雪天小学校3年1組。
「へへーん!唐揚げいっただき!」
「あーっ!ちょっとそれあたしの唐揚げ…追うわよ和美ちゃん、雪歩ちゃん!」
「うんっ!」
「おうっ!!」
今日は給食が休みのためみんなでお弁当という日だったのだが、いつものように冥子がお弁当の唐揚げを盗むところから始まったのだった。
「はぁ、冥子ちゃんってどうしていつもああなんだろう…」
ステラはその様子を見てため息をついた。もっとも、ステラの唐揚げは盗まれていない。
あとでわかったのだが、冥子曰く『盗っちゃいけない相手ぐらいはわかる』とのことらしい。
「待ちなさーい!」
「やーいやーい!こっこまでおいでーだ!」
唯、和美、雪歩の3人が冥子を追いかけるが、空を飛ばれてしまっては追いつけない。
「ちょっと冥子ちゃん、盗んだものを今すぐ返してあげなさい!」
担任のマイカが冥子を諌めるが、冥子は舌を出してからかうようにこう告げた。
「おっと、その前に先生のお弁当見てみなよ。面白いことになってるからw」
「え?…あーっ!ひどい!私の唐揚げまで!!…待ちなさい冥子ちゃん!」
冥子を追い掛け回すいつものトリオにマイカも加わり、事態はさらに加速する。
「はぁ、はぁ、はぁ、あ、あたしもう走れない…」
「しっかりして和美ちゃん!ここでヘバってたら唐揚げが!」
「先生!あんたマシーナリーだろ?なんとかなんねーのかよ!?」
「ムリに決まってるじゃない…ぜぇぜぇ…普通の人間ぐらいのパワーしか…ぜぇぜぇ…出ない設計なの…」
すっかりお疲れの4人に追い討ちを掛けるかのごとく、冥子は叫ぶ。
「どうしちゃったのかな~?もう追いかけてこないってことはこのから揚げは全部あたしが食べちゃっていいんだね?じゃ、いただきまー…」
だが、そんな逃走劇も長くは続かなかった。冥子を追いかけて飛んできた女子生徒が一人。
「待ちなさい」
「ぐえっ!?」
やってきたのは天使の少女、カナエルだ。
「カナちゃん!そうか、カナちゃんって冥子ちゃんより飛ぶ速さが速いんだっけ!」
「いってぇ、何すんだよカナエル!」
「何すんだよはこっちのセリフよ冥子。おとなしく盗んだものを返しなさい!」
「へっ、返すかよバカ天使…」
と、悪態をついていた冥子だったが、次の瞬間カナエルの攻撃が始まった。
「痛い痛い痛い痛いやめてこめかみをグリグリするのやめて」
「どう?唐揚げを返してあげるって約束するならやめてあげるわよ」
「返します!あと実はこっそりカナエルの分のアジフライも盗んでました…」
「なァ~~~~んですってぇぇぇぇぇぇ!!」
「ぎゃぁぁぁぁごめんなさいごめんなさい返します返しますいだだだだだだだ」
カナエル、大激怒。空中で4の字固めが決まった!
「…あいつってすごいまっすぐだよな…」
「ホント、あたしたちも見習いたいぐらいよね和美ちゃん…」
「うん…」
「ああいうまっすぐな生徒がいてくれて、先生も嬉しいわ」
空中で展開されるプロレスを見ながら、妙に納得する4人だった。
ちなみに、みんなの唐揚げとカナエルのアジフライはその後ちゃんと戻ってきましたとさ。
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■出演
マイカ:http://www.tinami.com/view/777769
唯:http://www.tinami.com/view/742179
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