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女神異聞録~恋姫伝~ 第四十九話

ヘイロンさん

真・女神転生世界に恋姫無双の北郷一刀君を放り込んでみたお話
人の命はとっても安い、そんな世界
グロや微エロは唐突に生えてくるもの
苦手な人は注意されたし
今回はあとがきは無いです、筆が進まなくて………orz

2015-08-20 00:05:54 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:850   閲覧ユーザー数:832

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  女神異聞録~恋姫伝~

 

                    第四十九話

 

                     「咆哮」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光の射さぬ場所。

 

彼の者達以外には何者にも知覚できぬ場所。

 

一つの盤上をはさみ二人が対峙している。

 

「目を失ったのは痛いか」

 

「ですが時は既に佳境、眺めていた彼は一体何を選ぶのやら」

 

「タイジョウロウクンなんかが話していた両の天秤が如何のと言う話か」

 

お茶を飲みながら二人して毒づいていく。

 

「アスラ王の望んでいた『力あるものの世界』もなんともアホらしい世界ですし、八つ当た

 

りというか。所詮はやっかみの延長ですからね」

 

「セラフ共の掲げる世界もな、『完全なる秩序の世界』これもなんとも馬鹿らしい世界だか

 

らな。自らが選定者にでもなったつもりなのか、勘違いもいいところだ」

 

二人して茶を啜り、ため息をつく。

 

「ダメダメだな」

 

「ダメダメですね」

 

「混沌を謡いながら善悪も飲み込めんとはなぁ………」

 

「神の使いといいながら御し切れていませんし………」

 

「「あいつら大丈夫なのか?」」

 

盤上へと目を移し、頭を抱える二人だった。

 

「まったくあんな奴らに任せるとは何を考えているんだ………あの禿は」

 

「もう丸投げしているのでしょう。最後の審判は下っていますから………」

 

今はただ見守ることしか出来ないと歯噛みしながらもただ二人して盤上を見る。

 

ただの駒の一つ一つが人であり、アクマであり、モンスターである。

 

その盤上という世界を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一刀は四人を掻き抱いてやることしか出来なかった。

 

治癒することも出来ず、生きながらえさせることも出来ない。

 

痛みを止めることすら、介錯をしてやることも許されず、ただ四人を掻き抱いていた。

 

そんな一刀の頬にそっと触れるものがあった。

 

「また………涙を流さずに泣いているの?」

 

「華琳………」

 

「北郷、そうか………また会えたのだな」

 

「秋蘭………」

 

「一刀は無事だったのだな」

 

「春蘭………」

 

「兄ちゃんの手はやっぱりあったかいね」

 

「季衣………」

 

「あぁ、もう。こんな格好で再会だなんて、は、恥ずかしいわね」

 

「………すまない………」

 

「謝らないでくれ、北郷。私達が弱かった、それだけなのだ」

 

「そうだぞ。自分よりも強いやつは必ずいる。その言葉を忘れていた私達が悪いのだ」

 

「兄ちゃんなら今度はきっと助けてくれるって信じているから」

 

四人が四人とそれぞれの表情ではにかむ。

 

一刀は春蘭に言った言葉を覚えていない。

 

何故、会って高々二日と経っていない一刀にここまで信頼を寄せられるのか。

 

何故かそれがとても悲しかった。

 

信頼を寄せられているのに、それに応えられなかった事も。

 

信じて託された言葉を、覚えていない事を。

 

ゆっくりと身体が光の粒になっていく事を止めることが出来ないことを。

 

「強がりで涙を見せない、意地っ張りな人」

 

「私たちを導いてくれた偉大なる人」

 

「いつも私達が挫けそうな時、その背で語ってくれた」

 

「お天道様みたいにいつも暖かった」

 

姿はゆっくりと薄れていく。

 

「今でも愛しているわ。一刀」

 

「私たちを守っていてくれてありがとう」

 

「今度は負けないからな。一刀」

 

「大好きだよ。兄ちゃん」

 

そして完全に光の粒子なって消えていった。

 

「きっとまた逢えるから」

 

そう最期に残して。

 

一刀の咆哮が静かに佇む満月の空に吸い込まれていった。

 

しばらく経って、アリスが置くから包みと手紙を持ってくる。

 

「おにーさん、これ………」

 

手紙には秋蘭からだろう、一刀への言伝が書かれていた。

 

