「平和だなぁ。」
「平和ですねぇ。お茶をお持ちしましたよ、ご主人様。」
「おお、ありがとう月。・・・・・・うまい!やっぱり月の淹れるお茶は最高だね!」
「へう・・・・。ありがとうございます。ご主人様。」
そういって照れる月は可愛いなぁ。おもわず撫で撫でしたくなるじゃないか。
「へうぅぅ・・・。」
りんごみたいに真っ赤になる月。うーんたまらん!
「そこ!ボクの月に馴れ馴れしくしない!妊娠でもしたらどうするの!」
せっかくの桃色空間が・・・・・・。
「ひどっ!いくらなんでもそんなこと出来るわけないだろ!」
ラグビー部でもあるまいし!(ラガーマンの皆さんすいません)
「いいや!アンタならやりかねないわね!このち●こ太守め!」
「詠ちゃん。またそんなこと言って、本当は一緒に構って欲しかっただけなんだよね?」
月さん?なんてことを仰いますか。
「うぇ!?なななな何いってるのよ月!そそそそんなことあるわけないじゃない!」
ほら、動揺しまくりじゃないか。ツンツンツン子さんは本当にこういうのに弱いんだから。
「大丈夫だよ、月。詠の気持ちは俺がよーくわかってるから。」
「バカッ、なんてこと言い出すのよ!頭おかしいんじゃないの!?」
「へぅ・・・。そうだったんですか、詠ちゃんいいなぁ。」
「い、いいことなんかあるわけないじゃない!コイツったらすぐ仕事サボるし、他の女の子には色目つかったり!」
うっ、そいつを言われると弱いな・・・。
「フフッ、ご主人様のこと良く見てるんだね。それに否定もしないし。」
「はうっ!」
あっ、月の鋭い指摘に詠が撃沈した。
「ふん!そう思いたきゃ好きにすればいいでしょ!ほ、ほら、次の仕事があるからもう行くわよ月!」
立ち直り早いなぁ。
「あっ!待ってよ。詠ちゃ~ん。」
逃げるように詠が去っていく。月も俺に一礼するとそそくさと後を追った。
「しかし、なんだな。平和って素晴らしい!」
乱世の時代も終わりを告げ、俺は今この女の子に囲まれ生活している。ああ、全くもって素晴らしい!
「なーにが、平和だよ、バカ。暇なら少しはこっちを手伝ってくれよ。」
声をしたほうを見ると書管の束に埋もれた白蓮の姿が・・・白蓮!?
「居たのか!白蓮!」
「居たよ!今日は事務仕事が多いから手伝ってくれっていって私を呼んだのは北郷じゃないか!」
そう言われてみれば、頼んだような・・・。
「それがなんだ!自分の分だけさっさと終わらせて、こっちの分も手伝ってくれるかと思いきや、お茶なんかしてるしさ!」
「うぅ、すまん。調子に乗りすぎた。」
「いいさいいさ。どうせ私なんて影の薄いどうしようもないダメな人間なんだ。星には見捨てられ、挙句には自分の治めてた土地すら奪われる始末で・・・それからそれから。」
うわぁ・・・すごく黒いオーラが出てますよ。白蓮さん。悪いことしちゃったな。
「ごめんよ。こんなこと頼めるのは白蓮しか居ないんだ。でも、悪かったな。本当に・・・我儘すぎたよ。」
「!!」
他の人・・・愛紗、朱理等は論外。怒られるだけ、桃香は逆に仕事が増える気がするし、星や紫苑だと見返りが怖すぎる。残りは文官としては戦力外・・・。
「あ・・・。いや、その、頼りにされているのは嬉しいと思うし・・・。我儘な所は確かにあったが、その、なんだ、あー・・・私しかいないというのなら任せてもらわないでもないぞ!?」
「そ、そう?無茶しないでね。俺も手伝うからさ。」
「ああ、そうしてくれるだけで十分だ!・・・・それに私しか出来ないとか言われたら断れないじゃないか・・・。」
「え?ごめん。最後の方よく聞こえなかったんだけど。」
「な、なんでもない!」
「なんだよー。気になるなぁ。教えろよ。おりゃ!」
「バカ野郎。どこ触ってんだ。やめろってば・・・。アハハ、そんなところくすぐるなぁ!」
「すいません、猛省しております。」
「本当にしてるんだろうな・・・?」
「はい、そりゃもう・・・。」
「信用できないなぁ・・・。」
「どうしたら、信用してもらえるんだ・・・?」
「そういうことを言うような人間を信用できるのか。北郷。」
「うぅ!その通りだ。」
「なら、どうすればいいか、自分で考えろ。」
「自分で・・・?」
「その・・・コホン。自分が人にしてもらったら、う、嬉しいこととかそういうの考えてみろ。」
自分が人にしてもらったら、か。にしても何故に白蓮は照れてるんだ。何をさせるつもりなんだろう。にしても文句を言いながらもまた仕事に戻ってくれる白蓮が愛らしい・・・。
うーん、なんだろう。嬉しいこと嬉しいこと・・・。そういやさっきの月が淹れてくれたお茶は嬉しかったなぁ・・・。そうか、これだ!
