No.814198

超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス

さん

FGOプレイ中………ジャンヌ育成大変なんじゃ~

2015-11-17 18:38:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:753   閲覧ユーザー数:741

「宝玉と血晶、確かに受け取ったよ」

 

アイエフの手によって渡された依頼した素材を確認して、神宮寺ケイは安心したように笑み浮かべながら、素材を係員に渡す。漸く肩に圧し掛かった荷物が一つ減ったと安心するように、疲れが込められた深いため息をついた。

 

「これでゲイムキャラの場所を教えてくれるんですよね?」

「そういう契約だからね。喜んで教えるよ」

 

あらかじめ用意しておいておいた地図を前にケイはここからそう多くないダンジョンを指さした。

 

「ここにゲイムキャラがいるそうだよ。本当はもっと遠い所にいたのだけど、突然こちらに移動したそうだ。汚染化モンスター増加に関係しているのかな?」

「……知っている癖に性格悪いわよ」

「彼のお蔭で連日処理に睡眠時間が削られているんだ。少しぐらい嫌味を言ってもいいだろう?首謀者自身がこの場にいないのは不思議だけどね。彼は真面目だからこちらに来て土下座でもしそうだけど」

 

化粧で誤魔化しているが、じっと見るとケイの目元には黒い隈が見える。これは相当激戦を潜り抜けたのだと彼女達は苦虫を噛み砕いたような顔をする。アイエフは頭を掻きながらこの場に紅夜がいない事を説明する。

 

「人混みだとネガティブエネルギーが見えすぎるらしいわよ。……街に入ろうとしたら、顔真っ青にして吐いたりしていたから、街外で待たせているわ」

 

更に空亡も人混みを嫌って入ろうとはしなかった。

片目を瞑って見るに堪えない者を見てしまった様に震える拳を作って恐怖と戦っている様な様子だった。無理はさせられないと人気のない場所で待機してもらっている。街外で紅夜と共に待つと言う手段もあったが、二人っきりという空気はお互いに無理のようだ。

 

「なるほど、中々大変な時期のようだね。……それでも、彼がブラッディハードである以上は責任はあるがね」

「責任って……」

「ネガティブエネルギーを税金と考えたら分かりやすいだろう?国民から集めた者を彼は悪い方にしかも独断で使ったんだ。如何なる理由があったとしても、人の上に立つ存在である以上は相応の処罰が下されるのが常識だ。君達が彼の何もかもを知って訴えたとしても、それは結局の所感情的問題であって、彼を知らない人は納得しない。見知らぬ誰かに災害を与えて恐怖させるのが、彼の存在意義だからね」

 

声を上げようとした彼女達の口が止まる。

ケイの言っていることは間違いなく正論であるが故に。

元より女神を高める為の必要悪なのだから、誰もから寵愛を受ける女神とは逆でブラッディハードはそこにいるだけで誰もが憎悪を抱き、嫌悪する存在なのだから。

女神の夢を守る為に、モンスターを生み出さない為に、たった一人で冥獄界に赴き平和が訪れたと思われたが突然のモンスター発生に平和だった日々はあっという間に変わって、女神も原因を解明しようとするが囚われてしまった。

とどのつまり、ブラッディハードの失敗が全ての始まりだと言えるのだ。

 

「それでも、私はお兄ちゃんを助けたい、そしてゲイムギョウ界も救って見せます」

「……決意があるのなら、僕はただ見ているよ。先ほどマジェコンヌ側の使者からも連絡がきていてね。モンスターは一通り討伐が完了、そして縁を切ったよ。……あっちも予想していたのか、気にするほど余裕がないのか、手早く終わったけどね」

「……あっさりとしているわね」

 

国を守る為に、マジェコンヌと手を組んだケイの爽やかな表情にアイエフは口を開く。

それに対してケイは目を落して、語り始める。

 

「正直、この件についてもう人間にはどうにもならないね」

「……どういう意味です?」

「マジェコンヌの四天王、そして四女神を相手に勝利するレイス・グレイブハードと彼らの下にいる部下達、それら全て把握している訳じゃないけど、確認できる戦力だけでその気になれば、二つくらいは国を支配できるんだよ」

 

幾らゲイムキャラの守護は比較的弱いモンスターに効力を発揮するが、【汚染化】モンスターや接触危険種のモンスターとなると話が変わってくる。

そして今回のネクストブラッディの顕現によってゲイムギョウ界そのものが傷つき、莫大な負が発生する原因となってモンスターの生活は激変したことによって、良くない事が次々に発生する。ラステイションの軍も総力を持って国の守護に回している事で均衡を保っているが、崩壊する危険性も十分にある。

 

「彼らたちの目的はあくまでゲイムギョウ界の覇権を握る事。しかし、決定的な物が足りない物のお蔭でボクらの国は占領されずに済んでいる」

「女神の守護の力ですか?」

「そう、人々の生活環境を守護する力。彼らは人を人を使って守る事しか出来ない。彼らが崇めるマジェコンヌは娯楽と不正の象徴、モンスターという人の負によって生じる現象を対処できる存在ではない。だから彼は戦力を整えながらも国を乗っ取れない。彼らも女神の守護の力によって守られている以上はね」

「……なるほど、確かに人には出来ない問題ですの」

 

それは多くの人々を一気に守る人を超えた力、神の如き神秘の御業。

今までゲイムギョウ界の歴史には常にそれがあり、ゲイムギョウ界人の文化と進化を守ってきた絶対的な物。

女神に対して不穏感を抱き、マジェコンヌを崇める彼らからすれば女神の様に生活環境を永続して守れる象徴はない。

 

「彼は中々考えていたよ。力で無理やり占拠して封じ込めても、いずれ崩壊がくる。寵愛され続ける女神と信仰し続ける人間の関係も同じように枯れ果てていくとね。だから彼はマジェコンヌという力の象徴を作り出して、女神に頼らない世の中を人間が己の力で力を蓄えモンスターというある種の人間の暗黒面と戦いづづけるそんな世界を。……言ってしまえば、女神のいない世界の女神の代わりになる『人のための正義』を創ろうとしているんだね」

「…………女神を全否定ね。はは、そこまで行くとむしろ爽快ね」

「マジェコンヌも飾りでしかないって所ですの。……そいつ本当に人間ですの?」

「人のための正義って……なによ。それ……」

 

日本一の脳裏にはレイス・グレイブハードの言葉が蘇る。

《自らの発展の為に世界を汚して、問題起これば先送りして若い者に押し付ける人間か?

