No.81061

真・恋姫SS 【I'M...】15話

15話まで来ました。
しかし、構成的にはまだ半分?もうちょい行ってるか?ってところですね・・・w

最終話が遠いぜ( ´ー`)

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2009-06-26 18:28:20 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:8293   閲覧ユーザー数:6964

 

 

 

 

深く沈んでいく意識。それはほんの少し前に、俺をあの世界へと導いたもの。

それが、こちらへ戻され、もうあきらめていたとき…また、起きた。

また、戻れるんだろうか。それだけが不安だった。

 

あの人たちを助けたい…その気持ちがたしかに俺の中に存在していて、だからこそ、命を懸けてまで俺はあの人たちとの約束を守ろうとした。

 

だからもし、もう一度戻れるのなら…

 

必ず、助ける。

 

何があっても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――曹嵩天幕。

 

 

 

ガタン

 

「あら、どちら様でしょうか?」

 

不意の物音に琳音は声をかけた。大方の予想がついているのだろうが、あえて確める。

 

「頸をもらいに来た。曹嵩殿」

 

「………………」

 

琳音は入り口のほうを見る。当然ながら見張りはおいている。だが、その中をこの者は入ってきた。

 

「外のものは既に片付けてある。騒がれても厄介なんでな」

 

その言葉と同時に琳音の表情が変わる。

 

「…陶謙様も、ずいぶん賢しくなられましたね…。わざわざ戦の終わりに刺客を放つなんて」

 

「すまぬな」

 

「ずいぶんご丁寧な刺客さんですね。しゃべっている暇があるのなら、仕事を済ましてはどう?でなければ、あなたの首が飛びますよ?」

 

それは脅しではなく、本気の警告。これからお前が狙うのはそれだけの獲物だという意思表示。

 

「戯言を」

 

「試しますか?」

 

「愚問だ。」

 

ダッ――

 

ギィィン!!

 

駆け出し、一気に琳音との距離をつめる。気づけば目の前には刃。

 

「くっ…」

 

「抵抗するだけ、無駄だ。」

 

それを琳音は鎌で受け止める。互いの刃がギリギリと擦れ合い、やがて力の押し合いとなる。

 

「―――っ!」

 

「ちっ」

 

不意に琳音の鎌から力が抜ける。そう認識すると同時に鎌の刃が円月の軌道を描く。

 

ブゥゥゥン!!

 

だが、それを合図に再び二人の間に距離が開く。

 

「弱くはないが…だが、やはり諦めろ。」

 

「………………君主が諦めたら、それは国の終わりです」

 

けして広いとはいえない天幕の中。それは圧倒的なアドバンテージを刺客に与えていた。

 

「領地すらもたない者が君主か…」

 

「大切なのは、地ではない…」

 

狭い中では、互いの獲物で戦況が変わる事もある。相手は剣。琳音は鎌。外では戦闘を優位に進める事が出来る間合いがここでは逆に不利となる。

 

「…………………っ」

 

ダッ――ガギィン!!

 

「ぐっ」

 

「死に逝く者の弁、これ以上無用なものはない」

 

ギィン、ガギン、ギィィン!!

 

「我はただ、主の命を遂行するだけだ」

 

ガキィン、キィン!!

 

2,3…4回。そして5回。刺客は高速の剣戟を繰り返す。琳音はそれらを鎌の刃、柄、その両方でなんとか凌ぐも、状況が転ずることもない。

 

「く……そうですね…あなたは刺客なのだから、これ以上言ったところで…」

 

「そう、無意味だ。……そろそろ話もいいだろう。そなたの首をもらうぞ」

 

「それはできませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これは…以前見た…)

 

部屋から出たところで、意識を失い、今また見せられる夢。だが…

 

(………え…なんだ……これ…)

 

襲ってきたのは、圧倒的な違和感。何かが違うと告げる何か。以前見たのは確かにこの光景。

 

だが、何かが違う。それは“はっきりしすぎていた”。

 

相手の顔も、狙われているのが誰かも、この声も、全てが伝わる。

 

それは夢などと言うものでは到底たどり着けないほどの感覚。

 

だからこそ、気づけた。これは夢ではないんだと。

 

 

 

――ギィィン!ガキン!!

 

「シッ――」

 

「くぅっ…」

 

琳音が相手の高速の剣の前に押され始めていく。

 

――ガギン!キィン!!

 

居合いのような軌道から返し刃で振り下ろし、体を回転させ、また今度はなぎ払い。

 

「はっ!」

 

「――っ」

 

琳音も鎌を回転させ、持ち替えながらも、それらを防ぐが反撃に移る事はできない。

 

ドン!!―――ザシュ!!

 

「ぐ…ぁぁ……っ!」

 

 

「はぁっ!」

 

――ギィィン!ザシュ!ズシャァ!!

 

「がっ……はぁ…はぁ…はぁ…」

 

やがて、防御すら間に合わなくなり、琳音の体に刺客の刃が幾度も刻まれる。

 

「そろそろ…終わりにさせてもらうぞ」

 

「ごほっ…ごほっ…はぁ…まだ…、死ねない…」

 

「黙れ」

 

――ザシュ!!

 

「ぐぁぁぁ…っ」

 

既に数箇所に及ぶ傷からの出血と吐血により琳音の体は紅く染まりきっていた。だが、刺客がそれを気にする事もなく、また新たな紅が刻まれる。

 

 

 

「私は…あの子達を……華琳を…」

 

「黙れといっている」

 

――ドガッ!