「わかったよ!白蓮!俺が今日1日ご奉仕するよ!」
「そうか・・・ありが・・・えええええええええええっ!?」
「ほほほほほほ奉仕ってバカ!昼間っから何考えるんだ!変態!」
「えっ?そうかぁ?俺の仕事手伝ってもらってるんだし、それくらいさせてくれよ。」
この世界って男性が奉仕することはそんなに異常なんだろうか。いやぁ、でもそうか。奉仕とかって普通侍女とか女のすることだもんなぁ。でも、そのくらいしか出来そうなことないしなぁ。
「だからって、おまえそんな・・・。」
「なぁ、頼むよ。それくらいしかできそうにないしさ。そりゃ月たちに比べたら下手かもしれないけどさ・・・。」
「ええっ!?おま、おまえ月たちになんてことさせてんだよ!しかも上手いのか!いやいや上手い下手とかの問題じゃなくてだな・・・。」
月の甲斐甲斐しさには涙がでてくる。詠のドジッ娘もまぁアリだな。
「えっ?何ってお茶淹れて貰ったり、部屋の掃除とか、あ、あとは肩揉んでもらったりとかかなぁ。中々上手いんだぜ?」
「えっ?ああ、そういう意味か。なるほど・・・。」
「そういう意味って、他にどういう意味があるんだよ。」
「えっ?いやなんでもない、気にするな。ハハハ・・・ハァ。」
うーむ、なんかすごく追求したい気もするがやめておこう。同じ轍は踏みたくない。
「よし、お茶淹れてくるからちょっと待っててくれ!」
「あ、おい北郷!」
早速、厨房で茶葉をもらってこなくちゃな。とはいえ、茶なんて淹れたことないぞ。どうやりゃいいんだ。まぁ、厨房で聞けばなんとかなるか。
「そんなわけで、お茶の淹れ方を教えて欲しいんですけど。」
「はい?」
厨房にいる侍女の皆さんにそんなことを聞くと一同に怪訝な顔をされた。
「えーと、それはお客人に出すお茶ということでございますか?」
「あ、えーと。客人というか仲間・・・かな。少なくとも俺はそう思ってる。その仲間を労ってやりたいんだ。」
「はい、そういうことでしたら後でお部屋のほうにお茶をお持ちいたしますわ。」
「あ、いやそうじゃなくて。俺自身の手で労ってやりたいんだ。だから、その申し出はありがたいんだけど俺の手じゃないと意味がないんだよ。」
一瞬、呆気にとられた顔をしていたが、すぐに破顔して満面の笑みにかわった。
「かしこまりました。では、僭越ながら私が手ほどきを・・・。」
「あー。ずるい。そういうことでしたら私も太守様に手ほどきしたい~。」
「お茶だったら、かなわないけどお饅頭だったら私にお任せください!」
「あ、だったら私は胡麻団子を・・・。」
側で話を聞いていた侍女達が一斉に指導を申し出てくれた。こ、これが奉仕を極めし者の姿か!
