~一刀視点~
「やはり拒否、か」
孫権に降伏勧告の書簡を渡して解放 それから5日後孫家から回答が有った
期待していなかったと言えば嘘になるが、予想通りだ
「丹陽へ出陣する
孫家を倒せば他の豪族達も完全恭順を受諾せざるを得なくなる
孫家を倒して揚州全土を制圧する」
「御意!」
既に出陣準備は整っている
俺達は孫家との戦に出陣した
~孫家陣営~
「で、何と言ってきた?」
炎蓮が冥琳に問いかける
「やはり、全ての豪族が援軍を拒否しました
揃って軍の再編が済んでいない、との理由です」
孫家は北郷陣営の降伏勧告を拒否する一方で北郷軍撃退の為、他の豪族達に援軍の要請をした
だがその結果は冥琳の報告通りであった
「寝返りを計った豪族が居るとの情報が他の豪族達の間に流れています
それで疑心暗鬼になっているようです
更に先の戦での敗戦で我等への信が揺らぎ、北郷への恐怖感が増したのでしょう
今回援軍を出して負ければ完全恭順で認められる個人財産の保有さえ認められなくなる
そう考えているのでしょう」
冥琳の説明に
「根回しは充分 そう云う事か
大人しそうな顔をしてえげつない、いや抜け目無い奴等だったね」
炎蓮は静かに答えた
「で、北郷軍の動きは?」
「5万の軍勢で出陣をしました
此方の軍勢は3万 籠城戦なら勝ち目は有りますが・・・」
冥琳の言葉が終わらぬうちに炎蓮は
「籠城はしない
籠城して相手が撤退しても現在の状況が好転する訳でも無い
野戦で勝利して初めて今回日和見を極め込んだ豪族達の信を取り戻せる」
と答えた
「そうおっしゃると思い、策を考えておきました」
そう言って冥琳は説明する
「・・・と云った内容です
あと思春に敵の兵糧集積場を奇襲させ、奴等の糧道を断ちましょう」
「よし、その策を実行する
思春は3千の兵で直ぐに出立しろ」
「御意」
冥琳の策が採用された
~鞘華視点~
「今回の戦ってどうなると予想してるの?」
進軍の途中で私は静里に問いかける
「十中八九籠城戦でしょう
此方の方が数で勝っています
そうなれば必然的に籠城戦になります」
やっぱり、ね だから攻城戦の為の兵器が多く、進軍が遅いのね
「兵糧は集積場を確保しています
其処の事は氷雨に任せておけば大丈夫です」
それは同感 氷雨は優秀だしそれに・・・
進軍が速度が遅いのは問題だが今回は仕方が無いと割り切ろう
~兵糧集積場~
昼間は建業からの運搬を問題無く受け入れ日が落ちた現在は静けさが漂っている
だがその近くでは
「まさかこんな簡単に見つかるとはな」
思春率いる部隊が兵糧集積場を発見していた
「奴等の軍勢は1500と云った所か
よし、今回の任務は奴等の兵糧を焼き払う事が第一だ
だから私は2500の兵で奴等の正面から襲撃して注意を惹きつける
残りの500は奴等の後方から入り込み兵糧を焼き払え」
思春の指示で軍勢は行動を開始する
「てっ、敵襲です!」
氷雨の元に兵からの報せが入る
直ぐに外に出て報告で状況を確認する
「正面から?いくら数で勝っていても馬鹿正直すぎるわ
兵糧集積場を襲う利点は糧道を断つ事なんだから間違いなく陽動ね
ならばここはお願いします」
そう氷雨が話しかけたのは”北郷一刀”だった
「分かった
出るぞ部隊『鳳凰』!」
~一刀視点~
今回は攻城戦になる可能性が高い
そうなると敵は此方の糧道を断つために兵糧集積場を奇襲させる
更に騎兵は攻城戦には向かない
だから兵糧集積場の護衛に部隊『鳳凰』を配置していた
「蹴散らせー!」
俺の号令で『鳳凰』が突撃する
「馬鹿な!奴等は」
前回の戦いで『鳳凰』の戦闘力は知れ渡っているようで敵は狼狽している
