No.783534

九番目の熾天使・外伝~マーセナリーズ・クリード~番外編 サイドアームズ

okakaさん

後編その5です

2015-06-14 08:41:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:745   閲覧ユーザー数:613

番外編【サイドアームズ】1 ~獅子と聖剣~ 後編5

 

 

 

「一番、二番主砲、三式弾装填!信管設定を対空にセット、撃てぇっ!」

 

 

Unknownの号令と共に二つの48サンチ三連装陽電子衝撃砲塔から実体弾【三式融合弾】が放たれた。照準はスレードゲルミル、先程の砲撃で損傷した一番大型で動きの遅い機体だ。

スレードゲルミルに向かって飛翔する三式弾は空中ではじけ飛び、無数の散弾となってその周囲にも襲いかかった。

 

 

『グゥォォォォォォォォォォッ!』

 

 

カレラを取り込み、より生物的な進化を遂げたのであろう。散弾の雨にスレードゲルミルが咆哮を上げた。

 

 

『グルァァァァッ!』

 

 

同じような叫びを上げながらベルゲルミルが散弾を浴びながらも背部に背負った勾玉型の武装【シックススレイブ】を放ち反撃しようとしてきた。

背部からラックが外れベルゲルミルを囲むように合体し、リング状になったパーツが高速回転を始める。速度が限界まで高まり、撃ちだされようとしたその時、いきなりリングが爆発した。

 

 

『おいおい、とんでもないことになってんじゃねーか』

 

『これ以上好き勝手させるものか!』

 

『ちょまっ!待てokaka!亜音速でロールすんな!機体が振られうぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!無理!これマジで無理!』

 

 

三者三様の声と共にマシンセルの開けた大穴からデュランダルとその主翼の付け根にぶら下がったM9、そしてエナジーウィングを広げたランスロット・レオが飛び出してきた。デュランダルがベルゲルミルの持つ【マシンナリー・ライフル】を回避するたびにM9のロキが悲鳴を上げるが聞く耳は持ってやれない。避けなきゃ当たる。簡単な理屈だ。

 

 

『むっ、お前達無事だったのか』

 

 

突如現れた3機を見たアン娘が思わず声を漏らした。それを耳ざとく拾ったディアが通信回線を開く。

 

 

『そりゃ簡単には死にません・・・ってなんでアン娘さんがいるんですか!?しかもヤマトに乗って!』

 

『話せば長くなるが・・・『3行で頼む』・・・・つまりだ』

 

『お前達がカレラを始末すると聞いて

カレラが憎い私は

団長に頼み込んで出てきた』

 

『というわけだ』

 

『OK、大体解った』

 

 

途中で割り込みをかけたokakaの通信に律儀に答えたUnknownとokakaは互いにサムズアップで互いの共通理解を認識した。

 

 

『だぁぁぁぁぁぁぁっ!!操縦桿から手ぇ離すな!ちょっ!落ちる落ちる!早くクォーターまで行ってくれって!』

 

『おっとそうだった、ディア!グロースターので悪いが左腕を換装する。一旦クォーターに戻れ。バーミリオン、パープル両小隊は桃華の指揮で戦闘を継続、敵機を近づけるな。ワイルド1よりガンサイト1、XL-3Fの準備後、予備戦力も投入する。インディゴ、イエロー小隊出撃、インディゴ小隊はクォーター、イエロー小隊はヤマトの直援に回せ。・・・支配人、そこはカタパルトのライン上だ。右に3歩ほどずれてくれ。』

 

 

ロキの必死な叫びにokakaは今やるべきことを思い出し、クォーターのブリッジ【コールサイン・ガンサイト1】に指示を出しながら進路を自艦に向けた。

 

 

『了解でーす!』

 

 

橘花の返事と共にFASTパックを装備したVF-25Aが甲板上から発艦していく。出撃した6機のメサイアはそれぞれが3機ずつの編隊を形成するとインディゴのラインがマーキングされた3機はクォーターの周囲に展開、イエローラインの3機はヤマトの周辺に展開すると、主翼パイロンに搭載された長距離空対空ミサイルを一斉に発射した。

 

 

『『グルァァァァァァァァァッ!!』』

 

 

ミサイルの接近を感知したベルゲルミルとスレードゲルミルが動いた。

凄まじい勢いで先ほどの三式弾で受けた傷を修復しつつ、4機のベルゲルミルはマシンナリー・ライフルでミサイルを迎撃、スレードゲルミルは背部のドリル型スラスター【ドリル・クラッシャー】を両腕に装備し、弾幕をかいくぐり接近するミサイルを薙ぎ払ってしまった。

