No.817477 模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第41話コマネチさん 2015-12-06 22:12:45 投稿 / 全7ページ 総閲覧数:679 閲覧ユーザー数:651 |
「このぉっ!!」
仮想空間ではあるが深夜の学校の廊下、向かい合う三機。
F91に乗ったソウイチはヴェスバーを展開、そしてフリーダムに乗ったナナは羽に内蔵されたビーム砲をベアッガイに向ける。
「こんだけ狭けりゃ避けられないでしょ!!」
そう言いながらナナとソウイチは一斉に発射。
「浅知恵ぇ!!」
ベアッガイのビルダーは叫ぶとベアッガイの目が光る。次の瞬間、ベアッガイの目から巨大なビームが発射された。正に『目が粒子砲』である。
「なにそれぇ!!」
ナナが叫ぶとエネルギーの塊はぶつかり合う。そして起こる爆発。フリーダムとF91は爆風に踏ん張った。
爆風が止むとその場にベアッガイはいない。「どこに行った?」と見回す二人。
「後ろか!!」
気づいたソウイチが叫んだ。後方から切り離して飛ばしたベアッガイの左手、ウイニングガンダムのコアファイターが突っ込んでくるのが見えた。
先端部に取り付けられたチェーンソーのけたたましい音が響く。
「うぉっと!」
とっさに二人は回避。反転して襲ってくるコアファイター、チェーンソーだけではなく機首から大口径バルカンまで撃ってくる。
「ちょこまかと!!」
ナナはフリーダムの左腕のロングレンジライフルを畳み、三連バルカンに変形させ撃った。連射の方がこのスペースでは都合がいい。
撃ち落とそうとするが相手が小さく、高速で動く為中々当たらない。フリーダムも大きさ的にここじゃ狭くて飛ぶことができない。
「くそっ!ライフルが使えれば!!」
バルカンと胸部マシンキャノンを撃ちながらソウイチが愚痴る。ヴェスバーではエネルギーを食い過ぎて使えない。その時だった。追い打ちとばかりに姿を現したベアッガイのミサイルがナナとソウイチに撃ち込まれる。
「!!」
起こる爆発、ナナの方は小さいとはいえシールドで防御。
「うぅ、アサダ、大丈夫?あっ!!」
隣のソウイチの方を見てナナは絶句した。ソウイチのF91は腹から下をベアッガイの右腕『ウイニングナックル』に握られていた。
姿を現したベアッガイの右腕は伸びていた。ちなみにミサイルはベアッガイの背中のランドセルがミサイルランチャーになってる為、そこから撃った。
「ぅ……ぁ……」
ギシギシと言う音と共にうめき声を上げるソウイチ。凄い力だ。背中のヴェスバーに、本体に亀裂が入ってきた。
「きひっ!きひひっ!!バッカじゃないの!!アンタさっきアタシのメガ粒子砲受けた時、ビームシールド駄目にしてただろ!」
そう。ビームシールドのあるF91の左腕は黒く変色してる。さっきのビームは防御するには負荷が強すぎたのだ。
「っ!!アサダを離せ!!」
「あ?その声……驚いたぜ。アンタさっきアタシのブレスレット探してくれたポニーテールの女じゃない?」
「?!そういうアンタはさっきの商店街の?!」
「ま、悪いけど勝負で情けはかけねぇよ」
ナナはベアッガイを撃とうとするが、ベアッガイはすぐさま伸ばした腕を元に戻し、F91を盾にする。そしてフリーダムの背中からコアファイターが迫る。駄目かと思ったナナ、だが次の瞬間。
「ナナちゃん!!」
トイレから出てきたアイのサムライリッパーが刀を振るう。それはチェーンソーに当たりコアファイターを弾いた。
「アイ!!終わったの?!」
「うん!画面見て!チェック入ってるでしょ?!」
「あ、本当だ」とナナ。その頃、鏡の中のノーベルはナマス切りにされて完全に破壊されていた。(ちなみに時間経過で復活するのでどのチームも必ず一度七不思議を倒す必要がある)
「それじゃ、どうにかしてソウイチ君を助けなきゃ……って、あのベアッガイ?!でも両腕は……」
ベアッガイを見た途端アイは驚く。