 人の正しさを餌するだけの女神か?

 全て生物の父であり母であるこの星か?

 -----お前は『何の』正義のヒーローだ?

 それが定まらない限りはお前は俺の敵でもないぜ》

日本一の正義はただ、弱き者を助ける為、傷つく人の助けになりたい『誰かのための正義』。振り子のようにどこにも簡単に向いて、簡単に離れる半端な物でしかない。

 

 

 

「ボクから言えるのはただこれだけだ。ゲイムギョウ界の、女神の、人間の絶対悪は---ブラッディハード。それだけしか存在しない」

 

 

 

 

『厳しい言い方だけど、街から離れてそこまで顔歪めるじゃまだまだブラッディハードの力は使えないよ』

 

淡々と話すデペアの声に紅夜はラステイションの街並みから目を背ける。

【汚染化】モンスターの大量発生によって生じる政治的にも生産的にも生じる問題。

一見活発的に見える街並みも疑心暗鬼の声、意味もない暴言、薄汚れた欲望の坩堝、それはネガティブエネルギーを見て感じ取れる紅夜にとっては、人々の集まりは毒沼が放つ瘴気と言っても過言ではない。

しかもこのような事態を引き起こした一片を握る身であり、弱かったからこそこうなってしまった事に心が軋む罪悪感は、言いようのない暗鬱とした気分にさせる

 

しかし罪悪感によって生み出された責任が彼の最後の最後を守っている。

この手を握ってくれた女神がいる。

何もかもを忘れてしまった自分に笑いかけてくれる女神がいる。

故にボロボロに朽ち果てながら、崩れ落ちながらも紅夜の未だ心は折れない。折れてはいけない。

 

「…………あ」

 

微かに感じた気配の方に目を凝らして見る。何かがこちらに向かってくる。

それは人ではない。周囲のネガティブエネルギーと同化しないままの存在は紅夜によって闇の中に浮かぶ一つ光。

ネプギアが帰ってきたとのか?他の奴らは?疑問を浮かべながらその気配は街を出て、少し離れた紅夜を目指して進んできた。

まさか、と思ったその時には姉そっくりの黒曜石のような美しい髪をした彼女は微笑みながら紅夜を見つめた

 

「---久しぶり、紅夜と変態」

「……ユニ、か。四年ぶりかな」

『失礼な!僕は変態じゃなくて愛の探究者だよ!』

 

一瞬、記憶の中のノイズが晴れ彼女の名前を口に出せた。

最後に会ったのは最近のはずなのに、重傷だなと心の中で苦笑しながら紅夜はユニを見つめる。

 

「酷い目、それに包帯グルグル巻きまるでミイラみたいね」

「……色々合ったんだよ」

「色々、ねぇ。ケイから暴走したって聞いたけど」

「ああ、間違いはないな。あともう少し空やネプギアが駆けつけてくれなかったら、本当に俺はこの世界を滅ぼしていただろうな」

 

ネガティブエネルギーが毒々しい瘴気のように空を流れる風景を見ながら呟く。

 

「……かつて『黒閃』と呼ばれ女神と同じぐらいに強いと言われ多くの人をモンスターから救ってきた紅夜が今はモンスターを総べる王様って、皮肉ね」

「ごめん、昔の事はほとんど覚えていないんだ」

「はぁ?……お姉ちゃんの事もまさか……」

「名前と声、以外はダメだな。もう顔も覚えだせない」

 

ユニはじっと紅夜の瞳を見て大きくため息を吐いた。

ショックも合った。それ以上にブラッディハードになるということは、それほどまでに失う者であるか。

そして、記憶の中に合った女神達の夢に共感して目を輝かせた紅夜は、憎悪と怨嗟が満たす冥獄界で染まってしまった事を理解させた。

 

「辛く、ない?」

 

その一言に紅夜は言葉の意味が分からない(・・・・・・・・・・)様に頭を傾げた。

 

「質問の意味が分からないが?」

「……少なくても、私の知っている紅夜はお姉ちゃんと他の女神と一緒に居る時は心の底から楽しそうだった。目を輝かせていた。それを紅夜は全部失っているのよ?」

「それは重要なことなのか?」

『……はぁ』

 

今度はユニが言葉の意味が分からないように頭を傾げた。

 

 

 

 

 

「あいつ等の前で、俺が何を想い何を感じ何を得たのかどうでもいい。大事な事はあいつらが世界の為にちゃんと俺を殺してくれることがゲイムギョウ界と女神にとっての輝かしい未来の為だろう?」

 

希望に満ちた声音から発せられるのは、己をまるで使い捨ての道具のような扱う内容をを理解するまでの数秒、ユニは暫くその場で動けなかった。

そして理解すると同時に彼女は紅夜に背を向けてラステイションに走り出した。

目的地、否紅夜がいるならば絶対にいるであろう彼女を探す為に。

 

 


 
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