No.79466

真・恋姫†無双~江東の花嫁達~(四)

minazukiさん

気が付けば新婚旅行編第四話!
今回は蜀の動物戦隊もとい南蛮軍登場です。

2009-06-16 23:19:21 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:21242   閲覧ユーザー数:15302

(四)

 

「「「「「にゃー(にゅー)♪」」」」」

 

 それはまるで何かのコンサート会場のごとく一糸乱れぬ光景だった。

 

 南蛮軍による演習風景を見に行った雪蓮達。

 

 そこで見たものは何千という南蛮兵の愛くるしい姿と数十頭を超える像。

 

「凄いわね~」

 

 珍しいもの好きな雪蓮にとって南蛮兵は興味をそそるものだった。

 

 一斉に槍を構えて、

 

「「「「「にゃー(にゅー)!」」」」」

 

 とこれまた息のあった掛け声で突いたりなぎ払ったりしている。

 

「こんなのが攻めてきたら困るよな」

 

 というか勝負になるのかと真剣に思う一刀。

 

「私達もあの容姿には苦労しました」

 

 愛紗は苦笑いを浮かべ南蛮兵を見守る。

 

「だって美以ちゃん達、すごく可愛いもん♪」

 

 桃香は南蛮兵がかなりお気に入りだった。

 

「いいよな~。山越もあんな可愛かったら仲良くできるのになあ」

 

 太史慈は本気でそう思うほどの威力がある南蛮兵。

 

「でも、それだと戦いづらいでしゅよ?」

 

「それもそうだね」

 

 魯粛も口ではそう言ったものの、南蛮兵の可愛さに心を奪われていた。

 

「ねぇ、桃香」

 

「はい?」

 

「あの大きな生き物、ゾウっていうんだったけ?」

 

「そうですけど?」

 

 どうやら雪蓮が一番に興味を持ったのは象だった。

 

「あれに乗せてもらえないかしら?」

 

「俺も乗ってみたいかも」

 

 象に乗るなんて経験することのなかった一刀も雪蓮の提案に賛成した。

 

「オイラ達も乗ってみたいよね、子敬さん」

 

「はいでしゅ」

 

 視察に来ているだけにそういうとことはきちんと仕事をする二人。

 

「じゃあみんなで乗ってみよう~♪」

 

 桃香はそう言って南蛮王猛獲こと美以を探しに行った。

 

 まさかこの時代で象に乗れると思わなかっただけに一刀は楽しみで仕方なかった。

 

「うちでも飼えないかしら……」

 

 真剣な表情で雪蓮は象を見据えていた。

「問題ないにゃ」

 

 桃香が連れてきた南蛮王はあっさりと象に乗ることを了承した。

 

「ありがとうね、美以ちゃん♪」

 

 桃香も象に乗れるのが嬉しいのか終始笑顔だった。

 

「しかしでかいな」

 

 一刀は改めて目の前に立っている象を見上げた。

 

 確かにこんなのが数百、数千頭もいれば戦意喪失になる。

 

「ねぇ一刀」

 

「うん?」

 

「呉でも飼えないかしら?」

 

 またとんでもないこと言い始める雪蓮。

 

 その表情は決して冗談で言っているようには見えなかった。

 

「飼えなくもないと思うけど、どうするわけ?」

 

「山越対策にどうかなあって思ったの」

 

「なるほど」

 

 王を退いてなお、呉の国のことを考えていると思い一刀は雪蓮を褒めた。

 

「とりあえず、用意したから美以達合わせて三人ずつ乗るにゃ」

 

 美以の指示に従って、一刀と雪蓮、桃香と愛紗、太史慈と魯粛がそれぞれの象に乗り込んだ。

 

「いくにゃ~」

 

「「「「「にゃー(にゅー)!」」」」」

 

 美以の合図で周りにいた南蛮兵達が一斉に声をあげると象がゆっくりと動き出した。

 

「おお!」

 

「凄いわね……」

 

「たか~い♪」

 

「さ、さすがは南蛮の象。素晴らしいですね。」

 

「馬と違ってよく見えるな~」

 

「あ、あう……少し怖いでしゅ」

 

 象初体験に全員が驚きながらも楽しむ。

 

「「「パオーーーーーーーーン!」」」

 

 一歩前に進むと地響きが辺りに広がっていく。

 

「面白いな~」

 

 太史慈は少し震えている魯粛を気に懸けながら象を楽しんでいる。

 

「すごい、すごい♪」

 

「と、桃香様、そのようにして危ないですよ」

 

 子供のように上から見る風景を堪能する桃香に愛紗が嗜めるが、まったく聞いていない。

「こういうのもいいわね」

 

