―――ここは汜水関、現在ここは地獄への入り口と化していた。
「ぎゃあああああああああッ!!!」
「助けてくれえええぇぇぇ!!!」
「やだ・・・死にたくないぃぃ・・・しに―――」
汜水関からの謎の弾幕攻撃により、味方の兵達が1000人以上が消し炭になった。
その攻撃は、美しい色鮮やかな光の玉であるが、一度触れるとその部分は一瞬で消滅してしまう。
雪蓮 「何よこれ!? どうなってるの!!?」
乂猟 「ま、まさか!!?」
愛紗 「この氣、この殺気・・・!!?」
星 「一夜狩りの燐兎か!?」
リント 「ご名答。 褒美だ、死ぬがよい。」
聞こえていたのか、リントは魔方陣の数を増やし、弾幕が更に倍になった。
リント 「さて、折角だ。 パーティに参加したからには、他の参加者に挨拶しに行くのが礼儀ってもの・・・」
そう言うと共に、箒に跨って、フワリと浮き上がると弾幕降る戦地へと飛び出した。
その時、辛うじて生き残った兵達は、光の玉の弾幕の中で見えたリントの姿に恐怖した。
「あ・・・あぁ! あの黄金色の長い髪は・・・!」
「一夜狩りの燐兎・・・!? うっ嘘だろ・・・なんで・・・なんでこんな所に居るんだよぉ・・・!」
元黄巾党・賊上がりにとっては、文字通り、"悪夢再来"である。
自分達の勢力をことごとく消していき、黄巾党滅亡の要因の一つと謳われた伝説の賊狩り、一夜狩りの燐兎が目の前にいるのだから。
それと共にリントは、誰も立っていない荒野の所へ着地した。
そんな数秒後だった。
雪蓮が弾幕の中を駆け抜け、リントの近くまで近寄ってきた。
肝心の乗っていた馬は、途中で光の玉に当たって見事にぐちゃぐちゃの馬刺しにされてしまっていた。
雪蓮 「一夜狩りの燐兎だな!?」
リント 「そうだけど、お前は確か・・・」
雪蓮 「名は孫策、字は伯符だ!」
その名と字を聞く前に、リントの記憶に雪蓮のプロフィールがミッチリと書き足されていた。
リント 「あぁ。 元賊上がりで、江東の小覇王様ね・・・、私は董卓ン所で客のリントだ。 まぁさっきアンタが言った通り現在は一夜狩りなんて肩書背負ってるがな」
雪蓮 「えぇッ・・・!? 客将で―――」
ボッ!
言い掛けた次の瞬間、雪蓮の横を現在降っている光の玉よりも遥かに剛速球なのを撃ち込んだ。
髪の毛の一部が消滅し、雪蓮の肌は、一気に冷や汗が吹き出し、汗ダクダクになっていた。
リント 「ちげぇよ、馬鹿っ。 客将なんてチンケなもんじゃなくて、私はただの客、お客様、そこんところ理解してるか?」
雪蓮は、冷や汗と共に衝撃を受けた。
本人は客と言っているが、まさか自分の言った事が本当に当たるとは思いもしなかった。
何より、この戦力、董卓の陣営はとんでもないことになっている感じていた。
そんな中、丁度そこに乂猟がやってきた。
こちらも、馬を途中でやられてしまい、徒歩でここまで来た。
乂猟 「燐兎!!」
リント 「よぉ。 乂猟じゃないか、久しぶり。 見る限りでは元気にしてるじゃねぇか」
乂猟 「覚えていてくれてたのか!?」
リント 「そりゃあ、背を並べて戦った知り合いでもあるからな。 記憶の片隅ぐらいには置いてるさ」
乂猟 「あはは・・・、それで・・・何で燐兎が董卓軍なんかに?」
リント 「何、ちょいと世話になったのと、御節介を込めてだ。 ついでに言うと、この戦い、どっちに転ぼうと損するのはお前らン所だって理解しとけよ。」
乂猟 「("どう転んでも損する"だって・・・? どういう事だ?) ・・・まぁ、今は、それの事は放置しておこう。 この戦が何であれ、お前とは一度戦ってみたかったのもあるしな、そこ考えたら雪蓮の勘に感謝かな?」
リント 「"ふんっ"―――、っと笑う所だが、まぁ折角の男性からの舞踏のお誘いだ。 奢ってやるのも一興ナリ・・・てか?」
リントのその台詞で、乂猟と雪蓮は構えた。
リントは、構えなどはしなかったが、戦闘のやる気は入っていた。
乂猟 「誘いに感謝するぜ・・・雪蓮!」
雪蓮「ええ!」
そう言って、二人は飛びかかった。
とうとう出会った小覇王と一夜狩り、この戦いは一体どうなるのだろうか・・・
それよりも、先ほどよりリントの隣に居た、ぬこの姿が見当たらない、何処に居るのかと言うと・・・
星 「一夜狩りの燐兎!! 以前の戦いでの再戦、受けて貰うぞ!!」
愛紗 「燐兎殿! 何故、貴殿が董卓の陣営に加担しているのか、喋って貰います!!」
そう言って、雪蓮達の援護に入ろうとした途端だった。
??? 「悪いけど、リントの邪魔はダメだよ。 おねーさん」
突然、目の前に小柄な少年が立ちふさがった。
黒い髪に江戸打ち紐にそこそこ和風なシャツとズボンを着た格好をしており、頭には猫耳、腰と尻の間には二つの尻尾が生えていた。
星 「な、何ッ!? 子供!?」
愛紗 「くっ・・・! 子供だからと容赦せん! 邪魔をするなーーーーーーッ!!!!」
愛紗が少年に向かって、懐に向かって斬り掛かろうとした・・・だが・・・
愛紗「な・・・なんだと!?」
少年は、あっさりとその一撃を片手の指で挟むようにして受け止め、勢いを完全に殺した。
??? 「悪いけど、僕の"主人"であるリントの邪魔はこれ以上無しだよ。 あんまりリントを怒らせたくないからね」
そしてそのまま、愛紗の愛武器、青龍堰月刀を手刀でバキンッと刃の部分を真っ二つに折った。
愛紗 「ば・・・馬鹿な・・・私の、青龍堰月刀が・・・!?」
星 「主人だと・・・!? 少年よ、貴様何者だ!? 名乗られいッ!」
ぬこ 「"ぬこ"―――それが僕の名前、リントから貰った僕だけの名前さ」
なんと、あのリントの傍に居たぬこが、まさか擬人化して、二人に立ちふさがっていた!
