「父ちゃん!?」
病室に入るなり、ボルトは涙目でベッドに横たわるナルトにすがりついた。
「父ちゃん、なんて変わり果てた姿に!?」
「ちょ、ちょ、ボルト……」
サラダも困惑した顔で病室に入った。
「父ちゃぁん!」
本気で泣きだすボルトにシカマルはため息を漏らした。
「大丈夫だ。ただの過労だ……」
「え……?」
「……」
目の下どころか目の周り全てが真っ黒になり我愛羅みたいな顔になった父にボルトはキョトンとした。
「兄ちゃん!?」
同じように血相を変えて病室に入る木ノ葉丸にシカマルはまたため息を吐いた。
「愛されてるってウゼェこともあるなぁ……」
事情を聞いてボルトは怒声を上げた。
「父ちゃぁん!」
「す、すまん……」
ボルトの怒鳴り声にナルトは困った顔をした。
批難する目はボルトだけじゃなかった。
サラダや木ノ葉丸、なぜかミツキまで厳しい目をしていた。
「俺じゃなく、シカマルが……」
「俺はお前が木ノ葉丸達を呼べというから従っただけだ……」
倒れたとは言ったが……
「まぁ、落ち着け……」
場を整えるようにシカマルはナルトを見た。
「医者に仕事を止められてな……」
「木ノ葉丸、お前に頼みがあって呼んだ」
「俺に?」
ナルトは真剣な目で答えた。
「今日から一週間、俺は仕事に戻れない。だからその間、お前に火影代理をして欲しいんだ!」
「あぁ……なんだ、そのていど……」
木ノ葉丸の笑顔が凍った。
「ええぇえぇえぇええぇぇえぇぇぇ!?」
病室どころか病院全てが震撼する悲鳴が上がった。
「な、なんで俺が兄ちゃんの代理を!?」
「兄ちゃんじゃなく、火影様か七代目だ!」
「ッ……」
仕事モードに入ったナルトに木ノ葉丸は慌てて姿勢をただした。
「別に思いつきで言ってるわけじゃない。俺が不在の間、俺の席を安心して任せられるのはお前だけだ」
シカマルも仕事に入った顔で木ノ葉丸を見た。
「安心しろ、市政に関わることをするんじゃねぇ。七代目がするはずだった雑事を代わりにやる程度だ」
「……」
サラダの目がどこか動揺したように木ノ葉丸を見た。
彼女もバカじゃない。
今、この空間で一番、火影の代理を務まるのは木ノ葉丸だけだ。
それでも自分の夢が近くで違う誰かに代理とはいえ譲られるのはどこか悔しかった。
「……」
木ノ葉丸も考えるように頷いた。
「七代目」
ナルトを見た。
「一週間の間、安心してお休みください。その間の公務は俺がやっておきます!」
「任せたぞ!」
コツンと木ノ葉丸の胸を拳で小突き、ナルトは安心したようにベッドに横になった。
「ふぅ……」
安心したら眠くなったのかナルトはゆっくりと瞼を下ろしていった。
「……」
眠りかけるナルトを見てシカマルは場に取り残されたボルト、サラダ、ミツキを見た。
「ということだ。班のリーダーがいない以上、任務を任せることも出来ない。そういうわけだから……」
ふと笑った。
「夏休みをくれてやるよ!」
ボルト達三人の手をパァンと叩きあった。
海につくとボルトはさっそく海パン一つで砂浜にたった。
「太陽が熱いってばさ!」
汗も流れるほど照らす太陽の光にボルトは目を細めた。
「にしても、サラダはまだ来ないのか?」
「お、おまたせ……」
「うわぁ!?」
背中から声をかけられ、ボルトは思わず飛び上がってしまった。
「……」
そして、言葉を失った。
「な、なによ……」
赤と白を基調としたビキニの水着を着たサラダにボルトは言葉を探した。
「え、えっと……」
慌てて海を指差した。
「お、泳ぐってばさ!」
「あ、待ちなさいよ!」
走り出すボルトの後を追い、サラダも走り出した。
「いっちばん!」
海に飛び込み、ボルトはさっきのテレを誤魔化すようにサラダの顔に水をぶっかけた。
「キャッ……!?」
海水が顔にかかりサラダは目線をキッと吊り上げた。
