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ゼロの使い魔 AOS 第34話 【短編・幕間】最近のルイズの様子/ガールズ(?)トーク/アンリエッタ悩む/サイトが構ってくれない/革命の序曲(予告編)

koiwaitomatoさん

幕間・短編という名の今までの補足EP+個別EPです。
このSSのヒロインは間違いなくルイズたんなのですが…トマトの都合で、くっ…殺せ!
ひさしぶりのルイズたん(ペロペロ)とお姉さまコンビ、そしてロイヤルさん&ロリアナちゃんの出番です。
はっちゃけたお話を書きたかったんですが、シリアス成分が多めかもです。

2015-11-25 04:56:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1833   閲覧ユーザー数:1801

 

 

 

 【幕間・短編1】最近のルイズの様子

 

 

 

 才人が最近、王都で何かやっているみたい。

 

 大工の仕事をしているのは知っているけど、お父様やお姉さまと一緒になって街を作るらしい。

 

 そういえばミス・ロングヒルとか言ってた女性もいたっけ?

 

 お父様や姉さまがあの才人といっしょに仕事をしているなんて……少し嬉しい。

 

 私が召還した使い魔が私の家族に認められている。一緒に仕事をするぐらいに……私の使い魔が。

 

 だけど……なんだかスッキリしないわ。

 

 サイトって『あの』サイトよ!寂しがりやで私がいないと何にも出来ないサイトが……扱いが大きすぎないかしら!?

 

 いや……私の召還した使い魔が私の家族の役に立っているのは嬉しいんだけどね。

 

 それにサイトもサイトよ!あれから全く音沙汰が無いじゃない!甘えん坊の癖にちょっと生意気よ!

 

 サイトもお父様たちもみんなヴァリエール家の仕事をしているのに私だけ……。

 

 

 

 「最近、愛しのダーリンを見ないわね」

 

 休み時間の教室で一人うなだれているルイズにキュルケが話し掛けてきた。

 

 ルイズと特に中の悪い部類に入るキュルケが一人で話し掛けてくるのは珍しい……それよりも。

 

 「ダーリン?ダーリンって誰の事?」

 

 「あなたの召使いだっけ?あの黒髪の……サイトだったかしら」

 

 「はあ!?なんであんたがサイトの事を知っているのよ!」

 

 「知っているって……お知り合いだから」

 

 何でよりにもよってキュルケなんかと知り合いになってんのよ!?あんのバカ犬……最近、私以外に女っ気ありすぎ!

 

 「で、どうなの?捨てられちゃった?」

 

 「冗談!あれは私のペットよ!」

 

 「ふ~ん……ペットねえ~……意味深な発言ね~」

 

 「別に好きでも嫌いでもないわ、義務で面倒を見てるだけ。すぐにそっちの話にしないで頂戴」

 

 そう言ってルイズは教室から立ち去った。

 

 そんなルイズの反応を見たキュルケは一人思案する。

 

 うーん……嘘を言っているようには思えないわね。だけどあれだけイチャついていたのに……何故?

 

 キュルケは知っている。才人とルイズが寮の自室でバカップルのごとくベタベタしていたのを。(参照 第16話 古典的恋愛物語)

 

 あの子、甘えん坊に見えて実は冷めやすいタイプなのかしら?

 

 もう少し楽しめるかもね……ヒラガサイトか。暇つぶしに調べてみようかしら。

 

 

 

 

 

 

 【幕間・短編2】ガールズ(?)トーク

 

 

 

 「たしか……もっと舌を動かして!だったかしら?もっとやさしくさわっ……」

 

 「いやああああ~~~~~~~~!!!!」

 

 才人の自宅兼事務所の中にエレオノールの大絶叫が響き渡った。

 

 ミス・ロングヒルは耳を塞いで、目の前のムンクが叫び終わるのを待っていた。そして……。

 

 「何で……何でそれをあなたが……まさか、盗み聞きしたのかしら?」

 

 「人聞きの悪い事言うわね。部屋が隣なんだから聞こえるわよ。ここの壁って咳とか聞こえるくらい薄いんだけど……知らなかった?」

 

