No.804693

孫権伝ー11

ユウヤさん

ついにやってしまいました、記憶持ち登場。

多くの皆さんに凪とか香風とかいろいろ言われましたが・・・

予想を裏切りここで秋蘭合流です!!

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2015-09-27 18:49:05 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5026   閲覧ユーザー数:3877

 

 

 孫権伝第11話

 

 『弓神は天の御使いと邂逅す』

 

 

 

 

 一刀「・・・」

 

 俺は今許都を出発して二つ目の街の近くに来ていた。村というにはさすがに大きい。塀も高く、防壁の上から弓で攻撃を仕掛けている所を見てもさすがと言える。そこで問題がある。おそらくここは凪達が秋蘭と季衣と共闘した街だ。だがしかし、だがしかしだ。何故ある・・・孫の旗!!

 

 一刀「あれ・・・仲謀かなぁ?」

 

 輝理「ど、どうでしょう?」

 

 雛里「い、行きますか?行きませんか?」

 

 なんという究極の二択。

 

 一刀「はあ・・・行こうか。輝理は雛里の直衛。俺が道を切り開く。うまく敵を混乱させられれば、門を開けてくれるだろう。一応牙門旗上げとくか。」

 

 そう言いながら俺はアタッシュケースのサイドポケットから黒塗りの布を引っ張りだした。

 

 一刀「さてと・・・黒耀よ、今が駆け抜ける時!ハイッ!!」

 

 雛里「あわわ、ご主人様待ってくださ~い。」

 

 輝理「雛里、少女から離れないで!?」

 

 こうして俺は西側の門に群がる黄巾党に向けて突撃した。

 

 

 

 

 

 一刀「そおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおりゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 ドゴゴガガガゴゴゴギャゴドガゴゴゴ!!!!!!!!!!!

 

 黒天槍に貫かれ、黒耀に吹き飛ばされ、そして巻き込まれた賊は足を取られ、まともに迎撃を出来ないでいた。

 

 輝理「退きなさい、黒騎兵北郷の牙門旗、漆黒の十文字が見えませんか!どきなさい!!」

 

 雛里「あわわわわわわわわわわわ!!!!!!」

 

 ドゴ!バギ!ドギャ!バゴ!

 

 輝理「・・・雛里?その両手の巻き物は??」

 

 雛里「あわ?孫氏兵法書写本上巻と下巻でしゅけど?」

 

 輝理「戦う軍師・・・返上しようかなぁ。」

 

 輝理、一寸可哀そうな事になってるけど、俺戦闘中だから知らないふりしてていいよね?いいよね??

 

 一刀「門を・・・開けろおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 そのまま敵を薙ぎ払う事で動きを制限した俺は隙を見て街の門を一時的に開けられる時間を稼いでそのまま滑り込むように街へ入りこむことが出来た。そしてその孫の旗の元に居たのは・・・やっぱり我等が主だった。

 

 一刀「仲謀、無事か?」

 

 孫権「ああ、すまないな北郷。だがこんな所で会うとはな。」

 

 どうやら護衛の甘寧は居ないらしい。

 

 一刀「ひとまず、敵の撃退だな。」

 

 ??「それには及ばないようです。敵が後退を始めました。」

 

 一刀「ん?そうなの・・・か・・・」

 

 俺は言葉を詰まらせてしまった。そこに居たのは・・・楽進文謙・・・凪だったのだから。

 

 楽進「どうなさいましたか?」

 

 一刀「あ、ああ。何でも無いよ。どうして退いてったんだろう?」

 

 楽進「どうやら先ほどの吶喊で敵大将首を獲っていたのでしょう。混乱しながら後方に下がって行きました。」

 

 一刀「そうだったのか。ありがとう。」

 

 楽進「は、では私はこれで。」

 

 一刀「・・・・」

 

 俺はその後ろ姿を眺めながら正直抱きしめたい気持ちを抑えるのでいっぱいいっぱいだった。だが、すぐに切り替え孫権に向き直る。

 

 一刀「で?どうして仲謀が此処に居るんだ?」

 

 孫権「・・・それはな。」

 

 そこで告げられる事実に俺は驚愕の一言しか出てこなかった。

 

 孫権「糧食が足りなくなったので・・・買い出しに来た。」

 

 一刀「はぁ!?」

 

 立ち話もなんだからと近くに有った椅子に座り、事情を聞く事にした。

 

