No.787958

エブリデイえーゆー譚!~恋姫達とのドタバタ生活!~ 番外編・後

XXXさん

XXX「二日目の投稿キター!」
一刀「無駄にテンション高いな…」
XXX「……ちょっとした疲労でね」
一刀「休めよ!?…と言うわけで『後編:それは太陽に伸びる芽の如く』の始まり始まり」

2015-07-06 22:45:34 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1138   閲覧ユーザー数:1076

「しっかし、よく作るな。秘密基地に憧れてんのかね」

 

リトは部屋を出てエレベーターに乗っていた。

…さっきいた階は実際に実験を行う場所ではなく、研究成果を保存しておく場所。

実際には、地下に実験施設があるのだ。

複数あった扉の内の一つが地下に繋がるエレベーターだったのだが、ここまで本格的だったのは驚いた。

この施設の建設費用を費やしたのは財団Xかペンタファミリーか…。

そう考えている内に、着いたようだ。

そこに広がるのはガラス張りの培養液の入ったポットがズラリと並んでいる。

ただ中身はほとんど無く、あったとしても小さく蠢く何かがあるくらい。

 

「…趣味が悪いな」

 

呟き、資料を見た時に確認した場所へ歩く。

真っ直ぐ進み、厳重そうな扉を開けると、すぐ目の前にこれまた厳重そうな扉と、そこに立つ一人の男がいた。

おそらく見張りだろう。

 

「なっ…!?貴様…」

「はいオヤスミ」

「ガッ…!?」

 

台詞を言い終わる前にリトは顎にタイキックをし、気絶させる。

一応武器を抜き取り、男を別の部屋の隅に移動させた。

そして、男が持っていたカードキーを取り、ロックされていた扉を開ける。

 

 

「失礼しまーす」

「……え…?」

 

厚いドアの先に居たのは、まるで病院の患者が着る服を身に付けた薄い紫色の髪の少女。

リトと年も変わらないだろう…彼女は目を見開き驚いている。

 

「どったの、そんなビックリして?泥棒見たわけじゃあるまいし」

 

一応緊張を和らげるつもりで言ったのだが、彼女は理解していないのか頭に疑問符を浮かべ、警戒心を強める。

まあいいか、とリトは扉を閉め彼女の近くへと進む。

 

「…っ…」

「あー…そんな警戒しないでくんない?何もするわけでもないし」

「……貴方…だれ、ですか…」

「ん?んー…スネーク…いや、007…まあどうだっていいや」

 

リトは警戒する少女を軽く無視し、空いている椅子に座る。

そして目が行ったのは、彼女の手に持つ植木ばち。

ただ、何も植えていない様に見える…表面から見ればそうなのだが、実際は中に種が植えてあるのだ。

そしてその種は、財団の研究に使う筈だった動植物の内の一つなのだろう。

 

「それ、植木ばちか?…何か植えてんの?」

「え…あ、これは…種を…」

「種?…ちょっと待てどこに植えてんだ?」

「土の中に…」

「土の中って…それちょっと見せて…」

「い、嫌!」

 

少女は植木ばちを守るように抱く。

いきなりやって来た男に気を許す筈もない…

仕方ない、と言った顔でリトは口を開く。

 

「俺、あんまり詳しくないけどさ。花って、光浴びないと咲かないんだぞ。それに土の中って言っても、深すぎると咲かない」

「そ…そう、なんですか…?」

「そうだよ。それに、あんまりいい土とは言えないし、水だってやってないだろ?まず咲くことはあり得ない」

「そんな…」

 

少女は目を伏せ、悲しそうにする。

だいたい、ここで十分に花の世話をできるかと言うのが間違いだ。

彼女は幽閉されている身…それなのに何故そんなことができようか。

だがリトは罪悪感を覚えたのか、謝ろうとするが…扉越しに声が聞こえる。

うっかりしていた……つい、少女と話していて気がそれていたのだ。

もう数秒すれば外から誰か入ってくると判断し、リトは天井に張り付いた。

 

「おい!俺がこの部屋にいることは黙っててくれ!」

「え…はっ…はい…」

 

突然の事につい返事をしてしまう少女。

混乱しているのもあって、頷いてしまったのだ。

そして数秒後…扉が開けられ、外から何人か入ってくる。

財団の男と思われる者とマフィア数人、それに前に写真で見た男…ペンタファミリーのボス、ジクロロだ。

 

「まったく…ここの見張りはどうなっているのかね?」

「申し訳ありません、ドン・ジクロロ。今見張りは休憩中でして」

 

