月達は許昌へと到着し、その街のあり方に感嘆の声をあげた。
自分たちとは全く違う角度からの街の発展の仕方、それと同時に、行き着く先は同じな様でいくつ
か似通っている街の造り。そして、厳格な統治が行われているのであろう。市は栄えているし、な
によりもそこには「安全」があった。
「いい街だね、詠ちゃん」
「ふん・・・まぁ流石曹操ってところなんでしょうね」
(曹操のやり方は厳格な統治、それを考えればこれくらいの評価が妥当かしらね?)
そんな街の様子を見ながら、月と詠をはじめ、一刀、華雄、星、恋の6人は許昌の王宮へと足を踏み
入れる。
「よく来てくれたわね、歓迎するわ。董卓」
そこで歓待をするのはほかでもなく、曹操本人。
「遅くなってすみません、曹操さん。他の方は?」
「劉備と孫策ならもうついているわ、馬超は・・・何の音沙汰もなし。公孫瓉のことは、風に聞いたわね?」
その言葉に月が一つ首肯を示し。
「貴方達の到着の報があったからすでに軍議室に集まってもらっているわ、急で悪いけれど時間が無いの、早速いいかしら?」
それだけ言うと踵を返して
「軍議室に案内するわ」
そう告げる、踵を返す前に此方に一度微笑んだように見えたのは気のせいか。
案内された軍議室、そこにはすでに、劉備とその軍師二人、関羽と張飛・公孫瓉の6人が
そして孫策と周喩、明命・黄蓋・孫権・呂蒙の姿。
曹操の軍からは主曹操と軍師3人、春蘭、秋蘭の6人
4勢力入り混じって総勢24人とかなり大掛かりな軍議となり
「久しぶりですね、孫策さん、劉備さん」
挨拶を一つしてみれば
「久しぶりね、一刀。どう?うちに来る決心はしてくれた?」
「お久しぶりです!北郷さん!私と一緒に頑張りませんか?」
その二人共に勧誘されてしまったことに苦笑して、そして同時に背中に視線を感じて。
「俺は月のところで満足していますので」
その答えが不満なのか、それとも分かっていたのか、二人とも一息だけついて、笑みを見せる。
「はいはい、抜け駆けはやめてね?ところで、私達は前に連合で顔は知っているけれど其方二人の
顔はあいにくと知らないの。出来れば自己紹介してもらえないかしら?」
促されれば仕方がないと
「僕は董卓軍の軍師で賈詡、姓が賈、名を詡、字は文和。そして此方が」
「始めまして、姓を董、名を卓、字は仲頴といいます。このたびはよろしくお願いします」
そこで挨拶が区切られ・・・
「「「「ええええぇぇぇぇ!?」」」」
数人が絶叫した
「何?この可愛いのが董卓?私達が討とうとした?」
彼女達の声を絞れば意味はこうなり、一様に月の容姿に驚いていた
「そうよね、私も初めてみたときは何の冗談かと思ったもの」
それは曹操ですら同じで
「さて、自己紹介もすんだし・・・時間は限られてるんだ、始めようか?」
だから軍議を始めるために一刀は口を開く。
「そうね。馬超は・・・いない人のことを言ってもどうにもならないか、そういえば孫策?」
「何かしら?曹操」
華琳は何かが気に掛かるのか一番初めに孫策へと問いを向ける
「袁術はどうしているかしら?」
(あ~そっか、彼女も一応袁家なんだよな・・・どう出たんだろう?)
