No.803329

模型戦士ガンプラビルダーズI・B 番外編

コマネチさん

番外編「スーパーガンプラ対戦OG」(後編)

ナナがガンダムと思って参考にした機体はガンダムではなくヒュッケバインだった。そこへ挑戦者トリヤマ・カズが勝負を仕掛けてくる。ヒュッケバ…ビルドアカツキで応戦するナナの前に現れた機体は同じくガンダムではない機体、ビルトビルガーそっくりだった。

2015-09-20 21:04:29 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:719   閲覧ユーザー数:700

ビルトビルガー…これもヒュッケバイン同様ガンダムではなくPTと呼ばれる、機種だ。接近戦に強く調整された機体で

右手に装備されたクワガタムシの様なハサミ『スタッグビートルクラッシャー』は必殺の威力を持っている。

表面のアーマーは用途によってパージでき、高い機動性と重装甲の両立を実現した機体といえるだろう。

 

「参考にした程度っすけどね。こいつはユニコーンガンダム4号機『ヒポグリフ』っす」

 

「4号機って……確か前にマスミさんが使ってた機体もユニコーン4号機だったけど」

 

「あれ?別に4号機を名乗ってる人がいたんすね。公式じゃ無い分被ることってよくあるっす。この機体はデストロイモードへの変形機能を持たないって設定なんすよ」

 

「まぁ被る被らないはバトルには関係のない事ね!」

 

ガトリングのかわしつつ撃ちかえすナナが言う。

 

「ちがいないっす!!」

 

カズはそう言うとナナのビルドアカツキとの距離を一気に詰める。その間もナナはハイドラショットで撃ち落そうとするが、鋭角的に動くユニコーン・ヒポグリフには中々当たらない。

と、一発のハイドラショットが命中、「やったか?」と思案するナナだが、お構いなしにヒポグリフは突っ込んでくる。右腕のシールドで防いだのだ。

 

「甘い甘い!この程度じゃくたばらないぜ!」

 

そう言うと「ガパッ」と音を立ててシールドが開く、挟み切ろうと言う魂胆はナナにも理解できた。

「コイツで潰すっ!」

 

「その前に腕切るわよ!」

 

ナナが叫びながらハイドラショットからビームソードを発生させる。その数、なんと10本。

そのままナナは突っ込んでくるヒポグリフにビルドアカツキを全力で飛ばす。正面から突っ込もうというのだ。

 

「お互い、覚悟を決めようぜっ!」

 

「せぇぇぇいっ!!」

 

シールドニッパーを突き出すヒポグリフ、ハイドラショットを振り下ろすアカツキ、お互いの武器ががぶつかり合う。大きな衝撃音が響くが

お互いの武器を破壊するには至らない。

 

「くっ!」

 

「ちっ!」

 

いや、束ねたビームサーベルを受けても溶断出来ないシールドニッパーの方が頑丈というべきか。再度挟み切ろうとするカズのヒポグリフ、

 

「チャクラムッ!!」

ナナはバックステップの要領で後ろに飛びながら左腕のレドームヨーヨーと飛ばす。外側に刃のついたヨーヨーだ。

ビーム状ワイヤーで掌とつながったヨーヨーはヒポグリフの右腕にグルグルと巻きつく。

 

「あっ!」

 

カズが声を上げる。挟み切ることに集中していた為か対応が遅れてしまった為だ。ワイヤーでがんじがらめになったヨーヨーはヒポグリフの右腕を切り裂いた。

 

「向こうの手に乗せられちまったっ?!」

 

「どうよ!アイがいなくったってこれ位出来るわ!」

 

ナナがガッツポーズを取りながら言う。

 

「フッ……その通りっすね。でも俺も相棒に頼らない人間になる為に……」

覚悟を決めたようにカズが言うと、左手の剣、ヒートメタルソードを左手に持つ、

「負けるわけにはいかねぇんだ!!」

 

ビルドブースターを展開、異常なスピードでアカツキに向かう。

 

「何!?早い!」

 

とっさに回避しようとするも、すれ違った直後、破壊されたアカツキに右腕が舞った。

 

「右腕が!ハイドラショットがまだ使えたのに!」

 

「ならもう片方も破壊するぜ!」

 

急旋回し、突っ込んでくるヒポグリフ。ナナはバルカンで牽制するしかない。が、意にも介さずヒポグリフは何度もすれ違いざまに斬撃を繰り返してくる。

 

「くっ!アンタ!相方相方って言ってるけど十分強いじゃない!なんかやってる事が必死に見えるけど」

 

「……強いなんてとんでもない。相方がいない俺はおちこぼれですよ。そして必死ってのは多分合ってるでしょうね」

 

「何?!」

 

カズは攻撃中ながらも相方を話し始める。

 

「俺の相方は幼馴染みです。口うるさくてガンプラ仲間であると同時に朝起こしに来たり、飯を作ってくれたり

おせっかいですけど非常にありがたい女でしたよ。ガンプラバトルでも的確にフォローしてくれました」

 

話をしていながらも、攻撃の手はゆるめない。

 

「まるでラブコメね!」

 

ナナはレドームヨーヨーで迎撃しようと投げるが、アッサリかわされる。

 

「でもその娘は海外留学にいきました。俺のことは心配してくれましたけど。元々行きたがってたから

俺も勧めて説得しましたよ。……その後の生活で、俺は自分のズボラさを思い知りました」

 

次にすれ違った時はアカツキの右足を吹き飛ばす。

 

「俺の両親も海外ですから、最初は自由な一人暮らしと喜んだんですけどね!そいつがいたおかげでどれだけ助けられたか俺は痛感したんです!

