No.78139

無限銀河魔天王 第1話「光臨! 白き巨神!」

スーサンさん

オリジナルロボット小説です。
内容は王道を貫いていますので、好きな人は好きな作品なんじゃないでしょうか?

2009-06-09 17:22:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:687   閲覧ユーザー数:667

 地球上の上に漂う、黒い黒点が心臓の鼓動のようにドクンドクンと木霊していた。

 

 

 静かな静寂に包まれる男の部屋の中で甲高い機械音が鳴り響きだした。

 その騒がしい機械音に気を悪くしたのか飛鳥光は鬱陶しそうに目覚ましを叩いた。

「ふわぁ~~……もう朝か?」

 そっとベッドから起き上がると光は時計の針をチェックしだした。

「七時丁度か……?」

 まだ眠いなと光は思った。

 しかし、ここで寝ると寝過ごして学校に遅刻してしまうかもしれない……

 睡魔という悪魔と格闘しながら、光は温かいベッドから抜け出し、服に着替え始めた。

 それを見計らったように家のドアからピンポーンと鳴り出した

「あ……あいつが来た?」

 急いで、服に着替えると光は部屋を出ていった。

 

 

 家のドアを開けると、少女がチャオと手を挙げてきた。

「おはよう、光くん……朝ごはん食べて、早く学校に行こう?」

「おはよう、巫女……まぁ、あがりなよ?」

「うん、そうする!」

 笑顔で頷くと、巫女は靴を脱ぎ、家の中へと入ろうとした。

「おじゃまします!」

 家の中に入ると巫女は真っ先に飛鳥家の食卓へと上がりこんだ。

 何も並べられてない男の無作法な食卓を見ると巫女は呆れた顔で呟いた。

「今日もパンで済ませる気? たまにはエネルギーのつく、白米を食べなきゃ、ダメだよ!」

「大きなお世話だ……」

 トースターからパンを抜き取ると、光は立ったままパンを齧りだした。

「俺は朝はパンが好きなんだ!」

「立ったまま、食べない!」

「……」

 ビシッと人差し指を突き立てられ、光は不満そうにテーブルのイスに座った。

 どう食べようが、この家の主である俺の勝ってだ。

 光はそう思ったが、それを言って巫女のへそ曲げられたら、後が面倒だ……

 この娘は一度拗ねると機嫌を直すのが大変なのだ。

 謝ったところで懐柔されるわけでもなく、物を送ったところで黙って奪われるだけで何の意味もない。

 それでいてほかっとくと、また相手にしないと拗ねて自分にイタズラしてくる。

 どっちに取ろうが面倒くさい女の子なのである。

 そんな苦い経験を思い出し、光は心の中でため息をついた。

(相変わらず、口うるさい……)

「なにか、言いたそうね?」

「いえ……なにも!」

 急いでパンを全部食べ終わると、光は席から立ち上がり、キッチンで手を洗った。

「さて……飯も食い終わったし、さっさと学校に行こうか?」

「そうだね?」

 機嫌を取り直し巫女はニコッと笑った。

 

 

 学校の通学路を通り抜けると、巫女は楽しそうに笑らっていた。

「でね、昨日のテレビは、ここが一番面白かったと思うんだ!」

「そうなんだ? まぁ、俺は別のを見てたから、知らなかったな? ようするに、恐竜は宇宙人が連れ去り、今も生き続けてるって事だろう?」

「そうそう♪」

 嬉しそうに頷き、巫女は続けた。

「補足すると、宇宙人が連れ去ったような後も、あっちこっちで発見されてるらしく、今も、少ないながらも研究者がいるらしいよ♪」

「そうなのか……?」

 光は青い空を眺めながら腕を頭の後ろにやった。

「案外、宇宙人が地球を支配するために恐竜をさらったりしてな?」

「あはは♪ それはそれで、面白そうだね?」

 光の言葉に笑いながら巫女は突然走り出し、ピタッと止まった。

 何事かと光は首を傾げた。

 巫女はクルリと光の顔を見ると楽しそうに微笑みだした。

「こんな、話をして笑われるかもしれないけど……私、時々、未来の夢を見るんだ」

「予知夢か? どんな、夢だ?」

「私と光くんが正義の味方になって、敵をバンバン倒す夢♪」

「ぷっ……それはいいや! 正義の味方、飛鳥光と正義のヒロイン、泉巫女の華麗なる戦いか?」

「私達ってベストパートナーだもんね?」

「だといいんだけど?」

「きっとそうだよ♪」

 アハハッと笑いながら巫女はまた光の下に走り出し、横についていった。

 まったくせわしない奴だと光は心の中でため息を吐いた。

 

『グゥゥゥゥ……』

 

