No.800875

ブランシュ・フォンテーヌ  - 母の面影に囚われた或る技術者の一生 -

yuiyuasaさん

【ブランシュ編 その1】
ブランシュ・フォンテーヌ【Blanche Fontaine】‐母の面影にとらわれた或る技術者の一生‐

2096年7月に初版発行。Web発行は同年9月〕著者: アン・マキャフリイ【Anne McCaffrey】

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2015-09-07 12:37:20 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:760   閲覧ユーザー数:760

 

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★ 画像・設計図面つきの元記事:ブランシュ・フォンテーヌ - ロボテック・クロニクル 

http://seesaawiki.jp/harmony-gold_japan/d/%a5%d6%a5%e9%a5%f3%a5%b7%a5%e5%a1%a6%a5%d5%a5%a9%a5%f3%a5%c6%a1%bc%a5%cc

 

 

(ジール・ブロマシェ 【Gille Blomache】との会話より)

〔VF-8〕「ローガンは、お前と同じでチビで醜い蛙(カエル)だ。 戦闘機の開発には、闘争本能的な何かが必要なんだ、相手を徹底的に追い詰める獰猛(どうもう)さ、それが貴女には欠けている。(中略)やはり  女には可変戦闘機など設計させるべきでは無かったな !」

 

■ ジール・ブロマシェ【Gille Blomache】:リージェ重工業【Liège】社のブランシュ・フォンテーヌの1年後輩(男性)。主に構造計算を担当した。■ 

 

「利用者の求めに応じて必要十分な役目を果たせるサービスをしただけ。醜いのは真実を見抜けない貴男の心だけよ !」

 

● 後輩の現場作業員(女性)が、ローガン B型の試作機の地上滑走(ガウォーク形態)試験時にたまたま二人の遣り取りを聞いた証言との後世の研究書で触れた記述ですが、検証が為されていない為、真偽の程は明らかではありません。

 

「VF-8 ローガンは、お前と同じ、チビで醜い蛙(カエル)だ。」、 「求め」、「サービス」等意味深な単語が散りばめられていますが、「正確な伝記」ではなく、執筆者の創作の可能性が指摘されています。

 

▼ 参考図書

 

「ブランシュ・フォンテーヌ ‐母の面影にとらわれた或る技術者の一生‐」

 

〔2096年7月に初版発行。Web発行は同年9月〕著者: アン・マキャフリイ【Anne McCaffrey】〕

 

実母「マリー・フォンテーヌ」【Marie Fontaine】

 

本機の主要な設計者であるブランシュ・フォンテーヌを語る前には、まず2010年代にエアバスA380の機長を務めていた「マリー・フォンテーヌ」【Marie Fontaine】について語る必要があります。

 

未婚の母親でありウーマン・リブ活動家でもあった彼女は自身が余りに平凡な名前(マリーは日本人の感覚では『花子』や『芳江』並の古風な名前)であったことから、娘には「ブランシュ・スコット」から引用した命名をしました。

 

趣味のレストア機 (黒鯨/黒いクジラ)

 

地球圏の [[jumpuri:インビッド>http://seesaawiki.jp/harmony-gold_japan/d/%a5%a4%a5%f3%a5%d3%a5%c3%a5%c9]] 戦禍を逃れる為に 故・リパブリック社の忘れ形見『ワイマン・ゴードン』【Wyman Gordon】社の スキンミラー用のフライス盤と、旧い素材であるアルミ合金・鍛造機械の機構を流用したチタニウム(塑性特殊合金)用途への改造鍛造プレス機を必要とした。

 

海軍退役軍人会から[[jumpuri:バトル級・超時空・重巡宙艦>http://seesaawiki.jp/harmony-gold_japan/d/%a5%b8%a5%e5%a5%cd%a1%bc%a5%f4]]【Battle】 SCA-72【Mar-ne】マルヌ により、工面して3回に分けて分解しフォールド輸送可能との回答を得て、輸送した際に退役海軍・軍人会の依頼により彼女自身の私財を追加で投じて同梱されたA-3B (旧呼称「A3D-2」)『スカイウォーリア』 を譲り受け、休日には設計局付属の整備工たちの整備修練を兼ねて飛行を行った。