 

「がっ…ごほっごほっ」

 

それでも話し続ける琳音を蹴りで黙らせる。

 

「はぁ…はぁ……あの人に…あの人たちに助けてもらった、この命……私は…ぐぁぁああ!!」

 

「いい加減におとなしくしろ。首が獲れないではないか」

 

肩口に、剣を貫かせる。その衝撃で、琳音の体がバシャンと音を立て、床に座り込む。

 

「………………ぁ……」

 

もう息すらまともに出来ず、瞳も、光を失いつつあった。

 

「では、その頸貰い受ける」

 

 

 

 

(なんだよ…これ………こんなの…っ)

 

思わず目をそらしたくなる光景にただ耐えるしか出来なかった。

 

何度やめろと叫んでも、誰にも届かない。

 

 

 

 

ガッっと琳音の髪を掴み上げ、手に持った刃を首へとあてがう。

 

「ふ―――っ!」

 

力を込め、その首を断ち切る――っ

 

ザザ…

 

だが、その直前で外から物音がした。そして―――

 

「うあああああ!!」

 

――ズブシュゥ!!

 

「ぐぁっ…貴様…」

 

刺客のわき腹に、鎌が突き立てられる。敵が物音に一瞬気をとられた隙に、琳音はその鎌を相手に押し込んでいた。

 

天幕の中に二人の鮮血が舞い散る。

 

「ぅ、らぁっぁあああ!!!」

 

――ザシュン!!

 

「ぁ……っ……」

 

首にあてがっていた刃を強引に振り切り、彼女の胸から喉にかけて、縦に両断する。

 

今までにないほどの血が噴出す。斬撃に吹き飛ばされるように、琳音の体は再び浮き上がり、そのまま天幕の壁にもたれかかるように倒れる。

 

「ち………首は無理か……」

 

わき腹を押さえながら、そういい残し、刺客は影へと消えていった。

 

「母様!!」

 

刺客の気配がなくなると同時に…少女が飛び込んできた。

 

「か…ぁ…さ、ま?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

/琳音side

 

 

 

次々と襲ってくる刺客の剣。それをろくに防ぐ事も出来ないまま、斬られていく。

 

痛みで気を失いそうになる。だけど、倒れられるはずもない。

 

既にどれだけの血を流してしまったんだろう。視界が赤い。

 

目が血に濡れて、あける事も難しくなってきた。

 

どんどん薄れていく意識が死期を告げてくる。

 

体が熱い。

 

わずかに残った意識で反撃してみるけど、それも通じなかった。

 

もう痛みも感じなくなってきた

 

すると、今度は喉の辺りに大きな熱を感じた。

 

そう思ったとき、体が浮き上がって、そのまま飛ばされてしまう。

 

自分の体がどんどん重くなって、言う事が聞かない。

 

熱いのに、体が震える。

 

赤かった視界も、もう真っ黒になって、何も見えない。

 

刺客はどうしたんだろう。私はまだ切られているんだろうか。

 

何も感じない。

 

 

「お母さん…」

 

……華琳?

 

「おかぁ…さん…」

 

あぁ…華琳の声だ…

 

「………っ……ぁ…さん……ひぐっ…」

 

ふふ……また泣いてるの?……しょうがないわね…

 

「……っ……っ」

 

ほら、あんまり泣いてると…一刀さんに、みられるわよ…

 

「ぁぁ…っ…ぅぁぁ…」

 

…好きなんでしょう?……だったら…

 

「――――――」

 

………いい子…

 

 

あぁ………今日は…ずいぶん静かな夜ね…

 

 

そうだわ…華琳、久しぶりにお話しましょうか…

 

 

…一刀さんも呼んで…

 

 

………華琳?

 

 

………もう行っちゃったの…?

 

 

……もう…たまには、聞いてくれて…も……

 

 

…………華琳…

 

 

……一刀さん…

 

 

「――――――……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザァァ…

 

 

雨が降っていた。

 

俺が意識を戻し、立っていたのは、俺が消えたあの場所。

 

だけど、そこには何もなかった。

 

あの時あった天幕も、何もなく、ただ、雨に濡れた荒野があるだけ。

 

「琳音さん………」

 

空を見上げ、俺がつぶやいたのは、あの人の真名。

 

時間が来たというのは……俺が、救えなかったという事。

 

歴史は、変えられなかった。

 

「何が…二人ともだよ……結局…俺は……」

 

二人を救うためにもう一度戻りたいと願って………また、来たのに…

 

 

もどって告げられたのは、お前は救えなかったんだという事実。

 

「…………っ………俺は…っ………俺は!!…っ」

 

膝を着き、悔しさと悲しさに頭を支配される。

 

『………………』

 

目の前に足が見えた。

 

「……………君が俺をもどしたのか?」

 

『………………』

 

俺の問いに、その子は答えない。

 

「俺は……助けられなかった…」

 

『………………』

 

俺の声にも反応すら見せない。

 

『………………』

 

「……え?」

 

呆けた声が出てしまった。だって、急に周りの空気が軽くなったような気がして…

 

『………………』

 

見上げれば、ずっと泣き顔だったはずのその子の顔はとても綺麗な笑顔だったから。

 

「君は………」

 

『あの子を、助けてあげてくださいね』

 

「―――っ!」

 

最後にそう告げて、また、彼女は突風が吹くと同時に消えていた。

 

 

―あの子を助けてくださいね―

 

 

あの人との約束と同じ言葉を残して。

 


 
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