「~~~♪」
ガチャ
「一刀~~??」
「ん、ん…」
朝。
今日も新妻よろしく、華琳は一刀を起こしに来る。
すっかり習慣になってしまったこの光景はすでに冷やかしの対象にすらならなくなってしまった。
ただ、この日の朝は何かがおかしかった。
「ん、ん~~…」
「むにゃむにゃ…」
「…………え?」
いつも起こしに来る華琳だからこその疑問。
寝言が二つ…。
「な、なななな、なん、な、、、なな、、、」
「なんじゃこりゃああああああ!!!!」
「私のセリフとるんじゃないわよ!秋蘭!」
「…すいません、つい。………しかし、姉者…朝になってもいないと思ったら…」
そう、ここにいるのは、よりにも寄ってあの春蘭。
前に母親の寝台に居たときも怒りで頭がどうにかなりそうだったが、これは…
「ん、んん?…華琳…?秋蘭も…。おはよう」
「おはよう、一刀♪……じゃないわよ!なぜあなたと春蘭が一緒にねてるのよ!」
「は?春蘭?」
さて、この後確実に災難が待ち受けているであろう男はその災難の元凶を見つけるべく、自分の腰の辺りを眺める。
「むにゃ…」
「え、ええ、え?し、春蘭…?」
「これはどういうことかしら…?一刀」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴと音を立てて華琳のボルテージが上がっていく。
明らかに肉眼で捉えられる怒りの炎。
「エ、エート…カリンサン……?まずはおち、おちついて…ネ?」
「私は冷静だけど?………それよりどうして春蘭がここに居るのかしら…その辺を詳しく聞かせてほしいのだけど…?」
「い、いや、、それがその、俺にもよくわからn(チャキ…)わぁぁぁ!お前それ琳音さんのだろ!?」
「そうね…どうしてこの部屋にあるかしらね…」
「え………ま、まさか、あの人…」
「どうしたの一刀?ずいぶん顔が青いわよ?…どうしてこの絶がこの部屋にあるのか…こっちは答えは簡単よね?」
満面の笑みで質問してくる華琳。
それがうれしさではないことはたしかだろう。
怒りで表情筋をつかさどる脳回路がやられたか…。
そして、この琳音の鎌、『絶』がこの部屋にあるのは当然…琳音がおいていったのだ。
わざとか天然かは今は置いておこう。それよりも今は命が大事だ。
「か、華琳、おちつけ。俺も何がなんだか………ん?あ、そういえば」
「なによ」
「いや、昨日…」
/一刀side
昨日・真夜中。
「ん~~…」
仕事が遅くまでかかってしまったので、かなり疲れていた俺はその日は帰ってすぐ眠ってしまった。
だが、そのせいか夜中にふと目が覚めてしまい、ボーっとしていた。
ガラ
「ん?…え、春蘭?」
急に扉が開いたと思ったら、入ってきたのは以外にも俺を一番毛嫌いしているはずの少女。
「んぁ…」
「どうしたんだ?…………お、おい!」
「むにゃむにゃ…」
何かようかと聞こうとしたところで春蘭が腰へ抱きついてきた。
と、おもったらそのまま寝台へ上がりこみ、布団の中へ。
ただ、手はやはり腰へまわしたまま。
「なんなんだ…」
寝ぼけているだけか、と自分の中で結論をつけ、この状況をどうするか考える。
一緒に寝るのは…やはりまずいよな。
「ん…」
(うぉ…なんだ、こいつこんなにかわいかったか?)
「うにゃぁ~~………」
(うわぁ…頭なでてぇ~…)
手をだしたり、引っ込めたりして、自分の中の理性と闘う。
触れてしまったら、なでるだけに収まらず抱きしめてしまいそうだ。
そうして、自分との激闘を繰り広げていると…
「うにぃ…」
(わぁぁぁ!!!ほっぺをおしつけるな!それはやばいんだ!)