「こ、こら太守様が困っておいでではありませんか、おやめなさい。」
侍女長?かな、それっぽい人がなんかたしなめてる。
「ハハハ、いいですよ。女の子に慕われてるのは悪い気分じゃないですから。何で慕われてるのかはわからないですけど・・・。」
意外なところでモテるんだなぁ、俺。
「まぁ・・・。」
「太守様って結構鈍感?」
「まぁ、そこはいいところなんじゃないですか?」
いきなり、初対面の子に鈍感とか言われた。
「うぅ。傷つくなぁ。どういうこと?」
「そういうところですよ。太守様。」
「え?」
侍女長?っぽい人がこれまた良い顔でそういってくれた。
「常に相手のことを思いやって行動される所ですわ。本来ならば侍女が太守様に向かってこういう口を利くこと自体許されないのに、気にされるどころかどういったことが良くないのか耳の傾けようとしてくださる。家臣に対しても部下ではなく仲間だと言い、労うためにはこのようなところに足を運ぶことも厭わない。そのような方を慕わない女性は居ないと思いますわ。」
うぅ、そうまで言われると恥ずかしいぞ。皆ニヤニヤした顔でこっち見てるし・・。
「そそそそ、そうだ忘れてたよ。仲間を労ってやらないと!俺のことなんかいいから。さぁさぁ、色々と教えてください。」
「ふふ、そういうことにしておきます。それじゃ、参りましょうか。」
・
・
・
・
・
「で、出来た!お茶だけのはずが何故か色々お菓子まで教わり、お茶というよりもはや飲茶の領域だけどな!」
「はい、お疲れ様でした。この出来ならきっと満足されると思いますわ。」
「ありがとう・・・。本当になんてお礼に言ったらいいか。」
「そんなものは要りませんわ。私たちは太守様にお仕えする侍女なのですから。」
「いや、しかし・・・。ならばこそちゃんとお礼をしないと太守としては・・・。」
二人して、うーんと平行線。この人も結構頑固だな。
「じゃあさ、じゃあさ!こうしようよ!太守様がその教わったお茶やお菓子を今度は私たちに振る舞うの!」
他の侍女たちもそれがいいと盛り上がってる。そうか、それくらいならば。
「こ、これなんて恐れ多い事を。」
「いや、それでいいよ。むしろ、そうさせてくれ。」
「しかし・・・。」
「いいから、ね。はい決定。」
無理矢理決定させる。そうしないと終わりそうにないしね。
「はぁ、そこまでおっしゃるのでしたら是非もありませんわね。」
「ごめんね。無理ばかり言っちゃって。」
「いいえ、気にしないで下さい。っと、早くしませんと折角のお茶が覚めてしまいますわ。急ぎませんと。」
「おっとっと。そうだね。本当にありがと。今度のお茶会楽しみにしててくれ!」
「はい、楽しみにしております。」
「太守様、またいらしてくださいねぇ~。」
侍女達に見送られる。こういうのなんかこそばゆいなぁ。さて、急ぐかな。白蓮も待ちくたびれてるかもしれないし、といっても両手いっぱいにお茶やら、菓子やらで急げないんだけどな!・・・・・・そうこうしているうちに部屋の前に到着。
「おーい、白蓮。戸を開けてくれないか。手が塞がって開けられないんだ。」
「ああ、わかった。今開けるよ。それにしてもたかがお茶の一杯で時間かかりすぎだろ。仕事も終わっちまったぞ・・・って何だ、そのお菓子の量は!?お茶だけじゃなかったのか。」
「え、あ、いやね。どうせ奉仕するならと張り切っちゃったよ。」
「そ、そうか!ありがとな・・・。北郷が私のために北郷が私のために北郷が私のために!!!!」
「何言ってるのかわかんないけど、とりあえず机片付けるの手伝ってもらってもいいかい?」
「え?あ、ああ今片付けるから待っててくれ。」
ほどなくして片付けられた机の上にお茶にお菓子やらを並べていく、よし、やるか。
「ささ白蓮様、飲茶の準備が整いました。どうぞ、お召し上がりください。」
「うおっ!?いきなりどうしたんだ、北郷。」
「言っただろ、奉仕するって。それにこういうのは雰囲気が大事なんだよ。」
「うーん、よくわからんが、合わせればいいんだな。・・・うむご苦労であった。では早速いただくとしよう。」
「・・・どうでしょうか?」
「うん、うまい!すっごくおいしいよ!すごいな北郷!おまえがこんなことまで出来るとは知らなかったよ。」