バルキリーの放ったミサイルは結果的に一発も損傷を与えられていない。だが―――――――

 

 

『これで動きが止まりました』

 

 

桃花の指摘通り敵機は元の位置に釘付けになっていた。そこへすかさずルシファーの対艦ビームグレネードが撃ち込まれた。狙いはスレードゲルミルの頭部、放たれた重量子ビームは狙い通りスレードゲルミルの頭へと吸い込まれ、爆発した。

それに続くように桃花の指揮下に入った12機のメサイアから【ハワード GU-17V 58mmガンポッド】が叩き込まれた。ガトリング機構が唸りを上げ、吐き出された無数の弾丸が周囲のベルゲルミルを巻き込みながら貫いていく。弾種はMDE弾頭、被弾した箇所が時空間ごと削り取られ、抉れていく。

 

 

『『『『グガァァァァァァァァァッ!』』』』

 

 

ベルゲルミルが咆哮を放つと同時に機体が再生を始める。マシンセルによる高速修復だ。同様にスレードゲルミルも修復が進んでいく。だが、その修復痕に再びMDE弾頭が命中する、そしてまた修復されていく。破壊と再生のイタチごっこだ。有効な攻撃ではない。しかし、これはあくまで時間稼ぎ、ナンバーズが体制を立て直すまでの数分間でいい。艦に敵を近づけなければいいのだ。

 

 

『ショックカノン、撃てぇっ!』

 

『艦首バスターキャノン、発射します』

 

 

バルキリー隊のリロードする瞬間をヤマトとクォーターが稼ぐ。両艦の主砲が敵機を掠め、半身を吹き飛ばす。その再生に合わせMDE弾頭をリロード、再び動き出す前に射撃を再開、ルーチンワークが延々と続いていた。――――――――――――――

 

 

 

 

『タッチダウンだ!』

 

『ディアーリーズ、着艦しました。交換作業をお願いします!』

 

『・・・生きてるって・・・素晴らしいなぁ・・・』

 

『まぁ、なんだ、その・・・おかえり』

 

 

追い縋るビームを躱しながら3機がクォーターに着艦、そのまま甲板上に待機していた黄色の侍女服に身を包んだ整備担当の自動人形と、その補佐を担当する思考戦車【タチコマ】によりレオの左腕の交換作業が開始された。

 

 

「40mmライフルを一丁と・・・ボクサー2あるか?じゃあそいつも、弾種はAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)でいいよな?時間が惜しいから俺はパックの再装着は無し、ミサイルの補充だけでいい」

 

 

「かしこまりました」

 

 

「いや勝手に決めんなよ!ってかASで空戦なんかできねぇだろうが!」

 

 

甲板上の自動人形にハッチを開け、okakaが指示を出したところでM9のコックピットから身を乗り出してツッコミを入れてきた。AS(アーム・スレイブ)は基本的にスラスターの類を持っていない。完全な【陸戦兵器】なのだ。

 

 

「ですが現在、日蓮はラムダ・ドライバ使用に伴う高負荷により、整備のため超低温ドックの中です。再出撃可能になるまで20分を要します」

 

「じゃあ待つよ!20分!飛べないのにどうやって空中の敵と互角に戦えってんだよ!普通の戦闘機やヘリならまだしも機動兵器だぞ!?」

 

 

ロキの怒りももっともだ。これではあまりにも分が悪い。しかし、そんなロキを見て、okakaは待ってましたと言わんばかりに声を張り上げた。

 

 

「こんな事もあろうかと、こんな事もあろうかと!(大事なことなので二回言いました)しっかり対策は用意してある!」

 

「・・・やけにノリがいいな・・・で?その対策ってなんだ?まさかさっきから俺の背後で調整してるあのミサイルガン積みな上にゼーロスまで積んだ双発の緊急展開ブースターのことじゃねぇだろうな?」

 

 

ロキは半目になりながら親指で自身の背後に運ばれてくる【それ】を指さした。

 

 

「そのまさかだ、アレはメリダ島奪還作戦で使用されたXL-3にデチューンしたVF-1の熱核タービンエンジンとKMFから流用したフロート技術を組み合わせた試作フライトユニットXL-3F(Float)だ!アレを装着すればASでも空戦に対応出来る!」

 

「・・・え?マジで?」

 

「マジだ、ただ調子に乗っていろんな技術をしこたま突っ込んだせいで開発費が高騰してな。アレを含め数機しか作ってない・・・面白そうだろ?」

 

 

okakaのドヤ顔に一抹の不安を感じながらも背に腹は代えられない。ロキの選択肢は一つしかなかった。

 

 

「OK、さっさと付けてくれ」

 