『骨董品だから探すのに苦労したぞ。お前の役に立ててやってくれ』

 

包みの中には黒金色に鈍く光る、無骨な手の平には収まらない鉄の塊。

 

デザートイーグル50アクションエクスペリメント。

 

12.7mmという大口径を保持するハンドキャノンとも称される有名なマグナム銃の一つ。

 

いくつかの同口径を持つ物もあるが、有名という意味ではコレがもっともなものだろう。

 

50AEという市販実包弾では最高クラスを誇るものだ。

 

それを握れば、鉄の重みだけでは無い思いがずしりと肩に圧し掛かってくる。

 

約2kgの銃がこれほどまでに重たく感じるとは思わなかった。

 

「重たいな………」

 

「大切にしないと、だね」

 

「弾は何にしますか?」

 

弾の種類は多く、魔力の込められた弾もいくつか手に入れていた。

 

属性の影響を受けないものが望ましかったが、今のところはそれに該当するものが無かっ

 

た為にマグナム弾でしばらくは凌ぐしかないのだろう。

 

シンジュクへと向かった情報は手に入れていた、だから黙祷を捧げ、黙礼を告げ、一同はシ

 

ンジュクへと足を向かわせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンジュクでは筋肉達磨こと絶世の漢女チョウゼンが天使の軍勢に対し猛威を振るって

 

いた。

 

天使曰く「何だあの醜悪な存在は!?アレを人と認めろと!?」

 

また曰く「いやー!?筋肉が、筋肉がぁぁぁぁぁ!?」

 

また曰く「ピンクのブーメランが、ブーメランがぁ!!」

 

また曰く「キモイキモイキモイキモイィィィイイイィィィ」

 

シンジュクの街はある意味での黄色い声で埋められていた。

 

そんな中に一刀達は踏み込んで行く。

 

「よ、よしあんな気色の悪い筋肉は放って置いてアレを狙え!」

 

そんな一刀達に気がついたのだろう、多くの天使たちが向かってくるのだが………その背

 

後から濁声の底冷えするような、ドップラー音が天使たちに迫る。

 

「ぬアアんででぇぇぇっっっすっっってぇぇぇぇぇ!!??」

 

「イイイヤァァァァァァ!!??」

 

「これはあの筋肉がいればいいんじゃないか?」

 

「変態さん無敵だね~」

 

そんな光景に一刀一行は呆れていた。

 

エンジェルナイトたちがほうほうの体で去った後に、土煙を上げ一刀に向かってくる存在

 

があった。

 

ソレは黒褐色に日焼けした肌をしてピンクのブーメランパンツを穿いていた筋肉満載の禿

 

頭にお情け程度の三つ網、唇はたらこのように膨れた存在。

 

ソレが両手を広げ、唇を突き出して駆けて来るのだ。

 

一刀を目指してこんなことをほざきながら。

 

「ご主人様ぁん!!チョウセン怖かったわぁん!!」

 

ダァン。

 

銃声が一発空に響く。

 

手に入れたばかりのDE50AEはマグナム弾を吐き出し、チョウセンの脳天に吸い込ま

 

れ、大穴を穿った。

 

そして穴をあけられたチョウセンはゆっくりと横に倒れたのだった。

 

だが、倒れたのもほんの数秒のこと。

 

しなを作って泣き崩した姿勢をとり、何処からか取り出したハンカチをかみ始める。

 

「ご主人様の為に頑張ってのにぃぃ………よよよ………」

 

「暴走していなければ悪い奴では無いんだがなぁ」

 

「そこはいい奴だって言ってほしかったわぁん」

 

「変態さんは絶好調~」

 

「コレがいつもなんだぁ。変態さんだねぇ」

 

「着飾れば見栄えは良さそうなのにねぇ」

 

「だあぁれえぇがぁぁぁ!!変態!!でぇっすってぇぇぇぇ!!」

 

「「「きゃ~変態が怒った~」」」

 

リンゴ、アリス、アラクネはきゃ~きゃ~とチョウセンをからかって遊んでいた。

 

「ぬしさま?どうするの?」

 

シィはその輪には加わらずくてんと首をかしげ一刀を見上げていた。

 

「デウスエクスマキナと連絡を取ろうと思ってな………」

 

「(ア………ガァアァッァアァ!?………創造主!?ヨ………シバシ………オマチヲ)」

 

「(なにがあった?無事か?)」

 