 一刀「んで?糧食が足りなくなるなんて、何が有ったんだ?」

 

 孫権「それが・・・母様と姉さまが・・・」

 

 一刀「ん?孫文台と孫伯符が?」

 

 孫権「賊の討伐が物足りないって酒を煽って、つまみだと言って糧食を食べたのよ!それも毎日!!そりゃあ無くなるのは早いでしょうよ!!我が親と姉ながら心底軽蔑したわ!!北郷、もう独立しちゃいましょう!!私と貴方、思春達が居れば問題無いわ!!漢王朝とかもう知らない!!孫呉を立ち上げましょう!!そうよ、そうすれば二人も少しは・・・黄砂の一粒くらいは分かってくれるはず!!そうよ、それがいいわ!!」

 

 一刀「お、落ち付け仲謀。分かった。十分分かったから。大変だったな?よしよし、仲謀はよく頑張った。いい子いい子~。」

 

 なでなで

 

 孫権「北郷・・・ふぇぇぇぇぇぇん。」

 

 抱きつかれました。いい感じのおぱーいが俺の体に密着を・・・う、後ろから輝理と雛里の視線が突き刺さるぅぅぅぅ!!!!

 

 一刀「ちゅ、仲謀。さすがに・・・これはまずい・・・」

 

 孫権「ふぇ?・・・・・・あ!?//////」

 

 孫権はそのまま顔を赤くして離れてしまった。う~む、ちょっと惜しい気がする。

 

 一刀「まあとにかく・・・これだけは言っておくよ、仲謀。」

 

 孫権「なに?」

 

 一刀「・・・孫家、終わったんじゃね?」

 

 孫権「・・・・・・否定できないわ。」

 

 否定してほしかったよ、我が主。その後、雛里と輝理は孫権に自己紹介をしながらもう真名を交わすまでになっていた。そういえば・・・俺は孫権と甘寧からは真名を預かって無いが・・・信用されてないってわけじゃないよな?ちょっと自信が無くなってきた。

 

 

 

 

 輝理と雛里に孫権隊500の指揮を任せ、それからすぐに俺は仲謀に案内されながら夏候の旗の元に来ていた。ちなみにこの孫権隊の500は輜重隊に切り替えるための兵数らしい。しかも全部騎兵だ。

 

 一刀「・・・はぁ、会いづらいなぁ。」

 

 孫権「やはり、恋しいか?」

 

 一刀「無いと言えば嘘になるよ。」

 

 夏候淵。真名を秋蘭。俺は・・・彼女とまともに顔を合わせられるか正直心配ではあった。

 

 ??「秋蘭様、孫権様が例の黒騎兵の人を連れて来ましたよ~。」

 

 今ですら、目の前の少女、許褚こと季衣に抱きつきたい衝動を抑えるのが大変だと言うのにだ。

 

 夏候淵「ん?ああ、季衣か。入れ。―――っ!?」

 

 夏候淵の許可が下り、軍の駐屯に使われていた一つの家の中に入っていった。一瞬夏候淵の顔が驚きに染まっていたが、その姿を見た瞬間納得した。あの夏候妙才があろうことか怪我をして床に伏していたのだ。怪我が何かしら響いたのだろう。

 

 一刀「夏候淵殿が・・・負傷ですか?」

 

 許褚「そ、それは・・・」

 

 夏候淵「耳が痛いな。一瞬の油断にやられたのだ。」

 

 一刀「そうか・・・」

 

 許褚の反応と夏候淵の絶妙すぎるフォローで何となく事情を察した。おそらく、許褚をかばったんだろう。

 

 夏候淵「楽進達からは事情を聞いた。どうやら賊撤退の功を立てられたらしいな。この場を預かる最高責任者として何かしらの恩賞を与えねばならんのだが・・・」

 

 一刀「いや、要らないよ。俺は元々旅をしながら柴桑に向かう途中で・・・孫の旗を見つけて見過ごすことが出来なかっただけですから。」

 

 夏候淵「そうか・・・という事は北郷殿は孫権殿の?」

 

 孫権「まあ、子飼いのと言っておこう。」

 

 夏候淵「・・・そうなのか。では褒賞は孫権殿からという事かな?」

 

 一刀「そうなりますね。では私はこれで。」

 

 夏候淵「・・・ああ。・・・北郷殿。今宵は満月です。月見酒・・・などよいでしょう。」

 

 一刀「・・・?ええ、そう言われるなら。そうしましょう。」

 