 「うぅ……」

 

 まさかそんなカラクリがあったとは……エレオノール、羞恥で軽くうなだれる。

 

 「まあ、顔見知りが喘いでいるのを聞くのが気まずいものだってのは良くわかったよ……」

 

 「はう……///」

 

 ちょっと萌えな感じで、エレオノール(二十六歳)がまたうなだれる。

 

 そんなエレオノールを見たミス・ロングヒルが『しょーがねーなー』と頭を掻きながら……

 

 「で?結局、あんたはサイトとどうなりたいの?」

 

 「どうって……どう?」

 

 「性欲を晴らしたいの?恋人になりたいの?それとも旦那にでもしたいのかい?」

 

 「えっ……えっと……えっと……」

 

 ミス・ロングヒルの質問に軽くパニックになるエレオノール。ミス・ロングヒルは少しため息をついて話し掛ける。

 

 「エレオノール。あんたは大人の女なんだから、はっきりとサイトに接したほうがいいんじゃないの」

 

 才人の為にもエレオノール自身の為にも態度をはっきりさせた方が良いだろ!とエレオノールに言うミス・ロングヒル。

 

 エレオノールは自分の考えをまとめるように少しだけ押し黙った。そして、はっきりと答える。

 

 「私は……サイトに命を救ってもらって……それで、一緒に暮らすようになって……それで、サイトはすごく優しくって、頼りになって……」

 

 「……わかったよ。つまりはベタ惚れなんだね」

 

 ……まったく、ちょっと可愛いって思っちまったじゃないか。

 

 「あの……あなたはサイトの事は……」

 

 「私は好きだよ。サイトを愛している」

 

 「……そう」

 

 やっぱりとも取れそうな……それでいて複雑そうな顔をするエレオノール。

 

 「あー……たぶん、あんたとは違う好きだけどね」

 

 「違う?」

 

 「サイトは私の大切な家族の一人だ。あいつが誰かを自分の意思で好きになって幸せになるなら私も嬉しいよ。愛しているからね」

 

 愛しているから、大切な家族だから、彼女は才人の幸せが私の幸せとはっきりと言い切った。その言葉を聞いてエレオノールは思う。

 

 「あなたは……お母様」

 

 「お姉さまだ!たっく……まあ、最初は金づるになるかな~なんて軽い気持ちであいつに近づいたんだけどね。なんて言うんだろ……家族に会えなくて寂しいだろうにさ……誰かの為に健気に頑張っている姿を見てるうちに……ついね」

 

 ―― 昔の私と、そして……あの優しくも不器用なお父様に被っちまったんだよ。

 

 最後までは言い切らなかった。

 

 「寂しい?そんなふうには見えないけど……」

 

 「最近はね……まあ、あんたより少しだけサイトとは付き合いが長いから。それに……」

 

 「それに?」

 

 「私たちといて楽しいんだと思うよ……寂しさを感じる暇がないくらいに」

 

 「……そう。そうなの」

 

 「こんなに綺麗なお姉さんを侍らしているんだ!当然だろ」

 

 そう言ってミス・ロングヒルは軽くウインクをする。今日の姉さんは男前。

 

 「まあさ……あんたにも貴族って立場があるんだし、婚約者だっているんだろ。だけど、自分でけじめを取れるなら好きにすれば良い」

 

 その言葉を聞いたエレオノールは体に稲妻が走るような感覚を受けた……数日前にも感じたこの感覚。ミス・ロングヒルは地味にエレオノールの人生に影響を与えている。そして……。

 

 「……したい」

 

 「え、なんだって?」

 

 「私はサイトと結婚したい!教会で結婚式を挙げたい!一緒に暮らしたい!いっぱいセッ○スをして、いっぱいサイトの子供を生んで、沢山の孫に囲まれて、死ぬまで二人でいたい!!」

 

 エレオノール、世界(才人の部屋)の中心で愛をさけぶ。

 

 「そ……そうかい。ずいぶん具体的ね……」

 

 ミス・ロングヒルもこの絶叫には流石に脅え……否!引い…否!驚いた。

 

 (こいつ……こんなに結婚願望が強かったのか。年増が処女を拗らせるとこうなるのかい……)

 

 「……いま、だいぶ失礼な事を考えた?」

 

 正解!エレオノールが微妙に覚醒している。

 

 「考えてないよ。まあ……私はサイトが幸せになれるんだったら何でもいいよ」

 

 ―― ガチャ!

