No.815169

艦隊 真・恋姫無双 89話目

いたさん

まだ夜戦が続きます。

2015-11-23 01:13:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:986   閲覧ユーザー数:860

【 先駆け の件 】

 

〖  司隷 洛陽 郊外の原野 にて  〗

 

一刀達は、鳳翔達と合流するため、歩みを早める!

 

本来ならば、早く駆け抜けたいところだが、この辺りは戦場より離れているので、周辺は闇。 足元に何があるのか見当がつかない。

 

ただでさえ、この周辺は数日前には戦場だった。 間違い無く、回収しきれない『物』が落ちている。 もし、引っ掻けて傷を負えば、破傷風等に罹患してしまい、下手をすれば死に至る可能性もある。

 

夜目が利く明命に道案内を頼み、その後を付いて行く一刀達。

 

そんな中、赤城から驚きの声が発しられ、足が止まり皆の注目を一身に受ける。 当の赤城にしては、そんな事を気にしていない。 顔色は闇夜の中ゆえ判らないけど、気配で驚愕している様子が、手に取るように判断できた。

 

ーー

 

赤城「────提督、艦載機より電信! 『敵艦隊、見ユ!』と!!」

 

一刀「まだ──敵艦が!? 敵艦隊の情報は判るか、赤城!」

 

赤城「──此処より西北西に向け、距離……凡そ八百メートル! 敵艦隊の全容は分かりませんが………人のように機動する巨大な16inch三連装砲の姿が……確認できたそうです!」

 

一刀「まさか………あの、深海棲艦か!? よりによって…………厄介な相手をっ!!」

 

赤城「提督──急ぎましょう!!」

 

加賀「このままでは危険だわ。一刻も早く……駆け付けないと」

 

ーー

 

赤城より伝えられた情報は、新たな敵艦発見の報!

 

艦載機により発見された艤装は、巨大な生き物のように動く『16inch三連装砲』との事。

 

その報告から割り出せば………適合する深海棲艦は、直ぐに出せる。

 

この艤装を使役して──数多くの苦難を乗り越え、自分に挑み掛かる連合艦隊を葬り、その海域を『アイアンボトム・サウンド(鉄底海峡)』と呼ばせ、出撃させた提督達を悉く絶望の淵に叩き落とした──姫系の深海棲艦。

 

───前の世界で『サーモン海域の悪夢』と語り継がれている『戦艦棲姫』の出現だけに…………この話を知る者達は狼狽する!

 

しかも──『戦艦棲姫』の出現先の延長上は、人間同士の戦いが繰り広げられている。 もし………戦艦棲姫が攻撃してくれば、一方的な大虐殺!

 

一刀達は、その場面を頭に浮かべ身震いする。 何としても、『戦艦棲姫』の攻撃を阻止して轟沈させなければと。

 

ーー

 

扶桑「足の遅い私達は後で追い掛けます! 提督、早く向かって下さい!」

 

一刀「──扶桑、山城を連れて一時待機するんだ。 瑞穂とイクは、二隻を護衛しつつ待っていてくれ!」

 

扶桑「──分かりました。 提督、どうか………武運長久を!」

 

山城「あのねぇ……提督。 もし、もしもだよ? 提督が戦死なんかして……姉さまを泣かしたら………一生恨んでやるから。 提督の馬鹿………って、生涯呪ってやるんだから。 嫌だったらねぇ……必ず戻って来なさいよっ!」

 

瑞穂「は、はい………分かりました。 皆さんの足を引っ張る事になるのですね? 瑞穂は大丈夫です! 此処で……皆さんの御帰還……お待ちしています! だから、皆さんも必ず……ご無事に!!」

 

ーー

 

扶桑は、高速の赤城達に先に向かってもらい、後で合流するつもりだった。 だけど、山城の飛行甲板破損を重くみた一刀は、合流ではなく待機を命ずる。

 