「白蓮様・・・勿体無きお言葉ありがとうございます。」
「なぁ北郷・・・。それはやめにしないか。なんだかとてもくすぐったいよ。」
なんていう白蓮の顔はどこか赤くて落ち着かないみたいだ。まぁ、相手がやめろって言ってるのに強制したら奉仕でもなんでもないよな。
「それもそうか。わかったよ。」
「ああ。そのほうが自然でいい。ほら北郷も食えよ。美味いぞ。」
「そうさせてもらうとするかな・・・。うん、美味い!」
「はは、自分で言うなっていうの。」
「それもそうか、アハハ。」
それからしばらく、ああでもないこうでもないと他愛の無い話が続いてあっという間にお菓子もお茶も品切れとなった。
「うーん、ご馳走様。本当においしかったよ、ありがとう。」
「どういたしまして。気に入ってもらえて何よりだよ。」
「ああ、本当に良かったよ。最初は仕事をおしつけられたあげくにさっきの有様だろ?どうしてやろうかとも思ったが、全部すっとんでいったよ。」
「いやいや、それは本当に申し訳ない。しかし、仕事を全部終わらせるなんてすごいな。結構な量があったと思うんだが・・・。」
「何言ってんだ。太守としての仕事だけなら私のほうがおまえより長くやってたんだ。当然だろ?」
「まぁ、そう言われてみればそうかもしれんが、疲れたろ?」
「まぁね、でもさっきの飲茶で疲れなんか飛んでいったよ。」
そういいながらも肩をグルングルン回されちゃあな、やらないわけにはいかないか。
「よし、白蓮。マッサージしてやるよ。」
「まっさあじ?なんだそれは。変なことじゃないだろうな?」
どれだけ信用ないんだよ、俺・・・。
「いいからいいから、ほら横になれよ。」
そう促すと側にあるベッドに白蓮を寝かせる。
「わああああ。やっぱり変なことなんじゃないかぁ、バカァ。」
「変なことしないってば、ほら力抜けよ。」
じたばた暴れる白蓮を組み敷いて肩を揉んでいく。
「さーわーるーなー。って肩揉みか、びっくりさせるなよ。・・・・・・・・ちぇ。」
「最初からそのつもりだって・・・。それにしても凝ってるなぁ。疲れ溜まってるんじゃない?」
「うーん、確かになぁ。何かと雑用押し付けられることも多いし、挙句に麗羽とかの世話なんかしてたら・・・誰だってこうなると思うぞ・・・あぁ、そこそこ・・・気持ち良い。」
確かに、麗羽のお世話なんてあの二人を除いて白蓮じゃなかったら絶対どうかなってしまいそうだな。しかし、そう気持ち良い、気持ち良い言われたら・・なんか卑猥だな。
「ん・・・?何か当たってる?」
「ギク、いやこ、これはその足だ。足。次は腰だな。」
「ふぇ。あ、ちょ、そんなところ・・・ああああああ、いいいいいぃぃ。」
ちょっと、声色を自重して欲しい。もってくれよ、マイサン!
「こ、腰もまたえらい凝ってるなぁ。やっぱずっと座りっぱなしだからか?」
「んー・・・。それもあるだろうし、元々馬に跨ってることも多かったしな。いわば職業病みたいなもんだな。」
「なるほど、白馬長史の知られざる苦労というやつだな。」
「白馬長史っていうな・・・。」
「ハハハ、悪い悪い。」
しばらく、腰のマッサージは続いた。
「っとこんなもんかな。どうだ白蓮。少しは楽になったか?」
「ああ、結構疲れが溜まってたみたいだな、嘘みたいに体が軽いや。」
そういって体を起こそうとしたその時。
「うっ。」
「ど、どうした。白蓮。」
「あ、いやなんでもない。耳の中になんかゴミかな、はいったみたいでびっくりしただけだ。」
「なるほど、耳にゴミがね。取ってやろうか?」
「へ?取るってどうやって?」
「なんだ、耳かき知らないのか?耳を掃除する道具だよ。」
「バカにするな、それくらいわかる。耳かきという名前だとは知らないけどな。さっきの続きじゃないがこれでも太守やってた身だぞ、それぐらいのたしなみはある。自慢じゃないが銀で出来た耳かきを持ってたぐらいだぞ。」
うへ・・・。あんなので良く取ろうって気になれるな。俺だったら絶対竹製だけど・・。
「そういや、この間。麗羽のやつが翡翠で出来た耳かきを自慢しにやってきたな。昔のえらい人がつかってたのと同じで、高貴な身分である自分には相応しいとか言ってたような。」
