【リッキィ】
迷宮を求める冒険者たちが訪れる街エトリア。
迷宮と他の冒険者たちの知らぬグラムヘイムとの交互に探索するという
実に骨が折れることを私たちのギルドはやってのけて
冒険者が集まる酒場でその冒険譚を聞き大いに賑わっていた。
そんな中ギルド一呑べえなラクーナがひとしきり賑やかした後
誰にも気づかれないようにそっと外に出ていった。
本当に誰も気づかない中、私だけ出ていくところを見て
すぐに追いかけていった。
ずっと探索と戦い通しだったから疲れていたのかもしれない。
私たちを一身に庇い守り続けてきた彼女だったから。
星ひとつ見えない夜道を歩きながら宿屋に向かい、予約を入れていた
部屋を開けると小瓶に入ったウィスキーを片手に何かを見つめている
ラクーナの姿があった。
それはどこか寂しげであるように見えて私はなぜだか不安を抱き
ラクーナの元に駆け寄った。
「どうしたの?」
「あら、リッキィじゃない。もう向こうで楽しまなくていいの?」
「ラクーナが変な抜け方するから気になっちゃって」
「あ・・・それは悪いことしたわね」
私の前ではいつも余裕のある笑顔を浮かべていつも守ってくれるから
すごい頼もしくて頼りすぎちゃうこともあるから気づけなかったのかもしれない。
「何か・・・様子が違っていたから・・・その・・・悩み事とかあったら聞くよ?」
普段から相手を気遣うこととかが苦手でぎこちない聞き方をする
私にすごく優しい笑みを浮かべながらラクーナは私の頭を撫でてくれた。
ラクーナが撫でてくれると胸の内がホッとして心地よくなる。
「うーん、悩みじゃないけど。思い出していたの」
「何を?」
「これよ、これ」
「小さい花?」
「そう、迷宮を潜り始めた頃のね。探索するたびにちょっと拝借して
お守り代わりにしてたのよ」
「どうして?」
私の続く質問にテーブルから少し体を動かして私と向かい合う形になる。
「これ、リッキィが最初に採取したものよ、覚えてる?」
「ううん・・・」
「あの頃のリッキィって記憶がなくて早く取り戻したかったせいか
すごい無茶振りしていた時期だったじゃない。
探索に必要なことを教えると採取をがんばってしていて
小さな花を見つけたらいきなり捨てちゃって」
「そ、そうだったかしら・・・」
「うん、私がこれは薬になる素材なのって教えたときのリッキィの
驚いた顔が忘れられなくてね。あれだけ頑なだったのにどこか
リッキィの素の部分が見えた気がして」
「ふーん・・・」
私の細かい部分まで覚えてくれているんだ・・・そう思うとどこか
こそばゆく感じる部分があってもじもじしていた。
私の話をしているときのラクーナの嬉しそうな表情がすごく良くて
私はついその顔に見惚れてしまっていた。
「あの頃の私のほうがよかった?」
とかちょっと意地悪な言い方で聞いたりもして。
「うん、あの頃のリッキィも好きかな。後アイスを一緒に作ったときの嬉しそうな顔を
していたり、仲間と慣れていって少しずつ緊張が和らいでいったあの時期も。
でもやっぱり今のリッキィの方が好きだわ。
だってあの時の素を垣間見せてくれたのが今ではずっと見られるから」
「ちょっと・・・恥ずかしいこと言わないの・・・」
一つ一つ思い出して語るラクーナの言葉に照れくさくなりながらもその話の
最後に全部忘れられない大事な思い出よって言われたのはすごく気持ちが
暖かくなった。そこまで私は大事にされてるんだって思えたから。
「愛称を私たちに教えてくれたことも印象的だったかな。おかげで今では
みんなリッキィだものね」
「うん」
「でも、そうね・・・」
そう言って立ち上がったラクーナは私にいきなり抱き着いてきてびっくりした。
「ちょっ、ラクーナ!?」
