「ストーカー?」
「そうなの、ここんとこ酷くてさ~。美女の宿命ってやつ?」
「馬鹿を言え、どうせ秋穂の勘違いだ」
矢崎は喫茶店の一角で向かいに座る女性に悪態をついた。
「あ~、彼女に向かってそんな事いうんだ~」
栗色のロングヘアーと小さな眼鏡が印象的な女性は少し不満そうな顔を矢崎に向けた。
「で、そのストーカーをどうにかしてくれと?」
「そそ、おねが~い」
両手を合わせて矢崎に頭を下げる。
「ふぅ・・・、わかったよとりあえずそいつをどうにかすればいいんだな?」
「あ、でも傷つけたりしちゃダメだよ?」
「わかってるよ、お前の前で人を傷つける真似はしないさ」
「私の前じゃなくてもダメなの!」
突然張り上げた声に周りの客の視線が集まる。
秋穂は真っ赤になって席で縮こまっている。
「さて、どうしたもんか・・・」
その夜、矢崎は秋穂の自宅周辺を警備して回っていた。
「ほんとにいるのかね?ストーカーなんざ」
11月の末日、寒い中を歩きながら矢崎はぼやく。
「一応依頼だし、報酬ははずんでもらわにゃな」
そう言って歩を進めると後ろから伸びる影が矢崎の影に重なった。
「!?」
瞬間首筋に冷たい感覚が走った。
矢崎は咄嗟に体を前に転がす。
金属バットがさっきまで矢崎の頭があった空間をなぎ払う。
「昼間、彼女に会ってただろう?お前はあの子の何だ?」
バットを片手に男は矢崎を威嚇する。
「少なくとも、お前が思ってる関係だ・・・よ!」
起き上がりざまに思い切り男を殴り飛ばす。
(正当防衛はありだよな・・・)
「ふざけるな!!彼女はお前なんかに釣り合う女性じゃない!」
「それはあいつが決めることだ、お前には関係ないだろう?」
「彼女の幸せを思ってこそだ!!!」
「そういうのエゴっていうんだよ!!!」
振り下ろされたバットをかわしカウンターの拳を叩き込む。
「ぐぅ・・・」
男は苦しそうに片膝をつく。
「鍛えがたりねぇぞ?」
拳をポキポキ鳴らしながら今度は矢崎が威嚇する。
瞬間、矢崎の視界が揺れた。
「な、なんだこれ?」
息が苦しい、呼吸が出来ない。
矢崎はその場に倒れこんだ。
「へへっ・・・、ついてるぜ勝手に自滅してくれるとはな・・・、彼女に纏わりつく害虫の最後だ」
男はバットを矢崎に振り下ろす。
鈍い骨の砕ける音が辺りに響いた。
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Mixiにあげてあったのにこっちにあげ忘れるというwww