いぬねこ!9~相馬v猪里
【相馬】
どの子にも本気で好きになれなくて、体だけの関係で終わっていたけれど。
そんな私に天使のような子が目の前に現れた。
「・・・なら私たち付き合っちゃう?」
前から少し気になっていた子が作った甘えるような顔をして、かわいいを連呼していた
私に言ってきた。本気じゃないような雰囲気はすぐに感じられたけど
嘘でもそう誘ってくれるのなら、私は試したくなった・・・。
***
授業をサボって屋上で綺麗に晴れた空を見ていた。
暑くも寒くもないちょうどいい陽気とそよかぜが私を包み込んでいる。
複雑に絡み合うめんどくさい私の人生の中で唯一の落ち着ける時間帯だ。
バンッ!
そんな中、大きな音を立ててドアを蹴破る女子高生の姿が私の前に現れた。
少し前に私の彼女になってくれた猪里ちゃん。私は愛情の気持ちとしていのちゃんと
呼んでいる。
「こらー、相馬!またサボってからに!」
「あ、いのちゃんだ~」
私には強気に接してくれて私とは真逆にすごく真面目な性格をしているのに
律儀に私の相手をしてくれたり、連れ戻そうとしたりしてくれる。
「ほらっ、今なら授業間に合うから!」
「え~、私ここにいたいな~」
「ふざけんな、殺すぞ」
本気で怒りの表情を浮かべるいのちゃんの手に向けて自分の手を伸ばしてから
力を込めて自分の方へ引き寄せる。
いきなりのことに体勢を崩して慌てるような声をあげるいのちゃんを
私は強く引っ張って密着するような形になっていた。
「ば、ばか!」
「あはは、いのちゃんの反応かわいい~」
「危ないじゃないの!」
怒りながらも私に抱きしめられたまま拒絶しようとはしなかった。
あの日も私のキスを受け入れてくれた彼女が可愛くてたまらなかった。
今も何だかんだ言って一緒にいてくれるのが嬉しい。
私がいつもラブコールを送っても鵜呑みにしたり、普通通りに接してくれるのは
いのちゃんだけで、私にとって特別な存在になっていた。
そんな風に思えるのもつい最近で彼女といると今まであまり感じたことが
なかった感情に浸れるのが不思議だった。
「いのちゃんってほんと可愛い」
「だからね、あんたの可愛いは安すぎるのよ」
毎日呼吸をするように呟く可愛いっていう言葉。誰にでも言っているけれど
いのちゃんにだけ言う可愛いは少し違うこと気付いているのだろうか。
多分、少し鈍感ないのちゃんはわかっていないのだろうけど。
「なによ、じろじろ見て」
「ん?」
手の力を緩めて少し距離を開けて見つめる私といのちゃん。そして・・・。
チュッ・・・。
唇を重ねて誰もいない屋上でいやらしい音を耳で感じながら、時間を忘れるように
続けてた。そんな心地良い感覚と共に浮かんでくる愛おしくなる気持ち。
他の誰もくれることなかったこの気持ちをいつまでも抱き続けたいと思えた。
そう思わせてくれた彼女を信じていきたいと思った。まだ口には出さないけど・・・。
大好きだよ、いのちゃん。
お終い
Tweet |
|
|
2
|
0
|
追加するフォルダを選択
外面はあれだけど、時々無表情に見える本心っぽいのを感じたのを書いてみました。実はちょっと臆病で探り探り猪里を試しているんじゃないかなとか思ってみたり。ただの思いつきなんでアレですけどね^q^
イラスト→http://www.tinami.com/view/783736