No.781684

恋姫OROCHI(仮) 参章・壱ノ肆 ~発覚~

DTKさん

どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、55本目です。

シャオの独白、そして…

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2015-06-04 23:03:39 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4594   閲覧ユーザー数:3864

 

 

…………

……

 

 

 

「…あの男に関しては、ほとんど何も知らないわ。街で突然襲われて、ここへ連れてこられただけだから…」

 

孫尚香の独白は短いながらも美空たちの頭を混乱させるのに充分だった。

 

「ちょ~っと待っててねぇ?」

 

美空がそう言うと、長尾勢の四人と雛は額を突き合わせるように集まった。

 

「…どう思う、秋子?」

「私に聞くんですか!?ん~…荒唐無稽としか言いようがありませんが…」

「でも、嘘ついてるようには見えないっすよ」

「…うん」

「そだねー」

「う~~ん…」

 

 

 

孫尚香。

彼女の縄を解き、本人に名前を字で書いてもらって、事のおかしさに気が付いた。

 

彼女は生国を、孫呉、と言った。

試しに兄の名前を聞いてみると、何故か姉であったが、孫策と孫権だった。

他にも曹操や劉備など、いわゆる三国志に名前が出てくる人物を、やはり何故か全員女性だったが、彼女は知っていた。

 

彼女は孫呉の主城・建業にいたところ、何者かに拐かされたそうだ。

 

 

 

「もし仮に本物だったとしたら、どういうことになるのかしら?」

「スケベさんの例もあるっすし、尚香が未来に飛んできたんじゃないっすか?」

「可能性は、ある」

「う~ん…もしかしたら逆なんじゃないかな?雛たちが、剣丞くんみたいに過去に飛んでるのかも」

「なるほど。光に包まれ『消失』する現象。剣丞さんが現れたときも強い光を伴ったそうですし、国が丸ごと過去に飛ばされたとすれば、頷けますね」

「ふ~む…」

 

このあたりは、雛の調査待ちになる部分も大きい。

とりあえず皆と話して、ある程度の状況整理と、落ち着く時間を取ることが出来た美空。

まずは…

 

「ねぇ、尚香?」

 

満面の笑みで尚香に向き直る美空。

 

「な、なによ?」

 

突然笑いながら迫られ、引き気味の尚香。

 

「私たちはね、同志だと思うのよ」

「…どういうことよ?」

「私たちは娘を人質に捕られて動きを封じられて、アナタを預かることになったわ。きっとあいつは、あなたのお姉さんたちにも無茶な要求…

 それこそ、どこかを攻めろ、なんて言われてるかもしれないわね」

「そ…そんな要求、お姉ちゃんたちなら絶対に突っぱねてるわよ!孫呉の王は、脅しなんかに屈しないんだから!」

「でも、あなたがこうして私たちの元に預けられたって事は、要求を飲んだ、ということじゃないのかしら?」

「それは…」

 

孫呉が要求を飲まなかったのに、尚香を生かしておく利点は一つもない。

要求を飲んだから、ひとまず厄介払いに適当なところに預けた。

その方が妥当な考え方だ。

 

「私たちは娘たちを探し出し、一刻も早く助け出したい。そうすれば、私たちがあなたを捕まえておく理由もなくなるわ。

 あなたが国許に無事帰ってくれば、お姉さんたちもあいつの要求に従う必要がなくなるわね。

 私たちの目標は一緒。だから、同志。違う?」

「…………」

 

先ほどとはまた違った値踏みの視線。

尚香は、美空とはまた違う、悪戯心が入った瞳をクリクリとさせる。

 

「……何をすればいいの?」

 

孫尚香が口を開く。

にんまりと笑う美空。

 

「別に、何もしなくて良いわ。まぁ、あなたのお姉さんには興味があるから、茶飲み話には付き合ってもらうかもしれないけど」

「…それだけ?」

「あとは当然だけど、逃げないことね。あなたに逃げられたせいで、うちの娘が殺されたんじゃたまらないからね」

「分かったわ。協力してあげる」

 

ここに、二人の間で同盟が成立した。

 

「ありがと。城内から出ないなら好きにして構わないわ。広いからしばらくは飽きないはずよ。部屋も用意させましょう。秋子」

「はい。それでは尚香さん、こちらにどうぞ」

 

秋子の後に尚香が続いて退出する。

 

「それじゃ雛、頼んだわよ。越後の未来、あなたにかかってるからね」

「は~い…分かりました~」

「くれぐれも、見つからないようにね」

「分かってま~す……」

 

気だるい返事と共に、雛の気配が消えた。

それを合図に、柘榴と松葉も間を後にする。

一人になった美空は、軽く溜息を一つ。

 