「(………グゥ………魔人レッドアイト………交戦シマシタ)」

 

「(大丈夫なのか?)」

 

「(大丈夫デスガ………魔血魂ノコントロール………把握ガ困難カト)」

 

「(わかった。もうしばらく保たせておいてくれ)」

 

「(了解)」

 

「(そっちはどうだ?)」

 

「(セラフとザオウゴンゲン、アシュラ、ハチマンと中々のものが揃ってアクマたちを押し

 

戻している)」

 

「(イエスサー、何も問題はありません)」

 

「(こちらも加わりましたのでご安心を)」

 

「(そうか、一段落着いたらロッポンギで会おう)」

 

「「「「((((応))))」」」」

 

「リンゴ、ミント、ねねはシンジュクに残っている人たちの怪我の治療を。アラクネ、アリ

 

ス、恋、蓮華はロッポンギへの避難誘導を開始してくれ」

 

「「「「「「「はい」」」」」」」

 

「って一刀はどうするのよ!?」

 

一人、街から離れようとする一刀に蓮華が声をかける。

 

「どうしても話しておかないといけない奴がいる………だから俺が行くんだよ」

 

「無茶………しないでよ?」

 

あの咆哮を聞いてから一刀が自暴自棄になっているのでは心配していた蓮華は、一刀を止

 

めるために声をかけたはずなのに、その言葉をその背中を見て押し込んでしまった。

 

「あぁ、皆も信頼して任せるんだ。無茶はしないでくれ」

 

そう残し、一刀は一人で西の門へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西の門に座するは四聖獣の中央に描かれる龍神コウリュウ。

 

長き身体を持つ龍神の前に一刀は立っていた。

 

「コウリュウ、悪魔達が何を考えているか理解しているのか?」

 

「人間の小童無勢が我に問答のつもりか!?」

 

一刀の言葉にコウリュウは鼻にしわを寄せ不快感を顕わにしている。

 

だがそれで一刀は怯むような事はしなかった。

 

「ふん、しゃべる度胸はあるらしい………望みくらいは聞いてやろう」

 

「悪魔と天使を………いや、ルドラサウムとラサウムを倒す為に俺の仲間になってくれ」

 

その言葉にコウリュウは声をあげて笑い出す。

 

「ぐははは!!!仲魔になれと。この我に仲魔になれ………ふざけるな!!人の子

 

が!!!」

 

その目は怒りに染まり、爛々と赤い光を携えていた。

 

「ふざけてもいないし、冗談でもない。お前の力を借りたい」

 

「良いだろう。ならば貴様の力見せてもらおうか!!弱きものに従う道理は無し。我よりも

 

強き事を示して見せろ!!」

 

口を大きく開き雷を放ちながら、身体をうねらせ高速で迫ってくる。

 

「やっぱりか!?こんの肉体言語が!!」

 

コテツと木刀を引き抜き、攻撃備え突撃する。

 

下手な防御や回避は、このレベルの攻防では下手を打つだけの下策でしかない。

 

攻防一体となる技術は当たり前のように要求される戦闘となる。

 

「八艘飛び!」

 

雷を一つ二つと切り裂き、高速で移動する鱗を素早さで切りつける。

 

「ぐむっ!?」

 

切りつけられる連撃の途中でコウリュウは身体を上下反転させ、腹を曝すが通過する後ろ

 

足に一刀を巻き込む。

 

「ちぃ!」

 

五太刀目を振るう前に中断させられ、爪を弾くように振るいその反動を利用して攻撃範囲

 

から離脱する。

 

「口だけではないようだ!!人の身でよくやるわ!!」

 

空気が震え空間がまばゆい光に支配されていく。

 

稲妻を呼び寄せ周囲を、空間ごと纏めて打ち砕いていく。

 

「想像以上に速い!?」

 

広範囲に連続して雷撃が雨のように降り注ぎ一刀の近寄ろうとする事を阻害する。

 

降り注ぐ速度は雷速ではなく光速で降り注ぎ、まるで光の球のようだった。

 

堪え切れずに、即断で後ろに飛び退く。

 

その威力は西の門を形取っていた異界ごと吹き飛ばし、シンジュクからロッポンギへと向

 

かっている人達にもコウリュウの姿が見えていた。

 

「なに、あれ………」

 

誰が呟いたのか、そのざわめきは瞬く間に伝播して行った。

 