 

なお、このバトル【Battle】級・超時空・重巡宙艦 SCA-72【Mar-ne】マルヌ による三回の輸送の成功には試験段階であった[[jumpuri:影次元技術>http://seesaawiki.jp/harmony-gold_japan/d/%a5%b7%a5%e3%a5%c9%a5%a6%b5%bb%bd%d1]]の影響が大きい。

 

この経緯については、個別艦名称の由来となったマルヌの会戦になぞらえた書籍、『マルヌの戦い、三たび』【The war of Marne,three duty】が出版されているが、本記事の伝記の範疇を超えるので割愛した。

 

ブランシュ、生い立ちの略歴

 

第一次星間大戦後、民間の大型機は軍の輸送機としてゼントラーディ人の反乱鎮圧支援に徴用されます。

 

これを嫌い、某航空会社を退職した母親は2018年に当時19歳の娘を連れて、議員に対する影響力を使い、初期のプロキシマ星系【Proxima system】の惑星リベルテ」(【liberté】:フランス語で「自由」を意味する)移民船団に応募します。

 

折しもエアバス社の移民希望者一部を取り込んだ「ダッソ・ブレゲーリベルテ支社」は、ノースロップ・グラマン・エリダヌス支社との合弁会社『リージェ重工業』【Liège Indusutry】を設立し、軍用機のみならず、民間機に関しても植民星に適した大気圏内用輸送機のテストパイロットを求めていました。

 

母親は娘に英才教育を施しましたが、残念ながら様々なスポーツを試みても、娘の身長は154.3cm にしかならず、パイロット基準の男女共通『158cm以上190cm以下』に足りませんでした。

 

娘自身はパイロットとしての身体適性不足を理解した時点で航空業界から足を洗い、リージェ社の自社養成学校であるポリス航空大学校を母親の見つけてきた男性と結婚する為に寿退校(退社)する予定でいました。

 

 

突然の訃報

 

ところが、娘(次女)のブランシュ・フォンテーヌに突然の訃報が訪れます。

 

SC-32 ゴッサマー級輸送シャトルの大気圏突入試験中、テストパイロット(機長)であった母親がゼントラーディ人のテロリストの操るヌージャデル・ガー【Flemenmik Nousjadeul-Ger】により被弾、既に復航限界点を超えていたシャトルは、「一か八か」の大気圏内突入を実施、そのまま空中分解してしまったのです。

 

せめてもの餞(はなむけ)(注記*4)は、深追いしたヌージャデル・ガーを大気圏再突入の焼損の道連れにしたことでした。

 

第二次星間大戦で、他の身寄りをとうの昔に亡くしていた「ブランシュ」は、母親の「マリー」の殉職で独りぼっちになりました。

 

娘のブランシュの転身

 

この事件を契機に、ブランシュは人が変わったように勉学に励み、航空大学校から転学し今度は航空宇宙機設計士としての道を歩み始めます。

 

母であるマリーの遺言書には「万が一の際にはその死亡退職金の全てを娘に譲る」旨の手紙があり、母の遺志が娘としての彼女を動かしたのではないかと、後世に『想い出の中の白い泉』を著した元リージェ社の後輩で彼女の年下の恋人でもあった、『ジール・ブロマシェ』は著作の中で回想しています。

 

2025年の抜擢

 

26歳になったブランシュは「リージェ社」初の可変戦闘機開発に抜擢されます。

 

軍の要求は植民惑星の乏しい予算や整備環境で確実に動作し、宇宙空間では戦闘機として、大気圏内では地上部隊への直協軽攻撃機としての役割を第二利用者であるエリダヌス星系のイプシロン恒星系惑星グロリエのサザンクロス軍より期待されていました。

 

ブランシュは今回の試作には応募しないものの当時ライバル会社であったクラウス=マッファイ・ヴェクマン (提携先も同様にライバルであるロッキード・マーティン社) の技術者であったジョルジュ・サリバンと非公式にクラブ等の機会を利用して会合し、活発な意見を交わしました。