「うん?」

 光は不思議そうに辺りを見回した。

「どうかした、光くん?」

「……」

「いや、今、変な唸り声を聞いたんだけど……気のせいかな?」

「変な唸り声……?」

 

『グゥゥゥゥゥゥ……!』

 

「っ!?」

「幻聴じゃない! 近くに何かいる!」

 辺りを見回し、光は巫女を守るように身を固めた。

 

『グゥゥゥゥゥゥ……』

 

「……」

 どこから聞こえるかわからない唸り声に、光は嫌な汗を全身にかいた。

 この唸り声はまるで獣……

 いや、それを遥かに超越する攻撃的な唸り声であった。

「グァァァァァァァァァッ!」

 二人は目を見開いた。

 それは今まで何も無かった空間から、時空が歪み、その中から一体の恐竜が現れたからである。

 恐竜は甲高い咆哮を上げ、光達を睨みつけた。

 それは獲物を見つけた獣のような瞳であった。

「クッ……」

 襲い来る恐竜の一撃を咄嗟に巫女を庇うように大地に倒れみ光は目を瞑った。

(やられる!)

「キァァァァァァァァァッ!」

「クッ……巫女!」

 巫女の身体を強く抱きしめ、光は心から願った。

(せめて、巫女だけでも無事なら……)

 その時、巫女の身体から溢れんばかりの光が溢れ出した。

「キァッ!?」

 突如、溢れ出した眩い光に恐竜は目を見開いた。

「キァァァァァァァァァッ!」

 巫女の身体から溢れ出した光は恐竜の身体を包み込み、光の粒子となって消えていった。

「あれは……?」

 消えていった恐竜を眺め、光はハッとした様に巫女を見た。

「おい! 巫女、大丈夫か!」

「……」

「おい、巫女しっかりしろ!」

 頬をペシペシ叩く……

「お、おい……」

 最悪の状況を考え、光の顔に絶望が浮かびだした。

 巫女に何かあったら、自分はどうすればいいか……

 光の脳裏に嫌な未来が延々と流れ続けた。

 しかし……

「くぅ~~……」

「寝てるだけかよ!」

 ゴチンッと頭を殴りつけた。

 

 

「でっ……学校に遅刻したわけか?」

「ああ……信じられない話だが、本当にあったんだ!」

「でっ……信じてもらえず、遅刻扱いか?」

 光の話を聞いて、少年も呆れたように頭を掻いた。

「俺も、数年、お前と付き合ってるが……にわかに信じられないな?」

 でもよ、と少年は光を見つめた。

「信じるよ! お前が、嘘をつくわけが無いからな?」

「ありがとう……でも、やっぱり、あれは幻なのかな?」

「……」

 少年は黙り込み、不意に考え込むように言った。

「実は……俺も似たような体験をしたことがあるんだ」

「え……烈も!?」

 コクリと頷き、烈は後ろで輪を作っている女子の大群を指差した。

「俺のときは、あそこにいる関西の田舎娘も一緒だったんだがな?」

「誰が、関西の田舎娘や!」

 ビュンッと飛んできた筆箱を片手でキャッチし、烈はおかしそうに笑った。

「反応したって事は、自覚があるって事だよな?」

「あんたって奴は……」

 女子の大群から離れ、少女は烈の顔をジロッと睨みつけた。

「あたしは田舎者じゃない! 関西は立派な都会や!」

「へぇ~~……心が田舎娘だって、言ってるつもりなんだがな?」

「このっ……あんたって奴は!」

「チョーク、チョーク!」

 つまらない漫才を見せられ、光は疲れたようにため息を吐いた。

「話はどうした、話は?」

「あ……そうだっけな?」

 関節を決められた腕をタコのように抜け、烈は今朝のことを少女に話した。

「とうことなんだ……悪いが牡丹、この前の話に付き合ってくれ?」

「まぁ……いいけど?」

 牡丹は顔を真っ赤にした。

「その日は、どういう奇特か……このバカがあたしを映画に誘ったのよ……」

 よっぽど、恥ずかしいのか牡丹は顔を真っ赤にし、一発、烈の足を蹴り飛ばした。

「帰り道に悪漢に襲われて、その時に不思議な光が溢れ出して、悪漢が倒れちゃったの……おかげで私たちは無事だったけど……」

「まぁ、その光に感謝だな? 危うく、牡丹に前科が付くとこだったしな?」

「悪漢の心配してどないすんねん!」

 烈の腕を背中にクロスに回し、牡丹は力を入れ叫んだ。

「痛い痛い……やめろよ!」

「うるさい! 元はといえば、あんたみたいなバカ男がまともな事をするのが間違ってるのよ! 死んで、詫びなさい!」

「あたたた……本当に折れる!」

 と言いながらも、烈の顔はどこか余裕があった。

 明らかにこの状況を楽しんでいた。

(次の休み時間に保健室にいる巫女の様子でも見に行くか?)