愛紗 「ぐっ・・・! はぁぁぁッ!!!」
愛紗は、折られようとも、まだ残っている部分だけで打撃として応用し、ぬこに襲いかかった。
・・・だが、これも無駄に終わり、受け流しと共に素早い裏拳が愛紗の顔面に直撃し、その衝撃で青龍堰月刀を手放してしまい、後ろに後退する。
愛紗 「~~~~~~ッ!! ハッ・・・!? し、しまっ―――」
案の定、青龍堰月刀は、今度こそ使用不可になるようにバラバラに破壊された。
愛紗は膝をつき、歯を喰いしばった。
ぬこ 「駄目駄目、関羽さん。 たかが"使い捨て武器"が無くなっただけで、まだその肉体が残ってるでしょ?」
愛紗 「~~~~~~ッ! 貴様ぁッ・・・!」
星 「挑発に乗るな! 愛紗、一旦引けッ! ここは私が引き受けよう!」
愛紗 「し、しかし・・・!?」
星 「あの燐兎の下僕ならば話が早い・・・その身柄・・・この趙雲が貰い受けるッ!!!」
その言葉を最後に、ぬこと星の戦いが始まった。
一方・・・既に戦闘を始めているリントと雪蓮・乂猟は、ほぼ一方的な戦いだった。
雪蓮 「はあああああああッ!!!」
乂猟 「せやああああああッ!!!」
リントは、二人の攻撃を相手にせず、そのまま突っ込んでいき、二人の攻撃はするりと明後日の方へと抜けていき、呆気なく二人の懐へと近づけ、両者にエクスプロージョンの魔法をお見舞いした。
どういうことか、その攻撃は、かなり魔力を手加減している為、致命的損傷を受ける程の威力ではなく、大きな隙が出来る程度の爆撃だった。
しかし、雪蓮と乂猟には効果的であり、後退りをすると共に吐血した。
雪蓮 「痛~~~ッ! なんて攻撃なの・・・ゲホッ!」
乂猟 「やはりだ・・・どうして攻撃が当らない・・・届かない・・・!?」
リント 「ほらっ死んでしまうぞ?」
そういうと、リントの片手に小さな竜巻が発生しており、それを放つと共に一気に巨大な竜巻へと変化し、二人を包み込んだ。
雪蓮 「えっ!? きゃああああああああああっ!!!」
乂猟 「うわあああああああああああっ!!!」
何とか踏ん張るモノの、風圧とかまいたちで全身は傷つき、10秒後に竜巻が消えた頃には二人とも傷だらけになって、全身血だらけになっていた。
雪蓮 「はぁ・・・! はぁ・・・! (なんて攻撃なの!? 自然現象を操るなんて!!)」
乂猟 「くっ・・・! がはぁッ! ふぅ・・・ふぅ・・・(ありえない攻撃を平然と打つな、燐兎は・・・! )」
二人からすれば、リントの攻撃は現象との戦いと一緒、当りもしない攻撃を無駄に打ち、逆に巨大な攻撃をわざわざ受けてしまう単純で情けない戦闘、勝てる見込みは一欠けらもなかった。
そこに―――。
蓮華 「お姉様ッ!! 乂猟さん!」
冥琳 「明命! 頼む!」
明命 「はい! 助太刀致します!」
祭 「策殿! ワシも行くぞ! 汜水関の方は任せたぞ! 韓当!」
韓当 「はいっ!」
蓮華 「思春! 姉様達を助けに行って!」
思春 「しかし蓮華様! それでは・・・!」
蓮華「構わないわ! 穏もいるし、どうにかなる筈よ!」
穏 「はい~♪ 雪蓮様を助けに行ってあげてください、思春ちゃ~ん♪」
思春 「―――解りました。 ・・・穏ッ! 蓮華様を頼むぞ!」
そして、雪蓮と純夏のところへ赴く思春、明命、祭
二人の元に着くと共に、リントに向けて刃を向けた。
星 「はあああああああああああああッ!!!」
ぬこ 「ほっ!」
片方では、星の龍牙とぬこの拳がぶつかり合っていた。
ぬこ 「ん~攻撃に集中してるのは良いけど、それじゃあ体力の無駄遣いだよ」
星 「黙れッ! 童に説教される筋合いは無い―――」
次の瞬間、リントが乗っていた箒が星目掛けて飛んできて、見事に顔面に激突した。
星 「がっ・・・!?」
激突と共に、フワフワと浮かびながら、ぬこの近くへと近寄り、青白い光を照らし始めた。
ぬこ 「童だって? やだなぁ、こんな容姿だから間違われてるけど、こう見えて僕は1000年以上も生きてるんだよ?」
星 「ぐぅぅぅ・・・!! 戯言をぉぉ・・・抜かすなぁぁぁぁぁッ!!!」
斬りかかろうとしたが、その攻撃は箒によって受け止められた。
しかし、それだけじゃない。
先ほどの台詞が癇に障ったのか、眼が先ほどよりも鋭くなり、口も笑っていなかった。
それよりも、ぬこの身体からオーラが吹き出ており、その姿に星はゾクゾクッと寒気と共に恐怖を覚え、震え始めた。
ぬこ 「戯言を抜かしているのは、お前の方だ。 人間、魔獣である俺に立て付く事とは自惚れた姿勢だな」
星 「ぁぁぁ・・・あああああ・・・!?」
ぬこは、龍牙を掴む手とは逆の手を振り上げると、魔力がそこに集中し始め、みるみる内に巨大な黒い獣の毛むくじゃらで鋭い爪をした手に変貌していった。
ぬこ 「調子に乗る哀れで無知で、無能な子供には・・・しつけが必要だよなぁ?」
