優しき閃光
「フェイトちゃん・・・」
「なのは・・・んっ・・・」
私の唇を塞ぐ柔らかな感触。
「大好きだよ・・・フェイトちゃん・・・」
私の口内を縦横無尽に嘗め回す舌、私を強く抱きしめる腕。何より伝わってくる暖かさが私を溶かしていく。胸の中にある想いが実現したかのような時間。
いつこんなことになってしまったのだろう?嫌という訳ではなくむしろ嬉しいけど・・・。
一度離れたなのはが再度迫ってきて、視界が埋め尽くされる。
「フェイトちゃん・・・」
◇
「なのはっ・・・あ、あれ?」
ソコに広がるのは見慣れた天井。当然なのはが居るわけも無く、ただ目覚まし時計が五月蝿く鳴っていた。
「夢・・・か」
なのはと抱き合って、なのはとキスして。それから、それから・・・あぁもうダメだダメだ。
正直なところ残念ではあるけれど、夢で良かった。だって、私となのはは友達で恋人ではないから。
それに・・・
「なのは」
そっと名前をつぶやいてみる。ただそれだけで私は幸せになれるから・・・。この気持ちは私の胸に秘めておこう。
「フェイトー!学校の時間よ~」
「はーい。今行きます」
結構長い間考え込んでいたらしい。急いで準備しないとね。
◇
うぅ・・・授業の内容がほとんど頭に入らなかった。
通学途中に、なのはの笑顔を見てからの記憶が無い。いや、正確には授業を受けているなのはの横顔とか、美味しそうにお弁当を食べてる顔とかは覚えてるんだけど。他の誰と何を話したかぜんぜん覚えていない。
だから、こうして屋上ではやてと向き合っている理由も覚えていない。何でだったかな。
「フェイトちゃん、ちょうええか?」
ん~、そういえばなのは今日は本局に用事があるって言ってたな。一緒に帰れなくて残念・・・。
「もしも~し、フェイトちゃん?」
あ、でも夜に電話すれば良いか。うふふ、何話そうかなぁ。
「フェイトちゃん!」
「わぁっ!な、何?はやて」
はぁと、目の前でわざとらしくため息をつくはやて。ところで私は屋上ではやてと向かい合っているんだろ?なのはが居ない学校には用事はないはずなのに・・・。
「何?やないでまったく。最近ずっと調子おかしいやないの。何かあったんか?」
最近、私がぼ~っとしてたり、考え込んだりしていたのでみんな心配しているそうだ。特に今日は酷かったらしく、何を言っても上の空。そこでアリサ達と相談し、はやてが私の相談役としてきたらしい。そんなにおかしかったんだ・・・。
「まぁ実際、相談したからゆうて悩みが解決するわけやないんやけどな。話して貰えたら力になれるかもしれんし、少しは楽になれると思うで?」
確かに今私は大きな悩みを抱えている。しかし、それは人に相談できるような内容ではない。それに、私自身だってよく分かっていないことだ。
「フェイトちゃんがな、1人で解決できる範囲の事やったら、口出すつもりはない。けどな、うちらは友達や、親友ゆうてもええ仲やと思う。そんなフェイトちゃんが悩んでたら、やっぱり心配なんや」
「ご、ごめんね心配かけちゃって。でも大丈夫だから・・・」
心配をかけてしまって悪いとは思うけど、やっぱり話せる事だとは思えない。
「スバリなのはちゃんの事やろ!」
「え?ど、どうして分かったの?」
そんな私の葛藤を破り、はやての言った事は的中していた・・・。確かに私はなのはの事で悩んでいる。
「ふふふ、文学少女 八神はやてを舐めたらあかんで・・・と言いたいところなんやけどな。実は前になのはちゃんに相談されたことがあったんや、フェイトちゃんに避けられてる気がする~ってな」
少し前に恥ずかしくて、なのはの顔をまともに見れない日が、何日か続いたこともあった。あんな事もしちゃったし、どうしようかなと思っている。
「で、や。今日一日フェイトちゃんを見張らせてもらったんやけど、どうもなのはちゃん絡みやなと私は判断したんや」