 

男女関係ではなく、対等な設計者として激論を交わし、また時には助言を仰ぐ友人関係をブランシュは善しとしていましたが、彼女をリーダーとする設計チームの構造強度計算担当で13歳下であった『ジール・ブロマシェ』【Gille Blomache】は彼女に横恋慕とジョルジュへの嫉妬から、チームの和を乱す発言をし、彼女自身が悩んでいたことが、当時の書簡から伺えます。

 

「チームの中には、私がリーダーだから、女がリーダーをするから、開発がおかしくなると言う人達がいます。今回の開発は貴方の会社との競争試作ではありません。

 

私は普通にジョルジュ、貴方を技術者として尊敬し、企業間で意見交換をして、機体の信頼性と品質を高めたいだけです。

 

男の開発者がリーダーならこうは言われないでしょう、何故なのだろうかと思います。テストパイロットだった母の七光りなんて関係ありません、パイロットと設計士は違います。私は私自身でしかないのに」

 

初仕事は「ジョルジュ・サリバン」と

 

リージェ重工業での設計者への転身後の初仕事はクラウス=マッファイ重工業(航空機設計の経験値が浅い同社に対する設計協力はノースロップ・グラマン / ロッキード・マーティン エリダヌス合同企業体)との共同開発となる 可変・中戦闘機「VF-7 シルフィード」でした。

 

 

軍の要求は、予算に贅沢な遠征艦「早瀬未沙」提督)というよりはむしろ、第二用兵者であるサザンクロス軍のアナトール・エリ・レオナルド(クロード・レオン)【Anatole Eli Leonard/Claude leon】の要求に左右されました。

 

1.1機当たりの取得費用は初代VF-1 バルキリーの後期生産ブロック(量産効果で安くなる)の更に2分の1以下

 

2.運用と整備を含めた総合運用費用は、上記の4分の1になるよう努力し、少なくとも 2/3〔3分の2〕以下であること。

 

3.陸軍地上部隊の支援の為、宇宙空間から無段階(装備換装作業無し)で大気圏再突入が可能なこと

 

4.軽度の地上攻撃能力を持つこと

 

最初の可変戦闘機は初期の大気圏内用のブロック4まではデストロイドの約20倍の高価格でした。

 

その後大量受注による量産価格により価格は下がり、開発費用も回収出来たので価格は一時は初期の半分以下になりましたが、付加機能や宇宙空間用追加装備でまた価格は上昇しました。

 

サザンクロス軍はその最も安い生産ブロック(ブロック9)の本体価格の更に半分以下を要求したのです。

 

予算不足の[サザンクロス軍の苦肉の策

 

陸軍の軍閥を中心に発達したサザンクロス軍は、地球統合政府からの慢性的な予算配分の不足に悩み、VF-1 バルキリーの大気圏外活動時間延長用のFASTパックの流用さえ検討された。

 

計画は非公式に「スーパー・ローガン」、指揮官用の推進剤流用の化学粒子ビーム砲搭載型は「ストライク・ローガン」と呼ばれ、適合生産ブロックの生産準備まで行われたが、今回も又、アナトール・エリ・レオナルド(レナード)の一喝で計画は中止され、ASC-34 軌道往還突撃シャトル ペガサスを「宇宙母艦」(将軍の自称による)とする行動範囲延長にて代用された。

 

既にこの年代には次期主力機「VFH-10 オーロラン」が最終試験飛行段階まで到達しており、予算を次期主力機に廻す意図もあったものと後世の航空戦史研究家(西暦2066年~)は分析している。

 

なお、腕の外装を“FASTパック用の装着アダプター付きの専用外装”に交換することにより拡張装備に対応することにより、以下の問題が生じます。

 

▼  FASTパック装着時にガウォークに変形する場合、脚を降ろすことは出来ますが、FASTパックは腕に装着されている為、ガウォーク変形後も腕は展開出来ません。 ファイターガウォーク、つまり“腕無しガウォーク”としてのみ機能することになります。

 