小破といえど、破損は破損………万が一、轟沈の可能性あれば、容赦なく戦場より離脱する事を命ずる。  その為、一刀の艦娘達は、轟沈する事こそなかったが、作戦上の遅延が生じるのは、当然の理屈だった。

 

それに、この行為は……自分達の戦力を減らす事にも繋がる。 それを分かっていながら、行うとするのが………一刀のやり方であった。

 

低速の艦娘は、その言葉の裏にある事を察し、素直?に命令を聞くが………一隻だけ、駄々をこねた。 

 

ーー

 

イク「イクは嫌なの! 提督と一緒にイクの……なの!」

 

一刀「こ、こらっ………我が儘を言うな。 一緒に行ける訳ないだろう」

 

イク「やだ、やだ、やだなの! イクもイク──ッ!!」

 

「「「…………………………」」」

 

ーー

 

イクの言葉を聞き付けて、驚きながら説得を行う一刀。

 

一刀としては、他には意味など無いのだが……周りの艦娘が赤面して黙りこむ。

 

ーー

 

イク「………だって、皆が自分達の出来る事やっているのに、イクだけ待つだけなんて狡いのよね。 イクだって、武勲艦の一隻なの! イク、負けないのなのね!!」

 

一刀「だかな……よく聞いてくれ、イク。 君は着任したばかりだ。 俺は着任したての艦は、直ぐに抜錨させない。 前の先輩達との連携が、上手く取れないからだ。 それどころか……先輩の足を引っ張る事も多いんだよ!」

 

イク「…………………」

 

一刀「それに、此処は水底深い海原じゃない、大陸の固い地上だ。『潜る』という最大の利点を無くした艦娘が、この原野に居るのは……非常に危険だ! だから………俺達の後ろに居て、待っててくれないか?」

 

イク「……………わかった……なの………」

 

一刀「………分かってくれたか!」

 

イク「───じゃあぁ、こうするのっ!!」グイッ!

 

一刀「───おっ、おいっ!!」

 

ーー

 

一刀の言葉を聞いて、頭を項垂れるイク。 

 

一刀がホッとした表情で近付くと……イクが勢いよく頭を上げて、一刀の腕を掴む! 驚いて腕を引く一刀だが……艦娘の力にびくともせず、あっさりと『御姫様抱っこ』をされてしまう!

 

ーー

 

イク「提督がイクに抱っこされて、出撃するなの! これなら、提督の背に付いて行けるから命令違反にならないなの! それに、提督がイクに乗っているから、イクが旗艦なのね! みんなぁ──イクに付いて来いなのぉぉぉ!!」

 

一刀「こ、こらぁぁ──止め『ムニィ~!』な、何だぁ? 柔らかい物が手に………? まさか………イクの!?」

 

イク「んふぅ………もう、提督ったら気が早いなの。 御褒美のマッサージはね………アイツらを倒した後でいいのなのね!」

 

イクが、一刀を抱っこしたまま……走り出した!

 

あまりの早業で、黙って様子を見ていた赤城達は慌てて覚醒、イクの姿を目で追う。

 

ーー

 

赤城「え……えぇーっ! あの子、そのまま提督を連れて走って行っちゃた!? 暗闇の中なのに、何で動く事…………」

 

加賀「なるほど……『水中音波探信儀(ソナー)』の応用ですか。 水中とは違い、音の伝達が悪いとは言え………なかなかやるわね」 

 

赤城「ま、まるで………蝙蝠みたいな子………」

 

加賀「──赤城さん、私達も急ぎましょう。 このまま、旗艦を勤めさせる訳には行かないわ。 提督の身も危うくなる可能性は大よ?」

 

赤城「皆さん、私達も行きます! 全員、抜錨! 目的の場所に急行します! それで、案内を………え、え~と………」

 

明命「………私は、姓は周、名は泰、字は幼平………真名を明命と言います! 貴女方に、私の真名を預けますので、どうぞ明命と呼んで下さい!!」

 