そう考えていると
「袁術ちゃん?たぶん南陽あたりで蜂蜜水でも飲んでるんじゃない?連合には参加しないといっていたし、かといって袁紹につく気もないみたいだから」
「・・・理由を聞いてもいいかしら?知っている限りでいいわ」
誰もが思う疑問にも孫策が答える
「袁術ちゃんがね、必死に考えて出した結論らしいわよ?曰く『今の麗羽に味方して、また華雄や張遼に襲われるのは怖いのじゃ。けれど妾は同じ袁家のものとして、麗羽と敵対するわけにもいかぬのじゃ。だから孫策よ、妾は初めてそなたに頼む。・・・可能であればで良いのじゃ・・・麗羽を・・・救って欲しいのじゃ。くれぐれも頼んだぞ!孫策よ!』とのことで、袁術ちゃんに初めてお願いもされちゃったんだけど・・・お願いの内容がね、まぁ自分はいけないけれどその変わりに兵と糧食などで協力はしてくれたわ」
苦笑を浮かべるもどこか嬉しそうで。
「そう、分かったわ」
(袁術は静観か、敵対するよりはよかったかもな・・・)
その考えは敵の数を思うがゆえのもので。
「そうだ!風!敵の数はどうなっているか分かるかな?」
「・・・・・zzz」
「「起きろ!」」
「おぉ!?」
風にたずねる時の一つの流れを、まだ初対面の稟と共にこなし
「ふむ・・・?」「あはは・・・」
不可解な眼で睨まれる。
「そうですね~、斥候を放ったところですと、敵の数は総数40万でいいと思いますよ~。ただし、
その中には調練などしていない、少年兵や老兵も混じっているそうですから、所詮は烏合というこ
とにはなるのです。けれどもそこに問題が~。」
大きな、大事な、そして外せない問題がそこに確かに存在して
「・・・敵の兵をむやみに殺して回ることは出来ない、そういうことですよね?程昱さん?」
そしてここには、一刀の知る最高の知力が結集していて
「その通りなのですよ~今孔明さんも言いましたが、人を殺して勝つ戦い、ということがしにくい
のです」
自然とこの軍議の場は彼女達が支配していく
「それは強制されている戦意の無い兵と、年若く、まだ戦に出るべきではない兵が混じっていることが原因ですね」
その様に一切の武官が口出しを許せずに
「あわわ・・・そう言う人たちまで殺してしまっては・・・私達の評判も危ないです」
その様に全ての王が口を出せずに
「かといって見過ごすわけにもいかないじゃない!降兵は全て受け入れるつもりでも、そこに至る
過程で殺すことにはなると思うわ!」
その様に全ての空気が熱し冷やされて
「だろうな、そういう弱い兵は先鋒で使い捨てが基本だ」
その様に誰一人として
「あーもう、うざったいわね、袁紹の癖に!だいたい強制徴兵なんてするんじゃないわよ!弱卒を倒したところで華琳様に何の得にもならないじゃない!」
単純にことを考えていない
(誰だって都合よくやりたい、袁紹だって何かしらの目的があるはずなんだ・・・じゃあその目的は何だ?暴走した原因はなんだ?)
「一つ聞きたいんだけど・・・袁紹の目的って何なのかな?」
考えを持って一刀は口を開き
「はぁ!?そんなの決まってるじゃない!連合組まれたから攻め込まれる前に自分の領土を広くして敵の戦力落とそうとしてるんでしょ!?」
(そう、普通なら多対一の場面なら、機先を制して攻撃するか、それとも堅守を維持して守り抜く
かの二択、それが基本、けれど)
「詠、袁紹なら本当に領土を広げて、敵の戦力削ってなんて、そんなこと考えると思うか?」
「僕は袁紹についてそこまで詳しくないから・・・彼女の人と柄を知ってるのは僕たちに対しての
連合を組んでいた人たちのほうじゃない?」
そう言って視線を向ければ
「・・・そうね、今思えばあの麗羽が機先を制するとか、そんなこと考えているなんて思えないわね・・・」
その一言で・・・其々の軍師はハッとする。何故か?前提がそもそも違うからだ。
(では彼女の目的は何か?・・・袁紹という人と柄だけで考えろ、彼女は何を望むか)
「あ!」その一声を発した者は全員にぎろりと睨まれ
「わ!わたしなにもしてないぞ!?」涙目で応える公孫瓉がそこにいた。
「早く言いなさいよ!?」そんな言葉が飛び交って