休憩中とは嘘だ。

何故なら見張りは別室で気絶しているのだから。

だがそれを確認しているほど余裕はない。

表面上はジクロロの機嫌を損ねないようにしているのもあるが、何より支援を打ち切られる事をされてはならない。

それに、目の前のモノが気に入らなければまたくだらない作業を繰り返してしまう事を避けているのだ。

 

「どうだっていい。それよりも……」

 

財団の男に文句を言ったのも束の間、ジクロロは少女を見てゲスな笑いをする。

そして舐めるように少女を見る…手足、胴体、そして顔と順にだ。

一方の彼女は気色悪いと言う顔をしている。

 

「ワシの理想通りの容姿だ…さっきの事は多目に見てやろう」

「ありがとうございます。では、これからも実験の支援を…」

「かまわん。それよりも…」

 

早く話を切り上げると、ジクロロは少女に近づく。

少女は怯えた表情で一歩ずつ下がり、逆にジクロロは一歩ずつ近づいた。

それの繰り返し…少女はとうとう壁に退路を絶たれ、ジクロロに捕まってしまう。

両手を痛いくらいに捕まれ、汚い顔を近づけられた少女は逃れようとしていた。

 

「痛っ…!や、止めてください!」

「止めてくださいだとぉ?ご主人様に向かって生意気だな。躾が少々必要のようだ」

「ご…ご主人様……?」

「そう、何せお前はワシの…」

 

コツン、と自分の頭の上に何かが当たった。

当たった物は地面に落ちる…これは何かの欠片か?

そう思ったジクロロは落ちた場所と思われる天井を見上げる。

そしてそこには、

 

 

「(^ω^)ノやぁ。ス〇イダーマンだよ」

 

 

天井を単純な握力でつかんでいたリトがいた。

ただ、笑顔なのだが…全然目が笑っていない。

たぶん怒ってるのだろう…天井が少しひび割れている。

そう、さっきの欠片は割れた天井の一部なのだ。

 

「なん…ぶへぇ!?」

「「「ドン!?」」」

 

リトは天井からジクロロの顔面を足場にし、下に降りる。

それと同時に足払いし、ジクロロを転ばせ少女を解放した。

マフィア達は銃を取り出すが、その前にリトはうつ伏せに倒れているジクロロの背中を踏み、マフィアとジクロロの両方に銃を突きつける。

 

「撃ってみろよ、殺せるものならな。ま、それよりも先に俺がコイツを撃つけど」

「「「う…」」」

「な、何してる!?さっさとワシを助けグエエェェェ!!?」

「黙っとけよおっさん」

 

足に力を入れ、わめいているジクロロを黙らせるリト。

マフィア達は焦っているが、財団の男は意外と冷静だった。

そしてそのまま口を開く。

 

「…君は何者でしょうか?」

「さあな。ピーチ姫を助けにきたマリオかもよ?いや、色的にルイージか?」

「先程ス〇イダーマンと言っていましたが?…真面目に答えて頂きたい」

「あえて言えば、政府のパシりかな」

 

間違ってはいないはずだ。

何せ、今回と同じように政府のお偉いさん方から色々と依頼されてるのだから。

ふざけた態度に少し財団の男は苛つくが、続けて会話を続ける。

 

「ここに何の用で?」

「この状況で言うと思うか?」

「そうですか…我々としてはお引き取り願いたいのですが」

「あっそ。じゃあ、お土産もらってからでいいか?例えば………そこの娘と研究資料とか?」

「どちらも聞けない願いですね。資料は我々にとって重要なもの。それにそこのモノはドン・ジクロロの大事な贈り物なのでして」

「贈り物…ね」

 

横目で少女を見る。

混乱しているのか、リトとジクロロ、それにマフィア達を一心不乱に見ていた。

リトはそんな彼女に声をかける。

 

「なぁ。お前はどう思う?」

「ど、どうって…」

「このおっさんの贈り物だって言われてどう思う?嬉しいか、楽しいか?そんなわけないと思うけど」

「……………」

「な、何を言う!?その子はワシのグエエエエエ!?」

「何も言わないのはYesなんだな。じゃあ…」

 

またジクロロを黙らせ、リトは植木ばちを見る。

そこにあっても変化がない…何も咲かないそれを見る。

 

「それ…咲かせたいか?」

「っ…!」

「咲かせたく、ないのか?」

「それは……」

「お前の判断で決まるんだぜ。さぁ、どうする?」

 

