(アフス城内・開発武器試験場・バトルアリーナ)
ソニカとシユが負傷退場になってしまったが、勝敗はシユの勝ちとなってしまったので、テル側は初戦で黒星を付けられてしまったのだった。
テル「うむ…初戦で黒星は考えてなかったな…想定外だ…」
アペンド「シユの潜在能力を安く見積もった結果か…。ソニカ、無事だといいが…」
レン「二人とも! それもそうだけど、次、僕の番なんですよ! あんな化け物連中、どうやって戦えば良いんですか!!」
テル「あれ? 君の職業は『勇者』ではなかったか? 自国防衛のため、化け物との戦いには慣れていると思ったが?」
レン「『人間がベースではないモンスター』相手なら慣れてます! でも、“強化された人間”なんて、相手したことないです! しかも相手のローラっておねーさん、巨大なローラー持ってますし…」
テル「…君にも“策”が必要か。しかし私の“策”はソニカでうち破られているぞ? それでもいるか?」
レン「当たり前です! アフスとかフォーリナーとかの事を良く知っている貴方の策なんだから、さっきのは“まぐれで失敗”って考えます。あのローラっておねーさんをうち破る策、なんかないんですか?」
テルはしばらく考えた後、頭の上に、“幻影の電球”、を灯した後、レンに耳打ちしたのだった。
テル「まず、あのローラは、見た目通り、とにかく“怪力”だ。あの“ローラー”で圧殺された試験体は数知れない、と聞いている。正直、武器同士での鍔迫り合いの様なシチュエーションは考えない方がいい。明らかにこっちが圧倒されてペシャンコだ」
レン「ちょっ! それじゃどうすれば!」
テル「弱点は2つ。まず1つ目は“スピードが速い相手に弱い”事。巨大ローラーを持っているんだ、迅速な立ち回りが出来ない。君の俊敏さを利用して、あのローラーの圧殺の攻撃有効範囲外で撹乱し、隙を付いてチクチクとそのブロードソードで、『ローラ本体』に攻撃を加え、ヘタって来た所で、振りかぶる程の強烈な一撃を本体に浴びせる戦法がいいだろう」
レン「そうですか! 迅速な攻撃なら自信あります!・・・・あれ? そういえば弱点って、もう1つあるんですか?」
テル「あ、それは、その・・・・・・・・・・彼女は“ショタっ子“に弱い」
レン「・・・・は?」
アペンド「要するに、レンみたいな“可愛い男の子”に弱いって事だ」
レン「え!? え!?」
テル「相手が攻撃してくるような時は、君が“可愛いしぐさ”をすると、おそらく彼女は攻撃できないはずだ」
レン「か・・・可愛いしぐさですか!?」
アペンド「例えば・・・きゅるんとした目つきで『え、お姉さん、ボクを攻撃するのぉ?』とか可愛く迫ればイチコロ、そんな感じだ」
あまりの意外な展開に、レンは真っ赤になって、もう言い返す言葉が無くなってしまったのだった。
テル「・・・気持ちは察するが、戦いは“勝てば官軍”。君の“個性”で勝ちを引き寄せられるかも知れないのだ。我慢してくれ」
レン「・・・はい。あくまで“本心でなく作戦のため”と思って、頑張ります」
アペンド「頑張ってくれ」
一方、ミキ側のミーティングでは、ローラが半分暴走していたのだった。
ローラ「ああ、もう、早くあのコと戦わせてよ!」
ミキ「ローラ、お前のその“悪い癖”、気を付けろよ? おそらくテルは戦闘性能以外の“ソレ”も知っているはずだ。有名だからな」
ローラ「知られていよーが、カンケーないわ! 圧倒して勝って、あのコは私のモノよ!」
ミキ「アル様とかも、そのクセでむしろ勝利できると信じて、このカードを組んだのだろうが、本当に大丈夫かな・・・・」
(バトルアリーナ・闘技エリア)
双方の軽いミーティングの後、レンはやはり“色々な意味で怖い”のか、少々慎重になりながら、ローラは鼻息を荒くして、先に巨大ローラーが付いている巨大な杖(以下、巨大ローラー)をブン回しながら、両選手ともに、闘技エリアに降りてきたのだった。
レン「(このヒト、本当に大丈夫なのかなぁ…)」
ローラ(間近で見ると、もっと可愛い! さぁ、楽しませて貰うわよ!)
そして、刻は動き出した!
カーン!
ユキが先ほどの試合で青ざめた闘技場に活気をもたらそうと、勢い良くゴングを鳴らした。
レン「さて、まずは様子m」
ローラ「レンきゅーーーーーーーーーーん!!!!!」
ドドドドドドドド!!!!!