そして思った!ソイツに頼らない人間になりたいと!」

 

「……好きなんだ、その人の事!」

 

「そしてアイツを守る人間になると誓った!」

 

そして三度目のすれ違い、左手を破壊されたアカツキはその場に倒れ込む。真上からアカツキめがけて突っ込む。

 

「その一歩として、頼らないビルダーになってみせる!奴に食いつけ!ヒポグリフ!!」

 

「……アンタもなんだ」

 

「?」

 

上からの突撃を食らう前に、ナナは倒れたままのアカツキのブースターを全開で吹かす。ズザザ!と音を立てて地表を滑り、アカツキはヒポグリフの進行方向から脱出、

 

「月面に突っ込ませる気か!?だけどまだ早い!!」

 

ヒポグリフを地表に激突させるにはタイミングが早かった様だ。ヒポグリフは可変翼を動かし、なだらかな放物線を描きながらアカツキの行った方向を追いかける。

いつの間にか低空飛行に変わっていたアカツキ、スピードは上がったが推力はヒポグリフの方が上、アカツキとの距離は徐々に縮まっていた。

 

「直線でこいつに勝てると思うな!」

 

「飛び散れっ!」

 

「?!」

 

ナナがそう言うと、アカツキの背中のユニットが開く、そして中から光の胞子が大量に出てきた。一瞬それは海を漂うマリンスノーの様にも見えたが、

それは一斉に真後ろのヒポグリフに高速で向って行った。

 

「胞子ビット?!」

 

カズが叫ぶ、『ガンダムAGE』に登場したビーム光球、無数のビームの弾を自在に操る技術だ。ナナのアカツキには

それの制御ユニットが搭載されていた為使用できるというわけだ。

 

――真正面から?!まずい!直線だから止まりきれな……!!――

 

可変翼でブレーキをかけようとするも、その時に胞子ビットがヒポグリフの全身を襲った。

 

「うわぁぁっ!!」

 

全身にビームの弾が撃ちこまれ、瞬く間にヒポグリフはボロボロになっていく。

 

「今だっ!」

 

「!?」

 

ナナはダメ押しとしてアカツキの背中にぶら下げたビームキャノンをヒポグリフに撃ちこむ。

これが決め手になった。

 

「お・俺って……やっぱりおちこぼれ……?」

 

致命傷になったヒポグリフは月面に墜落する。

 

「……アンタの気持ち、解るよ」

 

「?」

 

「アタシもさ、同じだよ。相方のアイにいつも助けてもらってばっかりで、焦って必死になって、自暴自棄になって、

迷惑かけない様にガンプラバトルをやめようとしても、アイがいたからアタシは立ち直れた。

アタシはアイツに頼りながらも自分を高めようって思った。程度は違うけどさ、頼る事って悪い事じゃないよ」

 

「でも……、俺は男っすよ。男なら好きな娘にはいい所を見せたい!」

 

「男を上げようと必死になるのは良い事だよ。でもなんかアンタ必死に見える。そんなギスギスしたアンタは幼馴染みの娘も見たくはないんじゃない?

『頼っていい』っていうのは『強引に自分を変える必要はない』って意味だよ」

 

「でも意志を確かめるなんて……出来ない!」

 

「だからって自分を変に捻じ曲げる必要はないよ絶対、上昇志向があるのはいいけど、もうちょっと肩の力、抜いたほうがいいよ。

焦り過ぎて自分を見失ったらその娘も悲しむと思うから」

 

「……そうか。そうっすね」

 

そうカズが言った瞬間、ヒポグリフは爆散。ナナの勝利となった。

 

 

バトルの後、握手を交わす二人

 

「有難うございます。ちょっと気が楽になりました」

 

「次は二人揃った時にバトルしたいわね。その時はこっちもアイと一緒に勝負したいわ」

 

「望むところっすよ。二人揃ったツインバードストライク、俺も今日より心身共に強くなって相手しますから!後悔させちゃいますから!」

 

「うん!楽しみにしてる!」

 

そうしてカズは店を後にする。

 

「大したものだよナナちゃん、アカツキの背中に胞子ビットを仕込むとはね」

 

「マスミさん、あの装備、あれはアイが作ってくれたんですよ。結局、今回もアイに頼らなきゃ勝てなかったな…

だからこそ、アタシもトリヤマみたいに努力し続けなきゃって思った」

 

「そうか。ナナちゃん」

 

「しかしハジメさん。なんでヤタテさんはビットなんてヒュッケバインに似合わないものを取り付けたんだろう?」

 

「さぁツチヤさん、なんかアイが『私はアシュクリーフ派』とか言ってたけど?」

 

(※スーパーロボット大戦64主人公機です。ヒュッケ同様ガンダムのオマージュ的ロボですが、大人の都合上64以外に出られないとか。

胞子ビットに似た『スプラッシュブレイカー』という装備を持ってます)

 

「またマイナーなもん好きだったんだなヤタテさん……」

 

 

 

その頃のアイは……

 

――あー、ヒュッケばっか目立ってるのになんで64のスパロボは目立てないんだろう……――

 

「くらぁアイちゃん!!手が止まってるぞ!!単純作業だからってやる気は最低限出さんかい!!簡単な作業だからって事故がないと思うな!皆にも影響すんだから!」

 

「うわぁごめんなさい工場長!!」

 

バイト先のラインで怒られていた。

 

 

前回のラストでオチがついちゃったので今回あまりインパクトなかったかも……コマネチです。

トリヤマ・カズの元ネタはいわずもがなです。名前は担当声優をもじってつけました。

不快に感じた方、ごめんなさい……

次回は違法ビルダーがどうして溢れたかを説明します。

 

※二枚目の写真、間違えました。右手は破損してる為、剣は左手で持ってます。すいません。


 
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