 

 その時だった。玄関が勢いよく開いて誰かが部屋の中に入ってきた。

 

 誰だ!ミス・ロングヒルが音に反応して身構える。そして、エレオノールは音の方向に向かい……。

 

 「お帰りなさい!サイト!」

 

 そう言って抱きついた……知らない男に。

 

 「ふむ……ここはヒラガサイトの家で間違い無いようだな」

 

 その服装……言葉遣い、貴族?

 

 サイトに王宮からの召集がかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 【幕間・短編3】アンリエッタ悩む

 

 

 

 空が暗く、闇夜に二つの月が輝いている。現在は夜中、トリステイン王国第一王女アンリエッタの寝室で部屋の主がヘトヘトになってベッドに腰を掛けている。

 

 今日の晩餐は疲れた……母であり女王でもあるマリアンヌに休む間も無くお小言を言われていたのだ。最高のシェフが作る料理が美味しくないほどに……。

 

 原因はアレだ。昼間のお茶会でのお戯れ、いや……狼藉か。

 

 お付きのメイドのいう事を聞かずに昼食を時間通りに取らなかった事。(後でちゃんと食べた)

 

 彼女のわがままで王宮の業務を遅らせてしまった事。(こちらも宰相に怒られた)

 

 そんな訳で母にたっぷりとお説教をくらってしまい、現在は精神的に疲れているアンリエッタ。

 

 

 

 それもこれもあの少年のせいです!……いえ、私にも非があるのは理解しています。

 

 ただ……正直。なんであんなに感情的になったのか自分でも分かりません。

 

 初めて会った外国の少年、しかも平民の。

 

 私がお茶会に招待してあげたのに特に感激する様子も無く、言うに事欠いてこの国を遅れているですか……。

 

 こんな事なら無視してすぐにあの場から立ち去れば良かった……私とした事が。

 

 ……でも、気になる事を仰ってましたわ。この国の未来、私の未来……。

 

 いえ……所詮は平民の戯れ言、おとぎ話。

 

 この国の貴族・平民が私に悪意を持って牙をむくなど……。

 

 『トリステインの花』一体誰が最初に私をそう例えたのでしょうか?

 

 誰からも愛されるこの国の花……愛されてますよね?

 

 アンリエッタはベッドの上で考えている。

 

 本当に私は皆から愛されているのでしょうか?私を売る輩が本当はいるのでは?誰が?強欲な貴族?貧しい平民?そもそも、あの少年が未来予想は信じられるのでしょうか?もしかして謀られたのでは……。

 

 「アンリエッタ様、お加減が悪いのですか?」

 

 近くにいた近衛の女性が声をかけてきた。どうやら唸り声を上げていたらしい。

 

 彼女の声で現実に戻ったアンリエッタは気を取り直した。

 

 「すいません。ちょっと考え事をしていて」

 

 「そうですか。失礼しました」

 

 近衛……そういえば。

 

 「いえ、お気になさらずに。後、お願いがあるのですが……」

 

 

 

 「「「失礼します!」」」

 

 凛々しい声を重ねて三人の少女がアンリエッタの寝室に入ってきた。

 

 緊張した面持ちでいる少女たち。三人とも薄皮の鎧を着込んでいる。その鎧にはアンリエッタ直属の証『百合の花』の紋章が刻まれている。

 

 「アンリエッタ様に言われた者を連れて参りました」

 

 「ご苦労様です」

 

 そう言って元からこの部屋に控えていた近衛の女性がアンリエッタの後ろに付く。そして、アンリエッタの正面に立った三人の少女に「挨拶をしろ」と目配せをする。

 

 「「「お初に御目にかかります。この度は姫様にお目通り頂き、光栄の極みであります」」」

 

 三人の声が綺麗に重なった、よく訓練されているらしい。

 

