No.80734

真・恋姫SS 【I'M...】14話

14話です。(`・ω・´)

何気に今まで考えた話で一番長くなりそうな予感がしないでもない、今日この頃。


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2009-06-24 16:18:31 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:7588   閲覧ユーザー数:6463

 

 

 

 

 

「…………………………」

 

窓を眺めていた。

帰ってきた俺の心情を無視するかのように、嫌味なほど晴れ渡った空。

周りはがやがやとうるさく騒いでいた。

俺は今、教室にいる。

俺がどういう経験をしようが、こちらでは結局睡眠時間(6,7時間)ほどしか経過しておらず、当然のように学校があり、授業があった。

あれは夢だったんだろうか。

そう思えてしまうほど、周りはいつも通りすぎた。

 

だが、周りがそうでも俺までいつも通りにはいかず、当然ながら授業などもろくに頭に入らない。

気になるのは、向こうの事。

“向こう”という表現が合っているかどうかはともかく、あの夢が示していたのはなんだったんだろう。

大体の想像はつく。だけど、それを認めたくない自分がいる。

認めてしまえば……俺は俺を抑えきれるかどうか分からなかったから。

だって、今俺は、“こちら”にいるんだから。

 

思考がどんどん深くなりそうなところでチャイムがなった。

これから昼休み。

俺は教室を出て、フランチェスカの敷地内で人のこなさそうな場所を探した。

校舎からでて、公園のような場所へ移動する。

改めて、この学園の非常識さを実感したが、少しそれに感謝する。

 

広ければ広いほど、人の密度も減っていく。

1人にもなりやすい。

 

その公園のような広場の奥の木陰に腰を下ろし、ふぅとため息をつく。

何をしているのか……何をすればいいのか……

何を悩んでいるのかを悩むように、目を伏せれば、即思考のループへと陥る。

もう一度、戻れるんだろうか。

また、逢えるのだろうか。

あの人はどうなったのだろうか。

あの子はどうしているだろうか。

どうすれば、あの人を救えたことになるんだろうか。

 

キリがないほど、疑問が浮かび上がってくる。

だけど、それらを解決できるはずもなく。

結局、行き着くのは願望のみとなった答え。

“まだ……帰りたく、なかった”

それは、間接的に自分でも認めてしまっている答えだ。

戻ることは出来ないと…

 

朝からの同じ結論に至ったところで昼休みが終わり、午後の授業が始まる。

午前中同様、身にならない授業を消化し、一日が終る。

 

本格的な夏が近づき、次第に夜が遅くなる。

5時をまわったあたりでも、まだ少し明るい。

遠くの方ではすこし、茜色がかっていた。

急ぐには少し長くて、散歩を楽しむには少し短い並木道を歩いて帰る。

 

気がつくと、あの場所に来ていた。

初めて、あの子を見た場所。

正直に言えばかなり期待した。

また、現れてくれないかと。

だが…そんな期待も一瞬で砕かれる。

少し待ってみても、現れることはない。以前のように頭痛が来ることもなかった。

それを自覚すると、俺は…目に集まってくる感情を抑えられなかった。

 

同じ時刻、同じ場所。

でも、彼女は現れなかった。

手に普段以上の力がこもる。

 

ザァァ…

 

湿った風が、吹き抜けていく。

木の葉を揺らして、音を立てながら、時間の流れを教えてくれる。

 

重い足を、再び前へと運ぶ。

半ば、決心がついた…のかもしれない。

あきらめた…とも、言えるかもしれない。

 

 

 

―ありがとう…一刀さん―

 

 

「…………え?」

 

後ろから、声がした。

だから、振り向いた。

 

「………………」

 

だが、そこには何もない。

何も…なかった。

ただ、風がながれるだけ。

 

気のせいか…とつぶやいて、また寮に向かって歩き出す。

 

 

 

―あの子を、救ってあげてくださいね…―

 

 

 

 

 

 

 

 

/another side

 

 

 

 

『時間切れ…ですか』

 

『そのようだ。やはり本来の流れを変えることなどできんらしいな』

 

『しかし…この処理をどうするつもりですか?彼を野放しにしておくのも危険でしょう』

 

『あの外史をなかったものにする以外、無いだろうな』

 

『………彼は…納得するでしょうか』

 

『今更、奴の意見など関係ないだろう。あいつは失敗したんだからな。』

 

『そう、ですね』

 

『覇王の暴走…止められるものでは無かったか……』

 

『仕方ありません。それもあの外史の運命なのでしょう』

 

『あらん、そうでもないわよん?』

 

『―――っ!貴様、いつからそこにいた!?』

 

『いやだわん、さっきからず~~っといたじゃないの。失礼しちゃうわん』

 

『その体で、気配を感じさせないのは…さすがと言うか、非常識というか…』

 

『んもぅ、そんなに褒められると照れちゃうわよん』

 

『…今度は何を企んでいる』

 

『企むだなんて、大層なものではないわね。ただ、もう一度だけ、彼にチャンスを与えてあげるだけ』

 

『そんな事を許すと思うのか?』

 

『そうねん。なら、これが最後。そして終った後、この外史に関することを忘れてもらうってことでどうかしらん?』

 

『………だが、それはあの外史の終端を意味しているぞ』

 

『外史は遅かれ早かれ、必ず終端を迎えるわ。でも、その終端から生まれる外史もある…そしてそれこそが本来開かれるべき突端のはずよん?』

 

『いいでしょう』

 

『干吉!』

 

『彼が言っている条件に我々の目的も含まれている。ならば、それを否定する理由はありませんよ』

 