星は龍牙を離して逃げようとしたが、身体が完全に硬直してしまい、動く事が叶わなかった。
星 「あ・・・ああああああああああああ―――」
その叫び声は途中で切れ、次に愛紗が見た星の姿は、地面にめり込んで動かなくなった星の姿だった。
愛紗 「星ぃぃぃッ! おのれ! 魔物・・・ウッ!―――」
愛紗の首筋に衝撃が走り、そのまま気絶した。
ぬこが素早い動きで背後に近付き、当て見をしたからだ。
先ほどの獣の手は完全に消えており、元の人間の手に戻っていた。
愛紗が気絶した事を確認すると、その場にしゃがみこんだ。
ぬこ 「ふぅ~~~・・・あ・・・あっぶなかったぁぁぁ~~~・・・つい馬鹿にされてムキになっちゃってた・・・僕も、もう歳なのかなぁ・・・」
そう、1000年以上も生きている魔獣のジョーク交じりの言い訳を誰も聞く事は無く、ぬこはさっさと腰を挙げる。
ぬこ 「さて・・・次は、と・・・」
そういうと、ぬこは、リントが所持していた箒に飛び乗ると共に物凄いスピードで汜水関の方へと飛んでいった。
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韓当 「くそぉっ!! 撃て! 撃って、撃って、撃ちまくれぇぇっーーー!!! 標的は巨大だ、どこを撃っても当る! 手当たり次第に撃ち続けろぉぉぉっ!!!」
孫策軍の韓当と劉備軍の鈴々は、汜水関を攻めていた
鈴々 「おお~~~! 凄いのだ、おじちゃん!」
孫策軍の韓当と劉備軍の鈴々は、汜水関を攻めていた
韓当 「それにしても、これはどういう事だ?! これだけの火矢を放っているのに、この結界はビクともしない、それよか触れた物全てを灰に帰している! こんな事、これまでの人生で初めてだ!」
鈴々 「にゃ~~~、鈴々の部隊も丸太で門を開けようとした時は大変だったのだぁ・・・」
と、いうと、火矢を放ちまくる少し前、鈴々達の部隊は、急いで破城槌の丸太を用意していた。
だが、いざ突っ込んでみたが、丸太の尖っている先端からみるみる蒸発するように白煙を挙げながら丸太は消滅していき、危うく兵の数名を亡くす所だった。
その後、韓当の部隊が大量の火矢を放ち、現在に至っているという状況だ。
韓当 「どうすればよい!? このままでは、矢を消耗し切ってしまうぞ!」
鈴々 「ん~~~・・・」
―――その時だった。
ぬこ 「"諦めて撤退"―――それをおすすめするよ、お二方さん」
鈴々 「にゃにゃ!? 何者なのだ! ―――っというか、う、浮いてるのだ!?」
韓当 「くっ・・・! 妖術使いの類か!! 構わんッ! 奴を討てぇっ!!!」
韓当の指示に従い、兵達は火矢の先を全てぬこに向けて放った。
だが、矢の速度とぬこが乗っている箒の速度・・・一目瞭然だった、
箒の素早さに圧倒され、火矢は空しくも地面に向かって刺さる。
鈴々 「は・・・早いのだ!」
韓当 「ぐぬぬぬ~~~・・・! 素早い奴めぇぇ・・・!!」
ぬこ 「まったく、そうチマチマ矢を撃たれちゃったら降りるに降りれないじゃないか―――っと!!」
突然、ぬこの片腕が発火し始め、その形はまるで炎の獅子の腕の様だった。
ぬこ 「エンチャント―――"フロガ(炎)"」
そして次にぬこは、その腕を振り上げ、そのまま鈴々達に目掛けて降り下ろそうとした。
そんな様子に鈴々はゾクッと悪感を感知し、慌て始めた。
鈴々 「だめ・・・! 駄目なのだ!! みんな! 早くここから逃げるの―――」
ぬこ 「遅い。」
次の瞬間、ぬこの腕は振り下ろされ、辺り一面に炎が舞い上がった。
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リント 「ぬこ、張り切ってんなぁ~・・・やっぱ楽しんでんじゃん」
そう言うと共に、地面に倒れている雪蓮を踏みにじる。
雪蓮 「うくっ! うぅ・・・」
乂猟 「ぐっ・・・やはり・・・強・・・い・・・」
その周りには、それぞれ呉の武将達が地面に這いつくばっており、身動きが取れない程にボロボロになっていた。
祭 「その・・・足をどけ・・・ろ・・・」
リント 「やだ。 だって、一度いっぺんやりたかったんだもん、こんな風に"強きで挑んだきた阿呆をボコボコにして足で踏みにじる"―――って奴をよ。」
乂猟 「ははは・・・相変わらず・・・ハァハァ・・・訳分からない奴だな、燐兎は・・・」
リント 「褒め言葉で受け取っとく」
今、会話している者達以外の全員は気絶しており、それぞれ重傷だった。
戦いの構図を現すと―――まず、リントに皆が飛びかかるも、リントの魔法、"大地鳴動(グランド・クエイク)"が炸裂し、
周囲の人間は吹き飛び、そこからさらに魔法、"雷矢雨(サンダー・シャワー)"を発動させ、全員に雷を浴びせた。
普通なら死ぬ筈だが、リントの"重要な仕事"の為、死に至らない程度の威力で抑えている。