 「そんなに畏まらないで下さいまし。ここは公式の場ではありません。私が個人的な用でお呼びしたのです。楽にしてください」

 

 「「「はっ!」」」

 

 手を後ろに回して直立不動。本当によく訓練されている。

 

 「楽にと申し上げているのに……」

 

 「「「失礼しました!」」」

 

 アンリエッタは楽にとは言うものの額面どおりに受け取るわけにはいかない。近衛は王族直属の兵ではあるが基本的に軍人なのだ。

 

 アンリエッタも分かってはいるのだが……なんとも堅苦しい事この上ない。

 

 「さて、今回お呼びしたのはあなた方にいくつかお尋ねしたい事があるのです」

 

 「「「はっ!何なりと」」」

 

 落ち着いた雰囲気は諦めたアンリエッタ。目の前の三人に質問に入る。

 

 「……あなた方、三人は平民の出だと聞いておりますが間違いないですか?」

 

 三人の少女たちは予想をしていなかった質問に戸惑いながら各々目配せをしている……そして。

 

 「はい!ここにいる三名は平民であります!」

 

 三人の真ん中にいるショートボブの少女がアンリエッタの質問に答えた。

 

 「そうですか……それでは本題に移りましょう」

 

 そう言ってアンリエッタが目の前の三人の少女たちに目線をぶつけて来る。

 

 三人は心の中で身構えた。姫様は我々が平民だから呼んだという事らしいが……一体どんな質問が?そして当のアンリエッタの口から出た言葉に衝撃が走る。

 

 「この国で私を売り飛ばそうと企んでいる者たちに心当たりはありませんか?」

 

 「な!?」「えっ!?」「アンリエッタ様!?」

 

 一同騒然、後ろに控えていた近衛も驚いている。動揺を隠し切れない顔でアンリエッタに勢いよく話し掛ける。

 

 「アンリエッタ様!姫様を売り飛ばすなどと……一体どこのくされ外道が……失礼。一体誰が!?どこからそんな情報が来たのですか!?」

 

 若干、切れぎみで興奮する近衛の女性だったが、アンリエッタは気にせずに話しを続ける。

 

 「そんなに驚かないで下さい。まずは答えのほうをお願いします」

 

 動揺が覚めやらない部屋の中、ショートボブの少女が口を開いた。

 

 「姫様、私には心当たりがございません」

 

 「そうですか……いえ、質問が悪かったようです」

 

 たしかに一介の兵士に「私を売り払う不届き者を知りませんか?」なんて聞いても知っているはずもあるまい。

 

 アンリエッタは質問する内容を考え直す。思い返そう、昼間のお茶会であの少年が語った未来予想を、言葉を。そして……。

 

 「貴族の中で王家の名を笠に平民たちに圧政を敷いている者に心当たりは無いでしょうか?」

 

 ―― !?

 

 アンリエッタの寝室の中に再び動揺が走る……先程よりも具体的な質問だ。

 

 そして、誰かが……答えない、答えられない。

 

 質問の意味が、答えが分からないの訳ではない。だが……。

 

 部屋の中に沈黙が続く。一分か二分か、そして……沈黙を破ったのは。

 

 「あなた方は私の味方ですか?」

 

 アンリエッタの一声、すごく寂しそうな声で……顔で、彼女はそうつぶやいた。

 

 「失礼しました。私がお答えします」

 

 ショートボブの少女が咄嗟に前に出て、そう答えた。

 

 「……ありがとう」

 

 アンリエッタの寂しい表情がちょっとだけ溶けた。

 

 「正確な数はわかりませんが……ほとんどの貴族が王家の権威を笠に……」

 

 貴族批判……いくら姫様の命でもそれは非常に不味い。近衛の資金源も予算を決めるのも貴族なのだ、批判が漏れれば予算に影響があるかもしれないし、最悪、政争に巻き込まれるかもしれない。

 

 アンリエッタも理解している、貴族の権限の強さを。彼らはこの国をお金というカードを使って動かしている。金が無ければ組織は立ち行かない、スペードのエースは常に貴族の手元にあるのだ。

 

 「あなたのお名前を教えてもらえますか?」

 

 「アニエス・ド・ミランと申します!」

 

 アニエス・ド・ミラン

 

 平民出身のアンリエッタ付き近衛隊員、アンリエッタとの出会いが彼女の人生に今後、何をもたらすのだろうか?