 上機嫌の雪蓮に美以は胸を張って答える。

 

「そうだにゃ。ガーネシャ達は美以達の愛象にゃ」

 

「ねぇ、この象を何頭か貸して欲しいんだけど」

 

「にゃ?ガーネシャ達をにゃ?」

 

 美以は不思議そうに雪蓮を見る。

 

「うにゅ~~~~~~。それはダメにゃ」

 

「どうして?」

 

「ガーネシャ達は美以と一緒に生きてきたにゃ。だから美以達以外には懐かないにゃ」

 

 別に貸し渋っているわけではなかった。

 

 美以は益州の南方で長いこと生活してきた。

 

 それだけにいろんな動物達と触れ合い共に生きてきた。

 

 南蛮の者からすれば象も家族のようなものだった。

 

「そっか~なら仕方ないわね」

 

 数頭だけでも彼女にとっては大切な家族と引き離されてしまうという気持ちは雪蓮もよく分かっていた。

 

「でも、桃香の友達なら美以の友達にゃ。何かあればガーネシャ達とかけつけるにゃ」

 

「そう。ありがとうね、猛獲ちゃん」

 

「美以でいいにゃ」

 

「それじゃあ私も雪蓮でいいわ」

 

 二人は真名を授けあい笑顔を見せあう。

 

「ところで、一刀。あなた、何してのよ?」

 

 一人、箱の枠に手をあてて後ろを見ていた。

 

「い、いや、あれ……」

 

 指差す方向に雪蓮と美以が見る。

 

 そこにはたくさんの愛くるしい南蛮兵が行進しているだけだった。

 

「あれがどうしたのよ(にゃ)?」

 

「いや、よ~~~~~く見てくれ」

 

「うん?」

 

 二人はもう一度、よく見る。

 

「あら?」

 

 何かに気づいた雪蓮は笑みを浮かべる。

 

「あの子ったら何してるのかしら?」

 

「さあ……」

 

 二人が見たものは、なぜか南蛮兵の衣装を着ている明命だった。

 

 それも幸せに満ちた笑顔で南蛮兵に混じって槍を持って行進している。

 

「何ていうか周りに溶け込んでいるよな」

 

 普段の忍び装束ではないが、いつも以上に可愛さが強調されている明命を見ながら一刀は違和感をまったく感じなかった。

「でもなんで明命がここにいるんだろう?」

 

 何かの任務できているとは到底思えない。

 

 一刀の知る限り今は領内視察をしているはずだった。

 

「たぶん、猫に連れられてきたんじゃあないかしら?」

 

「猫って……」

 

 明命の猫好きは何度か見たことがあるため別におかしいことではなかったが、一刀の言いたいことはどこの猫がどうやって明命をここまで連れてきたのか不思議でならなかった。

 

「教えてあげようっか?」

 

 一人の南蛮兵がいつの間にか箱の中に立っていた。

 

 そしてその者が小蓮だと気づくまでそう時間はかからなかった。

 

「し、小蓮!?」

 

「アタリ~~~~~♪」

 

 そう言って南蛮の衣装を着ている小蓮が一刀に抱きついてきた。

 

「な、なんでお前がいるんだ?」

 

「え?だってシャオは美以と遊ぶために来ただけ」

 

「遊びに?」

 

「うん。それで一人で行こうとしたら明命に見つかって仕方なく」

 

 大量のお猫様に会わせてやるとでも言ったのだろうと一刀と雪蓮は思った。

 

「でもよく美以と知り合えたわね?」

 

 どう見ても接点が見当たらない二人。

 

「りっしょくぱーてぃーの時に知り合ったの。それで話をしたら凄く楽しくなって友達になったの」

 

「美以達も小蓮と遊んでいると凄く楽しいにゃ」

 

「「ねぇ~~~~~~♪」」

 

 息の合うコンビだった。

 

「まったく。蓮華に知られたら怒られるぞ?」

 

「大丈夫、きちんと書置きしてきたから」

 

 小蓮の書置きを見た蓮華は卒倒しかけたことは戻ってから聞かされることになる一刀だった。

 

「大丈夫にゃ。美以達の友達をいじめる奴はガーネシャンで踏み潰すにゃ」

 

 可愛い顔をして言うことがえぐい美以に喜ぶ小蓮。

 

「で、なんで二人とも南蛮兵になっているんだ?」

 

「これ?これはね」

 

 一刀に妖しく身体を摺り寄せながら小蓮は答える。

 

「一刀を誘惑するためだよ」

 

 普段の小蓮の服よりも露出度が高い南蛮服。

 