しかし、今日はハイになりすぎたのか、少し加減を間違えてしまった。
リント 「さて、興が冷めちまったのもあるし、今日はこれで御開き、明日にしようや」
その突然の発言に、祭はキレた。
祭 「ふ・・・ふざけるな!!! これは戦だ、お遊びじゃ―――」
言い掛けたその時、祭の後ろで巨大な大爆発が起きた。
なんとか動かせる首と目を動かして後ろを見てみると、そこには巨大なキノコ雲が挙がっており、先ほどまで居た兵達の殆どが焼け死んでしまっただろう。
途端に、祭は顔が真っ青になり、再びリントの方に顔を向けた途端、ゾッとした。
リントの顔が目の前にあり、その片手にはバチバチと次の魔法を撃つスタンバイをしていた。
リント 「これが戦か? ん?」
祭は、涙目になりながら、口をパクパク言わせて、ガタガタ震えはじめた。
リント 「―――やる気ないなら、家に帰りな。 というか、今が逃げる絶好の機会だと思うぞ」
乂猟 「それは・・・別の意味で・・・だな・・・?」
リント 「察しがよろしくて結構、んじゃあ正解者に御褒美だ。 この茶番、とある三人の恨みから発生したもんだ、つまり仕組まれた戦ってワケだ。 もはやこの戦いに大義名分なんて一欠けらもない、ただ単にお前らは他人の私怨に哀れにも操られているだけだ」
雪蓮 「それは・・・ハァハァ・・・本当なの・・・?」
なんとか喋れるようになり始めた雪蓮は、リントに問い質す。
リント 「真実だ。 ―――と言っても、この話を向こうに持ち帰っても軽くあしらわれるか、馬鹿にされるかのどちらかだろう、いやもしかしたら両方かもな、兎に角、今がこの阿呆な茶番戦争を止めて、こっそりとここから抜け出して、多少の損害で終わらせる事が出来る筈だが?」
乂猟 「いや・・・それは無理だろうな・・・この戦いで逃げたら、反逆の意を疑われて呉が完全に滅ぼされてしまう・・・」
雪蓮 「そうよ・・・どの道、あんたらを討たなきゃあたし等、呉が終わってしまう・・・それだけは避けたいのよ・・・!」
リント 「あっそ。 じゃあ、引き続き阿呆踊りやって馬鹿やってろ、戦争屋共」
そう呆気なく、軽く罵倒してリントはぬこの元へ向かう為、魔法、"瞬間移動(テレポート)"を使用して、その場から消えた。
そしてリントが消えるて数秒後に、意識が残っている三人は深いため息をつきながら地面に頭を付ける。
雪蓮 「本当に化物ね・・・一夜狩りの燐兎というのは・・・」
乂猟 「だろ? ・・・はぁ~~~・・・燐兎に負けちまったぁぁ~~~・・・しかもアッサリと・・・」
祭 「くそっ・・・あいつは何者なんだ、突然現れ、未知なる力で我らをねじ伏せ、あまつさえ・・・我らの部隊を・・・!」
雪蓮 「ほんとよね~~~・・・この戦いが終わっても、下手すると呉はあたし等だけになっちゃいそうよ・・・」
冥琳 「雪蓮! 祭殿!! 御無事か!?」
穏 「遠くから見ましたが・・・なんですか、アレ・・・し、信じられません・・・!」
二人は先ほど起きた光景を目の当たりにして尚も自分の眼を信じられなかった。
呉の誇る一騎当千の将達が、たった一人に軽くあしらわれ、挙句の果てには一瞬にして味方の部隊の大半をたった一撃の攻撃で滅ぼしてしまったのだから。
そして尚も周りには光の雨が降り注ぎ、別の部隊の始末をしている、こんな戦でもない、ただの虐殺を二人は信じれずにいた。
蓮華 「―――。」
二人がこの世の終わりの様な顔をしている中で、蓮華は呉の将達を一人で相手にして、見事に完全勝利を飾ったリントに何処か胸打たれるモノを感じていた。
恋愛感情ではなく、ただ純粋に圧倒的な力に何処か見惚れてしまっていた。
冥琳 「ん? 蓮華様?」
穏 「蓮華様、如何なさいましたか?」
蓮華 「―――あれが・・・」
穏 「えっ?」
蓮華 「一夜狩りの・・・燐兎・・・か・・・。」
その顔は、やや赤面になっていた。
女性とは思えぬ、凛々しい瞳、黄金色に輝く美しい長い髪、そして一番に来る、あの途轍もない力。
もし、彼女の傍に居られたらどれだけ嬉しい事か、彼女と共に背を並べて戦えればどれだけ満足な事か・・・
ただ、蓮華はそれだけを思っていた。
乂猟 「―――なぁ、蓮華?」
蓮華 「へっ? えっ!? な、何!?」
別の事が見えていなかった事もあって、突然乂猟に声を掛けられて思わずオーバーリアクションしてしまった。
穏 「蓮華様、もしかして~・・・?」
蓮華 「なななななな!!? 何言ってんだよ、お前ら!? あたしゃ、べ、別にィィッ!? あの途轍もない力を持つ燐兎に惚れたなんて、これっっっっ・・・ぽっちも! 思った事ないんだからね!」
冥琳 「蓮華様、落ちついてください、あと色々と口調が変です」
蓮華 「はぅあ!?」
雪蓮 「あらぁ~? 蓮華ってば、あの化物に惚れこんじゃった訳~? 好き者ねぇ~、アンタも~クスクス・・・」
冥琳 「雪蓮、蓮華様をあんまり困らせるんじゃない」