 

 

「でっ……あるからして、ここに三を足すと何故か五になるんだ! 教師の私が言うのもなんだけど、なんでだろうな?」

 数学なのか、英語なのか……

 それとも、まったく新しい課題なのか、未知なる言語を黒板に書き出す、謎の教師に大半の生徒も、訳がわからず俯いていた。

「さて……じゃあ、次の問題だが?」

 ペラペラとページをめくると……

「ん?」

「どうしたんですか?」

「いや……今、誰かに見られていた気がしたんだが……気のせいだな?」

「……?」

「気にするな?」

 誤魔化すように笑い出そうとした瞬間……

『きぁあぁぁぁあぁあぁあぁああッ!』

「っ!?」

 一瞬で、クラス全員の視線が、外に集まった。

「あれは……」

 光の顔が真っ青になった。

 窓の外にいたのは今朝、自分を襲った恐竜の姿であった。

 しかも、あの時よりも遥かに大きく、凶悪な存在へと変わっていた。

 恐竜の叫び声が学校の窓を揺らし、巨大な腕を教室に向けて撃ち放った。

 窓が割れ、一瞬で何人かの生徒がその反動で吹き飛ばされた。

 しかし、恐竜はそんな事など気にせず、手の平の前にいた光の身体を鷲掴みにし、

「っ!?」

 ムグリと握り締め、教室から抜き放った。

「なっ……こいつ、離…………すなよ?」

 二十メートル以上ある恐竜の腕の高さに光は顔を真っ青にして呟いた。

 まずここから落ちたら助からないだろう……

 危機的な状況の中、光はそれだけは冷静に対処できた。

 光の気持ちなど、露知らずか……

 それとも、知っての行動か、恐竜の手がゆっくりと開きかけた。

「ちょ、ちょっと待て! それ冗談ですまない!」

 必死に恐竜の指にしがみつき、光は説得を試みた。

 が……

「話し合う目じゃないよね……」

 あははと笑いながら、光の身体から重力消え去った。

「っ!?」

 地面に向かって落下していく光の脳裏に様々の思惑がこうしゃくした。

(死ぬのか……俺は、まだやりたい事がたくさんあるんだ! まだ、好きな娘に好きとすら言ってないんだぞ……)

 今までにない絶望が光の身体全体に響きあい、自然と目から涙が浮かんだ。

 光の身体が地面に激突しかけたとき、一陣の風が光に向かって吹き荒れた。

 その瞬間、光の姿が消えさった。

「キァッ!?」

「ここだ、ウドの大木!」

「ッ!?」

 顔を上げると恐竜の目の前に丸い円盤型のバイクが浮かんでいた。

 そして、それに搭乗するように光は円盤型のバイクに乗り込んでいた。

「こいつはすごい……これは、どこから来たんだ?」

「光くん!」

「え!?」

 空の上から地上を見ると、校舎の中から出てきた巫女がある物を光に向かって投げつけてきた。

 バシッと受け取ると、光は不思議そうに首を傾げた。

「フロッピーディスク?」

「それをそのバイクの差込口に差して! そして召喚して……魔天王を!」

「魔天王……」

 訳がわからず顔をしかめる光だが……

「悩んでもしょうがない!」

 フロッピーディスクをバイクのハンドルの真ん中にある差込口に差し、

『音声入力の登録をお願いします』

「だぁ~~、面倒臭い!」

 キッと目を吊り上げ、光は召喚呪文を叫んだ。

「天空聖邪光臨! 無限銀河魔天王!」

 ピッとハンドルの横についていた赤いボタンを押した。

 一閃の凄まじい光が地上に向かって、一体の巨大な白き巨神を大地に降臨させた。

 土煙を撒き上げながら白き巨神はそっと立ち上がり、勇ましい咆哮をあげた。

 白き巨神の胸の上から二つの淡い光が光と巫女の身体を包み込み、自分の中へと吸収していった。

 

 

 気付いたら、光は不思議なコックピットの中にいた。

「ここは……?」

「光くん、大丈夫?」

「巫女!?」

 下のコックピットにいる巫女を見つけ、光は切羽詰ったように叫んだ。

「ここは、あいつの中なのか?」

「そうだよ……」

 コクリと頷き、巫女は目を輝かせながら叫んだ。

「今朝言ったよね? 私達が悪を倒す夢を……それがこれだよ、無限銀河魔天王だよ!」

「無限銀河……魔天王?」

 目を丸くしながら、光は目の前の丸い球体を眺めた。

(わかる……こいつの動かし方が……)