「そう来なくっちゃな。作業を開始しろ」

 

 

okakaの指示で自動人形が接続準備を始める。その内の一体がロキの下まで来ると重力制御を利用して小型のデバイスを投げ渡してきた。

 

 

「ロキ様、そちらはインテリジェントデバイスを機体に接続するアタッチメントになります。コンソール脇のポートに差し込み、デバイスをセットしてください。機体AIがデバイスとリンクします」

 

「OK、解った」

 

「では、接続作業を開始しますのでハッチを閉めてください。ご武運を」

 

 

言われた通りにハッチを閉めると後部からユニットが接続される音と共に機体が少し揺れた。先程の自動人形の言葉通りコンソール脇のポートにユニットを差し込み、待機状態のデバイスをセットする。

 

 

『・・・・・・M9ガーンズバックのAIとリンク、システム正常、バディいつでもいけます』

 

「おう、やっぱお前がいると心強いよ、ユーズ」

 

『お褒めいただき光栄です。では発進準備にはいります』

 

ロキがモニターに目をやると、すでにokakaのデュランダルと支配人のSC2は出撃、カタパルト上のレオも発艦体制に入っていた。

 

 

『ロキさん、いけますか?』

 

『何とかするさ。そっちこそ無茶すんなよ?仮の左腕に武器もナイフ一本なんだからよ』

 

『KMFの武装が無いのは痛かったですね。でもハーケンもエナジーウィングもありますから。何とかしますよ』

 

『よっしゃ、その粋だ!』

 

 

ロキの言葉と共にエンジンの回転数が最高値まで上昇、リニアカタパルト上にREADYのホログラムが表示された。

 

 

『MEブースト!ランスロット・レオ!発艦!』

 

『ガーンズバック、出るぜ!』

 

 

2機はわずかにタイミングをずらし、発艦。眼前の敵へと襲いかかっていった。――――――――――――――

 

 

 

「okaka達が出たか・・・第一格納庫のハッチを開けろ。さて・・・出番だぞ?お嬢さん方?」

 

Unknownの指示でヤマト艦尾上部の三番主砲塔後部位置に位置する格納庫、その両側のスライド式ハッチが開いて中の艦載機が姿を現した。

本来ならそこは【零式52型空間艦上戦闘機 コスモゼロ】が配備されている格納庫だ。だがそこから出てきたのは3機のKMFだった。

 

 

『ありがとねアン娘さん無理言って連れてきてもらっちゃって』

 

『いやぁ~助かったよ。さすがに私達だけじゃエナジー持たないっぽいし』

 

『どうでもいいけど早くしてくんない?アキが前にいるとアタシ達出られないんだけど』

 

『まだカタパルトの方向を調整中デスネ、もう少し待ちまショウ』

 

『カタパルト準備完了、発艦を許可する!』

 

 

Unknownの号令と共に待ってましたと言わんばかりにKMFが飛び出していった。

 

 

『まずは私からね!アキ、ゼットランド・AC!発進!』

 

 

アキのコールと共に重火力KMFゼットランド・ACが

 

 

『次は私だよ!ウル、今行くからね!ついてきてよ!ブラッドフォードCJ!こなた!いきまーす!』

 

 

こなたの叫びと共に可変型KMFブラッドフォードCJが

 

 

『じゃあ、行きまショウ』

 

『やっと出番ね、カンナ&アンジェ!サザーランド・アイ・エア行くわよ!』

 

 

カンナとアンジェ、二人を載せたサザーランド・アイ・エアが想い人の下へ飛び立っていった。――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

終わんねぇ・・・次から次へと話が伸びる要素しか思い浮かばねぇ・・・

次回からようやく最終決戦開始です。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

今回登場させたオリジナル機のデータ

 

 

XL-3F空戦ユニット

 

ミスリルがメリダ島上陸作戦に使用したXL-2緊急展開ブースター2基を強引に接続して作り出したXL-3をベースにokakaが設計したAS用空戦ユニット。ロケットエンジンの代わりにデチューンしたVF-1の熱核タービンエンジンを搭載、KMFのフロート技術を転用し、ヒッグスコントロールで自重を限定的に打ち消すことに成功した。

機動力はそこそこ高く、亜音速で飛行可能な他、宇宙空間でも使用可能。

 

武装:ブラックマンバ短射程空対空ミサイル×12発(主翼下パイロンに3発ずつ)

   ゼーロス20mmガトリング式機関砲×2

 

欠点:VF-1のエンジンのせいで非常に高価

   地上戦時にはパージする必要がある。その際、使用済み機の再接続は不可能

   接続時はハッチを閉じたまま固定する必要があるので自由に降りられない

   AS自体にベイルアウト機構が無いため、空中で脱出=パラシュート無しのスカイダイビング

 