雪蓮 「はぁ~い」
蓮華 「~~~~~~~~~・・・ッ!」
そう会話に盛り上がっている中、乂猟一人だけはリントが口にしたアレが気になって仕方なかった。
乂猟 (それにしても・・・この戦いは、仕組まれていた・・・? それは一体誰が? 兎に角、今は戦争に参加していく形で探る必要があるな・・・)
こうして、呉の面々は負傷者と死者を大量に出しながらも、何とか生き残った人員を使って、残りの部隊を待機させている本部へと撤退する事にした。
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鈴々 「てにゃあああああああっ!!!」
あれから、鈴々は何とかぬこに一撃と刃を振るうが、それでも当る事はなく、どれもこれもあしらわれる一方だった。
韓当 「くそぅっ! なんて速さだ! まったく捉えられん!!」
鈴々の援護にと、炎の中で何とか生き残った弓兵を使って、火矢を放つが、それらもかわされるどころか上手く矢を掴み、そのまま相手の顔面目掛けて投げ返していた。
弓で放つ矢よりも、ぬこが投げた矢の方が遥かに速度が速く、回避する間もなく兵士は次々と矢の餌食と化していた。
ぬこ 「エンチャント―――"アネモス(風)"」
そう唱えると、ぬこの両手に風が現れ、それを振るうと共に風は巨大化していき、周りの残り火をさらに熱く燃え上げた。
やがて、竜巻が発生し、火を吸いこんだかと思うと、火炎旋風へと変わり、残りの弓兵達を巻きこんでいった。
当然、火炎旋風の前には鈴々と韓当は叶うワケがなく、高温にまで上昇した周りの空気に息も儘ならず、窒息してしまいそうに口をパクパクしていた。
韓当 「かっ・・・はぁ・・・!」
鈴々 「ヒュー・・・ヒュー・・・い・・・息が・・・」
対するぬこはというと、何食わぬ表情でピンピンしていた。
それよか、鈴々達よりも主であるリントの帰りを今かと、リントの気配を感じる方角へと目を向けていた。
ぬこ 「そろそろかな・・・?」
ぬこが言った瞬間、彼の目にリントの姿が見え、先ほどまで冷静な顔つきだったのが一変して、パァッと明るい表情へとなった。
やはり猫だろうか、主を見た途端に尻尾を嬉しそうにフリフリさせて、耳もピコピコと小刻みに動いていた。
ぬこ 「おーい! リントォ~~~!」
ぬこの声が届いたのか、リントは、ぬこに向かって手を振った。
その一分後、リントは無事ぬこの所へと到着し、一旦降りた。
先ほどまで発生していた、火炎旋風も消えており、黒く焼き焦げた雑兵と何とかギリギリで持ちこたえている鈴々達が地面に転がっていた。
リント 「遠くから見えたから、大体予想はついていたが・・・相変わらず、エグイなぁ~・・・ぬこは~」
ぬこ 「そういうリントだって! 普通、弾幕をこんなに放つ? というか、途中で見えたあの光! リント"本気"出したでしょ?」
リント 「くっそ生意気な女が図々しく言ってきて腹立ってな、脅しで撃った」
ぬこ 「うわぁ~お・・・それより、この二人どうする?」
そうぬこが聞くと、何も言わずに指を鳴らして二人を転移魔法で何処かへと転移させた。
リント 「これでOK」
その後、誰も入る事も攻撃さえも受け付けなかった結界の中へと平然と入って行った二人は、次の茶番が来るまで暇を持て余すのだった。
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―――連合軍陣地
突如現れた一夜狩りのリントにより、一日で壊滅状態近くまで持っていかれた連合軍は緊急で軍議を開くこととなった。
雪蓮 「―――というワケよ、信じたくないのなら別に否定しないわ・・・」
桃香 「ううん、否定しないよ・・・だってあの光は・・・、・・・何かの間違いだと思っていたのに・・・」
朱里 「燐兎さんが・・・」
桃香は遠目からリントが発した光の弾幕、そして途中で起きた天変地異とも言える現象の数々・・・
最初は何かの間違いじゃないかと思っていたが、戦地の状況を知る内にそれは真実だとハッキリと理解した。
華琳 「―――。(まさか、あの一夜狩りが向こうに居るとわね・・・これは戦略の見直しが必要ね・・・)」
春蘭 「クソッ! 一夜狩りめ・・・!」
秋蘭 「姉者、軍議中だぞ」
春蘭 「おお、すまない・・・」
葵 「―――。」
翠 「こりゃ一体全体どうなってるんだよ?」
皆が暗い雰囲気の中、この空気の読めないドリル頭は高笑いを決め込んで喋り出した。
麗羽 「まったく皆さん、情けないですわ! 我々は董卓の圧制から洛陽を救い出す為に結成された団体ですのよ!? 負けておめおめと帰ってくるなんて・・・非常識にも程がありますわ! ねえ、美羽さん?」
美羽 「まったくなのじゃ! 孫策は、ホンっっっっっトに! 役立たずなのじゃ!」
雪蓮 (ムッカァァァァ~~~・・・! 何よ、自分達は高見の見物してた分際で!)