「さて、どうなることやら……」

 

その呟きに応えるものは誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

『ということがありまして…』

 

秋子の長い述懐を聞き終えた小波は、ひどく動転していた。

 

『ちょ、ちょっとお待ち下さい秋子さん』

 

念話を切ると、連れ立っていた翠と思春にガバッと向き直る。

 

「うわっ!ど、どうしたんだ!?仲間は無事だったのか?」

 

付き合いは短いが、あまり表情を崩さない印象の小波の目がこれでもかと見開かれているのを見て、翠も思わず動揺してしまう。

 

「し、思春さま…」

「ん?…なんだ?」

 

自分に話が来るとは思っていなかったのか、他所を向いていた思春は、少々面を食らう。

 

「孫呉で行方不明の姫君というのは……孫尚香さまで、よろしいのですよね?」

「……そうだ」

 

苦虫を噛んだような、無念で一杯という顔で答える思春。

 

「もしかして、その尚香さまは、桃色の髪を輪のように結わえ、その……大層、天真爛漫な方…ではないでしょうか?」

「――!?何故それを!」

 

拐かされたとは説明したが、人相や性格までは話していない筈の小波から、小蓮の特徴を言い当てられ、思春も仰天した。

 

「や、やはり……」

「おいっ!やはりとはなんだ!?」

「い、いったい、何があったってんだよ!?」

 

思春は詰め寄り、翠は動揺する。

そして、小波がゆっくりと言葉を発する。

 

「孫尚香さまは……春日山城にいらっしゃいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

「どうだ、雛?」

「うん、間違いないよー剣丞くん。この娘だね」

 

蓮華たちの拠点の洞窟内には、蓮華たち剣丞たちの面子に加えて、春日山から来た雛が加わっていた。

 

あの後、秋子にこちらの状況を説明し、翌日、湖衣を連れて再び春日山近くへ。

金神千里で確認の上、秋子からお守りを託された雛が合流。

剣丞作の人相書きを見た雛が、小蓮の所在を証言した。

 

「っていうか、あなたが孫権さまですよねー?小蓮ちゃんとそっくりですよね」

 

同じ桃色の髪に褐色の肌、そして孫呉の王族の特徴でもある碧い瞳。

並ばずとも姉妹と分かる顔立ちだろう。

いまその顔は、妹の無事を知って心からホッとした表情をしている。

 

「小蓮さまがいらっしゃると分かれば、すぐにその身柄を引き渡して…」

「それが、そう簡単な話じゃないようなんだ」

 

はやる思春を剣丞が止める。

 

「現在、孫尚香さまは我々の仲間である長尾家が治める春日山城に居られる事は確認できたわけですが、

 その長尾家でも美空さまと秋子さん…長尾家の当主と家老の娘がお一人ずつ、やはり拐かされているらしいのです」

「なんと…」

 

詩乃の説明に祭は驚きを隠せない。

 

「人質を殺されたくなければ言うことを聞け、と要求されているらしいんだ」

「孫呉と同じ、か…」

「そうです。そして出された要求が、長尾家の者は国から出るな。そして人質、孫尚香さまの身柄を保護し、外に出すな、だそうです」

「…なるほど。そういうことですか」

 

詩乃が普段は隠れている目を光らせながら独り言ちた。

 

「な、なんだよ。一体なにが分かったってんだよ?」

 

全く分かっていない翠。

しかしほとんどの者が翠と同じ意見だろう。

 

「申し訳ありませんが、確証がないのでまだお話は出来ません。明命さん、申し訳ないですが、今から建業に潜入してきて下さいますか?」

「それは、構いませんが…」

 

突然の要求に明命も困惑気味だ。

 

「剣丞さま。人相書きを二人分、お願いしてよろしいですか?」

「…なるほど、そういうことか。分かったよ」

 

剣丞は器用に、二人の女の子の似顔絵をさらさらと描き上げる。

それを手にした明命は、建業へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

「た、大変ですーー!!」

 

日が落ちた頃、明命が転がりながら拠点に戻ってきた。

 

「その様子だと…やっぱり?」

「は、はいっ!建業で預かっている二人の少女は……剣丞さんの描いてくれたこの女の子たち、でした…」

 

剣丞の描いた似顔絵は、美空の娘・空と秋子の娘・愛菜のものだった。

 

「そ、それって…」

「一体どうことなんだ?」

 

ざわつく拠点内。

その中において、

 

「これで、ハッキリしました。敵が孫呉と長尾に仕掛けた策。それは…」

 

顔を上げた詩乃の相貌が瞬かせ、静かに二の句を継いだ。

 

 

 

 

「二虎競食の計です」

 

 

 

 

 


 
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