No.792936

リリカルST 第2話

桐生キラさん

Tサイド
サブタイトル:機動六課へ

2015-07-29 21:05:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1585   閲覧ユーザー数:1467

 

 

 

 

 

スバルと共にBランク試験を余裕でパスしたその日の午後、食堂でご飯を食べていると金色長髪の美人と茶色短髪の美少女に声を掛けられた。

 

「スバル・ナカジマ二等陸士にティアナ・ランスター二等陸士やな?私は八神はやて二等陸佐。こっちはフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官や」

 

突然の上官の出現により、私もスバルも食べる手を止め、慌てて立ち上がって敬礼した。すると、二人は笑顔でそれを制止した。

 

「あぁ、ごめんごめん。食事中やのに話しかけて失礼やったな」

 

「うん、食事の邪魔をするつもりはないから、食べながら聞いて欲しいかな」

 

そうは言うものの、片や二等陸佐、片や執務官ときたのだ。それを気にせず食べろだなんて、普通はム…

 

「もぐもぐ」

 

隣で普通に食べ始めるスバルは普通じゃない。それに、これが凡人と天才の差なんて言うのなら、私は凡人のままでいいとさえ思える。

て言うか、上官の前なんだからもっと慎みを覚えなさい!

 

「あはは、スバルは素直な子なんやなぁ」

 

「うっ…後で叱っておきます…」

 

「えぇ!?あたし叱られるの!?」

 

当たり前よ、バカ

 

「あの、それで私達に何かありましたか?」

 

今気付いたが、この二人の気配はあの試験場にもあった。あの場にはリィンフォース・ツヴァイ空曹長以外にも3つの強大な力の気配があった。うち2つは目の前にいる八神二佐とハラオウン執務官のものだ。あと一つは…この場にはもう居ないが、目の前の二人に匹敵する力の持ち主だ。恐らくは試験官の一人だろう。

 

あの時から見られていた。そして今話しかけられた。私が使った力に興味があるのか、はたまた別の何かか。特に八神二佐なら、私の身の上話をある程度知っていてもおかしくはない。

 

「実はな、二人をスカウトしに来たんさ」

 

「スカウト…ですか?」

 

「せや。新設部隊、古代遺物管理部機動六課。私らは二人を歓迎するよ」

 

 

 

 

数日後、私とスバルは如何にも新造されたらしい隊舎の前まで来ていた。

 

古代遺物管理部機動六課

 

本局所属の地上部隊で、少数精鋭による迅速な遊撃が役割らしい。だが、それだけに留まらず、この部隊にはもう一つの側面を持っている。それが古代遺物、通称ロストロギアを対象とした事件の処理だ。私とスバルはそこのフォワード部隊に所属との事だった。

 

ロストロギアと言えば、無害な物から危険な物まで幅広く存在する。恐らく六課は、ロストロギアが関係する凶悪事件を担当する事になるのだろう。そう思った要素の一つが、この隊の部隊長だ。

 

管理局二等陸佐、八神はやて

 

約10年前、闇の書事件と呼ばれる事件の中心人物と謳われ、事件収束後は贖罪として管理局の魔導師となり管理局に奉仕し、その後も実績を買われキャリアの道を歩いた。魔導師ランク総合SSという能力の保持者で、地球の若き三人のエースのうちの一人としてカウントされている。

 

彼女がここまでに能力を高め、地位を築いて来たのは、恐らく彼女の過去、闇の書が関係するのだろう。

闇の書と言えば、管理局でも広く知れ渡る危険なロストロギア。その犠牲にあった管理局員も少なくないと聞く。

故に、そのロストロギアを保持する彼女を快く思わない人物も居るわけだ。罪人と蔑み、ロストロギアを保持しているだけで忌み嫌われている。

だが、彼女はそれでも前を向き、闇の書の被害にあった遺族に謝罪を続けている。そして、二度と闇の書事件の様な凄惨な事件を生み出さないと奔走している。

それだけ、彼女の心は強いのだろう。いや、もしくは、それを支える者が居るからかもしれない。

 

私が個人的に八神二佐を知っていたのは、とある人物に関係する部分が大きい。

 

管理局、特務隊の魔導師、東士希

 

三年前、地球で起こったロストロギア絡みの事件、通称神器事件、その中心人物だった男が東士希だ。神器という武器に特化したロストロギアの暴走により、地球で大規模な魔法戦が展開された事件だ。先の闇の書事件と比べれば、被害はゼロに等しい事件だったが、神器の持つ危険性を考慮し、東士希は逮捕。以降は管理局の嘱託魔導師として贖罪に勤めていた。