また、緊急時や、「FASTパック後部の推進剤タンクが空になり必要があるとき」はアーマード装備と同様にFASTパックは投棄できます。

 

・ 腕が使えない事に加え、エンジンポッド追加のためガンポッドも機体の中心線には装着出来ないため、ガンポッドの懸吊にも変化が生じます。

 

・ FASTパックのタンクの推進剤の利用を当て込んだ本体の3基のエンジンによる余剰推力を用い、画像のように左右に装着し、腕を利用したガンポッド保持を諦める替わり、2挺のガンポッドを懸吊できるようになります。

 

・ FASTパック は切り刻む訳にはいかず、手を付けることが出来ないため、VF-1 の拡張装備〔背部ブースターのみ〕をローガンに装着するには、逆に機体側を機体側を拡大します。

 

・ 可変戦闘機としてはキスダムの「NES コクピットアーマー」と同程度の最小規模の構成で、全長6m弱、胴体幅3mしかないため、胴体側の既存の上面の接続部では左右のパックが干渉してしまいます。

 

・ アタッチメントでFASTパックとの接続部との固定金具の面積を確保、選択装備の3基目のエンジン・ポッドを胴体後部の中心線下に追加、慣性質量の増加を補完します。

 

・ 追加のエンジン・ポッドの強制推進剤(プロペラント)は、FASTパック側からいったん機体側に流入した後、3基のエンジンに均等に分配されます。

 

・ 垂直尾翼はガウォーク形態への変形の際に元来から備わる機構により、回転して下向きのフィンとして、FASTパックの体積をかわします

 

植民星特有の追加戦術要求

 

サザンクロス軍空宇局では主力である宇宙機甲師団の運用要求を汲み上げ、次のような追加要求を出しました。

 

1.大量に余っているVF-1用の宇宙空間航続距離延長FASTパック、VF-4 ライトニング用の長距離・進攻/偵察FASTパックを最低限の改造で取り付け可能なこと。

 

2.両脚間ハードポイントを設置、FASTパック装備時は此処に追加の第3エンジンポッドと大型対艦ミサイル【RMS-2】を1本、翼下に2本積んで、主翼を畳み、リフティングボディ効果(X-20 ダイナソアを実名で引用記載された)で大気圏上層で軌道変換しつつ、進入する敵宇宙艦隊を迎撃する。

 

3.敵艦隊に一矢報いた後は小柄な機体のプロペラントはほぼ空になり、軌道速度の維持や固定火器のエネルギー残量やガンポッド弾数にも限界があることから、再度の会敵に衛星アルスに戻る余裕も無く、そのまま惑星最終防衛ラインから大気圏内に突入し、地上部隊の近接支援に当たる。

 

このため、機体下面は耐熱性能と耐弾性能を兼ね備えることとされました。

 

史上最小の可変戦闘機

 

全長6m強の極端な小型化は遠征艦隊軍の最小可変戦闘機 「VFA-6 レギオス」以下です。

 

この為に宇宙空間でのプロペラント容量を予算上の制約から FASTパック(ファスト・パック)無しで少しでも稼ぐ為に、バトロイド形態の機能をガウォーク形態に担わすことで可変機構を単純化し、容積拡大を実現しています。ライバルの開発者達の中には小柄な彼女自身のミニマム指向から来たものとする意見がありますが、感情論に過ぎる嫌いがあります。

 

宇宙放射線の危険を承知でパイロットの露出度合いの高い大型透明風防部は見張り警戒をカメラやセンサーに頼らず自分の目視で確認出来る能力を重視しています。

 

これは母親の殉職時に狙撃銃でカメラを、ECMで後方警戒センサーを潰され、SC-32 ゴッサマー級輸送シャトル貨物室内に取り付いたヌージャデル・ガーに気付くのが遅れたことが母親の死因と感じたブランシュの個人的信念に由来するものと言われています。

 

被弾時の大気圏突入能力

 

小型化は軍の要求でもありましたが、もう一つは『被弾時の大気圏突入能力』にありました

 