「まぁ、あれに比べるとな。でも、流石に魚の骨とか動物の骨でっていう気にはなれないなぁ。せいぜい、鉄だ。やっぱ銀が最高だよ。」
「なるほどなぁ。この世界に来て、耳かきの事を聞いたら鉄製のが出てきて驚いた覚えがある。耳かきっていったら普通、竹だろ。あのふわふわ・・・梵天って言うんだけどあれで最後締めくくると気持ちいいんだな、これが。」
「竹?ふわふわ?そんなの聞いたことないな。」
「そうみたいだな、どうしても竹製が良かったから、作ってもらおうとしたらなかなか伝わらなくて苦労した・・・。そして、その苦労の末に手に入れたのがこの耳かきだ!」
確か、机の引出しの中にいれたまんまのはず・・・あった。
「じゃじゃじゃーん!見ろ、これが俺の世界の耳かきだ!」
「ふーん・・・。」
あれ、思ったより反応が薄いぞ。
「ふーん、て。どんだけ気持ち良いか。試してみたらわかるよ。」
「どれどれ・・・。っておいなんで貸してくれないんだよ。」
「さっきいっただろう。取ってやるって。」
「そう、それだ。最初に聞きたかったのは。どうやって取るんだ?」
「そりゃ、勿論・・・膝枕に決まってるだろ。」
「え!?え!?えええええええええええ!」
「奉仕するって言ったじゃないか。ほら、怖がるなよ。意外と気持ちいいんだぜ?」
「いやいやいや、無理無理無理。恥ずかしすぎる。」
「恥ずかしがらなくてもいいじゃないか、誰もいないよ。」
「そういう問題じゃなくてだな、とにかく嫌だ!」
そういって座ってた布団から逃げ出そうとする白蓮。ああ、いきなりそんな動いたら・・・。
「うっ。」
ほら、言わんこっちゃない。またゴミが奥の方に動いたみたいだ。
「もう、観念しろよ、このまま耳にゴミが溜まっても知らないぞ。何も聞こえなくなったりして。」
「そんな怖いこというなよ!気になって動けないじゃないか!」
「だから、取ってやるっていってるだろ?」
「にしても、こんな・・・。」
「こんな・・・?」
「膝枕だなんて、恋人じゃあるまいし、ああ、でもこれは北郷が恋人にしたいっていう意思表示なのか?いやいやしかし、魅力的なような・・・うーん。」
なんか、布団で丸くなりながらブツブツ呟いてる。・・・チャンス?
「隙あり!」
「ひゃああ!?」
素早く、膝枕の体勢を整えると耳かきを耳に添えてこう言い放つ。
「ほら、動くな。ここで暴れると耳かきがおまえの耳に刺さる。本当に聞こえなくなっちまうぞ?」
「ひっ。それと本当にってことはさっきの嘘か!」
「まぁね、それぐらいで耳が聞こえなくなるなんて聞いたこと無いかな。まぁ、もう観念しとけって本当に気持ちいいんだぜ?天に昇らせてやるよ。」
そういうと、耳掃除を始める。
「ほら、力をぬけって。まぁ始めてじゃしょうがないか。」
おお、取れる、取れる。自分でやるより、人のだと見て取れるから面白いよな。
「ふぁ・・・そんな・・・う、そんなところ・・・ううん。」
確かに気持ちよくしてやるとは言ったがそんな効果は無かったような気が・・・。まぁ、本人は気持ちよさそうだしいいか。いい感じに力も抜けてるし。
「だいたい、取れたかな。そして梵天の出番だ。うりうり。」
「ちょ。またそんな・・・くすぐったいってばやめろよ。はぁぁん。」
本当気持ちよさそうだな。トドメといわんばかりに耳に息を吹きかけてやる。
「わひゃあああ!?」
「どうだ?気持ちよかっただろ?」
「・・・?あ、あぁ・・・。ふう。」
どうやら軽く放心状態のようだ。心此処に在らず。そんな顔をしている。
「じゃあ、次は反対だな。」
「ああ・・・ってええ!?」
「ほら、顔反対にして?」
「顔を反対にしてっておまえ!?」
「ああ、面倒くさい。うりゃ!」
外をむいてる顔を無理やり体ごと、自分の体側に向かせた。いざ向かせると恥ずかしさのあまりか縮こまってしまった。
「おいおい、流石にもう慣れただろ。力抜けってば。」
「そういわれても恥ずかしいんだってば!」
「何がだよ!」
「言えるか!」
「ただでさえこの格好、子供みたいで恥ずかしいし、しかも北郷のが目の前にあるし・・・。」
「子供みたいで・・・なんだって?ボソボソじゃよく聞こえない。」
「う、う、ううるさい!」