茶目っ気たっぷりな笑みを浮かべ、リトは質問をする。

それと同時に、少女は植木ばちを見た。

――――私は植木ばちと自分を重ねていた。

――――変化の無い種を、変化の無い自分の周りを…自分自身を。

――――だったら、私は…

 

「咲かせ…たいです…」

「…………」

「だから、だから私を…」

「…オッケー」

 

決断した…そう思った瞬間、リトは引き金を引いた。

引いたのはジクロロに向けた方…銃弾は頭部すれすれで床に当たっている。

全員その事に動揺し、目が行った…それだけで十分だった。

リトはジクロロをマフィア達に向かって蹴り、少女を所謂お姫様抱っこで抱き上げる。

ジクロロが当たり、倒れたマフィア達を踏みながらリトと少女は部屋を出た。

 

「な、何をしているッ!?アイツを追え!殺せぇぇ!!アレをさっさと取り返してこい!!」

 

後ろからジクロロの叫びが聞こえてくる。

が、ジクロロ自身が部下の上に乗っているのですぐには無理だろう。

その間にリトはエレベーターに乗り込む。

そして通信機を取りだし早口で何か言うと、すぐに電源を切ってしまった。

 

 

「うぉおおおおおおお!?」

「きゃあああああああ!?」

 

研究所を出た後、リトと少女は叫びながらアジトの上の階に向かって走っていた。

何故か…それはあらゆる所から銃弾が襲ってくるから。

衣服すれすれに飛んでくる程の弾丸の数が多く、避けるので手一杯な程だ。

そう言えば、ここはセキュリティ高いんだった、とリトは後悔する。

そんな中、リトは近くの部屋に彼女と一緒に入った。

 

「ここに来れば…後は待つだけか」

「あ、あの…」

「ん?どうし…あ」

 

少女を見て今さらながら気づく。

さっきの銃弾の嵐の中、少女の着ていた服はボロボロになっていた。

大事な所を隠すだけで精一杯で、後はすでに露出している。

リトはすぐにそっぽを向いて、上着を差し出す。

 

「あー…悪い。これ着て」

「すみません…」

 

真っ赤になる少女を背に、リトは周りを見渡す。

そう言えばここはどこだろう…見てみると、そこは広い…まるで会議室のような所。

だが違うのは、ベットやクローゼットがあることだ。

だとすればここはジクロロの部屋なのだろう。

 

 

「…きゃあ!?」

「っ!?」

 

突然の銃声、そして少女の悲鳴…振り返ると、さっきまで少女が持っていた植木ばちが割れていた。

いつ来たのか…銃を構えたジクロロと大勢の部下がやったのだ。

リトはジクロロの血走った目を見て怯えた少女の前に出て、守るように立ち塞がった。

 

「ゼェ…ゼェ…ここにいたのか…!」

「おいおい。息上がってるぜ。ダイエットしろよ、おっさん」

「黙れ!その娘を返してもらうぞ!」

「……返せ?この娘はモノじゃ無いんだぞ?」

「ワシのモノだ!その娘はワシの為に作られたんだからなぁ!!」

「…自分の、オモチャにするためにか?」

「…え……」

 

リトの発言に驚く少女。

オモチャ…それは自分の事を指しているのだろうか。

それを確認しながらも、リトは口を動かした。

 

「あそこにあった研究レポートにあんたの事書いてあったぜ。自分の気に入った女の体の一部を保管してた…キチガイだってな」

 

そう、レポートには続きが…いや、この少女の事が書かれてあった。

 

 

“ジクロロの出した条件は我々の研究を使い、自分だけの女郎を造ることだった。今までジクロロが拐ってきたと言う女達は体の一部分は気に入ったが、それ以外が気に食わず殺していたらしい。しかもその死体は破棄せず、一部分だけ冷凍保存しているようだ。奴は我々にそれらの細胞を使い、新たな人間を産み出せと言ってきた”

 

 

「この子は財団Xが、あんたが造らせた87番目の人造生命体の個体…D-087。そうなんだろ?」

「…クク。ハッハッハ!!その通りだ小僧。ソイツはワシが奴等に作らせた…言わば、ゾンビだ!ワシのために働き、ワシのために奉仕し続けるワシ専用の女郎なのだよ!」

「……悪趣味だな」

「どうとでも言え!そこのゾンビはワシのモノだ!!…いや、ワシの為に生きるだけの人形!それ以外になんの価値もない、ワシに使われてこそ幸福なのだ!」

 

本当に胸糞悪い、とリトは心の中で悪態をつく。

一方の少女はというと、顔から血の気が引いていた。

ジクロロがとっておいた誘拐した少女達の死体…その一部を繋ぎ合わせて造ったのが自分。

その事を知ると、少女は顔を手で覆いへたりこんでしまった。

 

