたいに、従わないやつらがいれば、不必要な争いの種をばらまいて、強引に戦いに持ち込んで、無理やり力で

 

ねじ伏せようとするようなやり方で作り上げた太平の世なんて、長く続かないってことだ。報復仇討仕返し、それで結局乱世に逆戻りだ。

 

オレ達はそんな仮初の太平なんて望んでなんかいない」

 

 

 

今となっては、北郷は曹操の覇気に当てられながらも、しっかりと自身の主張を言えるようになっている。

 

この状況下においてこのようなことができるのは、それほど、

 

ここは北郷にとって絶対譲れない、そして退けないところであるからに他ならなかった。

 

 

 

曹操「・・・なら、あなた達ならどうするというの?参考程度に聞かせてくれないかしら?」

 

 

 

すると、北郷の主張を聞いた曹操は少し考え込むと、やがて北郷の意見を求めた。

 

曹操の表情は不機嫌なものから元の落ち着いたものに戻っている。

 

 

 

北郷「もちろん刃を向けられたらこっちも応戦するし、仲間から武を求められたら武で応じる。けど、それは本来最終手段のはずなんだ、

 

いや、そうでないといけないんだ。力に頼るのは手っ取り早いかもしれないけど、そうならない方法をできるだけ考えるのが、上に立つ

 

奴の義務なんだとオレは思う。そうだな・・・時間はかかるかもしれないけど、例えば本領には手を出さないとか、何か物資で便を図る

 

とかいった条件を出すとか、もっと外交を上手く使ってできないかって思うんだよ」

 

 

 

北郷は曹操の求めに、言葉を慎重に選びながら答えていく。

 

下手に飾った言葉を並び立てたところですぐに見破られる。

 

ならば、逃げも隠れもしない、正直な思いをぶつけるだけ。

 

北郷はそのような思いの元、自身の主張を直球で曹操にぶつけた。

 

 

 

曹操「ふふ、それだとあなたの言う通り時間がかかりすぎるわね。そんなに乱世を長引かせれば、すぐに大陸中が疲弊して、再起不能に

 

なるわよ?私はそうなることを避けるために、覇を唱え、力で以てして、早急に乱世を終わらせようとしているということも、武に頼る

 

一つの理由としてあるのだけれど、そのことについてはどう考えるのかしら?」

 

 

北郷「そ、そんなの、武力に頼ったって結局大陸中が疲弊するんだから同じ―――」

 

 

曹操「そうね、同じかもしれないわ。なら、どの道同じなら時間的にすぐ済む武に頼った方が、あなたの言うような時間がかかるやり方

 

よりも被害も軽く済んで良いのではなくて?」

 

 

北郷「そ、それは・・・」

 

 

 

しかし、北郷の渾身の主張をあっさりと返され、逆に質問された北郷は、さらに反論するも、

 

途中で追い打ちをかけられ、結果反論を続けられず、どもってしまう。

 

いくらこの世界に来て何年も一国の主をしてきたとはいえ、かつてはただの高校生。

 

とても、曹操とサシで議論を交わすことなど無理な話であり、言葉を返せなくなった北郷の、

 

精神的隙が出来たところで再度曹操の覇気に当てられ、風船のようにしおしおと縮こまってしまった。

 

 

 

曹操「ふん、お話にならないわね」

 

 

 

そのような北郷の様子に興が冷めたのか、曹操は鼻で笑って一蹴すると、議論を強制的にやめさせた。

 

 

 

曹操「・・・とにかく時間をあげるわ。牢でじっくり考えることね」

 

北郷「・・・・・・・・・」

 

 

 

そして、北郷に時間的猶予を与えると、兵に命じて部屋から牢へと連れ出させた。

 

 

 

 

 

 

曹操「桂花、北郷をどう見る?」

 

 

 

北郷が部屋から連れ出されたのち、曹操は開口第一に、北郷についての感想を荀彧に求めた。

 

 

 

荀彧「は、やはりヤツは処刑すべきです。あのような訳の分からない輩の力を借りれば、いずれ足元をすくわれます。現時点で華琳様は

 

天の力などに頼らずとも十分天下を掴むことができます。なら、不確定な力を別所で燻らせておくよりも、いっそのこと天の力をこの世

 