「!?ガンダムAGE-1E?!でも背中にアタシの作ったランチャーがついてない!あんなウェアはなかったのに!!」
同様にベアッガイのビルダーも驚いた。ふとベアッガイの手が緩む。
「!!今だ!!」
ソウイチはすぐさまF91をベアッガイに向ける。そして胸部のマシンキャノンのベアッガイの外側の『目』の部分、ビーム砲目がけて撃った。
『ガガッ!』と音を立ててベアッガイの右目は破壊される。
「なにぃっ!!」
怯んだベアッガイは手を離してしまった。その隙に離脱するF91、
「ヤタテさん!!今だ!!」
「ソウイチ君!うん!」
すぐさまアイはベアッガイに斬りかかろうと、四本の刀を構え飛びかかった。
「チッ!新しく作ったウェアだろうけどなぁ!!」
ベアッガイのビルダーが叫ぶと弾かれたコアファイターが再び動き出した。
サムライリッパーの背後からチェーンソーを回すコアファイターが迫る。
「アイ!後ろっ!」
「っ!!」
アイはサムライリッパーの右手の刀二本を重ねてチェーンソーを受け止めた。『ギャギギッ!!』と耳をつんざくような音と、火花を立ててお互いは一歩も譲らない。
「これで終わりな訳ねぇだろ!!」
「っ!!」
駄目押しとばかりにベアッガイはウイニングナックルで殴り掛かってくる。サムライリッパーはその拳を左の手甲で受け止める。
衝撃の振動がアイのGポッドに伝わる。
「へぇ、受け止めたんだ。おもり入れて威力上げてあるんだけどなぁ」
「私だって!前よりは腕を上げたつもりだからね!」
「あ?言うじゃん!でもアタシには勝てない!だってアンタに……ん?」
その時、アイを倒させまいと、フリーダムとF91がベアッガイ目がけて一斉にビームを放つ。ベアッガイは後退しながらかわす。狭い為避けきれない分はウイニングナックルで受け止めて防御した。
ちょうどその時、チェーンソーを受けていたサムライリッパーの刀は二本とも折られた。だがサムライリッパーは突っ込んできたコアファイターを屈んで回避、コアファイターはベアッガイの左腕に収まった。
「チッ!こっちは一体だけだってのに張り切っちゃってまぁ」
「弱気だね。それが連絡したときに『一人で参加する』ってはりきってた人のセリフ?」
「ま、こっちはまだ七不思議全部攻略してないぜ。ここは逃げさせてもらうかな!!」
直後ベアッガイの背中のランドセルが展開、ミサイルはアイ達目がけて放たれる。全員がバルカンが刀で迎撃するが、破壊したミサイルはスモークだった。辺り一面が煙で覆われる。
ベアッガイの影が逃げるのが見えた。
「あ!待ちなさい!!」
ナナは叫びながらベアッガイの逃げた方へ射撃を撃ちまくった。しかし手ごたえがない。逃げられた様だ。
「……逃げたか」
「ヤタテさん、有難うございます。助かったッス」
「ソウイチ君、うぅん、こっちこそ助かったよ。有難う」
「……助けてもらって言うのも何ですけど、本物ッスよね。ヤタテさん」
「え?なんで?」
「いやだって鏡から出てきたんだし、実は偽物なんて演出とかじゃ……、あぁいや、神経質になりすぎました。忘れてください」
前の七不思議でおおいに怖がった所為だろう。どうもソウイチは身構えてしまう。
直後、F91のヴェスバーが音を立てて崩れた。さっき撃ったので耐えられなかったらしい。
「あ、無理が祟ったッスね」
「アタシのビームピストル、渡しとくから使ってよ」とナナ、ソウイチは「恩にきります」と返した。
「それはそうとアイ、さっきの熊のビルダー、知り合い?妙にフランクな会話してた様に見えたけど」
「あぁ、そうだね……実はアイツは」
「今はいいッスよヤタテさん。俺達は残りの七不思議を倒さなきゃいけないんスから、駄弁ってる暇はないんだ」
ソウイチはさっきナナから手渡されたビームピストルを二丁持ち、足早に次の七不思議の所に行こうとする。
「あ……ソウイチ君」
「アサダ!ったく……そんな早くいかないでよ。あんたオカルトに免疫ないんだから」
「っ!そんな事ないッスよ!!」
『第二校舎二階北側、階段』
「アサダ!そっち行った!!」