加賀「…………提督より聞いているけど、真名という物は、貴女自身の神聖なる名。 それを私達に預けても良いの……?」

 

明命「はいっ! 貴女方の一刀様への信頼、一刀様との絆……確かに拝見致しました! だから、私も貴女方なら信用できると思いましたので、預けさせて頂きます!」

 

加賀「………さすがに、気分が高揚しますね。 私は『加賀型 1番艦 正規空母 加賀』よ。 加賀と呼んで貰えば………」

 

赤城「私の名前は、『赤城型 1番艦 正規空母 赤城』です。 赤城と呼んで下さい! 他の子達は………『赤城さん、提督を追わないと!』───ご、ごめんなさい! 今は急ぐので、他の子達の紹介は後で!!」

 

加賀「………明命、案内をお願いしても?」

 

明命「了解しました! では、赤城さん、加賀さん──私の後に続いて来て下さい!」

 

ーー

 

明命が、イクの後を辿り走り出す!

 

赤城、加賀も、その後を見失わないように追い掛けて行った!

 

 

 

 

 

 

加賀「ボソッ(───提督を勝手に連れて行くなど……頭にきました)」

 

 

◆◇◆

 

【 明命視点 の件 】

 

〖  洛陽 郊外の原野 にて  〗

 

私は今、一刀様と……艦娘と呼ばれる天の御遣いの皆さんに同行して、場所を御案内しています。 この場所は、明りなど無い場所なので、足下どころか前方に伸ばす手も、ボンヤリとしか見えません。

 

だから、私の案内が必要と言われれば、嬉しいですし頑張りますが……正直………緊張しちゃてます。

 

だって……私をジッと見詰める方が一人居るんですよ。

 

加賀「…………………………」

 

…………何でしょうか? 確か、私と会うのは……今回初めての方なのに、一刀様と一緒に来た時から……メチャクチャ見られています!

 

な、何か粗相でも犯してしまったのでしょうか?

 

 

赤城『────提督、艦載機より電信! 《敵艦隊、見ユ!》と!!』

 

 

そんな時でした……もう一人の方から、急を告げる叫び声を上げられたのは。

 

私は驚いて立ち止まり、他の方達も歩みを止めて、情報を的確に判断しようと注視しています。 この緊迫感は、戦場往来を幾度も繰り返し、命のやり取りを行った者しか出せません。 

 

思わず……私も緊張して、思わず掌に汗をかいてしまいます。

 

しかし、その報告する方の傍には、別の細作や草などの様子を探りに行った方が見えません。 いったいどんな方法で探ったのか、興味がありますが。

 

 

赤城『──此処より西北西に向け、距離……凡そ八百メートル! 敵艦隊────』

 

 

はっ、八百………? 16iイ………三連装砲?

 

意味が………理解が出来ません! こ、これは………金剛さんが仰られた『天の国の違う言葉』なんでしょうか!? 

 

さ、流石です、このような言葉を適度に紛れ込ませ、部外者に分からないように意志疎通できるようにしているんですね! 冥琳様が、目を付けるだけの重要な事だと、今になりやっと理解できました!

 

だけど………少し………寂しいですね。

 

そんな事を考えていましたら………ま、周りの空気が重くなってる!?

 

まるで、確実な死が待ち構えているような………あの情報は、そんなに重要な情報だったのですかっ!?

 

な、なんだか………諜報任務に自信が無くなっちゃいますね………今回の仕事とは別なのに。 些か落ち込んでしまいますぅ……………うっ!?

 

 

イク『提督がイクに抱っこされて、出撃するなの!』

 

 

あっ、いぃ、えぇっ!?

 

な、何ですかぁ! あの布一枚に包まれ衣服に、隠す気がまるで無い胸を全面的に押し出した人はぁぁぁ!! あの穏様でさえ、普段は衣服を気に掛けて、胸をなるべく目立たないようにしているのにぃ!!!