から消滅させることこそ、華琳様の覇道の一助になるかと」

 

 

曹操「・・・・・・風はどう?」

 

 

 

荀彧が一礼すると共に、北郷の力は不要であると主張したことに対し、

 

曹操は一呼吸おいてその内容の裏の意図も含め十分に咀嚼すると、今度は程昱に意見を求めた。

 

 

 

程昱「処刑は早計すぎますねー、たとえ協力しないにしても、御遣いにはまだ人質としての利用価値がありますー。特に御遣いの勢力は

 

今や我ら、孫策らに次ぐもの。御遣いを人質として我らが抱えているだけで、こちらは孫策軍に集中することができるのですよー」

 

 

 

程昱もまた一礼すると、北郷は人質として利用するために殺すべきではないと主張した。

 

 

 

荀彧「あんなブ男、人質としての価値なんてないわ。あの憎たらしい顔、仲間たちからも嫌われていたでしょうし、人質にしてもきっと

 

無視されるに決まっているわ」

 

 

 

そのような程昱の主張に対して、荀彧はほぼ私情のみで構成された本音を思わず口にしていた。

 

 

 

曹操「ふむ・・・稟、あなたはどう?」

 

 

 

そのような荀彧の発言をスルーしながら程昱の言葉をじっくり吟味し、さらに郭嘉にも意見を求めた。

 

 

 

郭嘉「は、私は御遣いには一度死んでもらうのが良いかと思います」

 

曹操「一度?それはどういうことかしら?」

 

 

 

郭嘉の言葉の意図するところが理解できず、曹操は素直に聞き返した。

 

 

 

荀彧「なるほど、あのブ男は何度でも死んでしかるべきだけれど、まずは一回死ねという―――」

 

曹操「桂花、本当に怒るわよ?」

 

 

 

曹操が真剣に話をしている時に、荀彧が私情をダダ漏れさせた茶々を入れてしまったため

 

(本人はいたって真面目に言っているつもりだが)曹操は割と本気で冷めた視線を荀彧に浴びせながら荀彧を黙らせた。

 

 

 

荀彧「か、華琳さまぁ」

 

 

 

しかし、その人の心を容易にへし折れる曹操の視線に、

 

荀彧は思わず恍惚の表情を浮かべてしまうが、曹操は無視して郭嘉に構わず話すよう促した。

 

 

 

郭嘉「私も風と同様、すぐに殺すのは早計かと思います。ですが、人質としての利用価値ではなく、私は天の力そのものをもっと重要視

 

するべきかと思います。しかし、一方で捕えた大将をただ生かしておくのはあまりよくないのも事実です。確実に我が軍に降る見込みが

 

ない限り、中途半端に生かしていては兵たちにも民衆にも示しがつきません」

 

 

 

そして、郭嘉は荀彧の普段通りの茶々や曹操に対する反応に対して何も触れることなく、淡々と持論を展開していく。

 

 

 

郭嘉「つまり、天の御遣いと銘打った偽者を処刑することで、一度御遣いという存在にこの世から消えてもらい、表向きの体裁を守り、

 

かつ、本物の御遣いにはゆっくりと時間をかけて協力を仰ぐのです。ただし、こうすれば、表向き御遣いは死んでいることになるので、

 

風の言うような人質として利用することはできませんが、曹孟徳という人物は天の御遣いであろうが殺すことができるほどの存在である

 

と世間に知らしめることができます。この効果は絶大であり、我らにとって非常に有益であると私は考えます」

 

 

曹操「その場合、御遣いがこちらに降ることを断固として拒否した場合、本物も殺すということかしら?」

 

 

郭嘉「はい、もし御遣いがいつまでたっても頑なに協力を拒否するのであれば、そのまま獄死してもらうほかないでしょう。そうすれば、

 

天の力もなくなるわけですし、華琳様にとっての脅威はなくなります」

 

 

 

つまり、3人の軍師たちの論をまとめると、未知数の天の力を世に残して後顧の憂いとするくらいなら、

 

さっさと殺した方がいいと唱える荀彧と、人質として生かすべきだと唱える程昱、

 

