No.78930

『真・恋姫†無双』「蓮華の休日」(その3)

山河さん

設定としては、魏ルート「赤壁前」となっております。

続き物です。

最後に「あとがき」を付けさせていただきました。

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2009-06-14 04:10:53 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:6979   閲覧ユーザー数:5996

沈黙が気まずい。

付き合って間もないにも関わらず千葉にあるテーマパーク(しかもクリスマスの繁雑期)に来ちゃったカップルみたいに、俺たちはただ黙々と歩いた。

さてお嬢様、次はどのアトラクションに向かうのですか?

しかし彼女は答えてくれない。

せめて名前さえわかれば桂花……いや、桂花はダメか。

俺の脳内で、「なんで私が、そんなことをあんたに教えなくちゃならないのよ」という場面が自動再生される。

ここは順当に稟か風だな。

この二人なら名前からこの娘の素性を調べてくれそうだ。

とはいえ、名前も住所も教えてくれないんだよなぁ……。

だからって途中で放り出して置いていくわけにはいかないしな。

もっとも最初から置いていくつもりはなかったのだけど。

とりあえず俺は、適当に歩きながらその娘が反応を示してくれそうな場所を探すことにした。

「ん?」

俺は袖を引かれ、振り向く。

ここは静かな住宅街だ。

家の近くにでもついたのだろうか。

だがその考えは瞬時に否定される。

人相の悪い男達が5人。俺たちを包囲するように囲んでいることに気づいた。

困ったね、これは。

しかも狙いは、俺ではなく女の子。

かといって、家の人が迎えに来たって様子でもない。

いったいこの娘は何者なんだ?

いくら今が乱世とはいえ、年頃の女の子が命を狙われるなんてただ事ではない。

幾分冷静でいられる自分に驚きながらも、俺はどうするかを考える。

華琳、及びその周辺の人たちは、冗談とは思えないような平然さで「首を刎ねる」とか言い出すからな……。

普段から命の危機に瀕していることが、ここで役に立った。

俺は冷静にここからどうやって逃げるかをを考えだす。

本当だったら男の俺がこいつらを倒してっていうのが理想なんだけど、そんなのは無理だ。

自慢じゃないが、これだけは自信を持って言える。

「こっちだ!」

だから俺は女の子の手を引いて走り出した。

街の警備隊をなめるなってんだ。

だがここで、俺の提案した都市計画があだとなった。

許昌は碁盤の目状に整備されている。

つまり道はまっすぐなのだ。

包囲を破っても、徐々にだが追い詰められつつあった。

このままではマズい!

そう思ったとき。

「隊長、これ使い!」

どこから現れたのか、真桜が《べすぱ》を渡してくれる。

ベスパというのは、『ローマの休日』に登場するアン王女も乗ったことで有名なスクーターの製品名だった。

しかしこの世界の《べすぱ》は、エンジンもなければ鉄製でもない。

何かと言えば、これまた真桜の作った木製自転車だ。

「乗って!」

二人乗り初心者が、いきなり後ろに乗るのは難しい。

だから俺は女の子を前に乗せ、《べすぱ》のペダルを力一杯こぎだした。

【あとがき】

 

オードリー・ヘプバーン演じるアン王女が、後ろをブラッドレーに支えられながらもベスパ125を操り、イタリア警察とカーチェイスを繰り広げるシーンは印象的でした。

しかし、『恋姫』の世界にはスクーターもなければ車もありません。

でも、『ローマの休日』を盛り上げる小道具と言ったら、ベスパ125は外せない。

そこで今回、真桜には頑張ってもらいました。

スクーターは無理でも、自転車ならいけるだろうって。

何せ曹魏の科学力は世界一!

カメラができて、自転車ができない道理はないはず(?)です。

 

さて、物語はいよいよ後半戦。

もはや『ローマの休日』の原型はどこにもありませんが、一刀と蓮華の休日にもう少しだけお付き合いいただければ幸いです。


 
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