二階と三階を結ぶ階段の踊り場、そこの大鏡から出てきた七不思議の機体とアイ達三人は戦っていた。
相手は『ガンダムseeddestiny』に登場した『ガイアガンダム』普通の機体に比べて細長い手足をしており、四つん這いの体勢になる事により犬型に変形するガンダムだ。
ただ、今戦ってるガイアガンダムは手足が左右あべこべに付けられており、逆さ四つん這いで壁を高速で這いながら手に持ったビームライフルを撃ってくる。まるで蜘蛛だ。
「くそっ!動きが気持ち悪い!!」
ソウイチはビームガンを撃ちまくりながら迎撃しようとする。五番目の七不思議『階段の蜘蛛男』階段で転げ落ちて、全身骨折で死んだ生徒の霊が大鏡に宿ったという七不思議だ。
ナナがどうにか撃ち落とそうとフルバーストを連続で放つ。しかし相手はガイアは器用にかわす。
「なんなのよ!!あの超反応は!!」
「クッソー!!役立たずになってたまるか!!」
ナナとソウイチの二人の声に焦りが見え始めた。射撃が、刀の衝撃波がことごとくかわされる。撃っても撃っても即座に反応しかわされてしまうのだ。
「ナナちゃん、あの七不思議の弱点は?」
「それがあれだけ載ってないのよ。なんかその項目だけ空白になっていて」
「自分で考えろって事かな」
そう言いながらアイは辺りを見回す。目についたのは踊り場の大鏡だ。
「鏡にまつわる七不思議なら」
トン、とサムライリッパーは鏡に掌を当てる。また吸い込まれるかと思ったがそんな事はなかった。
「中に入るタイプじゃないなら!!」
そういうとアイはサムライリッパーの当てた掌に力を込めた。掌が一瞬輝くと中心から鏡に高速でヒビが入り、鏡が砕け散った。
サムライリッパーの素材『戦国アストレイ』の能力、粒子発勁(りゅうしはっけい)だ。対象の内部にエネルギー(元ネタではプラフスキー粒子)を注ぎ込み対象を内部から爆発させる。
鏡が砕けた瞬間、天井に張り付いていたガイアガンダムは停止、地面に落ちると虫の死骸のように手足を丸め、砕け散った。
「鏡が本体だったんスか、こんな簡単な事に気が付かなかったなんて……」
ソウイチが苦虫を噛み潰した様に言う。
「アサダ、しょうがないよ。連戦で疲れてるんだし……」
「……分かってますよ。大人げなく不機嫌になるつもりはありません」
そう言いながらもソウイチは自分とアイの実力差に不満はあった。『あの人を、アイを越えたい』そう思いながら自分を鍛えてはいたが、そんな自分の何歩も先にアイは行ってしまう。
それは自分のチームとしては頼もしいし、嬉しい事でもある。しかし自分のプライド的に素直に喜べなかった。
……
そして三人は第三校舎から残りの七不思議攻略の為に体育館に向かう。体育館は第一、第三校舎から渡り廊下を使って向かう。
(三階、二階からは非常階段で渡り廊下に降りる。その際第一校舎と第三校舎の渡り廊下は合流して体育館へ続く)
「あのベアッガイに会わない様に第三校舎使ったけど、まだ旧校舎にいるのかな……」
移動しながらナナは不安を口にする。
「違うみたいッスよ!!」
ソウイチが叫んだ。体育館の方からさっきのベアッガイが歩いてるのが見えた。こちらに気が付いたのだろう。いきなりベアッガイはこちらに走ってくる。
「……ソウイチ君、ここは私に任せて、あなた達は体育館へ!!」
アイは両手に残った刀を持つとナナとソウイチに先に行くよう促した。
「ヤタテさん……でも俺達じゃ次に勝てるかどうか……」
「アサダ、行こう」
ナナがソウイチに共に行くように促す。続けて、アイに聞こえない様通信を切り替えてソウイチに話しかけた。
「アンタの気持ち、アタシにも分かるよ。アタシだってアイみたいに強くなりたい。でもアイはすごい勢いでレベルアップしてる。でもアイはアタシ達を頼りにしてくれてるんだ。今は自分のするべきことをやろうよ」
「ハジメさん……」
「アイ!頼むわ!!」
そう言うとナナは体育館の方へ飛び立つ。ソウイチもそれに続いた。
「ナナちゃん、ソウイチ君、お願いね……」