 

それに────か、かか、一刀様が……御姫様抱っこで運ばれて行く!?

 

ま、まさか──これは、天の国式の行軍………じゃなさそうですね。 皆さんも唖然としていますし………良かった。

 

ああ………先程、報告されて居た方が………私の傍に!

 

 

赤城『皆さん、私達も行きます! 全員、抜錨! 目的の場所に急行します! それで、案内を………え、え~と………』

 

明命『………私は、姓は周、名は泰、字は幼平………真名を明命と言います! 貴女方に、私の真名を預けますので、どうぞ明命と及び下さい!!』

 

 

私は、名前を問われた時………既に真名まで預けようと思っていました。

 

最初に接した金剛姉妹さん達には、人柄も見て判断しました。 ですが、今回は一刀様の関係者、それに仲間を大事にする様子も見られました。

 

だから──私も真名を預け、この人達の中に入ろうと思います! 一刀様をどう思われているのかを、もっと確実に知るために!

 

 

加賀『…………提督より聞いているけど、真名という物は神聖なる名。 それを私達に預けても良いの……?』

 

明命『はいっ! 貴女方の一刀様への信頼、一刀様との絆……確かに拝見致しました! だから、私も貴女方なら信用できると思いましたので、預けさせて頂きます!』

 

加賀『………さすがに、気分が高揚しますね。 私は《加賀型 1番艦 正規空母 加賀》よ。 加賀と呼んで貰えば………』

 

 

───あ、あれ? この人、加賀さんが………今、微かに笑ってくれた。

 

もしかして………加賀さんも………私と同じ考えを?

 

 

加賀『………明命、案内をお願いしても?』

 

明命『了解しました! では、赤城さん、加賀さん──私の後に続いて来て下さい!』

 

 

加賀さんに促され、私は急いで目線で先程の方を捉えます!

 

小柄な身体で、大柄な一刀様を抱っこしたまま闇の中を進むため──あまり距離も離れていません! これなら他の方も、お連れしても間に合います!

 

私は、加賀さんに進言すると、待機を命じられた人達に相談を持ち掛け、一緒にお連れする事になりました。

 

『次の戦いは………今まで体験した事の無い戦いになるのでしょう。 だけど、私に出来る事は何でもしますから、どうか皆さん、死なないで下さいっ!』

 

そう心で願いながら──私は、闇の中に駆け出していました。

 

 

◆◇◆

 

【 迎撃 の件 】

 

〖 洛陽 郊外の原野 にて  〗

 

 

戦艦棲姫「港湾棲姫……北方棲姫。 愚カデ貧弱ナ……人間モロトモ………コノ地デ……シズミナサイ!!」

 

艤装「ガアアァァァァァァ─────ッッ!!!」

 

ーー

 

戦艦棲姫が冷酷無慙な命令を伝えると、艤装は見た目に反して大人しく従い、巨大な口より───砲弾を発射したっ!!

 

艤装の口から発射されし轟音が、耳を塞ぎたくなるくらい響き渡る!

 

紅く光輝く砲弾は、流星のように飛翔して、天へ向かう! そして………昇り詰めた時、落ちるのだ………大勢の者が死闘を繰り広げる戦場に!!

 

そうすれば───戦場一面、生ある者は皆無……北方棲姫も、港湾棲姫も……この地で、息絶えて絶命していたであろう。

 

 

──────しかし!

 

これに、反応して迎撃の準備をしていた艦娘が………一隻だけ居た。

 

ーー

 

??「古代大陸では………太陽が増えすぎて、英雄が弓矢で射落とした聞いています。 ならば、英雄など烏滸がましい私ですが、仮りそめにも天の御遣いとして呼称に連ねる者。 同じく人に害する物なら、射落とすが定め!」

 

ーー

 

『鳳翔型 1番艦 軽空母 鳳翔』が、駆逐艦達に護衛を頼み、艤装の大弓に矢をつがえ狙いを定める!

