嵐のような週末だ、ルイズに大嫌いと言われ・・・人生初のお酒をのんで・・・綺麗なお姉さんに慰められて・・・素敵なメロンちゃんに出会った。
まだ週末は終わっていなかった、平賀才人に落ち込んでるヒマを与えない事とは・・・。
朝一番で馬車に乗り込みトリステイン魔法学院に行き、なんとか用事をすませて才人が王都トリステインにもどったのはお昼がすぎた頃だった。
気がつくと財布の中がほとんど空っぽだった、酒代と馬代が財布の中身をほとんど平らげてしまったらしい・・・。
元の世界にいたときも金欠になった事はあったが、あくまでお小遣いがたりなくて欲しい物が買えなくなる程度・・・今のは生活の危機である。
才人が働いている大工の組合は仕事が全部終わってから、給料をもらえる仕組みになっている。
いま取り掛かっている仕事は軽く見積もってもあと五日はかかる代物だ、つまりあと五日間才人は飲まず食わずの生活を強いられることになる。
「まいったな・・・さすがに考えなしに動きすぎたかもしれないなぁ、はぁ~~~」」
がっくり肩を落とし大きなため息をつく才人であったが落ち込むヒマを与えない、新たなの刺客が才人の真後ろから迫っていた・・・それは。
「あ~、サイトくんだ~!サイトくん!サイトくん!サイトくん!」
「「「せ~の」」」
「「「サイトく~ん!!あ~そぼ!!!」」」
ご近所のお子様たちの一団が才人を襲撃するのである、男女入り混じりの手ごわい刺客が才人に安息の地をふませないのであった・・・。
子供と言うのは好奇心旺盛で珍しいものには必ず反応してしまう生き物だ、平賀才人はこの国ではかなりめずらしい黒目・黒髪の外国人である。
また才人は元の世界の子供達の遊びの知識も持っている、時代遅れだった缶けりや縄跳び、各種鬼ごっこなどがこの地域の子供の流行の最先端だ。
「サイトく~ん、いっしょに大縄跳びしようよ~」
「だめ!サイトくんは俺達と缶けりをするんだ!」
「それよりも、また新しい遊びを教えてよ~今度は私と二人で出来るやつで・・・ねぇ」
「サイトさんは私たちと一緒にお料理するのよ!お子様たちはお呼びじゃないわよ」
小学校一年生~六年生ぐらいの歳の子たちがいるのだが各自、才人を取り合って大騒ぎである。
朝から何も食べず、昨日から一睡もしていない才人にとっては拷問だった・・・。
こんなに子供が集まるのは才人だけが原因では無い・・・いや、九十パーセントぐらい彼が原因だが全てが原因ではない。
そもそもこの王都トリステイン、人口密集率が信じられないほど高く、狭い部屋や小さな家がこの都市に一点集中しているのである。
横と横の幅が狭いので情報伝達速度が速く、才人の存在は子供たちのあいだで瞬く間に広がり、わずか二週間、東地区で彼を知らない子供はいない。
ただ、この都市の周りは窮屈な街中と反対にだだっ広い平野が広がっている、才人はこの広い平野を見たときに...。
「もしここが東京だったら大喜びで公共事業しちゃうだろうな~こんな何も無い広い土地」...と感想を述べたという。
何にしても狭い!とにかく狭いぜ!!王都トリステイン、昨日から今日に掛けて老若男女にイジりイジられ平賀才人の嵐のような週末は続く。
全員と遊び終えた才人は現在、親方の家にいた。
「サイト!いらっしゃい!!も~なんで昨日はウチこなかったのよ~!!」
「ごめん!昨日は昔なじみの友達が家に遊びに来ていてさ・・・寂しかったか?」
「別に寂しくなんかないもん!ただお爺ちゃんが寂しがっていたから聞いただけだからね!!」
ある意味、将来の可能性を感じるこの女の子が親方の娘さんのアナちゃん(9歳)だ。
「サイト、早くお台所に入って!今日もビシビシいくからね」
親方の奥さんが才人を急かしてくる、いかにも母ちゃんといった感じの人だ。
「今日は親方と大親方はいないんですか?」
「東町の会合で夜遅くまで帰ってこないはずよ、今日は急かす男どもがいないからゆっくり仕込んであげる・・・覚悟しなさい!」
今日のお料理のレッスンはいつもより厳しかった、そして朝から何も食べていない才人にとってまた拷問の時間が始まったのだった。
親方達が帰ってきたのは料理が出来てから程なく過ぎてからだった。
才人はやっとご飯にあり付ける、拷問からの開放の時がついに来たのであった。
「それじゃあ、会合っていってもみんなで酒盛りしているだけなんっスか?」
「バッキャロウ!ちゃんとやる事やってから飲んでるんだよ、一応、仕事だからよ」
「・・・・・ん」
話は今日の東町の会合の話になっていた、毎回、酒盛りをして帰ってくるが仕事をしてから飲んでいると主張する親方と大親方。
「サイト!お父さんとお爺ちゃんとばっかり話してちゃダメ!!ご飯が冷めちゃうでしょ、こっちにいらっしゃい!!」
アナちゃんが注意してくるのでアナちゃんの隣の席に移動して食事を再開する才人、なぜかニヤニヤ笑っている親方の笑顔にアナちゃんが「プイ!!」
今日も楽しい家族団らんではあるが楽しめば楽しむほどにある不安が才人を襲ってくる。
(ルイズのやつ、今なにしているんだろうな・・・友達とかと食事をしたりしているのかな?それと手紙をちゃんと読んでくれたかな・・・)
「親方、ご馳走様でした」
「おう、いつでも来な!!今日は早く寝るんだぞ、なんせ昨日のアレで疲れてんだからな!!」
親方の言っている疲れているとは意味が違うが確かに才人は非常に疲れていた、これでやっと才人は家に帰れる・・・誰も待っていない家に。
「・・・・・・おい、サイトを少し借りるぞ」
「えっ!?大親方」
「いや・・・ちょうどいいおめえも一緒に来い」
大親方の部屋に連れて行かれる才人と親方、話とはいったいなんなのか?
この時の行動が後に国を大きく割るきっかけとなる事をまだ誰も知らない。
嵐のような週末がさらに大きな嵐となってトリステインに吹き荒れるのか?
....第11話 めざせ経済大(町)国 終
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執筆.小岩井トマト
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嵐のような1日を過ごした才人は王都トリステインに帰ってきます。
子供に好かれるのは主人公のお約束ですね、いいえ・・・彼はロリコンではありませんよ。
好きになった女の子がたまたま胸が薄かっただけです!!
ここからしばらく日常パートが続きます。