「ふーん。まぁいいけど。子供でもいいんじゃないか。今はさ。身を委ねてくれよ。」
とはいってみるものの恥ずかしいのか、縮こまったままだ。仕方ない。
「・・・?北郷何してるんだ。」
「え?ああ、こうしてたら落ち着くかなって。せっかく気持ちよくしてやるっていっても白蓮がそんなんじゃ意味ないしな。」
白蓮の頭を掻き抱いてじっとしてやる。
「あ、うん。取り乱してすまなかった。嬉しいやら恥ずかしいやらで混乱しちゃったんだ。」
「ハハッ。白蓮らしいや。」
「なんだとぉ!私だって女の子なんだ。それくらい思っても不思議じゃないだろ。」
「そうだな、悪い悪い。で、耳掃除はじめてもいいか。だいぶ落ち着いたみたいだし。」
「え、あ、うん。よろしく頼む。・・・やさしくしてくれよ、やさしく、な。」
「了解。」
掻き抱いたままそのまま耳掃除開始。おー、取れる。取れる。白蓮もリラックスしてくれてるみたいだ。相手に身も委ねてもらうってのも心地良いもんだな・・・。
「なんだか、お父さんみたいだ。暖かい・・・。」
聞こえなかったことにしておこう。そこで突っ込むのは無粋なような気がするから・・。
掃除を終えてふと目をやると、いつのまにか白蓮は眠っていた。
「そんな気持ち良かったのか。」
こうまでリラックスされると嬉しくなってくるな。奉仕作戦大成功?にしても、無防備な寝顔を晒されるとなんかこう・・・おっといかんいかん、気を許してくれたと言うのにここでそれを裏切るような真似はいかんよな・・・。しかし可愛い唇だ。なんか吸い込まれて・・・
「・・あ・・・主・・様が・・・白・・・の・・・!」
「お・・・な・・・・見えな・・・だ・・ろ・・!!」
んん?誰かいる?気づかないフリ、気づかないフリ・・・。
「あー、こんなに可愛いと今すぐにでも食べてしまいたくなるなー。」
我ながらひどい棒読みだ。しかし、闖入者にしてみれば効果抜群だったようで、廊下で覗きをしているのがいかな俺でもわかった。気づかないフリをして、一気に扉を開ける!
「わっ!」「きゃっ!?」「おっと。」
他にも何人かの可愛い悲鳴が聞こえた。えーと、愛紗をはじめに桃香と星と紫苑と翠と・・って蜀の武将、軍師、全員大集合かよ!
「えっと、皆どうしてこんなところに・・・?」
「わ、わたしはやめておこうって止めたんですよ?それを星が・・・。」
「む、愛紗よ。人の所為にするのは良くないな。確かに私は覗こうといったが、その私よりも愛紗のほうががぶりよりだったではないか。」
「んな!?そそそそそんなことはないんですよ?ご主人様。」
今更、そんな取り繕わなくても・・・。他にもみんながヤイヤイ言ってるが埒が明かないので・・・。
「えーと、朱里お仕事です。どういうことか説明してくれる?」
「はいって・・・なんですかお仕事って!まずはですね。みんなで集まってお話してたときに鈴々ちゃんが食べ物の匂いがするっていって走り出したのを追いかけてみると。」
鈴々。どれだけ食い意地が張ってるんだよ・・・。
「鈴々だけじゃないのだ。翠や恋も一緒なのだ!」
でたー、食いしんぼ3兄弟。
「やい、鈴々。何もご主人様の前でバラさなくてもいいじゃねぇかよ!」
「ご主人様・・・。恋もお菓子食べたい。じゅるり。」
うっ、いかん。そんな顔をされるとすぐにでもお菓子をあげたくなってしまう。後ろ髪をひかれる思いを断ち切って・・・・!
「朱里・・・。続きを。」
「はい、そうしましたら侍女の方がご主人様の部屋を覗いているのを発見したのですよ。」
なんだって!?本当だ。よく見たら侍女の娘が何気に混じってるのに気づいた。確かあの娘は俺にお茶をご馳走しろっていった元気な娘だったよな・・・。
「すいません、太守様。上手くいったのかどうかどうしても気になっちゃって。」
そうかそうか。全く気づかなかったよ。忍びとしてやっていけるんじゃない?
「それで、ですね。不審に思ったので愛紗さんらに尋問してもらったところ、どうやらご主人様が自らもてなしをされると聞きまして、一体誰がそんなうらやま・・・コホン、誰が抜け駆けしたのか確認しようっていう話になったのです!」
朱里さぁん!?言い直したほうが怖いことになってませんか!?心なしか表情まで黒くなってきましたよ?