従来の可変戦闘機でも『被弾時の大気圏突入能力』は一応カタログ上は謳ってありましたが、損傷は極く軽微な程度に限られていました。

 

2040年代末から一部の高価な機体に実用化されたピンポイント・バリアー【PPB】を利用した防護は当時は勿論、期待できませんし、また技術的に可能としても植民惑星の予算が許さない事は明らかでした。

 

このため、耐熱タイルに代わり、機体外板そのものに十分な耐熱度合と冗長度を持たせる事にし、20mm 弾程度までの被弾穿孔は、特殊な耐熱充填材を内部からセンサーで感知し噴射し塞ぐ自動修復装置が用意されました。

 

リフティングボディと小さな翼

 

上記の目的達成の為に、極力リフティングボディにより大気圏内での揚力を得るように務めました。

 

けれども、輸送機や偵察機と異なり、(制限付きながら)一応は空戦をする戦闘機でもある為に、機動性の為に矩形(くけい)状の後退角の無い直線翼を持ち、垂直尾翼はエンジンポッド毎(ごと)外側に20度~60度(ファイター)~180度(ガウォーク)まで回転し、安定性不足を補います。

 

とはいえ、実用上昇限度は10,000m (ブースト効果無)、失速速度は 350kph (空力のみの場合)とその皺寄せは大気圏内能力に影響を与える結果となりました。

 

しかしこれは、大気圏内では制空戦闘機ではなく、陸軍地上部隊に協力する直協軽(戦闘)攻撃機を、驚くべき低価格で提供する義務を第二利用者であるサザンクロス軍から求められた結果で、必ずしも彼女自身を責めるのも酷なことかもしれません。

 

機体は自力での衛星軌道への到達能力を持ちません。

 

また、結局いかなる単独打ち上げブースターやFASTパック(ファスト・パック)も開発されず、小型化を活かした打ち上げシャトル搭載に衛星軌道への到達能力を頼みました。

 

この反省は遠征艦隊軍のシンプルな要求下で開発された彼女の次回作品、高速偵察/練習機 SVR-1 Voyeur / SVT-1 Vixen(ヴォイヤー/ヴィクセン)に活かされました。

 

次の仕事、高速偵察機 SVR-1 Voyeur(ヴォイヤー)、高等練習機 SVT-1 Vixen(ヴィクセン)

 

 

太陽系にインビッドが侵攻(侵攻自体は西暦2031年に開始、サザンクロス軍が壊滅する原因となった本格的インビッド大会戦は、西暦2033年5月15日)したブランシュが32歳の夏、地球圏より遠く離れたヴァリヴェール恒星系【Valivarre star sysyems】の遠征艦隊軍より、ブランシュを抜擢したいとの打診がリージェ【Liège】社に届きました。

 

詳細な開発背景については、[[jumpuri:ヴァリアブルトレーナー・マスターファイル SVR-1 ヴォイヤー SVT-1 ヴィクセン>http://seesaawiki.jp/harmony-gold_japan/d/%a5%de%a5%b9%a5%bf%a1%bc%a5%d5%a5%a1%a5%a4%a5%eb%20SVR%2d1%20%a5%f4%a5%a9%a5%a4%a5%e4%a1%bc%20SVT%2d1%20%a5%f4%a5%a3%a5%af%a5%bb%a5%f3]]を閲覧ください。

 

 

此処で一つの障害が生じました。

 

元々余り身体の丈夫でなかったブランシュ・フォンテーヌが出張先の遠征艦隊軍旗艦SDF-3 パイオニア内で倒れてしまったのです。

 

軍医の診断では

 

1. 『植民星の土着細菌が宇宙放射線で変異』

 

2. 『あと二日遅れていたら熱が脳にいって意識不明となり回復不能だった』

 

3. 『白血球数が通常の二倍』

 

4. 『過労による急性腹膜炎で CRP (体内アレルゲン反応) 値が 21.8 (正常値は 0.3ですから21倍)

 

意識を失う前に一刻も早く入院させるので、リージェ社の費用負担を了承して貰いたいとの返答でした。

 

