ノワール抹殺計画の後、血がまだ少ないこともあって。その日は八神家に止まることになった。
まともに体が動かないことも合って・・・。
「おいこら!なぜこうなる!?」
「しょうがないやん。車椅子の予備はないし。やった本人が責任取りたいって言ってるしな~」
「窮屈でしょうがご辛抱ください」
「ご辛抱って・・・」
《ぷにゅん♪》
せ、背中に当たってる・・・。
どういう状況か説明すると簡単だ。シグナムが椅子に座り。その上に俺が座らされている
満足にまだ体が動かないこともあって。背中をシグナムに預けたままだ。
結果は自ずと想像できるだろう。そして、座っている椅子の前に措かれた広いテーブルには夕食が並び始めている。
恥ずかしがっても仕方がないし。はやてに前、補助している方が恥ずかしがって居ないのに
補助されているほうが恥ずかしがるというのは失礼だと言って置きながら。俺ってやつは・・・
「?...辛いのでしたらもっと楽な姿勢に」
「わっちょ!?」
体制を崩されていき。さらに体がずれ落ちて。丁度、首のうなじがあたりが
シグナムの谷間ほどに持っていかれ。暴れようとする俺を押さえつけるつもりなのか
胸にも手を回され。ぬいぐるみのように抱きしめられた。
「・・・なんか、羨ましいことになってんな~」
料理を作っているはやてが目を細めてそんな言葉を零している間に。ほかのヴォルケンである3人は俺をジッと観察していた。
そして、その中の一人であるシャマルが思わぬ言葉を口にした。
「シグナム?そうやって抱きしめたらいい子いい子って言いながら頭を撫でるともっといいのよ?」
「そうか。いい子いい子」
シグナムに頭を撫でられ髪を梳かれ。こそばゆい感覚が体を支配する。
「シャマル・・・喧嘩売ってんのか?」
「え?・・・だってテレビでそう言ってましたよ?」
そうだった・・・シグナム達の中で早くもこの生活になじみ始めているのがシャマルだ。
テレビを見ていろいろ勉強したり。はやての家事の手伝いをしたりと
本人は確か補助系の魔導師だと言っていたので。そういうことも早いのだろうが。
恐らく、シャマルが見ていたのは保育系の番組だ。
「俺はもうそんなことされる年じゃねぇ」
「そうなんですか?なら、えーっと。男性は胸で顔を挟んであげると喜ぶって
「どんな番組見てるんだよ!?」女が男を落とす100の方法?」
そんな番組テレビで放映するなよ・・・。というかどんな番組だ?
「ったく・・・ってんんっ!?」
《むぎゅむぎゅ♪》
体の向きを変えられ。シグナムの胸に顔を埋められる。
「ンンッー!(人の話を聞けー!)」
「あっ・・喋るな。くすぐったいぞ」
「まあまあ♪」
「わーっ!なにしとんシグナムッ!?」
「なにをと言われても介抱ですが?」
その時、シグナムの顔は少しだけ微笑んでいたらしい。俺の顔は埋まっており見ることはできなかったが・・・。
その後、シグナムにそのまま食事をさせられ。いまはリビングのソファーにシグナムと並んで座っていた。
はやては、シャマルとヴィータと共にお風呂に行き。
ザフィーラはソファーから少しはなれたところで狼形態で丸くなっている。
「ノワール、少しいいか?」
「なんだよ?殺したいならせめて元気になってからにしてくれよ?今は戦えないしな」
流石に今すぐどうこうするとは思えないが。あえて話に混ぜる
「ぐっ・・・もうそのような事はしない。約束しよう」
苦虫を噛み潰したようなシグナム。意外と気にしているようだ
「悪かったよ。それで?」
「あ、ああ・・・。ノワールに言っておきたい・・・いや、聞いてもらいたいことがある」
シグナムが覚悟を決め再び口を開く。ザフィーラは静かに耳を動かし沈黙を保った。
「我々は闇の書の主を守る騎士だ。既に何代もの主の下で守護していた」
「何代も?」
「ああ、闇の書は主が亡くなると転生機能が働き。最も闇の書を扱える資質がある魔導師の下に移動する」
「そんな事が可能なのか?」
「闇の書は今ではロストロギアと管理局に言われる代物。もちろん私達騎士もその一部だ」
「管理局ってお前・・・」
管理局という言葉が出たということはやりあったことがあるのか?あいつらと
しかも私達騎士もって・・・闇の書の一部?