「一体あれにどんな奴が勝てるって言うんだ!?」

 

「あんなの襲われる前に速くハンターさん達に従って逃げよう!」

 

「バケモノに勝てるのはやっぱりバケモノなんだよ!」

 

その言葉を聞いて歯軋りしたのは誰なのか、拳を握り感情を押し殺したのは誰だったのか。

 

「アニキ………」

 

「ど、どうするんだな?」

 

声をかけられた人物は視線で誰かを殺せるのならば殺せるだけの怒りを込めていただろう。

 

「チビ、デブ………お前らは、お前らのやりたいようにやればいい」

 

ロッポンギへと向かう隊列から一人が人目をくぐって外れた。

 

外れた一人は、爪が立つほどに左肩を抱いていた。

 

「―――――を守れずして何が………何が『肩武隊』か」

 

西の門があった場所では、雷が降り注ぎ、暴風が荒れ狂い、氷柱が立ち並びながら、更にコ

 

ウリュウから火が吹きかけられ、爪が牙が振るわれていた。

 

コウリュウも無傷では無いが、一刀もそれに劣らないほどの傷を負っていた。

 

コウリュウに無数の切られた痕があるのなら、一刀は口内が見えるほどに頬を裂かれ、右肩

 

は中ほどまで抉られ血管や骨が見え、更に腹に二割ほど炭化していると、とても無事とはい

 

えない状態だった。

 

「はっはっ………はぁ」

 

「ふぅ………ふぅ………」

 

息を整えると二人して笑い出す。

 

「ははははは」

 

「ぐはははは」

 

「さすがは四聖獣の長コウリュウ強いなぁ。だからこそ力を貸してほしい」

 

「人の子でありながらその齢で天晴れな強さよ………人を辞めた、納得できる強さよな」

 

どちらが先か戦う意思が最高潮に達しながら、戦う気というものが感じられなくなる。

 

「名をなんという」

 

「一刀、北郷一刀だ」

 

コウリュウは名を尋ね、首を擡げる。

 

「我を従えたくば一刀よ!この一撃、応えて見せろ!!」

 

その言葉と共にコウリュウは突撃し、暴れまわる。

 

その突撃に足を踏ん張り、抉れた肩から力を込めて両の手で武器をかまえて堪える。

 

「ぐぬぅっ!!」

 

暴れまわるたびに地面は抉れ、一刀の身体は軋み悲鳴を上げていく。

 

傷が次々と開き血は吹き出し紅色に染め上げていく。

 

新たな溝を掘る度に意識がブラックアウトしかける。

 

そこへ不意に加わっていた力が抜けるように突進が止まった。

 

「がは!?」

 

そこへ安堵したためか足から力が抜け、慣性の法則に従って後方に吹き飛ぶ。

 

「ぐはははは、我の本気を受けてもまだ尚息があるか………いいだろう。北郷一刀、お前に

 

下ってやろう。目が覚めたら我の力存分に使うが良い」

 

一刀は吹き飛んだことで気を失ったのか、この先の言葉を聞くことは無い。

 

「今後ともよろしく頼むぞ、一刀よ」

 

そう言葉を残しコウリュウはCOMPの中へと入っていく。

 

そして倒れた一刀の元に歩いてくる人物は、一刀を背負い歩き始める。

 

生命変換を行って、己の命を削りながら一刀の傷を癒しながら。

 

「隊長がバケモノなわけがねぇ。俺は隊長に助けられるまで、人の道を外れたことをしてた

 

ってのによぉ………ぶん殴って人の道に戻してくれたんだ。だからよぉ………」

 

コウリュウがいなくなった為か西の門にいたアクマたちに比べれば弱いとはいえ、ただの

 

人には十分脅威といえるアクマ達が寄って来ていた。

 

「感謝してもし切れねぇ、その恩だってまだ返せちゃいねぇ………あの時代で、あの世界で、

 

隊長ほどに暖かくて優しい人をしらねぇ。だからこんなところで死なしゃしねぇ!!」

 

背負っていた人物の姿が変わっていく。

 

無骨な飾り気も何も無い重厚の黒に染まった鎧兜に身を包み、左肩には武の金一文字。

 

「人間、『肩武隊(ケンプドゥイ)』なめんじゃねぇぞ!!糞アクマどもがぁ!!!」

 

一刀を背負ったまま肩に備えていた槍を引き抜き、構えた。

 


 
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