 

 「アニエス……あなたに心からの感謝を」

 

 「……勿体無きお言葉!」

 

 それはこの時点では誰にも分からない。

 

 「そうだわ。もう一つ聞きたい事があるのだけど……」

 

 「なんなりと!」

 

 「平民の中で今日を生きるためのパンを得られないような方は多いのでしょうか?」

 

 お茶会の少年が言っていた。「平民は食べる事もできないぐらい苦しんでいる」彼は大げさに話しているのか、それとも真実なのか……信のおける平民の少女に問いかける。

 

 「それは……はい、増えていると聞きますが……」

 

 「……そうですか。質問は以上です」

 

 アンリエッタの夜中の会合はこれで終了となった。

 

 

 

 深夜、アンリエッタは布団の中で今日あったことを思い出す。

 

 お茶会の少年が言っていた未来予想のうち、一つは条件が整っていますね……暴虐女王……貴族たちに責任を押し付けられる……処刑……悪人として後世に……。

 

 「暴虐女王ですか……クスッ」

 

 そう言えばそうならないための傾向と対策があると言ってましたね……やはり、聞いておいた方がいいのでしょう……ただ、あの方は正直言ってあまり好きではありませんね、あの少年……。

 

 「……サイト」

 

 憎いあん畜生の名前をつぶやいてアンリエッタは眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 【幕間・短編4】サイトがかまってくれない

 

 

 

 最近、サイトを見かけない。

 

 どうやら大怪我をして入院していた……らしい。

 

 お見舞いに行こうと思った。だけど、それどころじゃなかった。

 

 街がボロボロになった。私のお家に大きな穴が開いて住めなくなった。なんでも物凄い大きな竜巻が起こって街中大変らしい。

 

 私たち家族は避難所で暮らしている。炊き出しや小さな子の世話でお見舞いに行く暇がないよ~。

 

 もう少し新しい街ができるからそこに引っ越すってお父さんが言っている。新しいお家はサイトのお部屋もあればいいな~そうしたら、いつでも一緒にいられるもん。

 

 お父さんが言ってたよ「人手が足りない!サイトが足りない!」って、本当に忙しいみたい……おじいちゃんがサイトの分も埋めてやるって最近は働いているんだ。

 

 私だって同じ、サイトが足りないよ……「早く帰って来なさいよ!サイト!!」

 

 復興中の東地区にアナちゃん(九歳)の元気な声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 【幕間・短編5】革命の序曲(予告編)

 

 

 

 大体の人は砂場でお城を作った事があるだろう。砂を盛って大きくするだけでも楽しい。細部にこだわって屋根の形を整えたり窓を作ったり、トンネルを掘って水を流したり。

 

 そして……その砂場でせっかく作ったお城を蹴り壊す、悪い子がいたのも覚えているだろうか。結局は一緒にいるお母さんに叱られて泣きべそをかきながら謝って終わる。

 

 一生懸命、時間を掛けて作ったお城が崩される姿は切ないものだ……悪い子に怒りを感じた人も多いだろう。

 

 だが、所詮は善悪の区別が付かない幼子だ。成長して大人になれば忘れるか、もしくは恥ずかしい思い出として少し後悔するぐらいだろう。

 

 だが、もしも……幼子ではなく大人が蹴り壊したらどうなるだろうか?砂のお城を壊す?いや、大人は砂場では遊ばない。じゃあ、どこで遊ぶの?何を蹴り壊すの?

 

 ある一つの国で大人たちがお城を『蹴り壊した』らしい。死傷者が合わせて二百人出た、今回『蹴り壊された』モノはまた作るのにどのくらい時間がかかるのだろうか。

 

 「アルビオン王国で小規模なテロが発生」

 

 この知らせがトリステインに届くのはまだまだ先の事だった。

 

 

 

 次回 第35話 姫様(+複数)、襲来

 

 


 
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