「何だこの扱いは・・・えっとだな?麗羽の目的だけど・・・手に入れられなかったものが欲しい
んじゃないかな?」
その一言で、袁紹という人物を知っている人は・・・あきれた顔で納得してしまう。
「・・・そうね、麗羽はたしか、幼少のころから手に入れたいものは何でも手に入れていたわね。
それこそ・・・私まで手に入れようとしたくらいだから、無論私はあんな奴のものになんてならな
かったわけだけど」
そう語る華琳の言葉で、散らばっていた情報に仮定とはいえ、一つの筋道が完成する。
「袁紹さんの目的は華琳様ということですか?」
「それだけでなく、この間の連合で手中に収めることができなかった名声もでしょうね」
「・・・あとは天の御使いの北郷一刀様でしょうか・・・実質的に袁紹さんを策で嵌めたお方、し
かもその政治力はかなりのものと窺います」
「そして自らを逆臣と言い放った献帝もね」
そこまでの意見が出てから
「あとは復讐とかもそうかもしれないわね、袁紹からしてみたら元から敵だった僕達の側に貴方達
がついて裏切ったように見えなくもないし、思考が単純ならそれだけでも十分じゃないかしら?」
「それならばいまここにその怨敵と目的のものがほぼ全て揃っているわけだ・・・ねぇ?ここに集まっている情報って袁紹に流せないかな?」
情報の故意的な漏洩、それが意味するのは
「あんた馬鹿なの!?情報なんて流したら!『・・・いいかもしれませんね~』はぁ!?」
「考えても見てくださいよ桂花ちゃん、「あの」袁紹に目的のものが揃っていますよ~って教える
わけですから」
「はわわ!袁紹さんならまず間違いなく、その情報に乗っかると思います!」
それは意図的な戦端の操作
そこからさらに策が練られていく、作るは4勢力8人の名軍師
いかにして人を殺さずに、いかにして此方に近い場所で
そしてどうやって勝利を確実にするか。
どう動く?どう動かす?誘導は?なら陽動は?伏兵の必要性は?この戦の勝利条件を、敵の殲滅か
ら敵将の打倒に切り替え、ただそれに相応しい策と作戦を練り上げる
敵の数は40万対する此方は董卓軍8万、曹操軍6万、孫策軍が袁術から少し兵を借りて6万、劉備軍
が4万。その数24万
40万と24万では倍近くの差がある、しかし敵の兵は士気低く錬度も悪い。
対する此方の兵は慕う将への意義厚く、士気高く、錬度もそこそこ以上には高い。
だから兵力としては互角くらいで推し量る、さらにそこに自分たちの有利となる要素を織り込む。
具体的にはどれだけ少ない被害で敵が降兵となるに至るかを。
そして出される結論はやはり一つで
「袁紹、文醜、顔良。この3人が袁紹軍の要、そして袁紹が戦を起こしているのなら・・・その3人に戦場から離脱してもらえば、兵たちの大半は降りるでしょうね。」
そう、あの3人が中心。だからこそ、曹操が宣言する、連合の盟主として
「あの3人を殺すか生け捕るかは各自の判断に任せる。けれど私達の目標は虐殺に非ず!
必要最低限の被害に抑え、袁紹以下3名を討つ!異論があるものはいるか!」
その宣言に・・・一人だけ口を開いた
「殺さずに生け捕る、でもいいんですよね?曹操さん」
大徳劉備、その人の悲しいまでの表情での意見。
「・・・甘いわね、まぁ生け捕りでもいいわ。要は目的を潰せばいいのだから」
そう、彼女はとても甘い、けれど。
「詠ちゃん、あの3人の命を救う場合だけど・・・私達が主導で動いた時はどれくらいで助けられる
かな?」
小声で主である月も同じ考えを示す
「そうね、僕としてはどうでもいいけれど・・・僕達だけ、そして劉備と僕達だけじゃ数に飲まれ
て潰れておしまいだと思うわ。もし助けるならば・・・彼女達を一度引き離して。そのうえで各個
に襲い掛かり、確実に捕らえていくしかないのだけど・・・難しいわね」
そう、月ならば救うことを望むだろう。ならばそれ従うものは彼女達の生け捕りを心に決める。
「では中央本陣は私と劉備、左翼側には孫策、右翼は董卓この布陣でいいかしら?それで問題が無いのならば今、連合がここ、許昌に集まっていることを袁紹に流すけれど。問題ないわね?」
