女神異聞録~恋姫伝~
第五十話
「あの時の約束を」
深い闇の淵まで沈んだ意識が浮かび上がり始める。
頬に湿った布が当てられている感触がある。
何人もの視線が注がれていられるのがわかる。
「………い………っ………?」
舌は口内に張り付き、渇いたかのように水分を求める。
呻きに似た音は発したが言葉にするには厳しすぎた。
身体は鉛を巻かれたように感覚が鈍く、上半身を起こそうにも億劫ほど。
瞼を開こうとすれば激痛が走る。
一体何があったのか。
自身の身体に起きたことから、意識が闇の淵に落ちる前のことを思い出そうとしていた。
「(コウリュウと戦って最後の勝負を受けた筈………その後はいったいどうなった?)」
ゆっくりと瞼を開け、最初に目に入って来たのは。
「一刀………一刀っっ!!」
いきなり抱きついてくる桂花だった。
そしてそれを見て、恋、ねね、蓮華、雪蓮、桃香と続けて突撃してくる。
結果どうなるかといえば、当然といえば当然だが………力が無い桂花、ねねが多人数による
犠牲となった。
「「ふぎゅう………」」
「はっはっは、主殿は人気者ですなぁ」
「二人を助けてやってくれないか?後そこで鼻血を出している凛の介抱も頼む」
一刀も動こうとしたのだが、両手両足さらには胴体へと捻り合わされたワイヤーで拘束さ
れていてとてもではないがベッドから起き上がる事ができないでいた。
「なぁ、祭さん?俺はどうして縛られているんだ?」
「それに関しては説明しておくかのう」
ここにたどり着いたときには心肺停止になっており、つれてきてくれたものもそこで息絶
えてしまったのだという。
そして電気マッサージによる心肺蘇生を試みてみると身体が跳ねる為に上手くできなかっ
たと言うのだ。
そこにヴィクトルという爺さんが来て蘇生を引き継いだのだという。
「――――というわけじゃな」
「………」
ぎりっと拳が力強く握り締められ、歯をかみ締める。
「………俺の所為でまた誰かが死んだのか………」
「それは筋違いというものじゃ」
腰に手を当て、一刀の鼻先に指先を突きつけて言い放つ祭。
「そやつはな、こう言って消えていったんじゃ『ようやく守れた』『ようやく恩を一つ返せ
れた』と、そう残して笑顔でな」
「一体誰だったんだ………?」
名前を、どういった持っていたのかを知ろうとした言葉だったが、祭はゆっくりと首を横に
振るう。
「わからんかった。ただ親も子もなく、弟分の二人を連れたそれなりの腕を持ったデビルバ
スターじゃったと顔を確認したものは言っておった。その二人からはアニキと呼ばれてい
たと」
「………どういうことだ?………いや、破壊前に自衛官だった人なのか?」
「いや、それはなかろう………スガモで捕えられていた者達がそうだったようじゃ」
「俺は………一体誰に助けられたんだ………一体誰に礼を言えばいい………?」
「そんなものはお前が考える必要は無い!」
大きく音を立て、扉を開けて入って来たのは自衛隊の服装に身を包んだ思春だった。
「お前は、お前にしか出来ない、お前が成すべき事をしろ」
後ろで手を組み、背筋を伸ばした状態で声を大にして放った。
「誇れ!お前の手で守ってきた者達を。見ろ!お前の手で守ってきた物を。忘れるな!お前
と共にあった者達を」
「あぁ、わかった………」
「悔しいが、お前のやろうとしていることを代わってやる事は出来ないんだ………だから
細かいところは私たちに任せろ」
「すまん………」
「ふん、そういう時はな。『ありがとう』でいいんだ」
くるりと背を向けて扉を潜ろうとしていた思春の背に声をかける。
「そうか、そうだな………ありがとう」
そうしてみんなの介抱が一通り終わり、ワイヤーが解かれ一人になってしばらくすると
ヴィクトルがメイドと思しき人物を連れて入って来た。
「一刀、目が覚めたと聞いたが身体に不調は無いか?」
「あぁ………何も問題は無い」
手を開いたり、背を伸ばしたりして調子を見てみるが前と同じように動かすことが出来る。
これといった不調はあの時からと同じようにみられない。
「と、そっちの子は?」
「おぉ、うむ。おぬしが取ってきてくれたドリーカドモンから創り出すことができたメアリ
ーじゃ。ほらあいさつなさい」
「は………はじめ、まして………めありー、です」
たどたどしく、所々つっかえながらも自分の口から言葉を発し挨拶を終える。
「生まれたばかりじゃからな………これから慣れていってくれることじゃろう」
「うん?だが、デウスエクスマキナは………」
普通に話していた筈だが、と思い出しながら声に出したのだが、ヴィクトルは首を振る。
「アイツは特別すぎるじゃろう………一身合体なんぞわしも初めてだったからな」