そしてアイはベアッガイを迎え撃つべく身構えた。ベアッガイも構えをとりながら対峙する。お互いは横にすり足をしながら校庭に出た。
「アイ!アタシはもう六つの七不思議を攻略した。後は残りを倒すだけだ」
「悪いけどそれは出来ないよ。負けるつもりなんてないもん」
「強気だなぁおい。さっきはあんな防戦一方だったのに」
「今度は広さも十分、負けないよ!」
「そうかい。でもアタシは倒せねぇ!だって!!」
再びベアッガイはチェーンソーを回転させサムライリッパーに襲い掛かる。
「だってアンタにガンプラ教えたの!アタシなんだからなぁ!!!」
そして体育館に入ったナナとソウイチ。『ダン、ダン、ダン』とドリブルをする音が響く。音のする方、バスケコートを見ると大柄なグレーの機体が、自分の頭でドリブルをしてるのが見えた。
機体は『ジオング』だ。お椀をひっくり返した様な形状のスカートと膝下の脚部、頭はモノアイで口におちょぼ口の様なビーム砲、両耳の部分にはバーニアと細い角、
『ファースト』と呼ばれる『機動戦士ガンダム』のラスボスだ。脚部がついてるのは『パーフェクトジオング』と呼ばれてるバリエーションだ。大きさはナナ達の機体の2・5倍はある。
頭部は脱出ポッドとして胴体から切り離せる仕様で、この怪談に選ばれたのはそういうギミックがあるからだろう。
「ジオングか……大方あれとバスケをして勝てってんでしょ?」
「ご名答、『体育館の首なしバスケ部員』弱点はバスケの勝負で勝て!よ」
「ならやる事はひとつだ!!」
そういうと二機はコートに躍り出る。パーフェクトジオングは動じることも無く。相手を倒すべく腰の左右についたビーム砲を発射、二体共かわすとジオングに迫る。
そしてフリーダムがジオングのボールを掠め取った。
「やった!ハジメさんナイス!」
「部活経験はないけど!こん位アタシだって!!」
そのままドリブルしつつジオングの反対方向のゴールにいれようとするが、ジオングは両手を切り離し頭を取り返そうとしてくる。ジオングは肘下からの両手を切り離し遠隔操作できるのだ。
そして両手の指先は全てビーム砲、フリーダムに撃ってくる。
「ど!ドリブルしながら避けろって無理でしょ!」
ならばとナナはフリーダムの翼を広げ、高くジャンプ、飛んでしまえばいいとナナは思ったのだ。持ったまま歩いてないので反則にはなってない。
「ダンク!!決める!」
右手でジオングの頭を高く掲げゴールに入れようとするナナ、その時、ボール変わりのジオングの頭がビームをフリーダム目がけて撃ってきた。フリーダムの右肩に当たるビーム。
「うわっ!!」
ショックで怯むナナ、ジオングの口から撃ったのだ。威力はそれ程ではなく、フリーダムのダメージも肩アーマーを吹き飛ばす程度に留まったが、
その隙を突かれジオングの頭は伸びてきた両腕に奪還される。
「ハジメさん!」
ソウイチがボールを持ったジオングの腕を破壊しようとするがもう一方の腕の射撃でソウイチのF91は阻まれる。
「くっ!!」
そのままジオングは自分側のゴールに頭を入れようとホバーでゴールに向かう。人間的に換算して3メートル半ある為ジャンプもしないで入れられるだろう。
「ヤバッ!入れられる!!」
「いや!まだッス!諦めたらそこで試合終了だ!!」
ソウイチは叫ぶとF91のリミッターを解除、両肩から三対の放熱フィンがせり出し、口のマスクが左右に割れた。マスクの下は鼻の様なディテールがついており若干人間に近い顔つきになった。
そしてF91はジオング目がけて走り出した。その速さはすさまじく金色のオーラを纏い残像を残すほど。これがF91の最大出力であり、ブースト形態だ。
これは本編では限界稼動の熱を放出する際、装甲表面の塗装や金属が剥離して撒き散らされるという理由付けがされている。その為センサーには残像を残し分身してるかの様に見える。
なお表面が剥離してる為、残像には質量があり、『質量を持った残像』と本編では言われた。
「今は自分に出来ることを!!」