その言葉には全員が沈黙で頷き、ニヤリと笑う曹操は
「あの馬鹿にどうしても手に入らないものがあることを教えてあげましょう」
反袁紹連合は情報を恣意的に漏洩。そして袁紹の動きを許昌で待つのだった。
-side袁紹-
「っは!今現在曹操、御使い、以下元反董卓連合参加諸侯の孫策、劉備も許昌にいるとのことで
す!」
その報告を聞いて嬉しそうに袁紹は微笑み
「そう、よくその情報を持ってきましたわ、さがりなさい!」
「っは!」
とてもとても嬉しそうに彼女は微笑む
「華琳さん・・・そして腹立たしくも私を嵌めた御使いさん、もうすぐあなた方を手に入れられま
すわ・・・おーっほっほっほっほっほ」
けれどその高笑いに、かっての無邪気さが存在しない。
ただ声だけを出している、そんな風に感じられる。
「顔良さん!文醜さん!私の敵も私の欲しいものも全て都合よく揃っていますわ・・・この機会を
逃す手はありません、いきますわよ!」
その声に文醜は苦々しく「あいよ」とだけ一言を
顔良に至っては・・・・言葉を返すことも無く、やはり暗い眼で。
まるで全てに絶望しているかのような、何かに脅えているような。そんな眼で
「はい、袁紹様」
ぽつりと一声だけ返した。
彼女達はまっすぐと許昌へと向かう、そこに何が待っているかなど考える由も無い。
人数では圧倒しているのだから負けは無いと信じている、いや、それすらも考えていないのかもし
れない。ただ漠然と、欲しいものに手を伸ばしているだけなのだから。
その傍らで、顔良も何かを思案する、その口から聞こえる言葉は
一刀、貴方なら、私を・・・この三言のみがかろうじて聞き取れる。
そのくらい眼は景色も、親友である猪々子も、主袁紹も、そして現実も捉えていない。
「・・・たすけて」
新たに呟かれたのはその一言、その声は風にのって、しかし馬と人の足音にかき消され、誰の耳に
も届かない、ただ一人、その親友である文醜だけが
(どうすればいい?救えるか?親友を、けれど何から助ければいいんだ!?)
その耳にかろうじて拾い、そしてその言葉で苦渋する。
救いたいけれど、救う方法も何から救うかも分からない自分に・・・嫌気がさす
そんなもやもやした心のままに、彼女達も許昌を目指す。
-side蒲公英-
蒲公英は必死に馬を飛ばした、自分は従姉よりも馬を早く飛ばせない、けれど自身の最高をその場
にこめて、全力で駆ける。幸いなことに途中で敵に襲われることなどは無かった。
おそらくだが、従姉である、馬超が止めているから。
ただひたすらに長安を目指して馬を駆る。休憩なども無く、昼夜問わず駆ける、もし董卓がいなけ
れば、自分は役目を果たせないから。(出来れば早くたどり着き、お姉様を助けるために援軍が欲
しい。)そんな思考も生んでしまう。だからこそ駆ける。
止まる理由は無いし・・・何よりも自分は守られて走っているのだから止まるのは失礼だ。
そう考えてひたすらに走り・・・馬が限界を迎えて
「お願い!長安までだから!あと少しだから!」
その主の声と思いが届くのか、馬もまた自身の限界以上を出そうと奮起する。
そして、涼州から馬を飛ばしてわずか数日で、蒲公英は長安へとたどり着く。
「何者だ!」
その門兵の問いに
「涼州太守!馬騰の娘!馬超の使いで来た!私は馬岱!董卓様にお目通りを!」
その声に門兵は少し困った顔をして、そばにいた一人の兵に声を掛けると、その兵は消え。
「事情は分からんが急いでいるのは分かる、今王宮へ使いを出した、見ればその馬も貴女も限界の
様子。しばし此方で休まれよ、すぐに使いが戻る」
そう言って門の中へと引き入れる。そして馬岱を勧められた寝台へと横倒れになり・・・
「馬もお願い、あの子。すごく頑張ったから」それだけ言って眠りについた。
完全に眠ったことに一度安堵してから兵は呟く
「はぁ、・・・ま、隊長ならもっと甘いんだろうが・・・あの人みたいに治外法権じゃないんでこれが限界だよな・・・聞こえんかもしれんが、安心しろ。あの馬もしっかり労っておいてやる」
その顔はかつての汜水関で残った100人のうちの一人、何故か?