御遣いという存在は殺し、その能力のみを利用しようという郭嘉といったところか。

 

 

 

曹操「・・・・・・・・・なるほど、今あなた達の意見を聞いて率直に思ったことが二つあるわ」

 

 

 

すると、曹操はしばらく口元に手を当てて思案すると、やがて頭に浮かんだことを率直に口にした。

 

 

 

曹操「まず一つは御遣い、或いは偽物の御遣いを処刑すること。その時の北郷軍の反応が気になるわ。まあ、仇討と逆上して考えなしに

 

突っ込んでくるようならまだしも、怒りを胸の奥底にひそめ、冷静に準備を整えた後、しかるべき機を見て行動されては厄介よ?」

 

 

荀彧「その心配はないのではないでしょうか。少なくとも、かつて主たる董卓が討たれた際、呂布が完全に生気を感じられなかったのは

 

華琳様もよくご存じの通りです。今回の場合も、同様に戦意を喪失していて、逆上云々以前の問題だと思います」

 

 

郭嘉「私もそう思います。呂布の精神は案外脆いと思われます。それに、益州には他に張遼や厳顔、魏延といった血の気の多い将も多い

 

ですし、逆上して無暗に攻めてくれればこっちのものです。陳宮や高順といった冷静な部類の輩もいますが、いくら筆頭の陳宮が冷静で

 

あろうとも、それら多くの将を抑えられるほどの実力があるとも思えませんし問題ないでしょう。そもそも、彼女達はチョコに手も足も

 

出ず目の前で御遣いを拉致されているわけですから、冷静でいられるかすら疑問ですが。なので、上手くいけば御遣いの処刑によって、

 

益州勢を無力化できるかもしれません」

 

 

 

曹操の率直な疑問に、しかし荀彧と郭嘉はそれぞれ問題ないことを説明し、

 

むしろ処刑することが曹操軍にとってプラスになる可能性があると主張した。

 

 

 

曹操「ふむ、風はどう?」

 

 

程昱「呂布の精神が脆いことには同意なのですが、当時から時間が一定経過していることが懸念材料ですかねー。呂布の発言力は大きな

 

ものでしょうし、万が一、精神面の弱さを克服されていたら、冷静に我が軍に楯突くきっかけを与えることになるですー」

 

 

 

曹操は荀彧と郭嘉の主張を頭の中で咀嚼した上で程昱の考えも尋ねたが、程昱は呂布の精神面克服の可能性が懸念であると補足した。

 

 

 

曹操「なるほどね・・・そしてもう一つ。これは今更なのだけれど、時期の問題よ。今回、御遣いがたまたま国外にいて、しかも、護衛が

 

少なかったから、狙う好機ということで、すぐ実行に移したけれど、本来、今は南下政策の大事な時期。人質なら取り返しに、処刑なら

 

報復として、南下で本国が手薄な時に北郷軍が攻めて来るのはあまり好ましいとは言えないし、何かしらの策を講じるべきではなくて?」

 

 

 

そもそも、本来であれば今は南の孫策・劉備に集中するべき時であり、

 

涼州を攻めたのも、南下中に本国を攻められないよう先手を打って負傷させるのが目的であった。

 

そして今回、たまたま北郷軍がその時援軍として到来し、

 

さらに、呂布・張遼という北郷軍の主力が北郷を置いて先に本国に帰国したことにより、

 

北郷の周りが手薄になったということが重なっての、郭嘉の北郷誘拐案なのである。

 

つまり、北郷誘拐は曹操軍にとっては突発的なことであり、南下構想には入っていないイレギュラーなことであり、

 

南下中に本国を突かれるのは当然好ましくない。

 

これでは、何のために涼州を先に攻めたのかわからなくなってしまうのである。

 

 

 

郭嘉「それについても問題はないものと思われます」

 

 

 

しかし、それでも郭嘉は一切表情を変えることなく冷静に問題ないと主張した。

 

 

 

曹操「どういうことかしら?」

 

 

郭嘉「我が軍は袁紹軍、張繍軍、青洲兵、劉表軍、董卓軍残党、烏丸族といった多くの勢力を傘下に加えることで、現在20万を裕に超す

 

