No.814643 九番目の熾天使・外伝 ~短編㉕~竜神丸さん 2015-11-20 17:33:08 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1586 閲覧ユーザー数:786 |
「それで、私に一体何の用ですか? No.13」
「私達はお互い、機関から抜け出した身……私の事はリーゼと呼んで下さい。リバインズさん」
海鳴市、とある陸橋下にて。かつての実験体仲間であるNo.13―――リーゼ・ガルバンディアと偶然の再会を果たした竜神丸。竜神丸と再会出来た事に嬉しそうな笑顔を浮かべるリーゼに対し、竜神丸は彼女がこの海鳴市にいる理由が分からず不可解そうな表情を浮かべていた……否、海鳴市にいた理由が薄々分かってきたからこそ、彼女が自分の前に現れた理由が余計に分からなかった。
「…あなたはこれまで一度も、私の前に現れる事は一度も無かった。しかし、私が現在遂行中の調査任務を遂行している最中に、あなたはタイミング良く姿を現した。それも、この海鳴市で自爆テロが発生し始めた時期と同じタイミング。これだけで、あなたがこの海鳴市にいる理由は何となくですが把握しました……あなたですね? ロックシードを使った自爆テロの首謀者は」
「……」
「しかしそれだけでは、あなたが私の目の前に現れた理由、あなたがロックシードなんて代物を取り扱っている理由、そして私の所属する組織の関係者ばかりが自爆テロに巻き込まれそうになっている理由がイマイチ分からないんですよね。故に、それらについて一通り分かりやすい答えを教えてくれると、私としては非常にありがたいんですがねぇ? No.13……ではなく、リーゼさん」
「…流石ですわね、リバインズさん♪」
竜神丸の言葉に、リーゼはウフフと微笑みながら語り始める。そんな彼女の手にも、一つのザクロロックシードが握られていた。
「あなたの言う通り、この街の民間人達にこのロックシードを配ったのは私です」
「…やけに素直に答えますね」
「あなたは私にとって
「ほぉ、旅団の存在も知っているとは……だとすれば、あなたがこのロックシードによる自爆テロで他の関係者達を狙ったのは、現在ヘルヘイムの森について研究中である私を現場に引っ張り出す為……しかしそれなら、あなたにそのロックシードを与え、あなたに旅団の情報を教えたのは誰です?」
「狗道供界様ですわ」
「…ッ!?」
想定外の答えに竜神丸がまたもその目を見開き、リーゼは両腕を上に上げながら目を閉じる。するとリーゼの背後に数人の民間人が集まって来た。いずれも、ザクロロックシードの効果で洗脳済みだった。
「どうやって生きれば良いかも分からないでいた私に、供界様は素晴らしい力を授けて下さいました。全てを破滅に追い込む力を……世界を、私の思うがままに変えられる力を……私はこの力を使い、無に帰したいのです。今ある世界に存在する、偽りの平穏を」
「…偽りの平穏?」
「そう……リバインズさん、あなたも知っている筈でしょう? 今あるこの世界が、腐りに腐り切った人間ばかりが蔓延っている事を。その腐り切った人間の所為で、かつて私達は一体何をされましたか? 奴等は私達を兵器に変えようとした。力の無い人間達は、その兵器に変えられた私達を忌み嫌い、蔑んだ。私達だけじゃない。私達以外にも、人ならざる力を持ってしまったが故に苦しんでいる者達はたくさんいらっしゃいます」
「…まぁ、それは確かに」
リーゼの問いかけに、竜神丸の脳裏には様々な人間が思い浮かんだ。かつて自分達をサイキッカーという兵器にしようとした、異能力研究機関の汚い人間達。旅団に加入する前の自分が所属していた事のある、製薬会社アンブレラの傲慢な人間達。竜神丸には、リーゼの言葉を否定する要素が無かった。
「しかし、それでは尚更分かりませんね。それを実行したいのであれば、何故あなたは私の前に現れた?」