門兵や警邏隊などは基本、志願した義勇軍で構成される北郷隊から割り振られる。そして割り振ら
れた先に不満など誰一人としてない、全ての理由があるし、隊長、北郷一刀は常に皆のことを気に
かけているし・・・何より個人の要望も大事にする人だから。それゆえに、正規の軍の訓練を積ん
だ士気高い義勇兵が街の治安に従事する為、治安の維持は最高峰なのだ。そしてこの、普通の街で
は甘すぎる対応が、たった少しだけ、事態を好転へと運んでいく。それは本当にわずかな風だが、
この淀んだ空気を押し流すには相応しい心地よい風となる。
オマケ拠点√明命
明命こと周泰は孫策の隠密である。それゆえにその行動範囲は異常なまでに広い。
何かを調べるためであればどこへだろうと潜り込む。そんな日常が武将・明命のもう一つの顔。そ
して今回は
「いいか、明命。長安へと赴き、天の御使いの政策、そして彼があそこまで民衆に慕われる理由、出来うるならば我々につくかどうか、そして明命が現地で気になったことを調べてきて欲しい」
そう冥琳こと周喩に仰せつかって
「現在私は長安にいます!」
彼女は長安へと足を踏み入れていた。
街の様子を思うことは
1、治安が非常にいい(警邏隊が困っている民にならほぼどんなことでも協力するからこそ、民も警邏に協力している、とても素晴らしい循環が出来ています!)
2、区画整理が素晴らしい(各業種ごとに区域が分かれており、その業種を統括する支部と呼ばれるものがあり、さらに区画ごとに区役所と呼ばれている管理機関が存在しています!この区役所のおかげで情報の伝達が失敗することなく、すばやくなされているらしいのです!)
そして御使い、一刀様の町の評判を聞いて回れば
20人ほどに声を掛けて明命は声を掛けるのをやめた。皆一様にこういうからだ
「あの人のおかげで生きていける」
(ほぼ全員にそうまで言わせるのはすごいことなのです!)
街を調べれば調べるほど、明命は一刀を知っていく感覚に陥る、そしてその評価がすべていい事
で、明命の中の一刀の評価がぐんぐんと上がっていく。
そこで油断したのだろう
「あれ?明命?」
ハッとしたときには既に遅い、一刀にその姿を確認され
「どうしたんだい?突然長安に来て」
そう聞きつつも
「そんなことよりだ、ようこそ、明命。長安の街はどうかな?」
歓待の言葉と笑顔で一刀は明命を迎え入れる
「はぅあ!あのですね!実はですね!私はその・・・偵察に」
その笑顔の前で、自身が隠密であるということも忘れて、正直に目的を言ってしまう
「偵察?・・・あぁ!ようはこの長安のこととかを知りに来たんだね?」
怒られるか、情報漏洩を防ぐために捕縛されるか、あらゆる思考が明命をよぎり
(最悪の結果なら一刀様とはいえ容赦は!)そこまで考えて
「よし!じゃあ俺が街を案内してあげるよ!行こう?明命!」
そう言って・・・違う意味で捕縛されてしまい、顔を真っ赤にして。けれども声を出すこともまま
ならず。ただ一刀に引っ張られていく。
そこから先はまさに緊張と、喜びの連続だった。
点心を買ってもらって二人で食べ歩いた。
服を見てもらって一着買ってもらってしまった。
その時に一刀はこっそりと何かを店主に貰っていたようだがその中身は分からない。
そして時折入れる長安の街の説明。それは明命では分からないものだったが、必死で記憶して周喩
へと届けるように頑張り・・・
「お、猫だ」
「お猫様!?」
見れば一刀のほうに一匹の猫がにゃ~んと声をあげて擦り寄ってくる
「お前は・・・恋のところのかな?ウリウリ」
そういいながら猫の頭を撫で、鼻先をこりこりと擦り。腹を見せた猫のそのお腹をくすぐる。その
間、明命は(お猫様と一刀様が!?むしろ一刀様がお猫様で!?)混乱していた。
「触るかい?明命?」
「いいのですか?」
「あぁ、猫が嫌いじゃなけ『もふもふなのです!』・・あはは」