そんな麗羽と美羽の理不尽な言動を遮るように、桃香が手を挙げて提案を持ちかける。
桃香 「袁紹さん! 次も私が行きます!」
朱里 「はわわっ!? と、桃香様!?」
麗羽 「あらぁ~? 劉備さん? 大丈夫なのかしら?」
桃香 「はい・・・! 私、どうしても燐兎さんに聞きたいんです! どうして董卓さんに味方しているのか!」
桃香の耳には、呉が持ち帰った情報の中で雪蓮達だけが聞いた、あのリントが放った"この戦いは仕組まれている"という情報はまだ入っていなかった。
というよりも、呉以外の耳には、あの情報は入っておらず、呉はこの事を内密に抑えていた。
言っても、リントが言った通りに上手く取り行って貰えないだろうという事を思い出して判断したからだ。
白蓮 「―――よし、桃香が出るなら、明日は私も行こう」
桃香 「白蓮ちゃん、ありがとう!」
葵 「これは、俺も行った方が良さそうだな」
翠 「か・・・母様!?」
葵 「なぁ~に、若い奴ばっかに働かせるワケにはいくまいて、それに俺も久しぶりに一暴れしたいからな♪」
葵は、そういうと自身の愛槍、戦皇刀姫を取り出した。
雪蓮 「ごめんなさい、私達は少し休ませて貰うわ。 今回の戦で酷く消耗してしまって―――」
だが、その休息は許されなかった。
美羽 「孫策!お主も行くのじゃ!」
七乃 「そうですよ~孫策さん、今日の汚名を晴らさなきゃ孫策さんも目覚めが悪いでしょ~?」
彩 「そうだな、これではかの孫堅殿も泣いておろう」
雪蓮 「―――分かったわ・・・(はぁ・・・まったくこの無能達は・・・でも、再度会う必要はあったし、成るべく兵を減らして挑むとしましょうかね・・・)」
雪蓮は今は仕方が無いと分かっているため、しぶしぶ了解する
麗羽 「では、明日は劉備さんと孫策さんと白蓮さんと葵さんが出てくださいまし」
桃香 「はい」
白蓮 「分かった」
雪蓮 「分かったわ」
葵 「よっしゃ!」
翠 「はぁ・・・(まったく、張り切っちゃってぇ~・・・大人しくしてくれよな・・・)」
そう決定したと共に、緊急の軍議はこれにて解散となった。
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―――劉備陣営
桃香 「というわけで、明日も私達が先方になったから皆よろしくね」
愛紗 「わかりました、桃香様! (あの少年、必ずやこの手で仕留める!)」
鈴々 「わかったのだ、お姉ちゃん! (痛た・・・まだ傷が痛むのだぁ・・・でも! これでへこたれるワケにはいかないのだ!)」
愛紗 「鈴々! 燐兎とあの少年は、妖術を多用していて手強い、明日は私と鈴々の二人でかかるとしよう!」
鈴々 「がってんなのだ!」
星 「―――。(三度目は無い・・・必ずや勝利を収めてみせる!)」
朱里 「桃香様、おそらく明日は簡単には行かないと思います」
桃香 「えっ? なんで?」
雛里 「おそらく向こうは今回は自分の存在を知らせるために打って出たのだと思われます、きっと明日は本格的に篭城される―――「あいや、それはありえないだろう」―――星さん?」
星 「明日も変わらず、一夜狩りの燐兎・・・あの者が打って出るだろう。 そして私達を伸したあの妖も・・・」
桃香 「ならどうしたらいいの?」
星 「全力全開、全身全霊で挑むしかないでしょうな。 向こうに戦略など無用でしょう」
朱里&雛里 「「――――――。」」
一同、リントの圧倒的な力の前にどう対処すればいいのか、それだけを考えながら床へと眠るのであった・・・。
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―――呉の陣営
雪蓮 「すまないわね皆、明日も働いて貰うわ」
乂猟 「勿論・・・なのだが、どうするんだ? 兵は殆ど燐兎にやられたし・・・」
冥琳 「そこなのだが・・・明日は初期よりも部隊を大幅に減らして他の陣営の兵と協力して攻めようと思っている」
雪蓮 「その方が無難ね、まったく・・・あの化物は、本当に厄介な事をしてくれるわ・・・」
思春 「―――。」
呉の陣営が沸き立つ中、思春だけは憂鬱そうな顔をしていた
蓮華 「思春、どうしたの? そんな険しそうな顔して・・・」
思春 「蓮華様―――。」
雪蓮 「そうよ、一体どうしたのよ?」
思春 「雪蓮様、南海覇王をご覧になってください・・・」
雪蓮 「えっ?」
思春 「ご覧になっていただければわかるかと」
雪蓮 「え、えぇ・・・分かったわ・・・」
雪蓮は、南海覇王を抜いた―――その瞬間、一同に衝撃が走った。
雪蓮 「なっ!? こ・・・これは!?」
蓮華 「な、南海覇王が・・・!?」
南海覇王は、完全に鈍刀と同等になってしまっており、今度降るおうならばバッキリと折れてしまいそうだった。
雪蓮 「どういうことなのよ、これ!?」
乂猟 「どうやら、燐兎の妖術のせいだろうな・・・しかし、南海覇王がか・・・」
南海覇王は孫家重代の宝である
その切れ味と強度はそん所そこらの剣とは比べ物にならない―――なのだが、
その筈なのに、たった一回の戦闘でこうまで鈍刀にする程の力量、改めてリントの恐ろしさを身に染みる一同だった。
冥琳 「駄目だな・・・こうなってしまっては、一度修理しないと駄目だ、今後は使わない方がいいだろう」
蓮華 「それにしても信じられません、南海覇王をここまで傷付けるなんて・・・」
思春 「蓮華様、これを・・・」
思春は、自分の愛刀である鈴音を蓮華に見せた
蓮華 「えぇっ!? 思春の剣もボロボロ・・・というか、折れちゃってるじゃない!!」
蓮華の大声で、一同は思春の元へと近寄り、南海覇王よりも酷く、完全に折れてしまっていた
思春 「皆も自分の武器を確認してくれ」
乂猟 「うわぁ~・・・戦いで集中してたから気付かなかったが、こうまでなるかよ普通・・・」
明命 「はぅあ!? そ、そんなぁ~・・・」
乂猟と明命の愛武器も、南海覇王と同様にボロボロになっていた。