「そんな…私は、…わた、し…」

「…財団に支援したのは超進化生命体…ミュータミットを完成させ、ファミリーの戦力にするため。もっとも、研究の事は最初から知らされてなかったらしいから、戦力が増えるとだけ言われたんだろ?」

「だからどうした。結果ワシらは戦力を手に入れる!!どのファミリーも!!ボンゴレさえも出し抜き、ワシがマフィアの頂点に…!!」

「無理だね」

 

言ったのは早かった。

ジクロロがいい終える前にリトは否定する。

ジクロロは散々こけにされたのか、額に血管を浮き上がらせ怒りを露にした。

 

「一つ。金を使って…ましてやどこの誰とも知れない奴等の研究を頼って力を手に入れようとした」

「何を…!!」

「二つ。多くの命を…しかも女の子達の命を奪ったこと。……あの首輪見れば、無理矢理繋がれてたんだろうな」

 

淡々と言葉を発するリトにジクロロ達は少し怖じ気づく。

単純に怒っているのだ…その怒気にやられたのだろう。

少女もその雰囲気を感じ取っていたようで…三番目の理由に顔を上げた。

 

「三つ。この子を泣かせた」

「…っ!!」

「最後に…あんたはここに来る間にアジトの中のマフィア全員をここに連れてきた事だ」

「それが何だと…!!」

「―――玄関空きっぱなしだと泥棒が入んだぜ、バーカ」

 

 

その時、部屋の外から…いや、このアジト全体を照明か何かで照らされる。

その正体は…武装した特殊部隊。

…既にリトは外の連中に連絡を取っていたのだ。

自分が引き付けるから、その間にアジトを囲え、と。

そして次々と建物の中に入ってくる部隊。

 

「人数的にあんたらの五倍はいるぞ?」

「ぐ…ぐぐ…!」

「俺らを人質に…とか考えてるんだろ?残念、お前らに捕まるほど弱く無いんでね」

 

べー、と小バカにしたような態度をするリト。

その間にも、兵隊達は屋敷に侵入し、数分するうちにここに来るだろう。

すると、ジクロロの後ろにいたマフィア達は一斉に逃げ始めた。

 

「お、お前ら!?」

「人望も無いと。どうせアイツら、金で雇ったかなんかだろ」

「く…糞!糞!糞ぉおおおお!!あと少しでワシはマフィアの頂点に…ワシの最高の人形を手に入れたのにぃいいいい!!!」

 

ジクロロは狂ったように叫び、再び銃を構える。

が、その前にリトは自分の銃でそれを弾く。

そして残りの銃を両手で持ち、全ての弾をジクロロに向けて撃った。

だがそれはジクロロには当たらず、近くにあった高そうな坪、鎧、肖像画etcに当たり…ジクロロはそれの下敷きになる。

 

「グゲェ!!こ…この…」

「悪いけど大人しく捕まってくれや。あんたの作り上げてきたもの台無しにするけど」

「ぬ…盗人…が、…」

「誰がルパンだ」

「げぶっ!?う…」

 

リトのおかしなツッコミ…と言う名の蹴りでジクロロは意識を閉ざす。

ここにいても特殊部隊達が来てややこしくなるだけだ。

そう思い、部屋から少女を連れ出そうとしたが、…本人は座ったままで動かない。

 

「どうした?どこか怪我したのか?」

「私…私は、化け物…なんですね…。本当は、ここに存在しない、作られた命…」

「……」

「私は、他の人の…体でできていて…これは私じゃなくて…」

「……」

「…“私”、って…何なんですか…?こんなに、苦しいなら…私は、生まれて来なければよかった…」

「じゃあ死ぬか?」

 

え、と顔をあげると眉間には銃口が当てられていた。

…そこからは単純だった。

少女は突然起き上がり、近くの机へと一目散に走る。

その顔には恐怖の色が濃く表れており、少女は机に隠れ、机の上のものを投げつけた。

 

「い、嫌!いやぁぁぁぁ!!!」

「あだっ!いだ…!万年筆刺さった…!」

「来ないで、!来ないでぇぇぇ!!」

「…何でだ?死にたいんじゃなかったのか?」

「違っ…!わた、私…私は、死にたくなんか…」

「無いんだろ?」

「ぁ…」

 