追撃しようとするジオングのもう一方の腕、しかしF91は腕の射撃を軽くかわしジオングの前に躍り出る。そしてシュートを防ぐべく両腕を精一杯のばしジャンプ、
「フンフンフン!!!」
掛け声と『シュババババ!!』という音と共に、凄まじい数のF91がゴール前の方向を全て塞ぐ。
『質量を持った残像』を活かしたディフェンスだ。そのディフェンスはあたかもF91が影分身をしてる様にも見えた。まるで壁だ。
「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフン!!!!!」
限界稼動のF91の瞬発力だからこそできる芸当だった。まさに神業。これにはジオングも怯んだ。その隙を逃さずソウイチはジオングの頭を弾く。
頭はナナのフリーダムの方へと向かう。
「ハジメさん!!いまだぁぁ!!!!」
「ゴメン笑いそう!!でもソウイチ!!無駄にしないわ!!!!!」
ディフェンスのコミカルさに笑いをこらえながら、しかしソウイチの気持ちを汲みながら、ナナもバウンドしたジオングの頭を掴むとゴールへと飛んでいった。今度はジオングの口は上に向けている。
ジオングの方も両腕をのばし頭を奪還しようとする。が、間に合わない。
「これで!!ゲームセット!!」
その叫びと共にナナはゴールにダンクシュートを決めた。これにてバスケ勝負はナナ達の勝利となった。ジオングは砂の様に崩れ消えていった。
「アサダ、アンタのおかげで助かったわ。ありがとう」
ナナはゴール下でへたれたソウイチのF91の腕を掴み起こした。既にF91のブースト形態は解かれていた。
「こっちこそ、俺は自分に出来る事しただけッスよ。それよりヤタテさんと後一つの七不思議へ急がないと」
「アイはともかく、後一つは近いから大丈夫よ。場所はグラウンドの『ぐら公様』よ」
そしてこちらはイベントを観戦してるヒロ達の視点だ。
「ぐら公様?なんか検討もつかない名前が出てきたなぁ」
ヒロはタカコとムツミに聞いてみる。それにはタカコの方が答えた。
「あいあい。お答えしましょ~。『ぐら公様』っていうのは昔っからこの山回町を守ってるっていう土地神様なんですよ。なんでも巨大なプテラノドンみたいな姿していて昔は龍神様なんていわれてたみたいですけどね~。
七不思議は六つ廻った後にグラウンドで空を見上げると飛んでる『ぐら公様』が見えるって言われてます」
「な、七不思議って割には急にUMAっぽいなぁ……」
「学校っていうよりこの町全体の不思議ですかね。ここら一帯が盗賊に悩まされていた時に降臨して、この土地と人を守ったって文献もありますよ~。なんでもある侍が『ぐら公様』と勝負して、打ち負かしたら力を貸してくれたとかで、
その時相手の軍勢が撃ってきた矢を、飛行体勢から着地体勢に変わるっていう不意打ちで相手の軍勢蹴散らしたとか、その際にはあまりの圧倒っぷりに『阿修羅すら凌駕する存在』とか言われたらしいです」
「突っ込みどころ満載すぎる…」
「でも、この七不思議は唯一目撃情報が絶えないんです。七不思議を体験した体験してないに関わらず、夜のグラウンドで月をバックに飛んでる所を見た人が何人もいます。
実際グラウンドの位置って『ぐら公様』を祀ってた祠があったらしいんですね~。今は別の場所に移したらしいですけど」
タカコの説明にツチヤも関心する。
「俺もこの町の土地神様は知ってるけど、よく知ってるねフジさん」
「当然ですよ~ツチヤさん、去年その特集で、新聞部総出で学級新聞書きましたからね。実際探しに山入りましたけど結局見つからなかったんですよ~」
そして今度はアイの方に視点を移そう。
アイのサムライリッパーとベアッガイの戦いは苛烈を極めた。校庭で二体は何度も斬り合う。
「だぁぁっ!!」
外側のサブアームで刀を持ち、内側の手でビームサーベルを持つアイのサムライリッパー、ベアッガイの方は右目を切られ目が粒子砲は使えない。しかし変わらずチェーンソーとウイニングナックルで攻撃を受ける。
