No.808221

とある不死鳥一家の四男坊 2

ネメシスさん

今回は過去回。
それにしても、ネットにはまるとどうしても一日に一回はinしてしまう。
そして、一度inしてしまえば1時間、2時間と……(ホラー感


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2015-10-15 20:50:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1850   閲覧ユーザー数:1820

俺がこの世界に転生してから5年ほどたった。悪魔という種族柄、人間よりは早熟なのが普通なのだろうか、5歳という年齢で屋敷内の主要な所以外を出入りすることや短時間ではあるが一人で外出の許可ももらうことができた。

まぁ、なんというか、魔法があったり悪魔がいたりと、どんな世界に転生させられたものだろうかと思っていたが、書庫の本を読んでいると気になる単語が複数出てきた。

 

“無限龍オーフィス”

“赤龍神帝グレートレッド”

“神器”

“悪魔の駒”

“レーティングゲーム”

 

なんというか、前世でオタク仲間にDVDで数話見せてもらった、お色気バトルで学園ラブコメディーな物語の“ハイスクールD×D”の作中に出てくる単語がいくつか見つけることができた。

そう言えば、自分のこの世界での新しい名前も“オルト・フェニックス”というらしく、冥界でも有数の大貴族の家系だという。

……そう、“フェニックス”の家系なのだ。あの、主人公勢と初めてレーディングゲームを繰り広げたライザー・フェニックスの、その一家に俺は転生してしまったようなのだ。

ちなみに、俺の上の兄に同じようにライザーという名前の男がいる。どことなく厭味ったらしく、女好きでよくうちに仕えているメイドをしつこく口説こうとして母に叱られているチャラ男という風な感じの兄。

 

(……たぶん間違いなく、あのライザー・フェニックスだろうな)

 

あのニヤついたイヤらしい笑みがどことなくアニメで見た時のライザーと酷似していたのを思い出す。

 

……まぁ、そんなことはどうでもいいわけだ。

それより重要なことがある。それは冥界でもインターネットが使えたということなのだ!

ある日、俺が街に繰り出した日のことだ。冥界というどことなくおどおどしい雰囲気を醸し出す単語に尻ごみをしていた時もあったが、実際に見てみると俺が前世で住んでいた街並みとそう変わらない風景がそこにはあった。悪魔といっても外見が完全に人外な奴らばかりでもなく、悪魔な翼をはやしただけの者や体の一部が変形している程度の者もいる。

もちろん、全身がまさしく悪魔だと思えるような者もいたが、そういう悪魔でも普通に街で生活している悪魔たちと楽しそうに会話をしている姿が見られ、こういう存在も他の悪魔たちと同じようにこの街の住民なのだということが分かった。

新しい発見を楽しみつつ街道をあるっていると、とある店が目に付いた。他の店とは違い小さい店ではあるが、そこに並べられている商品を見た時、俺は目を見開いた。

そう、そこで見つけたのが前世でよく使っていたタイプに酷似している、ノートパソコンだったのだ。

まさか、冥界なんてところでパソコンをお目に掛かることがあるとは思わなかった。

店の人に聞いてみると、なんとワイヤレスで魔力回線なるものが使われているらしく、ネットの登録をすればどこでも普通にインターネットが使えるらしい。

パソコン自体の容量も多く、少し割高だが荷物の転送サービスというのも行えるという。

なんというか、前世のパソコンよりも性能がいいかもしれない。

俺はすぐさま帰宅して、親にパソコンを買ってもらうように頼みに行った。

流石にまだ5歳の子供にパソコンという高いものを与えてくれるとは思えなかったが、父からの言葉は意外なほどあっさりとしたものだった。

 

「……お前がそれを欲しいというのなら、好きにするといい」

 

なんと特に問答をすることもなく、Okがもらえたのだ。

……その時の、父や母の悲しそうな目というか、可哀相なものを見る目というか、そんな何とも言えない眼をしていたことが気になったが。

子供ながらにオタク街道を突っ走りそうな俺を憐れんでるのだろうか?