しかしリージェ社会長からは、一旦帰郷して彼女自身の体調を含めた報告をすることを求められブランシュ・フォンテーヌは応急措置の点滴バックを傍らに惑星リベルテに帰郷します。

 

その場で彼女の報告を聞いた当時の代表取締役であった『ピエール・カルバン』は当時既に同社役員でもあったブランシュ・フォンテーヌに対し

 

1.計画の象徴としての影響力を考えて、他の従業員、社員(役員)、テストパイロットには内密にすること。

 

2.入院費用は会社が立て替え、ブランシュ個人に対する貸付けとして毎月100ユーロを返済

 

3.リベルテ内の地元から遠隔地の病院に入院、治療設備上必要ならば突然変異細菌に造詣の深い他の病院への転院も認める。

 

4.三ヶ月で復帰出来ない場合はプロジェクトを降りてもらう

 

5.プロジェクト代行総合責任者はジール・ブロマシェ(このときまでに構造計算担当から出世していた)とする。

 

という厳しいものでした。

 

しかし、彼女は期限の3ヶ月を待たず、2ヶ月半で設計現場に復帰します。

 

VF-8 ローガンの問題点を分析して SVR-1 ヴォイヤー、SVT-1 ヴィクセンは成功作となりました。

 

この設計の経験から、彼女は自分自身が戦闘機よりも、偵察機や迎撃機などの比較的に単純な目的の機種に向いていることに気付きましたが、プロジェクトの責任者としては選り好みをする訳にはいきません。

 

そこで、開発チームの構成人員に斬新で独創的な発想が生まれるように気を遣うようになりました。

 

自ら全ての問題点の解決策を提案する必要はない。このことに気付いた彼女は、精神的に楽になり、また自らも逆境に打たれ強くなったと後のインタビューに対して回答しています。

ボーイング社の機体の改良に着手

 

詳細な開発背景については、高速・戦術輸送機 C-37 A,B,C アルバトロス を閲覧ください。

 

西暦2044年の初夏、ジョルジュの死没年齢を越え、41歳の壮年期に入ったブランシュは、遠征艦隊軍から他社であるボーイング・マクドネル社が開発した戦術高速輸送機 C-37 アルバトロスの問題点の改良を請け負いました。

 

同機は元々[[jumpuri:サザンクロス軍>http://seesaawiki.jp/harmony-gold_japan/d/%a5%b5%a5%b6%a5%f3%a5%af%a5%ed%a5%b9%b7%b3]]の要求により開発された大型機でしたが、サザンクロス軍の崩壊により、同軍が他の惑星で運用していた機体を遠征艦隊軍がそのまま接収して運用していました。

 

陸軍出身のアナトール・エリ・レオナルドの横槍で無理な高速性能を追及した機体設計は、空気抵抗を極限まで減らす為、固有安定性が重視される大型機、しかも輸送機という運用目的にも関わらず水平尾翼どころか垂直尾翼すらなく、尾翼が無いが故に推力偏向ノズルに水平安定の制御を依存するという無理な設計で、確かに高速性能は大型機としては突出していましたが、操縦安定性が不良で事故が多く扱い辛い機体でした。

 

サザンクロス軍は【月月火水木金金】と土 日を潰した猛訓練で使いこなし、一見普通に運用しているかのように外部からは見えていただけで、旧サザンクロス軍の生き残り古参航空兵達が退役し、遠征艦隊軍の地球を知らない若い航空兵が機体を引き継ぐ2040年代になると、重大な死亡事故が多発しました。

 

艦隊附属・航空技術本部は、ボーイング社の拠点が全て地球圏内にあるため、2033年のインビッド占領により、同社と音信不通の状況にあることから、同機の改設計をリージェ重工業とブランシュらの設計チームに発注しました。

 

問題点の抽出と解決法ブランシュらは以下の問題点を見いだし、順次解決していきました

 

1.主翼に対して重心が前方に偏り過ぎで、通常の尾部末端への水平尾翼の取付けは不可能。

 

2.胴体の後方への延長も強度の低下や重量増大など無駄と無理が生じる。

 