再び離れる二体、お互いボロボロだ。どちらも獲物は刃こぼれを起こし全身小さな傷が目立つ。
「しぶといぜアイ……ここまで腕上げてるなんて……」
「こっちのセリフだよ……。ここまであなたが強くなってるとはね、ノドカ」
そして両機とも構えを取る。
「当然……約束じゃん。アンタとのさ!!」
そしてお互いに向かって走り出す。ベアッガイはウイニングナックルで殴り掛かろうとしてくる。
「それも……こっちのセリフだね!!」
対するアイはそれを剣を使わず。飛び蹴り体勢で挑んだ。
「剣で受けねぇ?!正気?!」
サムライリッパーの脚とウイニングナックルがぶつかり合った。直後、ウイニングナックルが潰れた。
「なっ!!たかがキックに!!」
「脚で撃ったんだよ。粒子発勁を!」
くるっとバク中しながら向き直るサムライリッパー、本来粒子発勁は内部から爆発させる物だ。しかし外部から潰すというのはアイのアレンジだった。
「きひっ!!きひひっ!!楽しい!楽しいよ!やっぱアンタとのバトルって面白い!!」
「私もだよ。だけどそんなに時間はかけられないからね!!」
続きを、と身構える二体だが、ナナの通信がアイに入る。
「アイ、こっちは体育館の七不思議を倒したわ!後はグラウンドだけ!そこで合流しましょ!」
「ナナちゃん!わかった!」
通信が切れるとアイはベアッガイの方を向いたままバックで移動、ある程度距離を置くと背を向け逃げ出した。
「あ!待てこら!!」
「ごめんノドカ、もう時間稼ぎは必要ないみたい!!」
ベアッガイもアイを追いかけながらグラウンドへ向かった。
グラウンドのど真ん中にフリーダムとF91は立つ。すると月明りが一瞬かげる。
なんだと思って上を見ると、満月をバックに飛ぶ巨大な翼竜が見えた。いうなれば黒いケツァルコアトルス(白亜紀末の生物史上最大の翼竜、大きさはキリン並)、それが『ぐら公様』だった。
「あれさえ倒せば決まる!!」
そう言うとフリーダムとF91は飛び上がる。空中戦だ。ぐら公様は敵の二機を察知すると口から青い弾を連続で撃ち出していく。まるでリニアカノンだ。
「ちょっ!!怪獣?!!」
フリーダムはシールドで防ぎ、F91は回避、反撃とばかりにフリーダムは三連バルカンで、F91はビームピストルで、ぐら公様に射撃を撃ち出す。
お互いが器用にかわしながらの空中戦となった。
「ちっ!!ラチがあかない!!だったら退路を塞ぐわ!!」
フリーダムはハイマットフルバーストの体勢を取るとフルバーストを発射、五つの大型ビームが上空のぐら公様に迫る。うち一つはど真ん中だ。
「当たる!」そうナナは確信した。
しかしその瞬間フワッとぐら公様の体は浮かんだ。翼の向きを調節したのだ。ぐら公様の股下をフルバーストのビームが通り過ぎた。
「何!あの回避は!」
そのままぐら公様は上空にも拘わらず翼を畳む、そして急降下、下の方で飛んでるフリーダムに迫る。
「ハジメさん!!」
ソウイチはビームピストルをぐら公様に撃ちこむ。しかしぐら公様は右に、左に体をひるがえしながらかわす。そして『邪魔だ』といわんばかりにF91に青い弾を発射、
「うわぁっ!!」
命中したF91は大きく弾かれる。そしてぐら公様は右腕でフリーダムの頭を掴み、更に急降下、
「な!!掴まれた!!きゃあああ!!」
そのままぐら公様はグラウンドに突っ込んだ。グラウンドは巨大な土煙をあげる。
「!!フリーダムが?!ナナちゃん!!」
グラウンドに向かってるアイはフリーダムが叩きつけられたのが見えた。土煙が晴れるとグラウンドにクレーターが出来ていた。
その中心でナナのフリーダムはほぼフレームだけの状態になっていた。撃墜扱いにはなっていなかったが、やられる寸前だ。
「くっ!頑丈なRGだったからまだ撃墜になってないけど!これじゃ!!」
ナナが操縦桿を動かしながら叫ぶ。フリーダムがほとんど動かない。とどめを刺そうとぐら公様は右手を振りかざすが……
「ハジメさん!!」
ソウイチのF91がビームサーベルでぐら公様の右手に斬りかかった。ぐら公様は右の翼の骨格でビームサーベルを受け止めた。