もしくは、「貴族なのにそんなインターネットなどと……」と思っているのかもしれない。

どちらにしても、そう思っているのだとしたら申し訳ないけど、それでも俺は自分の趣味を忘れることができないのだ。

ほぼ毎日パソコンを立ち上げない日はなかった前世の俺。もはや俺のライフワークにパソコンは欠かせないものになっていた。

赤ん坊に転生させられて苦痛だったトップ3位が、パソコンでネットができなかったことといえる。

……なお、ダントツのトップ1位はおしめの交換。転生者ならばほぼ通る過程だろう。

まぁ、とりあえず。パソコンを購入したその日から即座にネットに繋ぐことができて嬉しさが有頂天な俺は、今までできなかった分を取り戻すような勢いで部屋に閉じこもり、ネットに精を出すのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

息子は好奇心が旺盛なようで、自我がしっかりしてきたころには周囲の物に興味を持ち出してあっちへ行ったりこっちへ行ったりとせわしなさを見せていた。

自分の足で立ち、歩くことができるようになってからは家の書庫に入り浸り、いろいろな本を読みだすようになった。一人の親としても、子の何物にも興味を持って知っていこうという姿勢にはうれしくもある。

同時にいつか知ってしまうだろう辛い真実がそう遠くない未来の出来事になるだろうという、半ば確信めいたものが私たち夫婦に悲しみを募らせてしまう。

きっと一番つらいのはオルトだろうに。

 

「……あいつは、きっとそう遠くないうちに、知ってしまうのだろうな」

 

「……そう、ですね」

 

私のふともらしたつぶやきに、妻は律儀に答えてくれる。

妻も私と同じことを思っていたのか、その顔は暗くすぐれない。

 

「……“半人半魔”」

 

“半人半魔”

それはその言葉の通り、悪魔として生を受けながらも半分が人間の資質を持って生まれてきた存在。

オルトが生まれた際に主治医に知らされたときは、そこに集まった家族たちは開いた口がふさがらなかった。私たち家族は特に純血を重んじているわけでもなかったため、半人半魔として生まれてきたといっても元気に育ってくれればそれで十分幸せだと思っていた。

しかし、半人半魔として生まれてきた者はすべからく寿命が短く、人間よりも少し長い程度の寿命でしかないそうだ。

それも、個体それぞれによって異なるものだそうだが、どれだけ長く生きても200年程度しか生きていないという。

本来悪魔という種族は長命で、平均しても1万年は生きることができる。

そして不死鳥と名高い私達フェニックス一族は、その平均の寿命よりもさらに長い年月を生きることができる。

それなのに、半人半魔として生を受けてしまったオルトはおおよそ200年という、一般的な悪魔から見ても一瞬にすぎないような年月しか生きることができないのだ。

 

「……運命を呪わずにはいられんよ、本当に」

 

「……それでも、せめてその短い時間の中でも、あの子が楽しく生きられるようにしてあげたいですね」

 

「あぁ、そうだな」

 

冥界でもトップクラスの貴族であるフェニックス一族としての生まれたからには、何かとしがらみや責務なども出てくるだろうが、そんなことは関係ない。

あの子にはただ、少ない時間を好きなように生きてほしい。

せめて、オルトが句意の無いようにその生涯を終えられるように。

それだけが私たちの望みだ。

 

その数年後、オルトはすくすくと成長していった。

フェニックス族としての回復力に長けた血が備わっているためか特に病気などもなく、健康そのもので私たちも安心していた。

そんなある日、1人で街へ散策に行っていた。

街はフェニックス家の秘薬“フェニックスの涙”による利益で、溢れるような資金の下に住みやすいような環境に整えてきた。

そのため他の領地に比べて治安は良いほうで、あまり離れたところまで行かないという約束で私たちは送り出した。

小さいながらも、他の同年代の子供達より精神的に大人びているところのあるオルトだ。

自分から危ないところになど行かないだろうし、言いつけも守ってくれるだろう。

それに、万が一街で何か問題が起きようものなら、すぐに治安部隊が駆け付けて対処する。

フェニックス族を狙う不逞の輩も多いため、その対策は何よりも優先して行ってきたつもりだ。

こと、フェニックス領内においては、とりあえずは安全といっていいだろう。

しかし、屋敷を出てそう時間もたっていないのになぜか急いで戻ってきたオルトは、街で見かけたパソコンなる物を買ってほしいと頼み込んできた。

今まで我儘も言わないで成長してきたオルトの、そして短い寿病しか持たないオルトの初めての頼み。夫婦ともにオルトの頼みを聞き入れパソコンを購入する。

 

 

 

……その日から、オルトは部屋にこもりがちになってしまった。

 

 

 


 
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