「あぁ、そういえばそうだったな………」
何故か最初はそうでなかった様な気がして不思議な感じがした。
そんな感慨にふけっていると、二対の視線に気がつく。
ヴィクトルとメアリーがじっと一刀を見ていた。
「どうか――――」
「本当に大丈夫なのか?」
ヴィクトルならば自分の体に何が起きているのか、わかるのかもしれない。
だからこそ、質問をしてしまった。
「俺は………一体何になったんだろうな………」
「わからん………」
「そう………だよなぁ………」
一度目を閉じて、ゆっくりと言葉にしていく。
「たまに、な。思うんだ………俺に誰かを助ける資格はあるんだろうか、俺の所為で誰かを
助けられなくなっているんじゃないだろうか………とな」
「それこそ詭弁というものじゃな。誰かを助けるのに誰に許可を求めるというのか。お前さ
んで助けられないのなら、お前さん以外に誰が助けられるというのかのぅ………わしが見
てきた誰よりも強い存在じゃからな」
ほっほっほっと笑いながら言うが更に続く言葉があった。
「何よりもそんなことで悩み助けぬお前さんじゃないじゃろうしのぅ………助けもせず言
い訳する方が自己満足じゃろうよ。どちらを多く等と言う様になったら終わりじゃろうな
ぁ」
どこか遠い目をしてふと思いついたように一刀に聞いた。
「娘と息子が殺人犯に捕えられたとして………どちらかしか助けられんとしてお前さんだ
ったらどちらを助けるんじゃろうな?」
その場面を想像して、納得した。
「あぁ、確かに俺らしい答えにたどり着いたよ」
「そうじゃ、それでいいんじゃよ。その答えにたどり着けるならお前さんはその答えが出せ
なくなるまでお前さんじゃよ」
その後はのんびりと渋みの強すぎる茶を飲んでヴィクトルは出て行った。
「そうだよな………心まで冷たくなった訳じゃあない………」
ぽつりと一人残った一刀はベットの上で呟いた。
陽が昇り始めると人々も活動を始めたのか、外に人の気配が溢れだしはじめた。
「あ、思春さん頼みたい事が――――」
「それは必要なのか?」
一刀は思春を見つけ近寄ると頼みごとをはじめた。
「あぁ、どうしても必要になってくる………ノア計画は多分阻止することができない」
「阻止できない時の為の次善策か」
「一刀さん、今度は何処に行くんですか?」
話していたら一刀達を見つけたのか明命が近付いて話に加わってきた。
「北の館に向かおうと思う。その次は南だな」
その順番が疑問に思えたのか明命は頭にハテナマークを浮かべて首を傾げていた。
「あれ?近くに似たようなのがありますよね?」
手書きの地図なのか崩壊後の地理を書き写した紙を広げて確認している。
そして一刀が辿ってきた道を示していくと十字に交差する事に気がつく。
「順番があるんですか?」
「いや、正確には他の四つ、東西南北の館が結界の要になっているんだ」
「それを解きに行くのか」
「ん~………ルドラサウムを倒す為の仲間になってくれないか頼みにいく」
「結界は関係ない………んですね」
明命はぽかーんとしながら目を丸くして、思春は声を殺して笑っていた。
「何か可笑しかったか?」
笑われて少々憮然とした声を出しながら、思春に問う。
「な、なに。一刀らしいと思ってな」
つぼにはいったのか、笑うことが止められなくなっていた。
それに呆れながら、腰に手を当て一つ息を吐いた。
他の皆も用意できたのだろう徐々に集まり始めてくる。
「一刀、準備できたわよ」
「兄ちゃんも頑張ってくるホ」
ジャアクフロストだったヒーホー君はフロストエースへとその姿を変えていた。
「ヒーローみたいだな」
「ヒーホー」
その言葉に嬉しそうにくるくると廻る。
強くなれたことに喜んでいるのか、それともヒーローっぽくなれたことに喜んでいるのか
判断はつけ辛いものだが、喜んでいるのなら何よりなのかもしれない。
「それじゃこっちは任せた」
「任されたホー」
「うむ、兄者も頑張ってくだされ」
ウンチョウもカラクもマリナもあの戦いの時、死亡したとばかり思っていた。
桂花も凛も、だが………コウリュウはこうなることを知っていたのか、ゲンブに殺すことな
く連れて来いと命じていたそうだ。
その深謀遠慮には頭が下がる思いだ。
などとしているうちに北の館に着く。
館の中では天津神を中心に神族が闊歩しており、近くにガイア教の集まりがあったとは信
じられない場所だった。
襲い掛かってくる気配は無いが、警戒だけは解かずに奥へ奥へと進んでいく。
最奥だろうと思われる場所には、少しだけ開いた扉があった。
その扉からはまばゆいばかりの光が溢れており、目的の人物がその中にいるのはわかるの
だが。
「ふん!」