「?!巨大生物なのにビームを!!」
そのままF91を弾く。ケタ外れのパワーだ。だが直後ぐら公様は空へ飛んだ。さっきぐら公様のいた場所をサムライリッパーの刀の衝撃波が通った。アイの放った斬撃だ。
サムライリッパーはクレーターの中心部に移動。ナナのフリーダムの体を起こす。
「ナナちゃん!!大丈夫?!」
「アイ、だ、駄目っぽい……」
「どうにかしてアイツを倒せればいいんだろうけど、あぁも早く動かれちゃ!!」
上空でぐら公様とF91が戦ってる。F91はボロボロな為、高速で飛び回るぐら公様に圧倒されっぱなしだ。
「アンタも飛べばいいじゃねえかアイ」
「無茶言わないでよノドカ!グラエストロランチャー外したんだから飛べないよ!!」
「……飛ぶ方法ならあるぜ」
「へ?」
そして上空ではF91がぐら公様に掴まれる『抱きしめたいな』と言わんばかりに
「くっそぉぉ!!離せぇ!!」
と、その時、下の方から三日月型の衝撃波が迫ってくるのが見えた。サムライリッパーの衝撃波だ。ぐら公様はこれを回避、
ソウイチは飛んできた方向を見ると、サムライリッパーがウイニングのコアファイターに乗って迫ってくるのが見えた。
「ヤタテさん?!」
「ソウイチ君!大丈夫!?」
サムライリッパーは続けて衝撃波で攻撃を、そしてコアファイターもバルカンを撃ちながらぐら公様に突撃をかける、しかしぐら公様はことごとくこれを回避、
そして突撃を回避されたコアファイターはぐら公様を通り過ぎた。しかし次の瞬間……。
『ドンッ』という音と共にぐら公様に振動と亀裂が走る。その際に掴まれたF91も手放した。
「っ?!何が起きたんだ!?」
ソウイチが見るとぐら公様の背中に乗ったサムライリッパーが見えた。ぐら公様に粒子発勁を撃ちこんだのだ。手はサブアーム含め刀で塞がってるので足で。
「いつの間に!ヤタテさん!!」
「ソウイチ君!手伝って!まだ落とせてない!!」
駄目押しと刀とビームサーベル四本をぐら公様に突き刺しながらアイが叫んだ。
「よし!!」
ソウイチも両手にビームサーベルを構えると手首を高速で回転。二刀流は擬似的なビームサーベルのチェーンソーを作る。そしてぐら公様の体を切り裂いた。
しかし血は出ない、あくまで扱いは模型なのかパーツが壊れる演出だった。しかしまだ負けないといわんばかりにぐら公様は口を大きく咆哮をあげる。
そのタイミングでだ。ぐら公様の口にビームが撃ち込まれた。翼竜の頭部はそれで吹き飛ばされた。
「ロングレンジライフル?!ハジメさん!!」
下を見るとクレーターの中心部でフリーダムが右腕のライフルを向けてるのが見えた。寝たままの体勢でそこから撃ったのだ。直後、ライフルが小規模な爆発を上げ、壊れた。
その一撃が決め手となった。ぐら公様は墜落し砕けた、アイのサムライリッパーはF91に抱えられながらグラウンドに降り立つ。
「どうやら一人もやられずに済んだみたいだね?」
フリーダムを起こしながらアイが安堵の声を上げる。
「そうね。ありがとう、コアファイターで手を貸してくれて」
「気にすんじゃねぇ、ブレスレットの礼だよ。借り作るの嫌いだからさ」
同時に『ミッションクリアー』というアナウンスが流れた。これでアイ達とベアッガイの少女の優勝は決定となった。
と、突然ぐら公様の残骸が輝きだす。
「何?!まだあるんスか?!」
身構える全機、だが残骸からは金色のオーラが溢れ、それは翼竜の形となり天に昇って行った。
――童ヨ、見事ナリ――
という言葉を残して、通信ではなく、頭に直接入ってくるような声だった。システムではない。妙な存在感がある声だった。
「……な、なんだったの?」
Gポッドから出てきたアイ達にツチヤ達が駆け寄る。
「凄いじゃないか!今日はいつにも増して激戦だったのに一人も欠けることなく優勝できた!」
「……最初は俺もそう思ったんスけどね。よく考えたら一人でこなす奴もいたからそれ喜んでいいか……」