思春 「あ奴の攻撃、受け止めるのも難題でしょう・・・こちらの武器がこうなってしまうのでは・・・」
蓮華 「そうね・・・彼女の攻撃力、速度、連撃の速さ・・・思春の剣も、多分だけど一点に集中して攻撃したように見えるわ」
冥琳 「あの戦いの中でか・・・燐兎、なんという武力の持ち主だ・・・」
穏 「どう立ち回りをすれば悩んでしまいますねぇ~・・・」
思春 「少なくとも、攻撃を全面的に回避に専念するのが正しいかと・・・」
明命 「あううう~~~・・・む、無理ですぅぅ~~~・・・思春様と私の速度を持ってしても呆気なく追いついて攻撃を当ててくるんですよぉ~?」
思春 「ぬぅぅ・・・」
普段ならば、「怠れるな」など色々と言う所だが、今回ばかりはそれが言えない立場にあった。
乂猟 (何とか燐兎と交渉出来ればいいのだが・・・彼女はそう簡単に鵜呑みする者じゃないし・・・どうすれば・・・)
雪蓮 「皆、万が一に予備の武器は持ってきているわね」
穏 「はい~大丈夫ですよ~♪ ちゃんと持ってきていますからね~♪ でも、本来皆さんが使っているものより性能は落ちてますから、結局帰ったら皆さんの武器は作り直しですね~」
冥琳 「その時は、もっといい鍛冶屋に頼めばいい、今はこの戦に何とかして勝つことを考えなければな」
雪蓮 「そういう事・・・まぁ、無理に勝とうなんて思わない方がいいわね、母さまみたいに勝ちにこだわり過ぎちゃやられるのがオチだしね」
こうして、呉の会議は終り、後日は燐兎との戦いでは防御を中心に攻める事にした。
その夜、誰もが就寝に入ろうとした際に、蓮華はモジモジしながら赤面で乂猟に訪ねた。
蓮華 「あの~? 乂猟さん」
乂猟 「ん? 蓮華か、どうしたんだ?」
蓮華 「あ・・・いや・・・その・・・実は・・・」
蓮華の様子に、ピンッと気づいた乂猟は少しにっこりしながら蓮華が赤面の原因を告げる。
乂猟 「燐兎か」
蓮華 「へっ!? な・・・うう・・・う、うん・・・」
乂猟 「そうかそうか。 まぁそう照れるなって、蓮華も立派な女性だ、男らしい燐兎に何処か魅かれたんだろう?」
蓮華 「そ、そうだけど・・・そういう乂猟さんもどうなの・・・?」
乂猟 「俺か? ん~・・・確かに惚れこむ所はあるが、なんというか彼女とは友達という関係で居たいかな? 実際、彼女とは女に囲まれている俺に取ったら、なんか馴染み易い雰囲気あるし」
蓮華 「そ・・・そうなんだ・・・、・・・~~~~~~ッ」
燐兎の事を思い出し、再び赤面になる蓮華に乂猟は頭を撫でた。
乂猟 「まぁ彼女は冷たい一面が大きいが、慎重に接していけば俺みたいに接してくれるだろう」
蓮華 「うん・・・ありがとう・・・乂猟さん・・・」
乂猟 「お安い御用だよ」
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―――曹操陣営
華琳 「―――。」
華琳は一人、何かを考えていた。
春蘭 「華琳様~~~・・・」
そんな中、春蘭が寂しさ勢いに華琳に甘えようとした所を、秋蘭に摘まれて止められた。
秋蘭 「姉者、たまには華琳様も一人で考えに浸りたいときもあろう、少し落ち着け」
春蘭「でもでも秋蘭、華琳様が全然かまってくれないのにゃ、寂しいにゃ~~~」
華琳成分不足で春蘭は猫化してしまっている
その瞬間、遠方より殺気を感じた。
位置的に汜水関から感じ、二人はやや冷や汗を掻く
春蘭 「えっ・・・なんだ・・・今の・・・?」
秋蘭 「わ、解らん・・・だが姉者・・・それ以上やってはいけない気が・・・」
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その汜水関では・・・リントが微笑を浮かべて笑っていない目で二人が居るであろう方角を見ていた。
その様子に、ぬこは「ああ・・・」と何かに気づき、同じくリントが向く方角を見た。
リント (次の仕置きは、あいつに決定だな・・・)
そんな事を思い浮かべながら、次回の戦いに備え、リントとぬこは就寝に入った。
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季衣 「流琉?」
流琉 「どうしたの、季衣?」
季衣 「どうして、春蘭様はあんなになっているの?」
流琉 「あ~・・・それは~・・・、・・・はにゅう・・・」
とても口ではいえないことを想像してしまった流琉がいた
季衣 「えっ? えぇ?」
凪も遠くからリントの魔力・・・氣を見ていた。
凪 「やっぱり、あの氣は・・・燐兎様があちらにいらっしゃるとは・・・」
凪は、人一番に喜んでいた。
なんせ今まで目標にしていた人物が、すぐそこに居る、しかも手合わせが願える機会があるという事に歓喜すら覚えた。
出来れば今すぐにでも飛んで行きたい衝動にかられているが、何とかそれを抑えながら、朝を待つ。
沙和 「ん? 凪ちゃん、今なんて言ったの?」
凪 「え?」
真桜 「いや・・・燐兎様がどうとかって・・・」
凪 「あーいや、別に燐兎様なんて・・・あっ・・・」
墓穴を掘ってしまう凪
沙和 「へぇ~そうなんだぁ~♪」
真桜 「成程ねぇ~・・・」
凪 「ち、違うッ! 決してヤラしい意味ではない! ただ・・・」
真桜 「ただ?」
凪 「あの方とは、一度でも良い。 この拳とぶつけ合いたいと願っている・・・ただそれだけなんだ・・・」
沙和 「ふ~ん・・・それだけねぇ・・・」
沙和と真桜は、真剣に語る凪をおちょくるようにクスクスと笑っていた。
凪 「もう! そんなんじゃないってば!!」
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桂花 「―――零、ちょっと良い?」
零 「何よ、桂花」
桂花 「華琳様は・・・何を御考えていらっしゃるのかしら? 貴方の意見を聞きたいわ」
零 「ああ、その事。 ・・・そうね! 十中八九、一夜狩りの燐兎・・・アイツをどうやってこちらに招くか・・・でしょうね」