それはレンにとっては“恐怖”以外の何者でもなかった。ショタ感情を120%開放したローラは、巨大ローラーをブン回しながら、レンに突撃していったのだった!
レン「う、うわぁぁぁぁああああ、怖いよぉ!!!!!」
ローラ「その声もたまらない! きゅんきゅんするぅ!!!!!」
レン「うわああああああああ!!!!!」
レンはもう“本能的”に、ローラから逃げまくった。闘技場のエリア外周を、全速力で逃げまくった。そしてそれを巨大ローラー担いだローラが、目をギラギラさせて追いかけていたのだった。
これでは、“試合”、どころではなかった。
ユキ「こらぁぁああああ!!!! ローラ! 感情を抑えて、ちゃんと試合せんか!」
アル「あああ・・・・・このカードだけは“賭け”だったが、裏目に出たか・・・・・」
ミキ「あっっっっちゃーーーーー、やっぱり、やっちまったか・・・・」
リン「レン逃げて! 全力で逃げて!」
アペンド「レン、不憫な・・・・・」
学歩「拙者には、よくわからんシチュエーションでござる…」
テル(・・・・これは良い展開かもしれん。これが続けば、ローラの試合放棄でレンの勝ち、最低でも引き分けは固いな。レン、逃げられるだけ逃げろ、その先に勝利が待っているぞ)
しかしレンはあまりの恐怖に“素で可愛い少年”になってしまって、逃げながらローラに向かって、涙目で怒鳴った!
レン「うわーんっ! おねーさん、本気で怖いよぉ! もぉう、やめてよぉ!」
ピタッ
その声を聞いたローラは、急に立ち止まり真顔に戻って、レンを涙目で見つめたのだった。
レン「お・・・おねーさん???」
レンもローラのあまりに急激な変貌ぶりに驚き、立ち止まってローラを見つめ直したのだった。
ローラ「レンきゅん・・・・・怖いの・・・・私が怖いの?」
レン「そ、そりゃ怖いですよ!! “そういう感情”丸出しで追っかけられたら、誰でも! それと“レンきゅん”って呼称、やめてよ!」
ローラ「レンきゅんが・・・“私の”レンきゅんが、私を嫌っている・・・怖がっている・・・可愛い男の子が、本気で嫌がっている・・・」
レン(こ・・・・この“ヒト”、マジでヤバイ人だ・・・)
チラッ チラッ
レンはテルやアペンド達に目配せしたが、それに気づいたテルもアペンドも、冷や汗を垂らして首を振るだけだった。彼らでも想像してなかったほどの“異常者”だったらしく、万策尽きている状態だった。
レン「そ…そんな…」
ローラ「わ…私が嫌われた…可愛い男の子に嫌われた…た…た・・・・・・・・!!!!!!」
ブンッ!
ローラは“怒り”の感情を前面に出した表情に変わり、巨大ローラーを振りかざした!
ローラ「そんなの、認めない!!!!!!!!!!」
ブンッ!! ブンッ!! ズチャ!!
ローラは巨大ローラーを頭上で振り回し、最後に、あろうことか“レン”に向かって、ローラーの先を突きつけたのだった!
ローラ「嫌がるなら、嫌うなら、怖がるなら、『力ずく』でも、私のモノにする!!!!!」
レン「うわっ!!! 本気でヤバい!!! もうこんなの戦いじゃないよ!!! ユキさん! これはノーゲームだ! 引き分けで良いから試合を中止してよ!」
しかし、ユキのいる場所からは、ゴングの音は鳴らなかった。その代わり、ユキの説明の声が流れてきた。
ユキ「追いかけ回している時はどうかと思ったが、今になってようやく“戦闘”らしくなった。レン君、君もローラに“色々な意味で攻撃”されたくなかったら、戦ったらどうだ?」
レン「くっ! こんな相手と戦闘かよ!」
ローラ「レンきゅん、ぜっっっっったい、私のモノにしてみせる!」
レン「やなこった! こうなったら全力で“戦って”やる!」
ジャキッ! カチャ!
ユキの言うとおり、ようやっと“お互い”に武器を構えて戦闘態勢に入る事が出来たのだった。
レン「もう、撹乱とか牽制とか、そういう問題じゃない! とにかく攻めて攻めて攻めまくるしかない!」
バシュッ!
レンは、勿論自身の俊敏さを生かして、ローラの懐に入ると、構えていたブロードソードを思いっきり振りかぶって、ローラの腹部を斬りつけた、いや、ソードの刀身をぶつけて破砕しようとした。
ガスッ!