『………………………わかった。ただし、これは本来開かれることの無い外史だ。制限は以前よりもさらに短いぞ』

 

『ご主人様だったら、なんとかするでしょん』

 

『…………奴がどういう結果を見せるのか、ここから拝ませてもらおうか』

 

『ふふふ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

/華琳side

 

 

「…………………」

 

椅子に座り、何処を見つめるでもなく、母の血が染み込んだ鎌を抱きしめ、ただ虚ろに、前を見つめていた。

 

大事な人が、一度に消えてしまった。

一人は目の前で…もう一人は…

 

「…………っ…ぇっく…」

 

思い出したように感情が溢れても、もう流すものも無く、喉が狂ったようにしゃくり続ける。

 

何がいけなかったのだろう…

 

どうして、お母さんが殺されないといけないの…?

 

どうして、一刀はどこにもいないの…?

 

どうして、私が……

 

私が…悪いの?

 

悔しい、とは違う。悲しい、よりもっと深い。

そんな感情が、頭の中で渦巻いていく。

 

「華琳様…」

 

声が聞こえた。

いつからそこにいたんだろう。秋蘭が立っていた。

 

「秋蘭…………ごめんなさい……」

 

何もいえず、そう口にしていた。

そんな私にあきれたのか、秋蘭は「いえ…」と言い残して出て行った。

 

「……ごめんなさい…」

 

私が悪いの…?

 

私が…………

 

逃げるように、考え続ける。

 

誰が悪いのか、誰のせいなのか。

 

どうして、母を奪われなければならない。

 

何故、愛した人が消えなければならない。

 

もう嫌だ、何も考えたくない。

 

嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌……

 

頭が割れそうになる。

『嫌だ』

その言葉が、流れ続ける。

 

(…………………!……!)

 

(……!………!……………)

 

そんな時に、外から声が聞こえた。

全部は聞こえない。だけど、聞こえてきた言葉で内容は分かってしまった。

『曹嵩様』、『殺した』、『陶謙』。

 

「とう……け、ん…?」

 

母を殺した相手。

 

私から、母を奪った相手。

 

誰が悪い?

 

誰のせい?

 

…………そいつが、お母さんを殺した。

 

そうか、そいつがわるいんだ…

 

だから、一刀も…いなくなったんだ…

 

だったら………

 

返してもらわないと……

 

奪われたんだから……取り返さなきゃ…………

 

同じものを……

 

「…ぁはは……………あははは…」

 

笑える。

 

何も悪くない

 

自分は何も悪くない。

 

 

「ぁははは……………」

 

本当に可笑しい。

 

悪いのは殺した奴じゃないか。

 

私が悪いわけない。

 

 

「陶謙…………」

 

バキィィン

 

鎌を鏡につきたて、鏡が無残に飛び散る。

 

「…コロシテアゲル」

 

 

そこに先ほどまでの泣いていた少女は存在せず、

 

いるのは、割れた鏡の破片で傷つき、血に染まりながらも、ただ笑い続ける一人の覇王。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寮に戻った俺は、夕食をすませ、そのままベッドへ倒れこんだ。

勉強なり、剣道の稽古なり、やることはいくらでもあったが、何もする気にはなれなかった。

しばらく、ぼーっと天井を眺める。

これからどうしようか…なんて、ことが頭に浮かんで、また思考が止まる。

 

どうしようも、ないのにな。

仕方なく、少し早いが眠ることにした。

起きていても、疲れるだけだ。

 

布団の中に体を押し入れ、睡眠に入る。

目を閉じて、意識が沈むのを待つ。

だが、そう簡単に眠れるはずもなく、ただ、もがいていた。

 

「ぐ……」

 

寝づらい。

目がさえて仕方が無い。

 

体を左右へ何度も向きなおすが、やはりスッキリしない。

 

ガバッっと布団を起こし、体を外へ出す。

くそ…と言葉を吐き捨てながら、ベッドから立ち上がり、そのまま玄関へ向かった。

このまま起きていても何もすることが無いのだから、少し外へ出て頭を冷やそうと思った。

 

ガチャと扉を開け、外へでる。

 

晴れていたせいか、妙に星がうるさく光っている。

それをただぼーっと眺めてみた。

 

「………………。」

 

「………………。」

 

「………………。」

 

「………………え?」

 

眺めていると、珍しく、流星が流れた。

思わず願い事は…なんて考えるが、3回も言っている暇なんてあるはずもなく、流星はそのまま流れていった。

 

流星と言えば、琳音さんが話してくれた、あの話を思い出した。

『流星と共に現れる天の御遣い』の話。

乱世を鎮めるために天が遣わした使者。

 

「結局、俺はその御遣い様じゃなかったってことだよな」

 

―正確にはまだ、と言うのがただしいわねん―

 

「………………え?」

 

誰かいるのか?と続け、振り返った。

だけど、そこには誰もいない。

 

疑問に思い、首をかしげる。

 

 

――ズキィ!!

 

 

「くっ………っってぇ~……」

 

突然くる頭痛。

そして、その後にくる意識が遠くなる感覚。

抵抗を試みてみるが、やはりそれも不可能で、容赦なく意識は遠のく。

 

「今度は……なに……を……」

 

そのまま倒れてしまう。

 

 

―もう一度だけ…開かれるべき突端を………見つけてちょうだい…ご主人様―

 

 

―これはあなたにしか出来ないこと…だって、それは、彼女の望む終端にしか、無いのだから…―

 

 

 

 

 


 
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