 キッと目を吊り上げ、光は叫んだ。

「いくぞ、巫女!」

「オーケー♪!」

 

 

 恐竜と対峙していた白き巨神――魔天王はギュッと拳を握り締め、力強く叫んだ。

「銀河に轟く、一閃の流星! その名は無限銀河魔天王……正義を貫くため、ここに推参!」

「きあぁぁあぁあぁぁあぁあああぁぁっ!」

「来るッ!」

 突進してくる恐竜の身体をドシンッと受け止め、魔天王は腕に力を込めた。

「ウォォォォォォォォォォッ!」

 恐竜を持ち上げると、魔天王は力任せに恐竜を遠くへと投げ飛ばした。

 ドゴンッと恐竜の身体が大地に叩きつけられ、辺り一面に凄まじい衝撃が起こった。

「キァァァ……」

 土煙の中から恐竜が現れ、魔天王は首を左右に振った。

「投げ飛ばしてもまだ生きているとは大した生命力だ……」

 風を切るように魔天王の手の平が恐竜の顔面を殴り飛ばし、

「ハァッ!」

 さらに追い討ちをかけるように魔天王は身体を回転させ、恐竜の横顔にカカトを蹴り当てた。

「今だ!」

 魔天王のコックピットにいる光は下のコックピットにいる巫女に向かって叫んだ。

「必殺技だ!」

「オーケー♪」

 巫女の目がキラキラと輝き、目の前のキーボードを連打した。

「コスモインフィニティー全開! 銀河剣、絶刀!」

 魔天王の目の前に巨大な鞘に納まれた刀が現れ、魔天王は剣を抜いた。

「天・雷・地・爆・水・絶!」

 刀の刀身から光り輝くオーラが現れ、魔天王は天に向かって大きく刀を振りかぶった。

「銀河英雄奥義……銀河大切斬!」

 シュバンッと恐竜の身体が縦一閃に引き裂かれた。

「ギャ……?」

 恐竜の身体に赤い線が走り、いくつもの光が溢れ出した。

 その瞬間、恐竜の身体が大爆発し、魔天王は手に持った刀を鞘に戻した。

 

 

 光と巫女が魔天王から降りると魔天王の身体が光に包まれ、その場から消滅していった。

「……いったい、あの恐竜は何なんだ?」

「それは……話すと長くなるけど?」

 苦笑いを浮かべ、巫女は話を始めようとした。

「おい、お前達、今のはなんだ!?」

「ゲッ……先生だ?」

 グッと光の腕にしがみつきながら、巫女は必死に叫んだ。

「とにかく、人に聞かれると厄介だし、ここはこのスカイバイクで逃げよう!」

「え……この円盤のことか?」

「いいから、早く!」

「わ、わかった……」

 急いでハンドルを握ると、光は巫女を乗せて大空に向かって飛び上がっていった。

「こらっ! 戻ってきなさい!」

 教師の言葉など無視して光と巫女は大空に向かって遠くへと逃げていった。

 

 

 裏山まで逃げると、光と巫女はスカイバイクから降り、疲れたようにため息を吐いた。

「じゃあ、早速聞きたいが……お前は、あの恐竜を知ってるのか?」

「ま、まぁね……夢である程度、認識した程度だけど?」

「夢ッ!?」

 光は一瞬、眩暈を覚えたように頭を押さえた。

「ま、まぁ……いい! 話してみろ?」

「なんか、偉そうだな?」

 光の態度に巫女は不満そうに頬を膨らませ、話を始めた。

「今、地球を支配しようとする、悪の支配者が迫り来てるんだよ!」

「……」

「信じてないね?」

 スカイバイクからフロッピディスクーを抜き取ると、巫女は不満そうに顔をしかめた。

「じゃあ、さっきの魔天王はどうなの? あれだって、支配者から地球を守るための守護兵器なんだよ?」

「それをなんで、お前は知ってるんだ?」

「だから、夢で教えてもらったの!」

「……」

 余りにも、電波な発言に光はおかしくなりそうであった。

 しかし、巫女の言ってることは以外にも全て筋が通っている……

 魔天王だって、今の科学技術でどうにかできるロボットでもない。

 信じたくないが信じるしかない……

 光は諦めたように頭を振った。

「わかったよ……信じるよ!」

「本当!」

 ギュッと光の腕を抱きしめると、巫女は嬉しそうに笑った。

「じゃあ私達、これから正義の味方だね! よろしく!」

「はいはい……よろしく」

 抱きつかれた腕を払いのける力も無いのか、光は疲れたようにため息を吐いた。

 


 
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