 その言葉の意味を俺は捉えきれていなかった。ただ単に褒賞を与えられない事への軽い償い程度の言葉だと思っていたのだ。

 

 

 

 

 夜。天には大きな月が輝いていた。

 

 その月は何故かある光景を彷彿させた。

 

 川のせせらぎなど聞こえはしない。

 

 木の葉の葉擦れ音も聞こえない。

 

 だがしかし、何故かこの月はそれすらも幻聴させるに十分な月だった。

 

 心が油断していた。だから・・・

 

 一刀「はぁ、この月は成都の川辺を思い出すなぁ。」

 

 そんな事を呟いてしまったんだ。

 

 ??「どうした?華琳様の元に来る気にでもなったか?」

 

 だからこそこの声に何の違和感もなく答えてしまう。

 

 一刀「はは、まさか。ちょっと哀愁に駆られてただけだよ。秋蘭。」

 

 そう、彼女の真名すら呼んでしまう。

 

 秋蘭「・・・油断が過ぎるな。北郷。」

 

 一刀「―――っ!?どう・・・して・・・」

 

 やられた。満月に酒。それで十分なほどの情報は与えられていたのに。

 

 秋蘭「それは・・・それはこちらの台詞だ北郷。何故・・・何故華琳様の元に来なかった!!」

 

 一刀「それは・・・」

 

 俺は言葉を紡げなかった。頭の中でぐるぐると廻るのは何で彼女が俺を覚えているのかという事だった。

 

 一刀「なんで・・・覚えてるんだ?」

 

 秋蘭「知るか!華琳様も姉者も桂花も季衣も!此処に居る楽進も李典も于禁も覚えていなかった!!私だけだ!苦しかった・・・辛かったんだ・・・一刀。」

 

 秋蘭の声には怒気が込められていた。だけど、それは次第に落ち着きを取り戻し、悲しみとなっていった。声が・・・震えていた。

 

 一刀「・・・ごめん。」

 

 秋蘭「そう思うなら、共に来てくれるだろう?」

 

 秋蘭からの誘い。嬉しい。ついて行きたい。覚えてくれている。共に居られる。でも・・・それは・・・

 

 一刀「・・・ごめん。」

 

 謝罪。拒絶。理由なんて簡単だ。ただ、消えたくないから。

 

 秋蘭「なぜ・・・なんだ?」

 

 一刀「それはね・・・俺が魏に属すると俺が消えてしまうからだ。」

 

 真実を語るべく言葉を紡ぐ。

 

 秋蘭「それは、歴史を変えるからだろう?ならば、うまくこなせば・・・」

 

 誤解を解く。

 

 一刀「魏に属するだけで・・・消えるんだ。」

 

 秋蘭「なぜわかる!」

 

 残酷な現実を・・・付きつける。

 

 一刀「それが・・・この世界の理だからだ。」

 

 秋蘭「そんな・・・事・・・」

 

 秋蘭の言葉がそれ以上紡がれる事は無かった。背中越しに、秋蘭の、すすり泣く声が聞こえていた。俺は・・・また泣かせた。大事な人を。まったく・・・変わって無いな。

 

 一刀「話さないか?きっと賊はまた大軍で押し寄せて来る。今夜くらいだよ。こうして秋蘭とゆっくり話を出来るのは。」

 

 秋蘭はそのまま俺と背中合わせで座り込んだ。

 

 秋蘭「杯は?」

 

 その言葉に俺は傍に置いたアタッシュケースのポケットから杯を取り出す。その光景を横目で見ていた秋蘭は驚いてるようだった。

 

 一刀「はい、未使用。」

 

 秋蘭「・・・使用済みを求める。」

 

 一刀「まじ?」

 

 秋蘭「ああ。」

 

 その後、俺はポツリポツリと話し始めた。現代、天に帰った時からの事を。ゆっくりと、時間を掛けて、理解してもらえるように。

 

 秋蘭「では・・・北郷は・・・華琳様の敵なのか?」

 

 一刀「・・・・・・ああ、敵だ。」

 

 秋蘭「そうか・・・」

 

 一刀「・・・秋蘭。俺はね、大事だから、敵になるんだ。」

 

 秋蘭「・・・私は・・・くっ!不甲斐無い!!北郷、私も一緒に「だめだ。」!?」

 

 一刀「秋蘭。君は曹孟徳の腹心だ。夏候元譲の抑え役にして大事な妹だ。それを引き裂きたくない。」

 