「ってことは、全部見られたということ・・・?」
「全部かどうかはわかりませんが、ご主人様が急におかしな丁寧口調で喋り始めたあたりからです。」
全部じゃないか・・・。流石にあれを他人に見られるのは恥ずかしいぜ。
「いやぁ、それにしてもそのお相手が白蓮殿とは意外ですなー。」
「ああ、全くだ。星よ聞いてくれ、自分でいうのもなんだがご主人様のためと想って、いろいろ苦労をしてきたつもりだったが、労いの対象は自分ではなかった。つまり、私はそんなに大事な家臣ではないということらしい。」
自分で言っててムカついてきたのか知らないが、愛紗さんよ、満面の笑みで話してるつもりかもしませんが背後に鬼が見えますよ?まじで泣きそうです。あと、星はなんでそんなに楽しそうにしていられるんだ・・・ドSめ!
「ふふふ、本当ですね。ご主人様のためを想いなるべく負担をかけないようにと事務に関することは工夫してきたつもりだったんですが、こんな仕打ちを受けるなんて想っても見ませんでした。ふふふ・・・。」
朱里も邪気に当てられたのか知らないが、黒さが上がってる・・・。
「ぶーぶー。私もご主人様の手料理食べたかったよー。」
「腹いっぱいくわせろー!なのだ!」
「私は・・・別に。」
「ご主人様、次は恋も一緒に・・・食べる。」
あくまで食べ物中心のこの娘らを見るとほっとしてしまう。っと、なんとか怒りを静めなければ・・・。
「あ、いや、そんな誰かを特定してひいきなんかするわけないじゃん。今回はたまたま、そうたまたま白蓮にお世話になったからだよ、うん。皆にも感謝してるって!」
「ほう、では主は我々全員にも奉仕するお覚悟があると?」
「うっ。も、もちろんじゃないか。まぁ一度には無理だけど機会があれば。」
なんとかこのままうやむやの方向に持っていけるか?流石に全員なんか無理だぞ。
「あら?機会といえば・・・。近いうちにご主人様が侍女達を労ってお茶会を開くというのを聞きましたわ。ですよね?侍女さん?」
な、何ぃ。そこまでバレてるのか!ちらっと侍女の方を見ると無言で首を横に振っていた。自分には隠すのは無理でした、という事らしい。まぁ、確かに普段慣れてる俺ですら言い寄られると怖いのに、一般人の身で将軍クラスがわんさかいるなかで尋問されたら関係ないことまで喋ってしまいそうだよな。
「何ぃ?!それは本当か紫苑!・・・ご主人様、まさかとは思いますが侍女たちは呼んで私どもは呼んで下さらない、何てことはありませんよね?」
こ、怖い!愛紗だけでなくみんなそれぞれが一騎当千のオーラがなんかでてる!死ぬ!ここで肯定しないと死んでしまう!
「も・・・もちろんさぁ。みんな呼ぼうと思ってたに決まってるじゃないか。ハ、ハ、ハハハ。」
「流石は我等の主ですな。たかが家臣のためにそこまでのお気遣い。この趙子龍、感服いたしましたぞ。そこまでのお気遣いを我等だけで独占するというのはいささか気がひけますな。ここは我等だけでなく魏、呉にもお触れを出しましょう。太守様自ら日頃の労を労いおもてなしをしてくださる、と。」
WOW,星さん。なんてことをおっしゃりやがりますか!?
「心配には及びませんよ。たったいま早馬をだしました。」
「・・・数日中には三国中に知れ渡るかと。」
「流石、伏竜鳳雛の名は伊達じゃありませんな。そんなことはすでにお見通しか。恐るべき慧眼。」
行動早っ!少しくらい躊躇って見せてもいいんじゃないですか!?
「仕方在りませんわね。どうしても、と北郷さんがおっしゃるのなら参加してあげなくもないですわよ。オーッホッホッホ。」
「よっしゃー、食うぞぉ!斗詩!どっちがたくさん食べれるか勝負だ!」
「勝負はしないけど、本当に楽しみだね。文ちゃん。」
「勝負だったら、鈴々が受けて立つのだ!」
どこで嗅ぎつけてきたんだろうか。食いしん坊連中は別として、いつのまにか蜀の将軍以外に集まり始めたし・・・良心であるはずの斗詩までその気だし!