「それは至って単純な理由です……リバインズさん、あなたを仲間に誘いに来たのです」
「…何ですって?」
「もちろん、あなたのお姉さん、それにスノーズさんもこちら側に引き入れるつもりです。復讐したいと思いませんか? 私達サイキッカーを、人として扱おうとしなかった愚劣な劣等種共に……かつてあなたが、私達を率いて機関から抜け出した時のように」
「……」
リーゼは閉じていた目を開き、竜神丸にその手を差し伸べる。彼女の開いた目を見て、竜神丸は気付いた。彼女の瞳が、濁りに濁ってしまっていた事に。
「…私は…」
「やっと見つけたぜ」
「!」
その時、支配人の変身した斬月が竜神丸の隣に着地。斬月は既に抜刀していた無双セイバーの刃先を、洗脳された民間人達を率いているリーゼへと向ける。
「おやま、支配人さん。大丈夫だったんですか? 先程そちらでも、自爆テロが起きていたようですが」
「あぁ。斬月に変身したおかげで、何とか助かったぜ」
時は少しだけ遡る…
≪≪≪≪≪ザクロ!≫≫≫≫≫
「ッ…!!」
≪メロン!≫
トンネル内部にて、ザクロロックシードを開錠して一斉に駆け出す民間人達。支配人はすかさず戦極ドライバーを装着し、構えていたメロンロックシードを開錠、戦極ドライバーに装填してカッティングブレードを倒すまで、十秒もかからなかった。
≪ソイヤッ! メロンアームズ! 天下・御免!≫
『『『『『ピピピピピピピピ…』』』』』
「くそ―――」
-ドガガガガガガガガァァァァァァァァァァァンッ!!!-
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」
民間人達は連鎖する形で一斉に自爆。出現したメロンディフェンダーで爆発の衝撃を正面から受け止めた斬月は強く吹き飛ばされ、地面を何度も転がされたのだった。
「ふぅ……危なかった。マジで便利だな、この盾」
そして、時系列は今に至る。
「―――で、どうにか無傷で済んだと」
「そういう事だ……まぁそれはさておき。見た感じだと、あの娘なんだろう? 今回の自爆テロの首謀者は」
斬月はリーゼに向けている無双セイバーを降ろさないまま、竜神丸に問いかける。一方で、無双セイバーを向けられているリーゼは今も微笑んだ表情のままだったが……その濁りに濁った瞳は、全くと言って良いほど笑ってはいなかった。
「私が今お話をしているのは、リバインズさんです…………部外者には引っ込んで貰うわ」
リーゼは両手に持ったヒマワリロックシードを開錠し、その場に放り捨てる。更にはマツボックリ、ドングリ、パイン、イチゴ、マンゴー、キウイと、複数のロックシードを開錠しては次々と足元に放り捨てていく。そうすれば当然…
「「「「「グルァァァァァァァァァァァァッ!!」」」」」
開錠したロックシードの分だけ、インベスも大量にクラックから出現する訳である。
「!? おいおい、マジかよ…っと!!」
「…!!」
現れたインベスは初級インベスだけでなく、シカインベスやコウモリインベス、カミキリインベスやセイリュウインベスなど選り取り見取りだ。斬月は襲い掛かって来たカミキリインベスのパンチをかわし、竜神丸は近くにいた初級インベスを蹴り倒す。
「それではリバインズさん。良いお返事をお待ちしております」
「ッ…待て!!」
斬月はすかさず無双セイバーから弾丸を発射するが、それより前にリーゼは洗脳した民間人達と共に、一瞬でその場から転移して姿を消してしまった。ターゲットに逃げられた以上、斬月は仕方なく、大量に出現したインベス達の討伐を優先する。
「こんなに数がいると面倒だ……竜神丸、少し時間を稼げ!! とびっきりデカい技を使う!!」
「全く、私をパシリに使おうとは……まぁ良いでしょう」
≪マスカット!≫
「変身」
斬月からの頼み事に溜め息をつきつつも、竜神丸は戦極ドライバーを装着。爪で斬り裂こうとして来たセイリュウインベスの避け、開錠したマスカットロックシードを戦極ドライバーに装填する。