すごい勢いで猫に抱きつきもふもふと抱きしめる。猫は始めこそ嫌そうにしたが、少ししたら慣れたのかもはやなすがままで。
「ふむ・・」
その姿を見た一刀は・・・服屋でもらったあるものを
「くらえ!」
明命にとりつけた
「はい!?え?これは?」
頭に異物が取り付けられている。これはなんだろうかと思ってまさぐると
「猫耳」
そう、今明命は猫耳を取り付けられていて。
「うりうり~」
一刀に頭を撫でられ、鼻をこりこりされる。
「くすぐったいですよ~」
そういいながらも眼を細めてそれを享受して、たっぷり堪能したのか
「ありがとう明命」
そう言って猫耳を外す。その瞬間だった。
「私だけでは不公平です!」
明命は一刀の手から猫耳を掻っ攫うと、「えい!」と可愛い声と共に、それを一刀へと装着。
(ふむ・・まぁ乗ってもいいよね?)猫耳を装着された一刀はそう考えて
「みゃ~ん」
一声鳴いてみた。それが最後の一線を越えさせて
「お猫様な一刀様~~~!!」
といいながら明命が飛び込んできて頬ずりを繰り返す。
一刀の頬に、胸にと何度も何度も
「ふかふかでふわふわです~」
とても気持ちいのか、笑みを顔に貼り付けて、ただひたすらに一刀に甘える。
一刻ほど過ぎただろうか、我に返った明命はばっと一刀から離れて
「はぅあ!私はなんてことを!」
そこまで言って慌てて頭を下げて
「これで失礼いたします!」
告げて走り去ろうとするが
「・・・・みゃ~ん」
「お猫様な一刀様!」
そう叫んで飛びつく。それを何度か繰り返し、
彼女、明命が一刀から離れられたのはおよそ4刻後。
孫策の元へと帰るその顔は至福に染まり。
その手には報告をまとめていた書きかけの書簡と、猫耳が握られていた。
当然報告する内容を「猫耳一刀」のせいで忘れて周喩に怒られるのは。また後日。
-あとがき-
難産でした。学校のレポートがここ最近増えてまして(この月はしょうがないのですが)
少しばかり更新が滞るやもしれません。まことに申し訳ないですが、ご理解いただければ幸いで
す。(当然挙げるは挙げるのですが、どうしてもペースダウンががが)
そんなこんなで本編ですが、戦端開くのは次からですね。
今回は作戦会議です。彼女は何を望んでいるのか。あの軍師の面子ならヒントが出ればすぐに行き
着くと思うのでこんな感じにしました。
人数が増えると台詞がかぶりそうで・・・誰がどの台詞かわからないようならやはり「」前に名前
でも入れたほうがいいのだろうか。
拠点ルートの希望が規定数に達したので、とりあえず票数が多かった明命を書きました。
ネタがありきたりで酷いな・・・月はちょっとだけ作りこむか考え中です。
(即興になるとは思いますが)
また、前作も総合のランキングに載りましたようで・・・
いいのでしょうか、こんなに乗って・・・殺されたりしませんよね?
これからも応援よろしくおねがいしますのですよ。
懲りずに友達との問答を晒す
1、次の拠点はいつ入れる?また参加者誰よ?:
反袁紹が終わったら・・・かな?参加者は前回の面子+数人でまた4人の予定。だったが頑張って5人の予定。変わらない?一人は大きな進歩です。
2、名刀宝の持ち腐れじゃね?:
この√ではな、まだ武が完成してないからそこまで使わない。それでも日本刀の造形美は十分役に立っていると思うんよ。一刀さり気に演説多いし。
3、そろそろ戦闘描写だね?:
そうだね、戦闘描写怖いよ、日常会話も、計略も何もかも怖いが。
大体こんなところで・・・それでは次のお話で!
そろそろ、物語の中盤・・・?
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今回で布石置きと現状の確認など、戦の前段階が終わります、次回から戦闘。
そんな前段階のお話です。
それでは、楽しんでいただければ幸いです!