「ノワールは私達がそういう存在だと思ってどう思う?主は家族に向かい入れるように言ってくれているが。我々は静かでこうも平和な暮らしに慣れていない。今までの主の下では道具のようにしか使われていなかった」
「ああ、なるほどな」
シグナムは不安なんだ・・・。戦いしか知らず。人間でもない自分達が果たして馴染めるか。
なんだか俺と似ているな、やっぱり。
「プッそんなこと気にしてたのか?」
シグナムは静かに繭を顰め。やや不機嫌な面構えになる。
大方、真剣に相談したのに笑われて不機嫌になったのだろう。
「大丈夫だ。そんなことを心配できる奴なら問題ないだろ」
「しかし我々は・・・」
不安そうに俯くシグナムの頭に右手を伸ばして触れる。
「ノワール?」
「安心しろって。お前は下手な奴らより人間そのものだ」
「だが・・・」
「俺の知り合いには、特殊な生まれのやつ。人間と少しだけ違うやつ。完全に体がロボットのやつ。
俺なんかスラムで泥ネズミのように生きて来たが
まあ、俺からしたら生まれなんか人かどうかなんてどうでもいい。ようは、ここだ」
頭に載せていた手を下げて行き、シグナムの左胸に指を広げて軽く手を当てる。
「ハートが人間だったら俺はそいつが人間だと思うぜ。この中身が何も感じず冷たく汚れていたらどんなに人間の肉体を持っていてもバケモノでしかないよ。ま、俺もそう....シグナム?」
胸に当てていた右手をシグナムの両手で握られ。その手を拝むように胸元で抱きしめられる。
シグナムの目じりには薄く涙が溜まっていた。
「急にどうした?」
「いや・・・自分でも分らない。ただ、手を握りたくなってしまった」
「そうか・・・。」
そのまま話を続けることも無く。はやて達が風呂から上がってくるまで俺の右手はシグナムに黙って握り続けられ、体を軽く預けてきたため。やさしく頭を撫でてやった。
その出来事を近くで見た居たザフィーラは誰にも悟られること無く、小さく笑ったのだった。
そして、更に数日後。
あの事件の一件もあってヴォルケンリッターの面々はかなり生活に慣れ始めていた。
ヴィータははやてと姉妹のように良く遊んでおり。
シャマルははやてから料理や家事を教わっては失敗しつつも少しずつ覚え始めていた。
ザフィーラはというと。前から服が鬱陶しいと言っていたのが限界に達したのか。狼の姿でずっと寛いでいる。
はやては、犬が飼いたかったと漏らしていたのも原因かも知れないが。本人は満足そうである。
そして、彼らのリーダーであるシグナムはというと・・・。
「ノワール。一つ手合わせ願えないか?」
「また今度な」
「なら、この辺りの案内をしてくれないか?まだ地理を把握していなくてな」
「俺、いま家に来たばかりなんだが?」
「では、将棋でも打たないか?主が教えてくれたのだが相手がいなくてな」
「それなら別にいいけど・・・」
あの一件以来、シグナムが矢鱈と俺に構ってくる。というよりシグナムが構って欲しいような感じだ。
それをシグナムの主であるはやてに伝えると。
「そっか~・・・このタラシッ!爆発しろッ!」
と、怒られるが。俺からすると色恋するような年齢でもないが。
シグナムを見るとやや不安が残る。
しなやかで長い濃い桃色の髪、女性で有りながら力強い目の整った顔立ち
鍛えられた体だが女性らしい柔らかさを残していて
背も高くモデルにもなれそうだ。
そんな相手に好かれてしまったかも知れないと思うと嬉しいのだが。
正直、子供の身でさらに答える手段を持たない俺はいったいどうすればいいんだ?
「むっ!?」
ともあれ。
「王手だ、シグナム」
「ま、待った!」
勝負に手抜きをするつもりはない。
「待った無しだ」
「むぐぐ・・・」
眉をひそめて将棋盤を見つめるシグナムを見ていると
今日も八神家は平和だ。
ああ、また新たな犠牲者が....
まあ、ツケを払うのはノワールなんですけどね。(将来的に)
次回からヴォルケンズ残り三人の話になります
※読んでくれてありがとうございます!感想などなどはお気軽に!
※誤字脱字などの指摘もどんどんお願いします。
※また誤字脱字や妙な言い回しなど見つけ次第修正しますが特に物語りに大きな影響が無い限り報告等は致しませんのであしからず。
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神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。