 

矢尻は普通の矢尻なれど、鳳翔が込めた必中必殺の氣が宿る為か──淡い光を放つ。

 

ーー

 

鳳翔「それに、これを射落とせねば………提督の名に傷が付きますし、何より提督の哀しむ顔など…………私は見たくなんか───ありません!!」

 

ーー

 

目標物───16inch三連装砲の放った砲弾! 

 

狙い時は、昇り詰めて失速した直後。

 

──そこ以外で狙えば、爆風で他の者が死傷する! なるべく被害を最小限に抑える為、その位置を予測し、風速、方位、辺りの状況──全てを頭に叩き込み、砲弾を迎撃する事だけに集中した!

 

ーー

 

鳳翔「私だって──やるときは、やるのですよっ! 行きなさい!!」

 

ーー

 

鳳翔の目が、砲弾の減速を見定め……予測位置に向かい──掴んでいた弦を更に引いて───射った!!

 

弦より放れた矢は、主の想いに応えるように上空高く翔び、光の帯を残しながら高速で進む。 そして、目標となる……予測到着地点に向かう!

 

双方の艤装から放たれた物は、どちらも攻撃を主とした物。 されど、その目的は相反する。 しかし、これは物自体の善悪ではなく、使用者の使い方次第。 ────物自体には罪など無い。

 

そんな、相反する目的で放たれた二つの物。

 

戦艦棲姫の艤装『16inch三連装砲』が放った砲弾。

 

対して鳳翔が艤装より射た矢が───上空数百㍍の雲の中で、激突した!!

 

ーーーーー!!

ーーー★☆★

ーーーーーーーー!!!

 

双方の砲撃が衝突、互いに爆発に干渉し合い打ち消す!

 

普通なら──大和型の艦娘が、一撃で大破される威力を誇る16inch三連装砲なのだが、鳳翔の攻撃を無効化できない!

 

それどころか攻撃範囲を、地上では無く、上空に拡散させるような動きを見せた。 そのため、16inch三連装砲の自体の攻撃は無効化できたが、干渉しあった衝撃波だけは、地上へと………注がれた!

 

★☆☆

 

 

華琳「────くっ!! な、何なの! 何が……きゃあっ!?」

 

秋蘭「華琳様、御無事ですかぁ!?」

 

華琳「天が……真っ赤に燃えている!? こんな事………まさか……左慈が言っていた深海棲艦の………?」

 

左慈「ほう──気付いたか。 これが北郷の仕業だと、寝惚けた事を言うかと思えば、まともな事も考えているようだな?」

 

秋蘭「無礼だぞ──左慈!」

 

華琳「いいのよ………北郷達には、何度も窮地を救われた身。 逆に考えれば、その時に私の命を奪えば良かったのに、今更、こんな攻撃を仕掛けるなんて、間が抜けているわ。 そこから導きだせば……答えは一つのみ!」 

 

左慈「ふん………流石、『覇王 曹孟徳』だ。 しかし、正解………と言ってやりたいが、半分だけに過ぎん。 お前達は、また……北郷の仲間に助けられた身だと……言っておこう!」

 

秋蘭「───どういう事だっ!?」

 

左慈「深海棲艦の攻撃は、こんな物では無い。 本来なら──この戦場に居る者全員、跡も残らず消えてしまう程の攻撃を仕掛けられたからだ!」

 

「「───────!」」

 

★★☆

 

雪蓮「もぉ───あと少しだったのに、逃げられたじゃない! 誰よ、こんなとてつもない攻撃してくるのはっ!?」

 

冥琳「雪蓮、無事──のようだな。 私と違い殆ど無傷で何より………ぐぅ!」

 

雪蓮「冥琳っ! どうしたの? 于吉に襲われたりしたの!?」

 