一刀とサイクロプス、メタトロンが力を込めこじ開けようにもびくともしない。
「まいったな、こいつは」
「何かヒントになるようなものは無いのか?」
「神話だと………あれか、天岩戸だったかな………」
アメノウズメが踊り、顔を出したところをタヂカラオが無理矢理こじ開けたという話だっ
たはずだが………その前に何か厄介ごとがあったような気がする。
「とりあえず、タヂカラオを探すか………」
開かない扉をひとまずは置いておき、天津神の中からタヂカラオを探しあけてもらうのを
手伝ってもらうことにするのだが、厄介な条件を出される。
「最強の龍王と勝負させてもらいたい」
ぱっと思い浮かぶのはヤマタノオロチなのだが、どうやら違うようだ。
「マスター、高い不死性を持つヒュドラ、複数の頭を持つヤマタノオロチ………その源泉に
なる物がいるのです」
「………それは既に龍王でいいのか?」
「その辺りは………疑問ではありますが六つの地獄を口に収めるといわれる蛇ではあるそ
うです………名はファラク」
「とりあえず、ソレが居るはずの場所を教えてみるか………納得してくれるといいんだが」
世界の果てともいえる、イエスが見たといわれるバハムートよりも更にその下にいるのだ
と伝えるとそれで納得してくれたようだ。
流石にすぐさまに底に突撃を仕掛けることは出来ないようで先に天岩戸を開ける事となっ
た。
「やれやれ、これで何とかか………人任せとなってしまったのがなんとも言えんが」
「終わりよければ全て良しというものだな」
「そうか、そうだったな………終わりを良く出来るならそれが一番か」
「あら?もう着いたのかしら?………」
中ではアマテラスが、機織をしていた。
「………」
「早く入って来たら?」
「いや、すまん………ギャップが大きくて放心していた」
「それじゃあのときの約束を果たしましょうか、私もあなたの仲間となりましょう」
「あぁ、よろしく頼む」
~~おまけ~~
アマテラス「もう少し糸をもらえる?」
アラクネ「はいはい」
サイクロプス「わしが針子とはのぅ」
リンゴ「わ~綺麗な服が出来てくね~」
アリス「本当、キラキラしていて綺麗」
コウリュウ「まさか鱗が縁取りに使われるとは………」
メタトロン「私の羽は裏打ちに使われましたよ………」
シィ「ぬしさまのため」
コロナ「見劣りするのも良くないです」
ヒスイ「問題なし」
ラム「俺の角の粉末付きか」
バロウズ「なんなんでしょう。この宝具といっても差し支えの無い服というのは」
アマテラス→火炎、破魔無効
アラクネ→精神、呪殺抵抗
サイクロプス→打撃半減
コウリュウ→斬撃、打撃、突撃、射撃耐性
メタトロン→破魔反射、衝撃半減
シィ→氷結吸収
コロナ→万能耐性
ヒスイ→雷撃、衝撃半減
ラム→再生能力、突撃無効
トレンチコートモデルの一刀の防具が出来上がった瞬間である………ほとんどに耐性、半
減………いくつか無効とか吸収反射、ナニこのアホ防具
詠「詠と」
月「月の」
詠&月「「あとがきコーナー」」へ「豆知識コーナー」
詠&月「「あれ?」」
へ「英雄譚2購入したぜ!ついでに特別ゲスト~で一刀君」
一刀「へ?」
へ「まずはボデー!出産には立ち会って手ぐらい握れやボケェ!!」
一刀「ホブゥア!?」
へ「清潔な布とお湯は用意する!産湯くらいは聞いたことあるだろが!!」
一刀「テンプル!?」
詠「あ、くの字に曲がった」
月「綺麗に側東部に拳がめり込みましたね」
へ「そしてこのロリコンがぁ!」
一刀「おぶはぁ?!」
詠「四股で腹部を思いっきり踏み潰したわね」
月「生きていますか?ご主人様」
へ「ふぅ、とりあえずこんなものか」
詠「で、豆知識って?」
へ「あ~、まずは出産の痛みは男性が経験するとショック死するそうです」
月「それだけですか?」
へ「痛みを紛らわせる為に手ぐらいは握ってあげましょう。きっと握りつぶされる」
詠「何それ怖い」
へ「握りつぶされて骨折とかはよく聞く」
月「力がある方限定?」
へ「華奢な方でもその位力が出るそうです」
詠「それでこの一刀はどうするのよ」
へ「放置でいいでしょ。甲斐性ないから」
月「ひどい扱いですね………」
へ「英雄譚でいい目見てるからいいでしょ」
詠「ぎりぎりになった理由は?」
へ「一日英雄譚してました。現在もオートで垂れ流してるぜ」
月「この人もダメでした」
へ「HAHAHA何を言っているのか。ダメなのはいつものことです」
一刀「(チーン)」
詠&月&へ「「「お休みの間、アクマに身体を乗っ取られぬようお気をつけて」」」
詠&月&へ「「「ではまた次回お会いしましょう」」」
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