ソウイチの頭にはさっきのベアッガイが浮かんでいた。考えてみたらあのベアッガイは一人でこのミッションをほぼ完遂した。
大会ではそいつとも戦うかもしれない。そしてアイとの自分との実力差、そう考えたら今のままでいいのか。というソウイチの不安があった。
「こんな時に何言ってんのよアサダ!ここは素直に喜びましょ!折角のイベントなんだからさ」
「ハジメさん、そうッスね……。そういえばヤタテさん、さっきのベアッガイの人は?」
「アタシならここだぜ」
すぐさまそのビルダーは現れた。ピンクのツインテールとクマの凄い鋭い目、ナナ達が商店街で会った少女だ。ナナは別として、タカコ達はその少女がベアッガイのビルダーだと知ると驚いた。
「戦いぶりはよく分かったぜ。ま、ちょっとはアイもマシになったって事かねぇ」
「もー、こんな時にまで憎まれ口言わないでよ。私の友達の前なんだからさ」
「あー悪い。今日位は相手怒らせたくなかったんだけどさ。でも今したい事はさ、そんな事じゃなくて……そんな事じゃなくて……」
ふと少女の目尻に涙が浮かぶ、そしておもむろにアイに抱き着いた。
「久しぶり、アイ。会いたかった……!ずっとずっと会いたかった!」
無邪気な笑顔で少女はアイに抱き着いていた。アイの左腕に豊満な少女の胸が押し当てられる。
「わわ!ノドカ!!……私も楽しみにしてたよ。あなたに会えるのさ」
アイも笑顔で答えた。ふと、アイは少女の左腕のブレスレットが目についた。
「あ、それ私があげたブレスレット。まだつけててくれたんだ」
「そういうアンタもアタシのヘアゴムつけててくれてるじゃん」
「最近付け始めたんだけどね。なんか見てると昔しんみりしちゃって」
「え?あんた、そのブレスレット、死んだ友達から貰ったって言ってたじゃん」
と、ナナが少女に突っ込みを入れた。これにはアイも少女も面食らう
「あぁ?!横から何言ってやがる!!んな事言ってねぇ!!」
「いやだって『もういない』って」
「引っ越していなくなったっつってんだよ!!何失礼な勘違いしてんだ!!!」
「って事は……、アイちゃん……、もしかしてその人が……」
「ムツミちゃん、うん、紹介まだだったね。私の幼馴染『ユミヒラ・ノドカ(弓平和)』」
「ま、言いたい事はあるけどよ。よろしく」
予想していたナナ等は除き、そこにいたほぼ全員が驚きの声を上げた。
――それにしても……半年でまた胸大きくなったねノドカ……それに引き換え私の胸は……くっ――
そしてアイの方は心の中で喜びと嘆きの感情が入り混じっていたという。
※おまけ、スタッフの会話
「いやーそれにしてもラストで土地神を再現した翼竜出すなんてパンチが効いてますねハセベさん」
「それなんだけど……あんなプログラム入ってないんだよ」
「え?」
「大体翼竜自体出ない筈だよ。あそこは1/100 オーバーフラッグが出るはずだったんだから」
「じゃ!じゃああの翼竜は?!!」
その後のイベントではちゃんと最後はオーバーフラッグが出た。しかしそれから、『ぐら公様』の目撃情報はまた増えたという……。
都市伝説、信じる信じないはあなた次第……。
グラハムファンの皆様……ごめんなさい!!
アイの名前は漢字で書くと『矢縦愛』です。そして服に書いてある文字は『ユニバースアクセル』『コズミックドライブ』ガンダムAGEのゲームのバージョン違いです。
様は新キャラのノドカはアイの逆になる様につくりました。
※そして前回、ネットに関して励まして下さった皆様、ありがとうございます。これを機にもっと多くの人が楽しめる小説を目指します。本当にありがとうございました!
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第41話『山回高校、学校七不思議』(後編)
ガンプラバトル内で学校の七不思議を討伐するというイベントバトル。『ガンプラバトル学校七不思議』そこでアイとはぐれたナナとソウイチは、チェーンソーを持った熊『ベアッガイスケア』に襲われる。