ちなみに、この事件を収束したのも八神二佐だ。噂では、この事件がきっかけで二佐になれたとも聞いている。

さらに噂なのだが、八神二佐と東士希は、巷では歩くロストロギア夫婦などという異名があったが、夫婦とはどういう意味なのか、真相までは私もわからなかった。

 

さて、何故あたしがこの事件を調べたかと言うと、私の姉貴分の女性の弟が、この東士希という人物だからだ。

 

私は兄を失って以来、とある縁で出会った東士希の姉、東咲希の世話になっているのだ。彼女から住む場所やお金を提供され、さらには格闘術等も教えてもらっている。

 

悲しみの淵にいたあたしを、強引に引っ張り上げてくれた咲希さん。私は咲希さんに恩を感じている。そんな彼女の弟なのだ、調べない訳がない。ついでに言えば、金銭面の補助は士希さんがしてくれたとも聞いているし。直接会った事はないが、私は士希さんにも恩がある。

 

起動六課に入るという事は、八神二佐とのコネクション、引いては士希さんと会う可能性を得たという事だ。それを抜きにしても、起動六課には優秀なスタッフが多いと聞く。隣にいるスバルだってそうだ。そんな中で過ごせるのは、私のスキルアップにも繋がる。断る理由がない。

 

「ここが六課の隊舎みたいね。凄い。どれだけお金を使えば、こんな良い施設を建てれるのかしら」

 

私は隊舎を見て、そう思わざるを得なかった。隊舎に訓練施設に寮に、本当に何でもござれな所だった。それだけ期待されているのか、もしくはスポンサーがとんでもない金持ちなのか。

 

「そわそわ」

 

ん?何やらスバルが妙に落ち着かない様子だけど、どうかしたのかしら?そわそわだなんて、口で言ってるくらいテンパってる様に見えるけど…

 

「どうしたのスバル」

 

あたしが聞くと、スバルは目を高速で右へ左へ泳がせていた

 

「あわわ…だってここ、あのなのはさんが居るんだよ!?ずっと憧れに、目標にしていた人が居るんだよ!?そんなお方に会うだけでも凄い事なのに、これから一緒に仕事するなんて…」

 

そう言って、スバルは顔を真っ赤にして、頭から煙を上げていた

 

四年前、スバルは空港火災の被害に合い、その窮地を救ってくれたのが、高町なのは一等空尉なのだとか。以来スバルは、高町一等空尉の様な力を身に付け、彼女の様に人々を救いたいと努力を重ねている。そして、重ねた分だけ、スバルは成長していった。純粋な魔力量なら、私なんかよりずっと上と言えるほどに。

 

「大丈夫よ、スバル。あんたはどこに出しても、恥ずかしくないレベルで育ってるわよ」

 

私がそう言ってやっても、スバルは尚も緊張している様子だった。この子は能力があっても、自信のなさと緊張のしやすさが玉に瑕ね

 

「さぁ行くわよ。私達の新しい職場に」

 

私はスバルを引っ張って連れて行く事にした。でないと何時まで経っても動けそうになかったから

 

 

 

 

隊舎の中に入り、受付を済ませると、食堂らしき場所へと案内される。そこには既に何人かの、恐らく私達の同僚になるであろう人達が到着していた。その中には二人の子どもの姿まである。

 

あんな子どもがこんな部隊にいるって事は、それだけ能力が高いと言う事だろう。それに、あの赤髪の子なんて、ミッドに居たらほぼ得る筈のない氣まで感じる。武術にも精通しているのだろう。

 

私が赤髪とピンクの髪の子どもを見ていると、その視線に気づいたのか、子ども達がこちらに振り向いて、近寄って来た。

 

「おはようございます!本日付けで機動六課に配属されたエリオ・モンディアル三等陸士であります!」

 

「同じく!キャロ・ル・ルシエ三等陸士であります!よろしくお願いします!」

 

二人はビシッと敬礼して挨拶をした。なんて礼儀正しいお子様なのかしら

 

「あたしはスバル・ナカジマ二等陸士だよ!よろしくね、エリオ!キャロ!」

 

「ティアナ・ランスター二等陸士よ。フォワード所属になるわ」

 

そう言うと、二人はパァッと目を輝かせた

 

「本当ですか?実は僕達もフォワード所属になるんですよ」

 

この子達が?フォワード部隊と言えば、戦闘において前線に真っ先に立たなければいけない存在だ。そんな、恐らく一番危険な部隊にこんな子ども達を置くなんて、この子達の能力はよっぽどなのね。

 

「うわぁ!ますますよろしくだね!」

 

「はい!一緒に世にはびこる悪党共を恐怖のどん底に落としてやりましょう!」

 

わぉ、キャロちゃん過激。とっても優しそうに見えるのに、中身は結構シビアなのかしらね

 