于吉「…………冗談でも、止めて頂きたいものですね? 左慈一筋の私が、戦場でそんな事をやろうなどと、本気で思っているのですか!?」

 

雪蓮「もちろん冗談よ? この傷は打撲、多分……天からの風で飛ばされたのね。 ちょっと、ごめんね──冥琳『う、うぐっ!』………ふぅ、骨に異常は無いわ。 良かった………これくらいの怪我で済んで…………」

 

于吉「私が気付いていれば良かったのですが………申し訳ないですね。 あの者達が、私の探索範囲を越えた場所に居たようで、捉えきれていなかったようです。 術を発動させる前に、攻撃されるとは……不覚でした」

 

雪蓮「───じゃあ、誰が……そんな攻撃を阻止して………あっ! ま、まさか、あの御遣い君の仕業………?」

 

于吉「正確には、北郷に従う艦娘の一人ですよ。 それも………何やら規格外過ぎた力を持っているようで、正直……首を傾げています。 あの艦娘に、そのような力など無い筈なんですが……………」

 

★★★

 

港湾棲姫「ミ、皆……大丈夫!?」

 

北方棲姫「ホッポ………大丈夫。 コイツモ………」

 

ねね「庇ってくれた礼ぐらい……言えるのですぞ!」

 

ーー

 

恋「月、詠は………っ!?」

 

華雄「し、心配するな──私が………護り切った……ぞ……」ガクッ

 

月「か、華雄さん───しっかりして下さい!!」

 

恋「………華雄!?」

 

月「れ、恋さん! 空が真っ赤になって、強烈な圧迫感が襲い掛かって来たと思ったら、華雄さんが、私達を庇って覆い被さってくれて!!」

 

詠「ちょ、ちょっと、ボク達が無事でも………アンタが無事じゃないと意味ないのよ! ほらっ、何時ものように、ボクに言い返して見なさい!! ねぇ──華雄! 華雄っ!!」

 

 

 

◆◇◆

 

【 夜戦 の件 】

 

〖 洛陽 郊外の原野 にて  〗

 

天上が焦げる様子を、静かに眺める深海棲艦達。

 

思ったより被害が少なく、些か機嫌が悪い様子を見せる。

 

ーー

 

離島棲鬼「失敗……外レタ。 残念…………」

 

戦艦棲姫「ソウ………失敗ノヨウネ。 ナラバ………何度デモ………何度デモ………」

 

鬼灯「そうね………ただの偶然よ。 迎撃なんて………艦娘如き………できる訳が………」

 

ーー

 

戦艦棲姫は、16inch三連装砲に再び砲撃の準備をさせる。

 

巨大な身体を支える両腕に、力を再び込めて放物線の角度を調整。 艤装とは思えない堅固な歯を備える口に、再度の砲撃を放つべく砲弾を準備。

 

更なる悪夢を見せる為に狙いを定め、発射準備を終わらせる。

 

ーー

 

戦艦棲姫「今度コソ……ミナ………沈ンデシマ…………………エッ?」

 

戦艦棲姫が、16inch三連装砲に砲撃を命じようとした時、少し先の暗闇から声が聞こえる。

 

ーー

 

??「夜は良いよね~、夜はさぁ。 辺りを闇に包んで、醜い物や汚い物を隠して見えなくしてくれるんだから………」

 

戦艦棲姫「貴様……! 姿ヲ………現セ!! コノ……私ガ……アイアン……ボトム……サウンドニ……シズマセテヤルッ!」

 

ーー

 

戦艦棲姫が前に出て叫び、その後ろに離島棲鬼が隠れる。

 

鬼灯が、油断なく周囲を確認したが………相手は嘲笑うかのように………数を増やして、更なる言葉での圧力を加える。

 

ーー

 

??「まぁ……そう焦んないで、夜は長いんだよ。 それに、闇で蠢く相手なら、此方も闇を制する艦娘じゃなきゃ……不公平でしょ?」

 