≪ハイィ~! マスカットアームズ! 風・刃・セイヤットウ!≫
「…ふっ!!」
「ギャアッ!?」
マスカットアームズを被り、竜神丸はアーマードライダー
「さて、コイツを使うのは初めてだな…っと」
≪ウォーターメロン!≫
斬月は戦極ドライバーからメロンロックシードを取り外した後、代わりに小玉スイカを模したウォーターメロンロックシードを開錠し、斬月が上半身に纏っていたメロンアームズが消滅。頭上のクラックからは、メロンアームズと酷似しているが配色の違うウォーターメロンアームズが出現し、斬月はウォーターメロンロックシードを装填する。すると戦極ドライバーのライダーインジケータに描かれていた斬月の横顔が変化し、カラーリングが専用の配色になる。
≪ソイヤッ! ウォーターメロンアームズ! 乱れ玉・ババババン!≫
カッティングブレードを倒した瞬間、ウォーターメロンアームズが斬月の頭に被さる。それが鎧に変形して上半身に装着された瞬間、斬月の素体スーツであるライドウェアにも変化が起こり、金色だった部分が一斉にメタリックレッドの配色に変わる。
“アーマードライダー斬月・ウォーターメロンアームズ”は無双セイバーを鞘に納めた後、盾とガトリング銃が合体した武器―――ウォーターメロンガトリング(以下WMガトリング)を両手で構え、再び戦極ドライバーのカッティングブレードを倒す。
≪ウォーターメロンスカッシュ!≫
「ふぅぅぅぅぅぅ…」
斬月は大きく息を吐き、WMガトリングをインベス達に向けて構える。インベス達は龍刃と戦闘中の為、斬月がやろうとしている事には気付いていない。
「!! おっと…」
斬月がやろうとしている事に気付き、龍刃はWMガトリングの軌道から外れるように横へと退避。
そして…
「…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
-ドガガガガガガガガガガガガガガガ!!-
「「「「「ギギャギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!??」」」」」
WMガトリングから放たれた無数の弾丸が、インベス達の身体を次々と撃ち貫いていく。元々、通常攻撃ですら高火力を誇るWMガトリングなのだ。それで必殺技を発動した以上、インベス達には大爆発して消滅する以外の道は何も残されてはいなかった。
「…ぬ、ぅぐっ!?」
インベス達を纏めて倒した後、斬月はその場に膝を突いてウォーターメロンロックシードを取り外し、すぐに変身を解除。変身が解け、支配人は苦しそうな表情を浮かべながら大の字に倒れる。そんな彼を、竜神丸は呆れたような表情で見下ろす。
「はぁ……はぁ……ス、スカッシュだけで……こんなに、キツいとは…な…!」
「…火力の馬鹿高いウォーターメロンでやったんだから、そうなって当然です。あなたもあなたで無茶をするものですねぇ、支配人さん」
「はん……そりゃどうも…!」
「「フンッ!!」」
「く…うわっと!?」
一方、ディアーリーズは龍星に変身し、二人の黒影トルーパーと戦闘中だった。二本の双星刃による二刀流で戦いを繰り広げる龍刃だったが、現在彼が対峙している黒影トルーパー達は機動力が非常に高く、龍星の攻撃を軽々とかわしては彼に着々とダメージを与えていっていた。
「ハッ!!」
「ぐぁっ!?」
黒影トルーパーの影松で一突きされ、地面を転がる龍星。並の相手ではないと判断したのか、龍星は黒いユニット型パーツ―――ゲネシスコアを取り出した。彼は戦極ドライバーに付いていた、龍星の横顔が描かれているライダーインジケータを取り外し、そこにゲネシスコアをセットする。
「竜神丸さんから実戦データの採取を頼まれてますからね……使わせて貰います!」
≪レモンエナジー!≫