 秋蘭「それでも・・・一緒がいいと言ったら?」

 

 一刀「・・・後悔させるかもしれない。」

 

 秋蘭「・・・なあ一刀。聞いてくれるか?」

 

 一刀「ん?」

 

 今度は秋蘭が一つ一つ言葉を選ぶように語りだした。

 

 秋蘭「私が元服した日、夢に見た。長く、充実した、そして悲しい・・・夢だ。その日から私は黄巾の乱が・・・こう言っては悪いが待ち遠しかった。なにせ、北郷と会えると思ったからな。だが・・・それは叶わなかった。独自に噂を探したが・・・見つからなかった。驚いたよ。単騎で邑を救った黒騎兵が、まさか北郷だとはな。だが・・・それを知った瞬間、驚愕しながら心から嬉しかったんだ。お前が強くなっていて、心からそう思えて・・・それほど・・・私は北郷を・・・一刀を思っている。今は・・・華琳様より・・・一刀が、一番なんだ。」

 

 あの冷静沈着な秋蘭らしからぬ、感情を隠すこと無い嗚咽混じりの告白。俺は涙が止まらなくなっていた。すぐにでも振り返って抱きしめたい。そう出来ればどれほど幸せだろう。此処の華琳は別人だ。そう思っていた。秋蘭すら別人の筈なのに、記憶を持っていただけで、こんなにも嬉しいなんて・・・

 

 一刀「孟徳に・・・心底恨まれるだろうな。此処まで秋蘭の心を奪ってしまってるんだから。」

 

 秋蘭「ああ、当り前だ。ちなみに言うとな・・・此処では華琳様とすら閨を共にしていないぞ?夢を見る前は華琳様の元に居なかったからな。」

 

 一刀「・・・」

 

 そこまで思ってくれている。ああ、俺は、幸せ者だな。

 

 一刀「仲謀の軍は歩兵は韓暹、騎兵は俺が率いてる。水軍は興覇が居る。問題の一つに弓に長けた人物が居ないと言う物がある。」

 

 秋蘭「!?」

 

 一刀「・・・孟徳に・・・弓を引く覚悟はあるか?」

 

 秋蘭「一刀と共に居られるなら!」

 

 その言葉を聞くと俺は立ち上がり、秋蘭に向き直る。

 

 一刀「なら・・・我が名は北郷、真名を一刀だ。改めて・・・君にそう名乗ろう。そして君を裏切り者にしてしまう罪科、君と共に居ることで償おう。」

 

 秋蘭「姓を夏候、名を淵、字を妙才、真名を秋蘭。今この時より一刀様の臣として傍に居させていただきます。」

 

 そう言って秋蘭は俺に臣下の礼を取る。実はこの光景を見ていた孫権からは、月下の反逆礼と名付けられた。

 

 これにより、俺の野望の為の陣営はほぼ完成形を迎えていた。王に立てる主君、それを支える近衛、政軍両略に長ける軍師、導き手の俺、街を守る事に秀でた勇士、戦う軍師に歴史にこの人ありと謳われる軍師、そして・・・愛しき女性の一人で弓を取れば大陸で一、二を争う弓使い。

 

 その後、賊は滞りなく殲滅を完了した。本来なら曹操軍の救援がある筈だったのだが、その前に殲滅を完了し、すぐに俺は旅に戻った。秋蘭は戦闘中乱戦に巻き込まれ、行方不明という扱いで俺と共に付いて来ていた。正直どうなるか分からなかったが、頭が切れる人間が居ないと言う状況がそれを可能にしていた。

 

 あとで聞いた話だが、その周辺でしばらく曹操軍の斥候部隊の姿が確認され、夏候惇と許褚の声が響いていたらしい。

 

 

 

 

 帯裏四コマ

 

 

 一コマ目

 

 

 一刀君警邏中。

 

 一刀「ん?おお、季衣に鈴々の大食い大会か。平和だな。」

 

 

 二コマ目

 

 

 一刀君警邏中。

 

 一刀「お、ねねと愛紗の、恋に「あ~ん」争奪戦か。平和だな。」

 

 

 三コマ目

 

 

 一刀君警邏中。

 

 一刀「ん?あの人だかりから見えるどんぶりの山は?」

 

 

 四コマ目

 

 

 一刀「星のメンマ丼大食い大会か・・・・・・・・・平和だな。」

 

 現実逃避をした。

 

 

 


 
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