No.78261

『真・恋姫†無双』 「世直し大将軍!?」

山河さん

一話完結です。

設定としましては、蜀ルートになっております。

よろしければお付き合いくださいませ。

2009-06-10 13:55:47 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:6364   閲覧ユーザー数:5614

「じ~んせい楽々か~いてきさ~」

麗羽の変な替え歌が響く(午後4時頃から再放送をしているようなやつ)。

そう、俺たち(元)大将軍様ご一行は、世直し旅の真っ最中だった。

嘘。

本当は、激! 帝国むねむね団(帝国はもちろん後漢帝国のこと)を解散させられ、暇を持て余した麗羽がまた何か悪さをしないようにと、新しい警邏の方法を試しているところなのだ。

「なぁ、北郷。これ、本当に効果あるのか?」

白蓮が疑わしそうな眼差しを向ける。

「たぶん、な」

なにせどこかの副将軍は、テレビドラマにもなるぐらいの人気なのだ。

効果がないわけがない。

それに、普通の警邏では麗羽がすぐに飽きてしまう。

というか、麗羽に仕事を任せること事態が間違いな気もするのだが、先のむねむね団みたいな変な組織を作られるよりは、少しでも、ほんのわずかでも、最悪0でも役に立ってもらおうと、会議で決まったのだ。

で、俺と白蓮がお目付役になった、と。

そうそう、ポジションとしては、うっかり的なのが俺で、忍者的なのが白蓮。

そして、黄色い門的なのが麗羽で、その両脇に控えるのが猪々子と斗詩、ね。

「おっ、あんなところに屋台が! なぁアニキ~、何か食ってこうぜ」

…………いや、猪々子さん。役所としては、それは俺の台詞……。

「そうですわね、こうして一刀さんがご馳走してくださると言っているのですから、それを無碍に断るなんてできませんわ」

いや、ご馳走するなんて一言も言ってないし……。

「すいません、ご主人様。麗羽様と文ちゃんが……」

斗詩はこう言ってくれたが、麗羽と猪々子はもう遠慮なしに注文している。

「あたいラーメン5人前、チャーシュウ特盛り、餃子は10人前ね!」

これで小遣い前借りコースだな……。

俺が悲しくラーメンをすすっていると、どっかで見たような三人組が屋台に入ってきた。

「おうおう、邪魔するぜ」

リーダーらしき男がそう言って入ると、後ろにいたチビとデクもこれに倣う。

「おいおやじ、金はできたんだろうな」

「すいやせん……後3日、後3日だけ待ってもらえませんか……」

「今更何を抜かしやがる! こっちはずいぶん待ってやったんだ、今日こそは50両、きっちり返してもらうぜ!」

そう言って、どんぶりをいくつか割った。

「……だがまぁ、俺たちも鬼じゃねえ。……そうだなぁ、おまえんとこに娘がいただろ。その娘を差し出せば借金は帳消しにしてやるぜ」

男は下卑た笑みを浮かべる。

「そ、それだけは、娘だけは勘弁してくだせぇ!」

「じゃあ、今すぐ金……いてててぇ!」

「いいかげんにしな、あたいの飯がまずくなるだろうが!」

いつの間にか立ち上がっていた猪々子が、男の手首をつかむ。

「くそっ! なにしやがんだこのアマ! おい、デク、チビやっちまいな!」

3人組は一斉に懐から刃物を取り出したが、それでも素手の猪々子にはかなわない。

一瞬にして手にしていた刃物は床に転がり、三人組は。

「お、おぼえてやがれ!」

小悪党らしい捨て台詞を吐いて、屋台から退散して行ってしまった。

「あ、ありがとうごぜいやす。おかげで助かりやした、御遣い様」

……今なんて?

御遣い様って言わなかったか、おっちゃん?

本当なら正体を隠し、番組後半で……。

……何を言ってるんだろうね、俺は。

まぁそれに、こんな目立つ恰好をしてれば当然か。

隠居って歳でもないしな。

俺がそんなことを思っていると、白蓮は。

「いったい何があったのか、話してくれないか」

おやじさんに事情を聞いていた。

……あぁ、猪々子はすでにラーメンしか視界にないわけね。

「はぁ……それが……」

おやじさんの話によれば、借金をしたものの、借りた先が悪徳金融だったらしく、法外な利子を取られ困っているらしい。

この辺りはまだ俺たちの元に入って間もないから、そのへんの整備がまだ整っていなかった。

「それなら北郷」

もちろんだ。街の人々が困っているなら、助けないわけにはいかない。

お約束通りなら、思わぬ不正に……。

って、ここを治めてるのって俺たちじゃないか!

う~む……。

桃香(悪代官役)が山吹色のお菓子を貰って微笑んでいる姿……。

だめだ、想像がつかん。

それに、これは確信をもって言えるが、俺たちの仲間に不正を行うようなやつは一人もいないのだ。

やってきました越後屋(仮称)屋敷。

「者ども! くせ者じゃ、であぇ! であぇい!」

そう叫ぶ親玉。

いろいろ過程は飛んでるが、一時間番組じゃないのでそこは勘弁してもらいたい。

「文さん、顔さん。やぁ~っておしまいなさい!」

麗羽、そこは「こらしめてやりなさい」、だぞ。

しかし、俺がそんなことを思っている間にも、猪々子、斗詩に白蓮を加えた三人は敵をばったばったとなぎ倒していく。

まさに圧倒的だ。

「……なぁ麗羽、このへんにしとかないと……」

あまりに圧倒的すぎて、ほとんどの悪党は倒れてしまっている。

親玉なんか真っ先に猪々子の剣の前に倒れていた。

「そうですわね。文さん、顔さん、もういいでしょう」

「はい麗羽様。………………………………………………………………」

そう言って麗羽を中心に、右へと並んだ猪々子だったが、沈黙が続く。

沈黙が………………………………………………………………。

って、長いな沈黙。

「……あたいの台詞って何だっけ、アニキ」

ああ、忘れてたのか。

「静まれぃ、静まれぃ、だ」

「そっか。えっと……静まれぃ! 静まれぃ!」

もう十分に静かです。

「ここにおわすお方をどなたと心得る……。おそれ多くも先の大将軍、袁本初様にあらせられるぞ……。一同、頭が高い、控えおろう……」

恥じらいまじりでたどたどしくはあったが、斗詩は決め台詞を発した。

はいここでとどめの印籠!

印籠!

いんろ……。

「……おい麗羽、印籠、印籠」

俺がこのために特注で作らせた印籠を麗羽に渡しておいたのだ。

まぁ、○の中に袁って書いてあるだけのやつだけど。

「あぁ、あんなものとっくに無くしてしまいましたわ」

………………………………………………………………えっ?

なくした?

俺が呆然としているところに白蓮が。

「なぁ北郷。もういいんじゃないのか? 誰も聞いてないぞ……」

ああ、本当だ。

全員のされて、誰も聞いちゃいない。

……まぁ、これでめでたしめでたし……なのか?

こうして、麗羽たち一行の旅は続くのでした。

唐突だけど【完】


 
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