敵を打ち払っていると指揮官を見つけた 甘寧だ
「くそっ」
甘寧も苦戦している
一対一なら甘寧の方が上だろう
しかし一撃で決められるほど『鳳凰』の面子は弱くない
甘寧の一撃を止めれば甘寧に出来た隙を他の面子が攻撃して来る
そう云った”連携”を身に付けているのが『鳳凰』の強さを支えている
「引け、撤退だー!」
元々陽動のつもりだったのだろう
甘寧の指示で撤退して行った
俺が陣営に戻ると
「お疲れ様です」
氷雨が出迎えてくれた
「やはり別働隊がいましたが、それは残りの兵で防げました」
今回、『鳳凰』を此処に配備するように主張したのは氷雨だ
やはり氷雨もかなり優れた智謀を持っている
巴は劉備に「頭に行く栄養が胸に行ってるんじゃないの!」と言った
逆に氷雨は「胸に行く栄養が頭に行ってる」のかもしれない
そんな考えが一瞬頭をよぎったが
「一刀様、何か失礼な事を考えていませんでしたか?」
氷雨の目の笑っていない笑顔で考えは打ち消され、首を横に大きく振った
「まあ、良いです
一刀様と『鳳凰』は小休止の後、本隊に合流してください
此方にはもう奇襲は無いでしょう
一旦引いたと見せかけてまた来る、そんな事をするほど今の孫家に兵数の余裕は有りません
今回の襲撃も「直ぐに見つけられたら良し、そうで無いなら直ぐに戻れ」と命令されていたでしょうから」
その言葉に従い、小休止の後出立した
~鞘華視点~
進軍していた私達の元に先行していた斥候から意外な報告が届いた
「此処より先に孫家の軍勢が待ち構えております
その数約2万」
孫家は野戦を挑む気なの?
斥候に確認したが孫家は城外に軍を展開していると云う
「これは予想外でした」
静里も驚いているが取り敢えず日も傾いていたのでこの場で夜営する事にした
夜襲の可能性も考え、警戒も厳重にして軍議を行った
そこに明命が報告を持って来た
「この先の左右に敵の伏兵を発見しました
数ははっきりとした事は解りませんがそれぞれ5千程だと思われます」
正面に2万、左右にそれぞれ5千の伏兵 孫家の軍勢の総数が3万なので数は合う
「しかし彼方は3万の軍勢 此方は5万の軍勢
いくら伏兵が有っても此方の間諜能力が高い事を知っていたら発見される事は想定しているでしょう
それなのに野戦を挑むなんて・・・」
静里でも敵の考えを否、策を計りかねているようだ
「しかし、何もしないで睨み合いをしている訳にはいかないわよね」
私がそう言うと
「これ以上考えても埒があきません
敵の伏兵が攻めて来たら右は華雄さん、左は凪さんの部隊兵数はそれぞれ1万で迎撃してください
鞘華さん、恋さん、星さんの部隊は伏兵がやって来ても無視して正面の本陣を攻め落とします」
明日の基本戦術は”力押し”に決まった
愚策なのは静里も私も分かっている
しかし「虎穴に入らずんば虎子を得ず」
~孫家陣営~
「決戦は明日か」
冥琳は北郷軍の方を見ながら
「お前達の間諜能力の高さは知っている
だから伏兵の存在には気づいているだろう
だがそれを見越した私の策が読み切れるか?」
まるで北郷軍に問いかける様に独り言を呟いていた
~あとがき~
孫家との戦いです
兵糧集積場での戦いは一刀達の策が上を行きました
最精鋭は前線に行くのが普通ですから
『鳳凰』は前線に向かいました それでどうなるかは今後にて
孫家は野戦を選択しました
本編で語られている理由の他にも「性に合わない」と思っているかもしれません
冥琳の策は次話にて
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
Tweet |
|
|
21
|
0
|
追加するフォルダを選択
孫家攻略戦①