 

RZX-3F7/CJ ブラッドフォードCJ(CARTRIDGE&JET)

 

ナイトオブラウンズ専用機の一つである「トリスタン」の試作機である可変型KMF。開発はヴァインベルグ家に仕える技術系貴族のシュタイナー家が行っていた。機体カラーリングはトリスタン同様の白・青系統

武装もトリスタンの武装の原型となる武装が搭載されているが、専用武器であるデュアルアームズは、KMF時はタングステン鋼ブレード、フォートレス時はリニアレールガンとして運用する。

ランスロットタイプとの連結機構も備えており、フロート・システムとしてバックパックに連結することで、空戦能力付加と火力向上を両立させた【エアキャヴァルリー形態】になる

反皇帝派ブリタニア人テロ組織【タレイランの翼】の決起の責を取り解体された、シュタイナーコンツェルンのナイト・オブ・シックスの専用機専属開発組織への再編時のどさくさに紛れ流出したデータを用いてokakaが自分用に建造していた。

その際、メギドハーケン後方に小型のリロード可能なエナジーカートリッジを追加、本体からの電力供給を軽減し、継戦能力を向上させた他、バルキリーのデータを流用してプラズマジェットモーターの高出力化にも成功した。

対カレラ戦においてこなたにより無断で拝借され運用される。

 

スペック

全高:5.34m

全備重量:7.74t

動力源 :ユグドラシル・ドライブ

推進機関:ランドスピナー

武装:専用デュアルアームズ×2

   メギドハーケン×2

   ハドロンスピアー

特殊装備:ブレイズ・ルミナス

乗員人数:1人

 

RZX-6DD/AC ゼットランドAC(AIR&CARTRIDGE)

 

ナイトオブラウンズ専用機の一つである「モルドレッド」の試作機である重砲撃型KMF。

強固な装甲と大火力をもっての拠点防衛を目的に開発され、モルドレッドのメイン武装である「シュタルクハドロン砲」の元になった「メガ・ハドロンランチャー」を装備しているのが最大の特徴。また、ランスロットでの運用により実戦での有用性が証明されたブレイズ・ルミナスの広範囲型発生器も両肩部に装備している。

ランスロットタイプとの連結機構も備えており、二機のユグドラシル・ドライブのエネルギーを利用して重アヴァロン級を一撃で撃沈可能な【チャリオット形態】になる。

ゼロ・レクイエム時の軍の大幅再編の際、ブリタニア皇立KMF技研から掠め取ったデータを元にokakaが建造していた。

ブラッドフォードCJと同じくカートリッジシステムを搭載し、継戦能力を維持したままメガ・ハドロンランチャーを連射可能な他、フロートシステムを内蔵された。

対カレラ戦においてアキにより無断で拝借され運用される。

 

スペック

全高:4.80m

全備重量:11.19t

動力源 :ユグドラシル・ドライブ

推進機関:ランドスピナー

武装:ブレイズ・ルミナス発生器

   オールレンジ・ボマー

   メガ・ハドロンランチャー

乗員人数:1人

 

 

RZX-13/ESC/Aサザーランド・アイ・エア

サザーランドに索敵・指揮能力向上を目的とした電子戦装備と試作武器を追加し改修した実験機。

ファクトスフィアに準ドルイド【ウァテスシステム】を接続することで、戦場を詳細に把握することができる。また、将来的な量産を目的としたヴァリスとシュロッター鋼ナイフを装備しているが、本体のエナジーフィラーだけではヴァリスのエネルギーを賄えないため、左腕にユグドラシルドライブを外付けしている。

ゼットランドと同じくゼロ・レクイエム時の軍の大幅再編の際、ブリタニア皇立KMF技研から掠め取ったデータを元にokakaが建造していた。

本来はウァテスシステムを自動人形の電脳に接続して使用する予定であったため、管制官と操縦者の複座型に改修され、フロートシステムを搭載されている他、元になったサザーランドより、エネルギー効率を70%向上させている。

対カレラ戦においてカンナ、アンジェ両名により無断で拝借され運用される。

スペック

全高:4.41m

全備重量:7.99t

動力源 :ユグドラシルドライブ

推進機関:ランドスピナー

武装:スラッシュハーケン×2

   ケイオス爆雷

   試作型ヴァリス×1

   シュロッター鋼ナイフ×1

乗員人数:2人

 

 

 

備考:KMF3機はヴィンセント・グラム、アマネセールの改造機を中心とした編成を行う予定であったが、上記の理由により試験機を喪失したため、計画を変更して再編される予定

 


 
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