そしてレモンエナジーロックシードを取り出し、龍星はそれを右手に構えて開錠。すると戦極ドライバーに装填されていたスターフルーツロックシードが閉じ、スターアームズが変形前の状態に戻って龍星から離れる。
「よっと!」
「「グゥッ!?」」
龍星は変形前のスターアームズを弾丸のように放ち、黒影トルーパー達に命中させる。一方で、龍星の頭上のクラックからはレモンエナジーアームズも出現し、戻って来たスターアームズと融合する事で大型の黒いアームズに変化。龍星は再びカッティングブレードを一回倒し、スターフルーツロックシードとレモンエナジーロックシードが同時に開く。
≪ミックス!≫
そして黒いアームズは龍星の頭に被さって変形。レモンの断面図が複数描かれた、陣羽織のような形状をした鎧として装着された。
≪スターアームズ! セイバースター・オンステージ!≫
龍星は新たな姿を得た。
≪ジンバーレモン! ハハァッ!≫
“アーマードライダー龍星・ジンバーレモンアームズ”としての姿を。
「ここからは、僕のステージです!」
「「グォオッ!?」」
龍星は出現した赤い弓矢―――ソニックアローをすかさず構え、エネルギーで形成された矢を数発放つ。放たれた矢は黒影トルーパー達に命中し、彼等を勢い良く吹き飛ばして壁に叩きつけた。
「す、凄い……力が、今まで以上に漲って来る…!」
「ッ……フンッ!!」
「おっと、攻撃はさせません…よっ!!」
「ヌグ!?」
「グワァッ!?」
立ち上がった黒影トルーパー達は再び影松を構えて襲い掛かるも、龍星はソニックアローを剣のように持ち、襲い来る彼等に斬撃を命中させる。その斬撃はたった数回でとてつもないダメージを与えたようで、黒影トルーパー達は斬撃の命中した胸部を押さえつつ既にフラフラ状態だった。ケリをつけるべく、龍星はカッティングブレードに手をかける。
「一気に終わらせます…!!」
≪スターフルーツスカッシュ!≫
≪ジンバーレモンスカッシュ!≫
カッティングブレードを倒し、龍星はその場から跳躍。空中に跳んだ龍星と地上にいる黒影トルーパー達の間に、スターフルーツとレモンの断面図を模したエフェクトが交互に出現し、龍星は飛び蹴りの体勢のままエフェクトを次々と通過していく。
「せい、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「「グァァァァァァァァァァァァァァッ!?」」
龍星のライダーキック“
「ふぅ……ひとまず、これで良しっと」
龍星は戦極ドライバーに装填していたロックシードを二つ纏めて閉じ、変身を解除。ディアーリーズの姿に戻ってから、足元に落ちている二つのザクロロックシードの回収を完了するのだった。
一方、
「海鳴市で、黒の菩提樹の関係者による自爆テロだと?」
「はい。既に竜神丸様、支配人様、ディアーリーズ様の三名が海鳴市まで調査に向かっております。いかがなさいますか?」
他の調査任務を終えたばかりのokakaも、桃花からザクロロックシードによる自爆テロの件について情報を聞かされていた。okakaは参ったなと言った表情を浮かべる。
「海鳴市の契約先に被害があっちゃいかんからな、俺もすぐに現場に向かおう。桜花、今回はお前も一緒に付いて来い」
「…了解」
okakaの指示を聞いて、銀髪ショートヘアの侍女人形―――
「ちょうど、お前の分のエナジーロックシードも調整が終わった。ゲネシスドライバーは既に渡してあるから、これを使って変身しな」
「…畏まりました」
okakaが桜花に投げ渡した物、それは…
≪マツボックリエナジー!≫
マツボックリロックシードから更に強化された錠前―――マツボックリエナジーロックシードだった。
To be continued…
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闇のアーマードライダー その3