見張るって・・・私は容疑者じゃないよ?これでも将来は執務官になろうと頑張ってるんだけどな。
「強引にでも違うって言い張るなら、あたしは聞かんけどな。何やらウズウズしてるアリサちゃんに、無理やりにでも白状させられてまうで?」
立っているのに疲れたのか、はやてが私の横に座り込んだ。長話になっても付き合うといった意思表明も兼ねているのだろう。ここまでして貰って逃げたりしたら失礼だよね。
それに、誰かに話を聞いて欲もらいたいと思っていたし・・・。
黙っていても仕方がないし、私は悩みを打ち明ける事にした。
「ちょっとね、まだ自分でも良く分かっていないんだけど。少し前からかな?ねなのはを見るとドキドキして、止まらなくなってしまうんだ。なのはが私に笑ってくれただけで嬉しくて、なのはの事を考えただけで夜も眠れない。最近は、なのはの顔を見るのも恥ずかしくてどうしようもないんだ」
それに、他の誰かと楽しそうにしていると落ち着かないんだ・・・聞こえないようにそうつぶやく。
私の話をはやては時々うなずきながら、聞いてくれている。
「私は今まで友達がいなかったから分からないんだけど、友達の事を思うとこんな風になっちゃうのかな?胸が苦しくて、夜も眠れなくなっちゃうのかな?」
話終わった私を見つめながらはやては苦笑している。
きっと私の話が分かりにくかったのだろう・・・。
「え~とな、フェイトちゃん。まず間違ってないと思うんやけど、それは恋や」
「え?恋?」
「そや、恋や。誰かの事を考えるといてもたってもいられず、夜も眠れない。ちょうベタな気がせぇへんこともないけどな。ははぁん、だからフェイトちゃんがなのはちゃんを見てる時は、あんなに熱がこもってたんか」
そうなのかな?
でも、私が知ってる限りでは、恋は男の子と女の子でするものだよね・・・。
「普通は男の子と女の子なんやけど・・・。フェイトちゃんはなのは、ちゃんの事が大好きなんやろ?」
母さんに造られて、ずっとアルフと2人だけだった。今みたいに沢山の友達が出来るなんて考えもしなかった頃。そんな時、なのはの暖かい手に引かれて世界の広さを教えて貰った。笑い方も教えてもらったし、友達の作り方も教えてくれた。だから、なのはは特別な友達だからだと思っていた。
「ええか、フェイトちゃん。あたしが今からゆうことよ~覚えとき。恋ゆうのはな、自分に素直になって行動したもんの勝ちなんや。男も女も関係あらへん。好きになってしもうたもんは、仕方がないんや。特になのはちゃんは可愛いから、ぼやぼやしとったら誰かに取られてしまうで?」
「それは嫌だ!なのはの隣は私なんだから!」
「そ、そないに叫ばれても困るでフェイトちゃん。ちゃんと本人に伝えな、な?」
突然、私が大声を出したのに驚いたのか、はやては飛び退きながら答えた。
「フェイトちゃんもよう知っとるやろ?言葉にせぇへんと伝わらん事はあるんや。特に想いは行動にでんと、相手に伝わらんよ」
「うん、分かったよ。私、今からなのはに告白しに行くよ」
「え?それはちょっと急すぎんか?もうちょっと待ってもええんとちゃう?」
「私のスタイルは高速戦闘。即座に行動しないとね」
私の決意は固い。幸いまだ夕方だから、夜にはなのはに告白できる。私の想いを届ける事が出来る。
なんなら本局まで行っても良い。
「そ、そかそか。ならあたしが止める事やないな。頑張ってやフェイトちゃん」
「うん。ありがとう、はやて」
親指を立てて応援してくれるはやてに礼を言い、私は走り出した。
この胸の思いを愛しい人に伝える為に―――
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魔法少女リリカルなのはシリーズより
【なのフェイ】の百合CPです
恋人未満なのです