「今だけ戻してもいいかな?」
「え?」
「リッキィに素敵な愛称と・・・名前を授けてくれたお義父様に感謝を」
そうつぶやきながらラクーナは私の耳元に顔を近づけてきて
私の心臓は今までにないくらい脈と鼓動が波打っていた。
どくんどくん・・・。
顔は紅潮し体が硬直する。そんな私におかまいなくラクーナは・・・。
ちゅっ
と頬に暖かく柔らかい湿った感触がする。
「フレドリカ」
「ラクーナ・・・」
名前を呼ばれて今までにないような感覚に襲われて私はちょっと照れくさくて
そらしていた視線をラクーナの目に向けて二人見つめ合った。
「愛してるわ、出会ってから・・・これまでも、そしてこれからも」
「ラクーナ・・・」
「一人、遠い時代からやってきて寂しかったでしょう。心細かったでしょう。
唯一一緒にいたマイクもいなくなって・・・でも私は今までも、これからも、
貴女のことを愛し寂しくさせないことを誓うわ」
「うん・・・」
私もずっとラクーナのことを意識して冒険をしていた気がする。
マイクがいなくなった時も一番に私のことを考えてくれていたラクーナ。
女同士だけど、そんなこと気にもならないくらい私もラクーナのことを
愛していることを今自覚した。
そしてお互いの中に気持ちが最高潮になった時、二人はそっと唇を重ねる。
チュッ チュッパ・・・。
湿ったいやらしい音が耳に響く。
「ん・・・」
「はぁ・・・」
時折口を離して息をついてからもう一度重ねて互いを求める。
どれくらいしていたかなんて全くわからなかった。
けど、そこには確かな幸せと安心感があることだけは実感として
覚えていた。
部屋には私とラクーナの二人だけ。
いつ仲間に見られるかわからないドキドキ感があって
それが二人の気持ちを余計に昂らせた。
「フレドリカ・・・」
「ラクーナ・・・」
徐々に苦しくて切ない声で名前を呼び合う。
好き過ぎてどうにかなってしまいそうなこの熱い感覚。
熱が篭ったため息を吐いて私たちはベッドの上に倒れるようにして
乗りキスでお互いを求め続けた。
やがて疲れがあったのを思い出して二人で倒れるようにして
離れた後、それでも手だけは繋いで天井を見ながら
話を続けた。
他愛のないことからこれからのこと。
ラクーナは目的を達成した私といつまで一緒にいられるかが
不安だったのだと眠ってしまう前に語ってくれた。
その時私はラクーナの手を強く握りしめて絶対に離れないからと
告げるとラクーナは嬉しそうに微笑んだ後、すぐに寝てしまった。
「ラクーナ・・・本当に・・・ありがとう」
静かに寝息を立てる愛おしい彼女の姿を見ながら私も静かに
目を閉じて疲れた体を癒した。
次の日、私たちがほぼ同時に起きると仲間たちはまだぐっすり
夢の中。
私とラクーナは小さい声で笑いながら部屋を抜け出して早朝の散歩を
楽しんだ。朝早くから開いてる店を回って二人でデートをしてから
私たちを待っていた仲間たちのもとに戻った。
私たちはずいぶん仲間たちに怒られたけれど、その気持ちも何だか
嬉しくて、一人じゃないんだなぁという実感が湧く。
そして隣には愛しい人の笑顔もあった。
うん、私は前に進んでいける。この人たちがいれば。
ラクーナが私の手を握っていてくれれば。
そして私たちは今日も旅をする。
迷宮があるところならどこへでもいつまでも・・・。
お終い。
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久しぶりにデータ消してプレイ。アイスイベント見てからこのお話を書きました。一応付き合ってる設定で宿屋で思い出を振り返りながら気持ちが盛り上がっていってイチャイチャするだけのお話。少しでも気にいってもらえれば幸いです。