「だ・か・ら、今晩は一刀の部屋に行くね?」

 

 そう言って顔を近づけていく小蓮。

「ち、ちょっと待て。落ち着け!」

 

 離そうとしたが半分押し倒された状態なので上手く引き剥がせない。

 

 そればかりか全体重を乗せてくるために逃げる事すら不可能になっていた。

 

「か・ず・と♪」

 

「シ~ャ~オ~」

 

 一人のけ者にさせていた雪蓮。

 

 顔は笑っていた(一刀からすれば鬼の形相のように見えた)が容赦なく妹の両脇を捕まえ、高々と持ち上げる。

 

「お、お姉様……!?」

 

「問答無用♪」

 

 短く答えて下にいる南蛮兵の中に放り捨てた。

 

「お姉様のバカ~~~~~~!?」

 

 泣きながら埋もれていく哀れな小蓮。

 

 まったくの同情の余地なしといった感じで手を振る雪蓮。

 

「ち、ちょっと雪蓮……」

 

「何かしら、旦那様♪」

 

「「ヒィィッ」」

 

 思わずお互いの手を取り合う一刀と美以。

 

「あとでたっぷりとお仕置きね♪」

 

「お、俺が悪いのか!」

 

「だって妹にあんなことさせるんだもの。当然でしょう♪」

 

 完全な言いがかりの雪蓮の言葉に唖然とする一刀だが、なんとか反論しようとした。

 

「それとも私も南蛮の服を着たほうがいいかしら?」

 

 雪蓮のスタイルで南蛮軍の服。

 

(み、見てみたいかも……)

 

 想像するだけで顔が緩んでいく。

 

 そして語尾に「にゃー」なんてついた日にはおそらく一刀の理性は完全崩壊すること間違いなかった。

 

「いいわよ。愛する旦那様が所望するならばそれに応えるのも妻の役目よ♪」

 

 意外と乗り気なのではないかと思うほど雪蓮はさっきまでの笑顔とは違った笑顔を浮かべていた。

 

「か、考えておくよ」

 

 とりあえず美以や桃香達がいる手前、理性を全力で崩壊させないようにした。

 

「そう♪」

 

 雪蓮はひどくおかしそうに笑みを浮かべる。

 

 それを見て何も言えなくなった一刀。

 

「モフモフ♪楽しいです~♪」

 

 明命はそんなことをつゆ知らず、周りの南蛮兵達と楽しく行進をしていた。

 一通り楽しんだ後、美以は半泣きの小蓮と昇天しかけていた明命、それに象と南蛮兵を引き連れて自分の城に戻っていった。

 

 その夜、桃香の好意で城の中に一室を用意してもらった雪蓮と一刀は太史慈と魯粛、そして悠里の三人とお茶を飲んでいた。

 

 そして昼間の南蛮兵と象の話で盛り上がっていた。

 

「そうでしたか。さすがは南蛮というわけですね」

 

 背筋を伸ばして両手で杯を持ってお茶を飲む悠里は微笑み話を聞いていた。

 

 雪蓮達が象に乗っているころも、朱里、雛里と共に一室に篭っていたという悠里の手前には一冊の本が置かれていた。

 

 どうやら会心の出来のようだった。

 

「それで何か山越対策にはなりましたか?」

 

「う~んそれなんだけどね~」

 

 ばつの悪そうな言い方をする太史慈。

 

「どうかしたのですか、子義さん?」

 

「いや~~~~~。あんまりにも珍しすぎてな~~~~~んにも考えてなかった」

 

 大笑いする太史慈に隣で申し訳なさそうに俯く魯粛。

 

「貴女らしいですね。一刀くんと雪蓮様はどうでしたか?」

 

「そうね。私は山越対策には十分効果はあると思うわ。特にあの象ね」

 

「うん。俺もそれは思った」

 

 悠里は頷きお茶を一口飲む。

 

「瑾も来ればよかったのに」

 

「いえ、こうして皆さんのお話を聞いているだけでよく分かります」

 

 この辺りはあの諸葛亮の姉というところだろうか。

 

 話を聞くだけでどのようなものかを把握しているように見えた。

 

「まぁ山越のことはまた戻った時にでも考えましょう」

 

(本当に落ち着いている人だよなあ)

 

 一刀が知る限り悠里は出来た女性だと思っている。

 

 冥琳のような天才肌でもなく雪蓮のように武勇に優れているわけではないが、物事をよく見て落ち着いて行動しているだけに人望も厚い。

 

 一刀とも妙に波長があい、お茶飲み仲間からいつの間にか真名を授けられるほどの仲になっていた。

 