??「それにですね。 まさか………夜戦を得意とする私達が………たかがアレくらいで轟沈したと………思っていたのですか?」

 

??「那珂ちゃんのゲリラライブ……もう少しで始まるからねぇ! えっ? 名前を隠す意味が無い……じゃあ……この台詞はオフレコで……きゃは☆」

 

??「艦娘初の夜戦、なかなか面白い! まるで、昔の忍者になったようで、気分が高まるな! 流石に分身の術とか使えないが、煙を出して消える事は可能だ。 ………………秋刀魚と七輪があればな!」

 

??「んふぅ………夜戦、夜戦っぽ……アイアンボトム………あ、あれ? 何だか身体が……滾ってきた!? 何だか……昔の記憶が甦るっぽい…………!!」

 

ーー

 

鬼灯「それだけ的が増えれば、誰かに当たるわ………戦艦棲姫、砲撃なさい!」

 

戦艦棲姫「ナンドデモ……シズメテ……アゲル……!!」

 

ーー

 

鬼灯がキレて、戦艦棲姫に砲撃を命じる!

 

戦艦棲姫は、16inch三連装砲の艤装を動かし………声の集まる場所に向ける。

 

艤装「ガアァアアア『待っていたわ──はいっ、贈り物!』──ングゥ!?」

 

16inch三連装砲が口を大きく開くと、闇より素早く現れた川内が、手に持った物を落とし込む!

 

それは────『酸素魚雷』!!

 

ーー

 

川内「私から貴様に渡す………最初で最後の贈り物………それはね───」

 

艤装「ゴワアアァアアアァァァ───ッッ!!」ドゴオォォォン!

 

川内「───『死』………だよ!」 

 

ーー

 

川内は、16inch三連装砲の内部で『酸素魚雷』の爆発音を聞き付け、直ぐに退避するように周りの艦娘達に知らせ、自分も離れて伏せた!

 

鬼灯、離島棲鬼も──直ぐに、戦艦棲姫の側から離れる!

 

16inch三連装砲の艤装が、口より炎を吐き出し、身体のアッチコッチが誘爆していくが………首と接続している戦艦棲姫は、逃げられない!

 

戦艦棲姫「ハ、離レナイ! 離レナイ!! ダ、誰カァアアア───」

 

誘爆した炎は、戦艦棲姫も巻き込み───自爆した!!

 

★☆☆

 

川内「残りは───お前達だけ! 私達を甘く見たのが敗北よ!!」

 

川内の側に──神通、那珂、夕立、磯風が左右に並び立つ。

 

憎々しげに川内を睨む離島棲鬼。

 

そして………今だにドヤ顔を崩さない鬼灯。

 

そんな、鬼灯の少し先で───松明の灯りが付き、大きく丸を描く。

 

ーー

 

鬼灯「確かに………やられたわね。 だけど、まだ終わらないわよ? まだ、まだ………よ!!」

 

川内「負け惜しみを──!! 私達が居れば、夜戦に置いて敵は無い! 覚悟するのね──深海棲艦共!!」

 

鬼灯「負け惜しみかどうかは───これを見てから言いなさいな!!」

 

ーー

 

鬼灯が叫ぶと───両側から炎の線が現れ、先程の主戦場を囲むような燃え出した。 一本の細い線だった部分が、所々で爆ぜて火の廻りを早める!

 

ーー

 

鬼灯「早く消火しないと───原野に居る全員、周りの村まで燃え移るわよ! 私とそれでも戦いたいというのなら、応じるけど……ね? さっきの爆風で、人間達にも動けない者が出たようよ? どうする……どうするの?」

 

ーー

 

鬼灯の顔は、炎に照らされ──更に醜く見えた。

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

 

色々と……大量に書き直したりして、時間が掛かりましたが……何とか書き上げれました。 因みに、この戦い……伏線を張り巡らしたので、どこかで伏線が現れると思います。 結構、重要な……話ですが。

 


 
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