無意識だったのだろう。

“死にたい”と言うリトの言葉を否定していた。

その事に気付き、騒いでいた少女は大人しくなる。

やっぱりな、とリトはそれに少し笑うと、既に弾切れ(・・・・・)の銃を捨て、机のすぐ近くの大窓へ近づく。

 

「確かにさ、死にたいって気持ちはあるんだろうよ。そりゃあ、他の誰かのパーツで作られたんだからな」

「……」

「でも、それはまだここにいるからだ。“D-087”のままだから…お前はまだ始まって無いんだ」

 

そう言ってリトは少女にあるものを手渡す。

それは種…さっきまで植木ばちの中にあった種だ。

 

「これ…」

「それと同じ。何もしてないから変わってないんだ。そうだろ?」

「じゃあ…私は、何をすればいいんですか?」

「…生きろ。ただそれだけは言っておく。今を生きてるのに死のうとするのは、死んでる奴への冒涜でしかないからな」

「でも…」

「辛くても、悲しくても、どうにもならないくらい困難にあっても、生きる事を諦めんな」

「…………」

「これから何があるか分からない。不安で仕方ない。ネガティブなのは付き物さ、誰でもそう。でも、そんな困難を乗り越えて人は成長するんだ。その種だって同じさ」

 

前の自分がそうだったように、救えなかった命に囚われるより、前を向いて進むと決めた自分のように変われるはずだ。

リトは近くの椅子を使い、窓を壊す。

少女は一瞬目を塞ぐが、すぐに開けた。

 

「種が成長するとどうなる?芽が出て、伸びて蕾ができて…」

 

窓から光が差す…少女が初めて見る日の出は、自分達を照らす。

 

「最後に、綺麗な花が咲く。自分が何なのかなんて、途中で見つけろ。最後に花が咲いた時までには、きっと見つかる」

 

 

「……さあ、お前はどうする?」

 

太陽を背に、リトは手を差し出す。

少女は少しだけその光景にドキリとしたが、ゆっくり手を掴んだ。

暖かい…人の温もりを感じる。

リトは捕まれた腕を見て、笑う。

それと同時に、

太陽は、少女を祝福した。

 

 

あのあと、ジクロロとその部下達は全員捕まった。

ただ、財団Xのメンバーは既に撤収しており、研究所内も手がかりとなるものは全くなかった。

それと、D-087と呼ばれていた少女は無事に保護される事に。

一応リトは実験で生まれた彼女が誰かに変な事をされないように某究極の闇並のオーラで脅していた。

まあ、一応今後の生活は保証されるだろう。

 

「じゃあ行ってくるわ」

「気ぃ付けろよ」

「リト、次はどこに行くの?」

「行き当たりばったり」

「「「またかよ!」」」

 

この事件はこれでお仕舞い。

だがリトはまだ旅を続ける。

彼がこの世界で落ち着くのは、そう遠くはない…。

 

 

 

 

 

――――私は存在してはいけない存在だ…そう思っていました。

――――だけどあの人は…そんな私に生きろと言ってくれました。

――――こんな私に、こんな…出会って間もない私に…

 

「で、名前の候補は考えてくれたかな?」

「はい。もう決まっています」

 

名前が無いのも不便だろう…政府から戸籍を作るために、名前の候補を考えるように言われていた。

正直、それを言われる前から少女は決めていたのだ。

 

「私の名前は…」

 

あの人が言っていた…種が成長し、花開く綺麗な花のように……美しい花のようにありたい。

どんな困難があっても、決して枯れることのない花のように。

あの人に認められるような、そんな存在になりたい。

あの人に…“自分”を見てもらいたい。

 

「――――美花、です」

 

彼女…美花は一歩前へ進んだ。

殻を破り、光差す所へ。

そんな彼女の手に持つ植木ばちからは…ほんの少し、芽が出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

XXX「作者と!」

一刀「一刀の!」

X一「「ちょこっと!後書きコーナー!」」

 

一刀「とりあえず、美花の製造番号?のDってなんなんだ?」

XXX「087は?」

一刀「どうせ087(お花)って感じなんだろ?」

XXX「……ちょっとワンピース読んでてさ」

一刀「美花を神の天敵にするつもりか!?」

 

一刀「ペンタファミリーにジクロロって…」

XXX「高校の化学の教科書みて思い付いた。どのみち建物の中に研究所あるし、バイオ的な名前にしたくてね」

一刀「と言うよりなんでミュータミット?仮面ライダーの話なんて日常じゃしないだろ」

XXX「それはまだ、秘密ってことで。ちなみに次回は…三話構成の内の一つってことで」

一刀「嫌な予感しかしない…」

 

再見Ο△Οノシ


 
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