兵力を有しておりますが、その大半を南下に向けるとしても、国の防衛に残す兵だけで存分に戦えます。成都・涼州が仮に同盟を組んで

 

攻めてきたとしても、潼関での被害を考慮すれば、せいぜい多くて5万も集まればよい方でしょう。官渡、合肥と寡兵が大軍に勝つ例は

 

ありますが、それが常ということではありません。慢心さえしなければ返り討ちにできます」

 

 

荀彧「さらに、我が軍が南下をすることにより本国が手薄になるという状況は、敵をおびき寄せる餌とすることも可能です。敵が怒りに

 

任せて攻め込むのなら、荊州方面を劉表に封鎖させ、司隷方面の道に誘導し、函谷関辺りまでおびき寄せ、そこで背後、南から劉表軍ら、

 

北から烏丸族に伏兵として当たらせ、函谷関にいる兵と合わせて三方から挟み撃ちにすることもできます」

 

 

程昱「御遣いは我らの手中にあるのですから、殺すも生かすも、遅かれ早かれ成都勢が死にもの狂いで本国に攻め込むのは必定ですー。

 

たとえ好ましくなくとも、攻めてくると分かっているのなら、こちらはそれ相応の準備さえしておけば心配することはないのですよー」

 

 

 

郭嘉が問題ないという持論を展開すると、荀彧・程昱もまた同様にそれぞれの視点で問題ないという持論を継ぐように展開した。

 

三者三様意見は異なるのだが、この件については、ある一定意見の足並みはそろっているようであった。

 

 

 

曹操「・・・・・・わかったわ。では、御遣いの今後の処遇についてだけれど、稟の考えを採用して、偽の御遣いを処刑し、北郷の協力を

 

もう少し待つことに決めたわ。やはり天の力はまだまだ興味深いことが多いし、利用できるものは利用させてもらう。なら、人質などに

 

するよりも、その名前を大いに利用させてもらうわ。仮に、呂布が精神面を克服して我が軍に冷静に対応してきたとしても、その障害を

 

跳ね除けて私は己が覇道を邁進する。桂花、城下に天の御遣い処刑の触れを出しなさい。ある程度領内に噂を広めるのも忘れないで。

 

稟は偽の御遣いの手配を、死刑が決定している罪人から御遣いと体格の似ている者を用意なさい。風は大広場に処刑場の手配をお願い」

 

 

三人「「「御意!」」」

 

 

 

そして、一呼吸おいて思案した曹操は、やがて郭嘉の策を採用する決断を下し、三人にそれぞれさっそく行動に移らせた。

 

曹操が行動指針を決めてからは、策を採用されなかった荀彧と程昱は特に反論することはせず、すぐに曹操の命に従い行動に移った。

 

曹操の判断に対する絶対的信頼。

 

それが全てであった。

 

三人の軍師たちの迷いなき返事の声が、室内に木霊した。

 

 

 

【第八十回 第五章A:御遣処刑編⑨・御遣いには一度死んでもらうのが良いかと思います 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

第八十回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

今回でAパートが終了、そう思っていた時期が私にもありましたスイマセン、、、汗

 

さて、ようやく一刀君処刑の真相を描くことが出来ました。ここまで来るのに長かったです。

 

いかに一刀君が本当に死んだように思わせるか、でも思わせたら思わせたで、

 

一刀君殺すとかマジないわとか思われる方も多いでしょうし、結局生きてるんでしょ臭をかすかに漂わせる。

 

この辺りの塩梅が難しいところでして、上手いことで来ていたでしょうか、、、汗

 

 

さて、次回でパートAはラストでございます。今度こそ終わる詐欺ではありません。

 

その後は小話を1,2回時間稼ぎに入れつつ、Bパートに入る前に残念なお知らせという流れが濃厚な予感 汗

 

年末年始の休みが勝負所です 汗

 

どちらにせよ御遣い伝説前半戦のクライマックスですので、最後まで蒸発せず突っ走りたいので、どうぞお付き合いくださいませ。

 

 

それでは、また次回お会いしましょう!

 

 

 

一刀君、君が無駄知識を成都中に広めるから、、、笑

 


 
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