「これで、あたし達を含めてフォワードは四人になるのかな?」

 

私はそんなスバルの発言にため息をつかざるを得なかった。全くこの子は、本当にご飯にかまけて本当に話を聞いていなかったのね。

 

「スバル、フォワードを新人四人だけでまかなう訳ないじゃない。まだ後四人、フォワードの隊長、副隊長がいる筈よ。そのフォワード内でも二つの分隊に分けて、それぞれの隊長、副隊長と共に行動する。この前八神二佐がそう言ってたでしょ」

 

「あれ?そうだっけ?」

 

全くこいつは…

 

「スバルちゃーん?偉い人の話はしっかり聞きましょうねー?」

 

「ひゃー!痛い痛い!ティアダメ!グリグリはダメ!」

 

左腕でスバルの頭をホールドし、右拳でスバルの残念な頭をグリグリとする。スバルは涙目で暴れているが、こんな程度の抵抗、私からしたら抵抗の内に入らない

 

「おわー…ティアナさん、怖い…」

 

「あははー!まさかグリグリを現実で見られるなんて思ってなかったなー!」

 

若干引き気味のエリオと大爆笑しているキャロを見て、思わずあっと声を出してしまった。まさか人前でこんな事をしてしまうなんて…

 

「人前でこんな事を…だなんて思ってる顔してるけど、いつもしてアイタタタタタ!!??痛い痛いよ!力強めないでー!?」

 

「スバルうっさい」

 

ほんとにこの子は、いつまで経っても落ち着きがないんだから

 

 

 

 

そうこうしている内に、どんどん人が集まってきた。これだけの部隊なのに、ベテランらしき人が見当たらないくらい、若いスタッフばかりだった。せいぜい居ても中堅程度だろう。

 

下は10代から上は30代後半。それだけ若い人員で構成出来るということは、それだけ能力があるのだろう。後は、変に若いからと言って、馴れ合いの様な空気にならず、締めるところはキチンと締めれるのなら、言う事無しね。

 

「あ、フェイトさん達が来ましたね」

 

エリオが入り口の方を見て言った。そこには確かに、あの日居たハラオウン執務官と八神二佐、そして…

 

「なのはさん!」

 

スバルが栗色の髪の女性を見て、悲鳴にも似た声を上げていた。

 

あれが高町なのは一等空尉か。四年前の空港火災でスバルを救った本局エースオブエース。空戦魔導師ランクオーバーSの実力者。今は教導隊で人材育成に力を入れていると聞いているが、なるほど確かに強いわね。可愛い顔して、隙が全くない。魔導師でありながら、武術の心得もありそうね。というか、地球は化け物の宝庫なのかしら?咲希さんといい、目の前の三人のエースといい、ホントどうなっているのかしらね。

 

「わぁー!なのはさーん!なっのっはっさーーーん!!」

 

……こっちはこっちで妙にテンション高いし、ホント大丈夫なのかしら?

 

機動六課設立の挨拶が八神部隊長の口によって進められていく。とは言うものの、長々としたものではなく、機動六課の使命や部隊の目指すものを簡単に話してアッサリ終わってしまった。

 

「ほなら、最後にフォワードメンバーの発表やな!」

 

八神部隊長がそれぞれの部署のメンバーを発表していく中、最後にフォワードの発表となった。もちろん、残っているのはここにいる私達四人だ。そしてまだ発表されていない…

 

「まず、隊長は二人や。高町なのは一等空尉、そしてフェイト・テスタロッサ・ハラオウンやな」

 

「ッシャーーーーッ!!!」

 

隊長の発表と共にスバルが声を上げてガッツポーズをしていた。この子、こんなキャラだったかしら?

 

「そして副隊長にヴィータ、それにシグナムやな」

 

「なぁはやて、あたし、あいつと一緒じゃなきゃいけねーのか?」

 

見た目は子どものヴィータ副隊長が、スバルを見て若干引いていた。当然だろう。あたしも長い付き合いとは言え、このスバルには若干引いてしまう。

 

「最後に、スバル・ナカジマ二等陸士、ティアナ・ランスター二等陸士、エリオ・モンディアル三等陸士、そしてキャロ・ル・ルシエ三等陸士や。仲良うするんやで」

 

なんで教師みたいな締め方をしたのかしら?とても部隊長らしくはないわね。でも…

 

「悪くないかもしれないわね」

 

周りにいる優秀なスタッフ、その優しげな笑顔を見て、私はそう思わずにはいられなかった

 

「さぁ、ほんなら初日はまず隊舎内の見回りと健康診断やな!パッパといくでー!」

 

こうして、機動六課としての日々はスタートしたのだった。

 

 

 


 
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