レン「よしっ! 会心の一撃! その“重い武器”が徒(あだ)になったな!」
ローラ「・・・・・・嬉しい・・・・・・」
レン「えっ?」
ローラ「レンきゅんが・・・私を・・・斬ってくれた・・・」
レン「そんな! ダメージは確実にあるはずなのに!」
つつーーーーーー
ローラの口元から血が流れてきた。レンの言うとおり、確実に腹部へ大ダメージを受けているのである。しかしローラは跪きもしない、目元も力を失っていない、言動も代わっていない、いや、むしろ、“喜んでいる”のだ。
ローラ「嬉しい、やっと私に接触してくれた・・・」
レン「ひぃ! まだ1回しか接触してないけど、やっぱり耐えられないよ! この人おかしいよ!」
ローラ「だから、もっと私のモノにする!」
ブンッ! ガチャンッ!
ローラは巨大ローラーを軽々と振り下ろした。ローラー部分は“レンの頭部”を直撃して、レンが頭部にはめていた“金冠”をひしゃげさせて、接合部を破壊し、2つのパーツに分解してしまい、頭部から外させてしまった!
レン「ガハッ!」
同時にレンの頭部にも相当のダメージを与えたのは言うまでもない。
ローラ「そんな怖い武器、レンきゅんには似合わない」
ブンッ! バキッ!
さらにローラはレンの左手の甲をローラーで思いっきり叩き、左手に握られていたブロードソードを叩き落とした!
レン「グワァ!」
当然、左手の骨は一部折れてしまった事になる。
ガクッ・・・
レンはあまりの痛みに耐えかねて、気絶して、その場に倒れ込んでしまった。
ローラ「さぁ、身ぐるみはいで、それからが本番よ!」
フサッ・・・・
ローラ「ん? なんだ? この白い布は?」
それは白いリボンの布・・・僧侶リンが頭に着けていたリボンだった。
リン「もう・・・・・やめて・・・・・」
そう、リンはボクシングで負けを認める時にやる“タオルを投げ入れる”のと同じ事をしたのだった。気絶して自分で負けを認める事が出来なくなったレンに代わって、リンが自分のリボンをほどいて、投げ入れたのだった。
リン「レンの・・・私たちの負けです。だから、もうやめて!!!!」
カンカンカン!!!!
さすがのユキも耐えられなくなったのか、ローラの行動がまたおかしくなったのを確認したのか、今度こそちゃんと“試合終了”のゴングを鳴らしたのだった。
ユキ「テル側が負けを認めたし、ローラ自体の行動も常軌を逸脱した。ローラ、レンから離れろ! これよりレンの救護に向かう」
ローラ「ちぇっ、これからだったのに・・・・・・」
レンの周りに、ミキ側の救護班が集まりレンを担架に乗せ、ソニカと同じ医務室に運ぼうとしていた。その時、レンの元にリボンを結い直したリンと、状態を確認するためにテルがやってきた。
リン「レン・・・・私がついていてあげる・・・・・・」
テル「ああ、こっちは大丈夫だ。君はレン、それとソニカの所にいてやってくれ」
リン「…ありがとうございます…」
しかし、ローラは平然としていた。むしろ、試合が終わってこんな状態なのに、残念がっていた。
ローラ「ちぇっ・・・・・上物だったのに・・・・」
カチャカチャカチャカチャ・・・・・・
テル側の中の一人が、体を震わせてその光景を見ていたのだった。
アペンド「・・・・・・学歩、怒りで暴走したら、お前の太刀筋が乱れる。次はお前の試合だ、気を落ち着かせろ」
学歩「・・・・・・・許さん・・・・・・・」
次は、学歩vs剣士レオン、だったのだが、どうも学歩が狙っているのは、闘技エリアの横でドカッっと座っているローラのようだったのだ。
(続く)
CAST
ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ
初音ミク(ミク):初音ミク
<クリプトン(Cripton)王国サイド>
魔導師アペンド:初音ミクAppend
僧侶リン(リン):鏡音リン
勇者レン(レン):鏡音レン
<インタネ(Interne)共和国サイド>
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>
魔導師テル:氷山キヨテル
皇帝イロハ:猫村いろは
神官ユキ:歌愛ユキ
クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki
(ミキの中身=ミリアム:Miliam)
<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>
変身兵士 ソニカ:SONiKA
皇帝アル:Big-AL
重機動兵器アン:Sweet Ann
剣士レオン:Leon
圧殺兵士ローラ:Lola
導士オリバー:Oliver
拳闘士シユ:SeeU
その他:エキストラの皆さん
***
<バトルアリーナの対戦カードまとめ>
第1回戦 : ×ソニカ vs ○拳闘士シユ
第2回戦 : ×レン vs ○圧殺兵士ローラ
第3回戦 : 学歩 vs 剣士レオン
第4回戦 : アペンド vs 重機動兵器アン
最終戦 : テル vs ミキ(ミリアム)
回復担当 : リン & 導士オリバー (非戦闘員)
約束事項での非戦闘員 ミク
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☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第8話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。
☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。
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