桂花 「そんなこと絶対阻止よッ! あんな男と変わらないような輩・・・もし万が一、華琳様が何かあってしまったら、私もう死ぬしかないわッ!!」
敬愛する華琳を燐兎の魔の手から守らんと一層決意する桂花・・・だが、しかし。
零 「―――。(阿呆ね・・・私の考えは貴方とは違うわよ・・・)」
桂花 「どうしたのよ、零?」
零 「私は、一夜狩りの燐兎を、私達の陣営に招いてもいいと考えているわ」
桂花 「はぁっ!? ど、どうし―――ウムゥッ!?」
零 「し~~~! 声が大きい・・・!」
とっさに零が桂花の口を塞ぐ
零 「よ~く考えて見なさいよ? あの一夜狩りの燐兎を私達の手駒へと変えれば、華琳様はきっと私達を褒めてくださるでしょう、そうなれば後に待っているのは・・・」
桂花 「―――。 (後に待っているのは・・・)」
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華琳 「さぁ・・・桂花・・・こっちへいらっしゃい・・・」
桂花 「はぁ~・・・華琳さまぁ~・・・」
華琳は、近づいてきた桂花の喉元に口づけをし、それに桂花はビクッと感じた。
さらにそこから舐めはじめ、桂花は喘ぎだし、華琳もノリ気になり始めた。
華琳 「くすくす・・・この程度で感じちゃうなんて・・・いけない子・・・」
桂花 「はぅぅ~~~・・・すみましぇ~ん・・・」
華琳 「ふふふっ・・・なら・・・おしおきしてあげないとねぇ?」
桂花 「はいぃぃ・・・おしおきぃぃ・・・くださぁい・・・」
辺りに甘い香りが広がっていく―――。
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桂花 「はぅあああああ・・・! 華琳様ぁぁぁぁ~~~!!」
そんな感じで・・・トランス状態になっている桂花を見ながら 「やっぱこいつ阿呆だわ」 と心の中で呟いた零は、夜空をそっ・・・と見上げた。
零 (上手い事、あの曹操を燐兎が深手を負わせてくれたら、好機はこちらに来る・・・!)
―――と、あくどい事を考えていた。
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―――馬騰陣営。
母と子、二人は床に入る前に話し合っていた。
翠 「なぁ・・・母様」
葵 「ん? なんだい、翠? 改まったような顔して・・・」
翠 「いや・・・本当に大丈夫なのか? 明日の戦を引き受けても・・・」
葵 「さっきも言ったじゃないか、なんか前より調子が良いくらいだって・・・それに俺らの目的はこの戦に勝つことじゃない」
そう、この母子がこの戦いに参戦したのには、他と無い重要な役目があったからだ。
翠 「ああ。 "事の真実を確かめる"―――これが目的だからな」
葵 「そうだ。 董卓は俺らと同じ涼州の出身、そんなやつが暴政なんてするのか・・・それをこの目で見極める必要がある」
翠 「分かってるよ、母様! 他の奴の足を引っ張らないように頑張るさ!」
葵 「ふふっ・・・それにだ! 久々に大暴れ出来るからな、明日が楽しみだぜ!」
翠 (やっぱ、本来の目的はそっちかい!!)
娘の苦悩は続く・・・。
●【リント変身図鑑】(※番外編)
●ぬこ (擬人化)
《小話》
マジコメイジ時のリントに常にくっついていた猫の本来の姿。
元々は上位に入る程の魔獣だったが、リントと出会い色んな敬意の元でリントを主として仕える事にした。
主僕関係はそこまで無く、リントからしたら弟みたいな存在ともいえる。
初期だと、ツンツンだったらしいが今ではリントや他の人間に対してもデレを見せているが、攻撃的だったりムカつく奴が居た場合は牙を向ける。
能力は、リントとは少々衰えるが、肉体に属性を付加させる「エンチャント」と呼ばれる魔法を扱える。
ちなみに現在の衣装は、リントの上司であるジャックの御手製で、最近貰ったモノ。
●【今回のバトル・背景BGM】
(本日のお相手:哀れな雑魚兵士共&呉の武将の方々(リント))
{Cry! Scream!!}:『虫姫さまふたり』より ~ (ラスボス戦BGM)
《プチ話》
個人的に弾幕と言えば、これ。
小説内では解りにくいと思えますが、ラスボスの弾幕をイメージしてます。
「虫姫さまふたり」で動画検索すれば、すんなりと見つかると思いますが、作中の雑魚兵はこれでボム無し、回避速度が遅いという詰みゲー状態、しかもコンティニュー無しの残機1のみ。
やっといてなんですが、雑魚兵くんごめんね、そして死ぬがよい。(無慈悲)
(本日のお相手:愛紗と鈴々と星くん(ぬこ))
{Bestial Beat}:『虫姫さまふたり』より ~ (各ステージボス戦BGM)
《プッチン話》
再び、虫姫さまふたりからのBGM。
こちらもカッコいいので、是非とも御試聴あれ。
この虫姫さまふたり、とあるゲームセンターでアーケードが置いてあった(1プレイ50円)のでやってみたんですが・・・
1ステージで残機使い切り、ボスの所でヤラレチャッタ♡
\パルムニワラワレチャウヨォ.../
あと、隣にあったドドンパッチも同様にやられました。
くそぅ・・・くそぅ・・・
●【あとがき】
Hankです。
意外と短い間での投稿ですが、次回もこんな感覚で投稿出来たらなって思ってます。
さて、今回のお話ですが・・・
単騎での特攻と言ったな? あれは嘘だ。
まさかのここに来て、ぬこが擬人化しちゃいました。
まぁ前々から設定は決まっていたので、個人的に出すタイミングが良かったと思ってます。
ぬこ君もリント同様に強いですが、それでもリントよりかはまだ優しい方。
今後、どう活躍するかはお楽しみと言う事で・・・
次回も茶番戦争勃発ですが、それでもリントとぬこは元気です。
さぁて・・・次回は誰をズタボロにしてやろうか・・・ふっふっふっ・・・(ゲス顔)
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「ウッフフフフフ……虐狂(ぎゃっきょう)の極悪上弩(ごくあくじょうど)へようこそ。」