3.原型の設計では二次元推力偏向ノズルで水平安定の代用をさせているが、これは戦闘機のような小型な機体に有効な代替方法で、舵取りの反応の遅い大型機では無理があり、先尾翼〔カナード〕としたい。

 

4.垂直尾翼が主翼の両端の小垂直小翼〔ウィングレット〕で代用というのも大型機の場合は2乗3乗の法則により大きな垂直尾翼の面積が必要になり、無理のある設計である。機尾に双垂直尾翼を追加したい。

 

5.当然ながら触れ込みの高速輸送機としての最大速度は空気抵抗の増加により低下するが、輸送機に必要なのはピーキー、つまり高性能だか扱い辛い操縦性能ではなく、機体の固有安定性と空力重心の移動範囲を含めた輸送能力にある。

 

紙幅が無い為、問題点と解決法の記載を箇条書きとして同一項内に収め、簡潔にまとめましたが、この結果が以下の画像に結実します。

 

★ リージェ重工業による安定性不良の改良型【B型】

 

・ 垂直尾翼、先尾翼、先尾翼端の断片的な小翼( ウイングレット )追加により空気抵抗が増え、A型でマッハ2.6(高度 15 km )だった最大速度は約2割低下し、マッハ1.8程度となったが、固有の飛行安定性は劇的に増加し、操縦性能の改善により、死亡事故の発生率は要求値を達成し1/12 となった。

 

 

インビッドに地球占領されたとはいえ、開発拠点だったボーイング・マクダネル社に対する配慮から、制式名称を「アルバトロスII」とされることは無かったが、胴体の短縮などの大きな変更を含め、あまりにも変更箇所が多岐に渡るため、非公式には、このように区別される。

 

どの大きな変更を含め、あまりにも変更箇所が多岐に渡るため、非公式には、このように区別される。

 

その後、そして臨終は・・・

 

西暦2044年にインビッド が地球圏を退去して戦争が終わると、彼女は民間機の設計部門へ転身します。

 

勿論、全く軍用機の設計と無縁となった訳ではなく 高等可変練習機『SVT-1 ヴィクセン』の後継機『SVT-2 ムステリッド』【mustelid】開発に関して顧問として参加したこともありますが、 必要性が無くなったのだからと基本的に軍用機の開発からは手を引きました。

 

西暦2060年辺りからは主に後進の指導に努め、また工学部を目指す女子学生の奨学金制度や、啓蒙活動に身を投じます。

 

西暦2078年に長年所属していた『リージェ重工業』【Liège Indusutry】社を退職、以後は惑星リベルテ(liberté) の星都『ヌーヴェルディ』【英語:new days , フランス語: nouveaux jours】郊外に一軒家を構え、お手伝いの女性が日中に訪問する他は、二匹の飼い猫と暮らし、庭の草花の手入れをする引退生活に入りました。

 

幾つかの晩婚の縁結びの話は舞い込みましたが、最期を看取り、庭付きの家と二匹の猫たちを引き継ぐ家族も居ない彼女は、そのことを気にしていたのかは推測の領域を超えませんが、死の8年前に試験飛行中の航空事故死により孤児となった後輩の娘を養女として迎えたほかは、生涯独身を貫きました。

 

西暦2091年9月の末頃から体調を崩して療養中だったブランシュでしたが、10月21日(日曜)奇しくもジョルジュ・サリバンが死亡した命日から62年後の同日10月21日、しかも同じ曜日(日曜)の早朝、ブランシュは、娘【養女】、駆けつけた何名かの友人や後輩たちに見守られながら、静かに息を引き取りました。

 

臨終の言葉は 『また、会えるよね・・・・』

 

だったと言われていますが、彼女の肉声を聞きとった者たちのニュアンスでは、戦禍で亡くなった父、サザンクロス軍【 詳細な事件の内容は全領域軍事警察 (GMP)の外部リンク記事 http://seesaawiki.jp/harmony-gold_japan/d/GMP を参照ください。 】 の高級軍人の犯罪で亡くなった実姉「アルテミシア」【Artemisia】、実母マリーに対するものであったとも、先輩であり秘めたる恋人でもあったジョルシュに対するものでもあった、あるいはその両方を含んだものであるのだとする意見があり、解釈は分かれています。