「ふふふ…」
ものすごく幸せそうな顔でそのやわらかいほっぺを背中に押し付けてくる。
(だめだ!だめだぞ!俺!…ここで負けたら、起きた時どうなるかわかったもんじゃない。)
恐ろしいほどの保護欲の波を全身で受け止める。
しかし、それは津波を相手にダンボールで防波堤の代わりをするようなものだ。
(あぁぁ~…無理。ごめん、俺の負けだわ)
やはり、抗えるはずも無く、あっさり陥落。
ナデナデナデナデ………。
「にゃぁ…」
ナデナデナデナデ………。
(やば…これいいなぁ…………・・・あぁ、なんか俺も眠く…)
バタッ
体をずらし、そのまま寝台へ倒れこむ。
ムギュ
(あぁ~…気持ちいい…)
………………。
……。
…。
「というわけなんd―――」
「言いたいことはそれだけ?」
「………はい」
許してもらえなかった。
「ん……んぁ?」
同刻――。
徐州・城内
早朝のさわやかな空気とは思えぬほど、鈍重とした雰囲気。
明かりは窓から差す朝日。
その朝日すら届かぬほど空気は重くなっていた。
さきほどから会話する二人の人間。
片方は女性。先日一刀達の下を訪れた袁紹の母・袁成。
もう一方は男性。この徐州を統べる者・陶謙。
「しかし…いくらこれからのためとはいえ…」
「このまま、あの女を逃がせば、確実に乱世に乗じ我らの足元が危うくなる。」
「だが、彼女は戦乱から逃れるためにと…」
「…信じろというのか。あの死神の話を」
「…………それは…もう古い話でしょう…」
「私とて、無駄に命を散らせるつもりはないがこの徐州へ来た以上、見過ごすことは出来ん。他の州牧や刺史とて、同じ考えだからこそ奴はまだ自分の地に至っていないのだろう…?」
「………。」
「…貴殿のところからも、兵を出してもらいたい。奴らは数こそ少ないが一人ひとりはなかなかに手ごわいと聞くからな
「……………」
「袁成殿、これもわが領地で生きる民のためなのだ」
「………………わかりました」
女性は振り返り、部屋から出ようと歩き出す。
その顔はこの暗い部屋ですらはっきりとわかるほど、悲痛を表していた。
「お母様、さっきの話はどういうことですの?」
尋ねたのは、金髪を巻き髪にした袁家の少女。
扉から出てきた母に対し
先ほどまで行われていた密談の意味を問いかけた。
「麗羽………あなたにはまだ関係の無いことです。」
「私とて袁家の者ですのよ?関係ないことなんてありませんわ!」
「………………関係ないことよ。」
「お母様!」
少女の問い詰めにも応じず、母は立ち去っていく。
その後ろ姿をただ見送ることしかできず少女は悔やんだ。
自分は名家の生まれ。それ故に自分には絶対の自信をもって育ってきた。
だが、今の自分は何もできない。母親に対し、話すことすらできなかった。
「………麗羽さま」
「斗詩……私はどうしたらいいのかしら…」
密談の意味。
本当は理解していた。
でも、納得いかない。
だって、あの内容は…受け入れてよいものではない。
徐州牧・陶謙…あの男は言った。
『曹巨高を…殺す』と。
曹嵩とは何回か面識もあるが、恨みを買ったりするような人ではない。むしろ女性としては見習える部分もあるくらいだ。
それを表に出すつもりは無いが、彼女を別に忌み嫌うわけでもない。
華琳ともなんども行動を共にしたこともあるし、今でこそ曹嵩があちこちへ移動しているために関わることも少なくなったが特に彼女がどうというわけでもない。
それは母とて同じ。
陶謙にいたってはかかわりすら少ないはず。
なのに何故…
曹嵩を殺す。
殺す。
その意味を頭の中で何度も繰り返す。
「斗詩」
「はい?」
「猪々子を呼んできてくれる?」
「文ちゃんですか?…わかりました~」
どうするべきなのか…
このままでは陶謙は確実に曹嵩に刺客を放つ。
まだ幼いとは言ってもその意味くらい理解している。
他の人間が自分より優れている。自分が一番なのだと思うことはあるが、だからといって他人が…ましてや知り合いの命が狙われていると知って、関係ないふりをしろと?
それこそ、私のすることではない。
母には頼れない。関係ないと言われてしまったのだから、もう話もきいてくれないだろう。
だったら…誰を頼れば…
いや、違う。
誰かを頼るなどあってはいけない。
自分が動かないといけないのだ。
…………直接、行くしかない。
私としたことが何を迷っていたのか。
「よびました~~?今ご飯たべてたとこなんですけどぉ」
「猪々子、私は誰?」
「は?…麗羽さま、ついに頭もおかしくなったんですか?」
「ぶ、文ちゃん…!(それはもともと…)」
「いいから、お答えなさい!」
「え、ええと、袁紹さま…ですよね?」
「えぇ。私は袁本初…。ならば、することは決まっていますわね!」
「??…なにかするんですか?」
麗羽は高々と指をさし、言い放った。
「雄雄しく!華麗に前進!ですわ!」
『???』
あとがき
8話でした(`・ω・´)
今回はちょと短いかな?とかおもいつつ、春蘭と麗羽にスポットを当ててみました。
他の人の小説を読んでると結構長めに書いてる方もいらっしゃるので、すごいなぁ…とか思いつつ自分は相変わらずこんな小出しですorz
しかし、自分で書いてて言うのもアレですが、子供春蘭はきっと異常なほどかわいいんだろうなと思う。
あと、麗羽ですが僕は結構好きなんですけどねぇ………(キャラとして
ヒロインとしては華琳とかがやっぱ圧倒的なんですけど、キャラとしてなら結構上位にきてるんですよね。個人的にはw
なので、これからちょいちょい麗羽にも注目しつつ、華琳の話を進めようと思ってます。
それで、ここできづいたんですが、なんで僕の考える話っていつも一刀空気っぽいんでしょうねw
ヒロイン重視しすぎかなぁ…
まぁ、そんな悩みも持ちつつ、次回9話で!
ではでは~
Tweet |
|
|
82
|
5
|
追加するフォルダを選択
絵も描きたいけど、小説も進めたいんだよなぁ…
どうしよう…
続きを表示