天空市内某所。
「しっかし、何もないと退屈なモンすね警部~」
パトカーの中であくびをしているのは、風天警察署捜査一課の九重将矢。
「そうぼやくなって。平和って言うのはそんなもんだ。何もないのが一番だよ」
と、ドライバーシートの九重久遠。彼女は将矢の妻にして上司である。
「でもヒマでしょうがないっすよぉ」
「ほら、寝ようとすんじゃない!巡回だって重要な任務なんだぞ!」
「へぇーい」
そんな感じで車内で夫婦漫才が続いていた、そのときだった。
『風天署所轄各車に通達!中央通で車輌と路面電車との接触が発生。付近の車輌は急行されたし』
「なんだって!?こんなときに…将矢、サイレン鳴らせ!」
「了解!」
クオンの駆るパトカー…スバル・インプレッサWRXがサイレンを鳴らし現場に急行する!
さて、事故現場。
「あぁぁぁぁぁ、どうしようどうしよう~…」
事故に遭って立ち往生した2310形2312号の目の前で頭を抱えているのは、運転士の油木佑。
そこに、クオンたちの乗ったインプレッサWRXが到着する。
「一体どうしたんです!?」
「じ、実はですね…側面から当て逃げされまして…」
見ると、2312号の特徴であるヨーロピアンスタイルの前頭部分は外板がへこみ、窓ガラスも一部割れていた。
が、運転していた佑はとっさに身体を翻したため無事、また電車も回送だったため乗客の被害はなかったようだ。
「なるほど、詳しく聞かせてもらえねえッスか」
「はい、あそこの信号機がありますよね。私が運転してたときにはちょうど黄色の矢印がついていたんです」
「黄色の矢印…?って何スか警部?」
「おいおい…おまえも警官なら、っていうか天空市民なら知っとけよ。黄色い矢印は『路面電車のみ進行可』の意味だ」
「で、その信号どおりに電車を進めていたんです。そしたら横から」
「あてられたってワケか…」
と、実況見分を進めていたクオンと将矢。だが、将矢の目にある一台の車が映った…。
「あのパトカー…たしかウチの署の。応援に来たんすかね」
「いや待て?…回転灯がついていないぞ…それになんだ?あのパトカーの後ろから破片のようなものが散らばって…まさか!?」
何かを察したクオンは、佑の方に向き直ると、一言だけ告げた。
「運転士さん、ちょっと気になることがあるので見て来ます。そこで待っててください」
クオンがパトカーのほうへ向かい歩き始める。
「…な、なんだこれは!?」
交差点の路上に停められていたパトカー…ホンダ・インサイトはフロントが破損した状態であった。
しかも、ドアガラスがハンマーで割られた形跡があり、ドライバーシートには誰もいない、無人の状態だったのである!
(衝突推定は5分前…まだそう遠くには行っていない!)
クオンは自らの特殊レーダー探知機を使い、このパトカーを運転していた人物を探し当てる!
その、事故現場から離れた位置にある路地裏…。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
その路地裏に逃げ込んでいたのは、青ネコ形セリアンスロゥピィの男性警官と、オレンジ色のやはりネコ形セリアンスロゥピィの男性警官。
「こ、これ始末書で済みますかね…」
「さ、さぁな…とにかくこのあたりに隠れてれば…」
と、ほっと一息ついたのもつかの間だった。
「なるほど…アレを運転していたのは君たちだったか」
「「けっ…警部!?」」
追い詰められた男性警官。もう逃げ場はない。
結局、この二人組みの警官は懲戒停職のうえ、信号無視と当て逃げの反則切符を切られたのであった。
また、破損した2312号電車は事故処理の終了後、すぐさま風天車庫に回送され修理されることになった。
事故処理を終え、帰途に着くインプレッサWRXの車内。
「まったく…警察がこんなことでどうするんだよ…なぁ将矢?…将矢?」
見ると、助手席ではいびきをかいて爆睡中の将矢。
「…ふぅ、しょうがないな将矢ったら…」
クオンは、ため息ひとつつきながらも、一路風天署へと戻るのであった。
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おいおい、警察が当て逃げしちゃいかんだろうww
■出演
クオン:http://www.tinami.com/view/752406
将矢:http://www.tinami.com/view/752595
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