「いやぁ、ご主人様の手料理かぁ。たらふく食うぞ!」
「本当、楽しみだね!お姉様。」
翠も蒲公英もなんか楽しそうだし、しかしやはり!NOといわねば死ぬ!死んでしまう!
「普段から身の回りの世話をさせられてるボク達にもその資格はあるわよね?」
「楽しみだね、詠ちゃん。」
うぅ、やばいぞ。どんどん包囲網が固められていく。なんとかせねば・・・。
「お館。」
珍しいな。焔耶に話し掛けてくるなんて。一体なんだろう、俺の援護とかだったら嬉しいな。
「すまない!」
どうしたんだ!?焔耶の奴。頭なんか下げたりして。意味がわからない。
「正直、ワタシはお館のことはただの軟派なスケベ野郎だと思ってた。だが違うんだな!皆のためを思ってなんだな!そうでもなきゃこんなことやろうなんて思わないよな!ワタシは今はじめてお館を尊敬している!お館についてきて良かったって思っております!」
焔耶のまっすぐな視線が痛い、痛すぎる。しかしここで肯定してしまうわけにはいかん。
「全くもって焔耶の言うとおりですな。この桔梗も感動に打ち震えておりますぞ。」
なんていいながらニヤニヤしてるし、絶対わかってやってるだろ・・・・・・・。
「みんにゃにってことはみぃも食べていいのかにゃ?」
「うん、たっくさんたっくさん食べても怒られないんだよ。」
「おお!すごいじょ!すごいじょ!」
「それ、本当?桃香お姉ちゃん。」
「うん、もちろんだよ。」
「わーい、やったぁ!」
「あらあら、良かったわね。璃々。」
桃香ぁ、頼むからたきつけないでくれぇ。美似も璃々すっかりその気になってしまった。
「セキトの分も・・・ある?」
「勿論です。恋殿。皆にもてなすといってるのですから数に限りなどあるわけないですぞ。」
ねねめ・・・ここぞとばかりに。犬の分までとか、流石に拒否だ!拒否!いくらなんでも無理。
「あ、あのですね、皆さん・・・・・・。」
「なんです?ご主人様。ここまできてまさか中止になさるとでも言うわけでもないでしょうね?」
愛紗が人殺せそうな勢いで睨んでくる。負けるな俺!
「まさか、それはないと思いますよー。仮に拒否しようものなら蜀はいい笑いものです、まさかご主人様がそんな愚行なんか犯すするわけないじゃないですかぁ~。」
逃げ場なしですか?おそるべし諸葛孔明。
「で、なんです?ご主人様。」
でも、言わなきゃ言わなきゃ・・・。
「・・・・お。」
「お?(ギラリ)」
「お茶会、是非楽しみにしててくれよな!」
ごめん、それこそ無理!
かくして、皆におもてなしすることになった太守様。それと抜け駆けした責任として白蓮がそれに巻き込まれることになるのだが、そんなこととは露知らず、とても幸せそうな顔で眠る白蓮だった。
おまけ
いるのかいらないのかよくわからない解説コーナー
白蓮を書いて欲しいといいうありがたいリクエストをいただきまして、どういったシチュにしようかと迷った挙句に、恋姫だと何故かあまりみかけない耳かきシチュなんてどうだろう。でも、白蓮が主人公にするのはありがちだから逆にしてみたら面白いんじゃないかと妄想するまでは良かったんですが・・・当時って耳かきあったんだろうか?いやパロだし適当でいいか?などなど迷うことに(笑
いい加減な事も出来ないので、耳かきの歴史について調べてみました。すると、なんと!中国で3000年以上前の墓石の中から翡翠で出来た耳かきが出土されたとか。その他にも金や銀、鉄で出来たものや魚の尻尾や動物の骨なんかで出来た耳かきもあったそうな。作中に出てきたような袁紹や公孫瓚が翡翠や銀で出来た耳かきを愛用していた、という記述まではわかりませんが、墓の副葬品として存在していることが多いため、それなりの身分の人だったら装飾品と一部として持ってそうだなと思い、持たせてみました。
日本人ならなじみのあの耳掻きは日本生まれだったんですね。私も知りませんでした(笑
以上!蛇足的説明お終い!
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どもども。はじめての方もそうでない方もお元気ですかー?
自称「真・恋姫無双の少数派の蜀部門」代表のもけもけでーす。
前回での愛紗編ではちょっとだしちょっとだしでヤキモキさせたかなーなんて思ったんでまとめてだしてみましたー。
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