「ちょっと、一刀。さっきから瑾の方ばかり見てるわよ?」

 

「え、そ、そんなことないよ」

 

「一刀の浮気者~~~~~」

 

 拗ねる雪蓮に一刀は言い訳をする姿はもはや尻に敷かれる情けない旦那にしか見えなかった。

 

「雪蓮様、大丈夫ですよ。一刀くんは何を置いても貴女を大切にしてくださいますよ」

 

 悠里の言葉に雪蓮の目が光った。

 

「ねぇ、瑾」

 

「はい?」

「一刀のこと一刀くんって言っているわよね?」

 

「ええ。そう呼んでもよろしいでしょうかときちんと許可は得ました」

 

「瑾も一刀のこと好きなんでしょう?」

 

 側室候補が多くいるため、これ以上増えるのは困ると思っている雪蓮はまだ拗ねていた。

 

「ええ。ここまで心優しい男の方はそうはいませんね。もう少し若ければ求婚を申し込んでいました」

 

 十分に若いはずの悠里だが、自分には今のほうが似合っていると思っていた。

 

 どこまでもおしとやかな悠里に雪蓮は急に真面目な顔をした。

 

「瑾、貴女がよければ一刀の側室になればいいわ」

 

「「「「雪蓮(様)(ちゃん)?」」」」

 

 驚く四人に雪蓮は苦笑いを浮かべる。

 

「だって、瑾ったら一刀と話している時、凄く女の顔しているんだもん。そんな顔されたら嫌なんて言えないでしょう?」

 

 そう言われて悠里は机の上に杯を置いて雪蓮に頭を下げた。

 

「ありがとうございます。でもそれは一刀くんが決めることです」

 

 自分から求婚する資格はないと言いたげな悠里。

 

「俺は悠里のことは好きだよ」

 

 一刀は自分にも優しく接してくれる悠里のことが好きだった。

 

「ありがとうございます。一刀くんにそう言ってもらえるだけで嬉しいです」

 

 頬を僅かに紅く染める悠里。

 

「しかし今はご遠慮させていただきます」

 

「どうして?」

 

「何かしたいことでもあるの?」

 

「ええ。より良い本の製作に余念がありませんから」

 

 そう言って悠里は手前においてあった本を取り、それを雪蓮に渡した。

 

 本を開き、中身を見ていくと、何も言わずに閉じて今度は魯粛に渡した。

 

 魯粛も同じように本を開けて中身を見ていく。

 

「し、子瑜ちゃん……こ、こ、これはもしかしてでしゅか?」

 

「ええ。朱里達に協力させて作らせた一品ですよ」

 

 朱里の名前が出てきた時点で一刀は何の本か理解できた。

 

「凄いでしゅ!今まで見たことない素晴らしい出来でしゅ!」

 

 顔を紅くして興奮している魯粛。

 

「瑾ちゃんの才能ってこっちのほうが強いんじゃあない?」

 

 魯粛の後ろから眺めていた太史慈の正直な感想にも嫌な顔をすることなく穏やかな微笑みを崩さなかった。

 

「一刀」

 

「なに?」

 

「あんな瑾だけど側室にしたい?」

 

 この状況を見る限り一刀は正直、物凄く悩んでいた。

 

 あの悠里なだけに改めてショックを受けていた。

 

「考えさせてもらってもいいかな?」

 

 何ともいえない複雑な表情を浮かべる一刀に対して、完全に断るのではないのねと思った雪蓮はため息をついた。

(座談)

 

水無月:とうとう四話目に突入してしまいました、新婚旅行!

 

雪蓮 :どこまでいくの?

 

水無月:とりあえず蜀編はここで終わりです。次は魏国に行きます。

 

雪蓮 :ずいぶんと長そうね?

 

水無月:まぁこの旅を通して書きたいことがありますから、どうしても長くなります。ちなみに魏編も蜀編と同じく四話構成の予定です。

 

太史慈:ところでオイラ達は?

 

水無月:残念ながらここでしばらくお別れです。

 

魯粛 :あう・・・・・・。

 

悠里 :子敬さん、これでも読んで元気出してください。(八百一本を渡す)

 

魯粛 :あ、ありがとうでしゅ♪

 

水無月:またのご出演もありますからそれまで我慢していてください(><)

 

雪蓮 :というわけで次回もよろしくね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀 :う~~~~~ん、美以ちゃん。雪蓮にあう南蛮服あるかな?

 

美以 :任せるにゃ。美以も雪蓮に南蛮服を着させたいにゃ!

 

雪蓮 :か~ず~と~♪み~ぃ~♪

 

一&美:ヒィィィ(にゃ~~)!?

 

 


 
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