 

享年88歳。

 

医師による死因は甲状腺機能低下症、32歳から33歳に掛けて患った大病【SVR-1 ヴォイヤー 及び SVT-1 ヴィクセン開発時のもの】につき、老化に伴い潜伏していたウィルスが免疫低下ともに活動再開、低体温激症や老化の急速な促進など甲状腺機能低下症との合併症により衰弱死亡したものと結論づけられています。

 

編纂者のあとがき

 

三年前【2012年】に前半生までを脱稿した、架空の女性航空設計技師〔設計グループ指揮者〕のブランシュ・フォンテーヌの伝記を、紙幅【保存容量】の関係で結びが多少駆け足になりましたが、取り敢えず臨終まで書き終えました。

 

結局三年掛かっても、自分で納得出来るブランシュ自身の肖像画を描くことは出来ませんでしたが、それゆえに画像にイメージを特定されず、想像を広げるにはかえって好都合かと考えてます。

 

なお、人物像の一部の形成には様々な資料とは別に挫折した知人の半生を参考にしてますが、本人のプライバシーに関わる内容ですから、Webページには出してませんが、ここでは、複数の実在の人物が一部で参考にされていることだけは触れておきます。

 

余談ですが、「ジール・ブロマシェ」に関してブランシュ・フォンテーヌの事件のモデルは私で、ジールにも参考にした人物がいます。

 

私が41歳の頃の職場に、23年も年下、18歳の少年の男の子,〔イニシャルを採って仮にN.M君とします〕の部下がいたのですが、会長の孫、社長の息子という立場もあり、大変横柄な態度で、夜勤で二人きりになったとたんに、制服のブラウスに手を入れて胸を揉んだり乳首をつねる〔女性ならわかると思うけど、これはとんでもなく痛い〕したい放題、会社に抗議しても部長は社長の息子、会長の孫なんで聞いた振りだけして、何もしてくれないという酷い会社でした。

 

とはいえ、彼女の後半生の主な作品は他社の作品の改設計です。また社名は実在の現行社名と一部異なりますが、そこは平行世界ということで容赦ください。

 

特有の不連続直線や、固有の安定性を考慮しない水平尾翼や垂直尾翼を持たないアニメ的な航空機を料理して、取り敢えず飛べるようにアレンジしてみたいと考えていたので、これは良い題材になりました。

 

さすがに大河原「某」氏のコアファイターのような箱の組み合わせデザインは料理しようがありませんが、三位一体のデザイン集団アンモナイトの航空機デザインにおける航空力学的知識の不備は、補完性の冗長度合いを有していたので、なんとか安定性を実用水準に持っていけました。

 

新しく描くと改設計の領域を超えてしまいそうなので、既存の設定線画を画像処理ソフトウェア【いつものPAINT.NET 4.05版】で「改設計」しました。

 

 

彼女の死後、Web上の伝記記事を〔架空の〕既成の2つの伝記とし、

 

 

◆ 一冊は彼女の後輩の男性が退職後に自費出版して売名とゴシップによる屈折を憂さ晴らした歪みに満ちたもの

 

◇ もう一冊は著名な〔架空の〕女性解放運動家が賛美により、自らの活動と名声を補強する目的で著作したもの

 

 

とし、いずれも独自の思想や感情から歪んだ視点で描いていて、そのままでは客観的な伝記としては使えないという構成を思い付くまで一年ほど掛かってしまいました。

 

しかし、せっかく女性航空技師の伝記にするなら、単に性別を入れ換えただけではない、固有の課題というプラスアルファを採り入れようと脱稿まで試行錯誤してました。

 

 

後半生の主要な作品が一つしかなく、しかも改設計という設定も意図的なもので、後輩の育成や奨学助成金という間接的な形態とはいえ、社会活動に足を突っ込むと、当然ながら寡作な設計者になるだろうと推測しました。 

 

 

 
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