「やったわねぇ!」
サラダもボルトに向かって水をぶっかけた。
「うわぁ……!?」
海水が顔にかかりボルトの目も吊り上がった。
「このやろう!」
ボルトもまたサラダに水をかけた。
「キャッ……!?」
顔にかかった海水にサラダも楽しそうに笑った。
「このこの!」
サラダもまたムキになったように水をかけた。
「やったなぁ!」
ボルトも勢いに乗って水をかきあげた。
「このこのこのこのこのこの!」
「このこのこのこのこのこのこのこのこの!」
水を掛け合いボルトとサラダは笑いあった。
「アハハハハハハハハ♪」
目に入った海水も洗い流すようにサラダは涙を流し笑った。
「アンタ、ビッショリ!」
「お前こそ……!」
海水でビショビショになった二人は楽しそうに笑った。
「よし、次はあの島まで競争だってばさ!」
「ちょ、またフライング!?」
クロールで泳ぎだすボルトにサラダはなぜか背泳ぎで後を追い出した。
島につくとサラダは海水で濡れた髪を振りながら楽しそうに笑った。
「私の勝ちね!」
「くっそぉ!」
悔しそうにボルトは拳を握りしめた。
「途中まで勝ってたのに!」
同じように濡れた髪を振りながらボルトは悔しがった。
サラダは勝者の笑みを浮かべた。
「ペース配分が悪いのよ!」
ボルトの引き締まった胸をチョコンッと指でついた。
「遊びだからって最初から本気でやれば、後半バテるわよ!」
アハハと子供のように楽しそうに笑った。
「……」
ボルトの顔が恥ずかしそうに赤くなった。
海水で身体を濡らすサラダの肢体を見て、ボルトは心がドキドキした。
「な、なにみてるのよ……」
胸を隠し顔を赤くするサラダにボルトは慌てて顔を背けた。
「べ、べつにさらだのぺちゃぱいなんてきょうみないってばさ!」
「い、いったわねぇ!?」
拳を振り上げた。
「おっと、逃げろぉ!」
「まちなさぁい!」
逃げ出すボルトにサラダは楽しそうに後を追いかけた。
「待ちなさぁい、ボルト!」
最高に楽しい時間であった。
元の沖に戻ると二人は沈みだす太陽を見て哀愁を感じていた。
「もう帰る時間だってばさ……」
「うん……」
さんざん遊んだのか、全身、海水と砂で汚れた身体をタオルで拭いながらサラダも残念そうに頷いた。
「なぁ、サラダ……」
「うん……?」
髪をタオルで乾かすとサラダはボルトの顔を見た。
「その水着……」
ニカッと笑った。
「とっても似合ってるってばさ!」
「ッ……!?」
ボルトの太陽のように明るい笑顔にサラダは水着を褒められた喜びもコンボし背中から倒れてしまった。
「お、おい、サラダァ!?」
慌ててサラダの身体を抱きとめ、ボルトはどうしたのかわからず叫んだ。
「どうした、サラダぁ、目を覚ませ!?」
鼻血まで流し目を回すサラダにボルトはなぜか泣きながら叫んだ。
「たすけてくだぁい!」
家に帰ると母・サクラのいやらしい目が飛んできた。
「どうだった、ボルトのためにわざわざ新しく買った水着の感想は?」
「……」
鼻に詰めたティッシュを外し、サラダは不貞腐れたように唇を尖らせた。
「男なんてしゃーんなろう!」
「ふふっ……♪」
楽しんだんだなとサクラは理解し、嬉しそうに笑った。
(あとでナルトの見舞いでも行ってやるか!)
お見舞いに弁当でも作って……
後日、ボルト達の夏休みがもう一週間延びたらしい……
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第三話です!
だんだんとどうでもいいスーサンワールドが構築されそうです!
このまま、十話くらい一気に行けるといいなぁ……
サイトで後日談的なものを書きました。
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