No.780976

女神異聞録~恋姫伝~ 第四十一話

ヘイロンさん

真・女神転生世界に恋姫無双の北郷一刀君を放り込んでみたお話
人の命はとっても安い、そんな世界
グロや微エロは唐突に生えてくるもの
苦手な人は注意されたし

2015-06-01 08:40:32 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:903   閲覧ユーザー数:877

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 女神異聞録~恋姫伝~

 

                    第四十一話

 

                  「彼女たちの追憶」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い暗い通路が伸びている。

 

上と下に一つずつ、左右で対になって四部屋の鉄格子でふさがれている牢屋。

 

その部屋の構成がいくつも連なって通路と成している。

 

ふさがれている………否、もう既に塞がれていた牢屋がほとんどだった。

 

それぞれの部屋には思いがこびりついている、彼女はそれを歩きながら、深淵に似たその通

 

路を進みながらその思いを脳裏に無理矢理見せられていた。

 

「普通の人なら、死ぬことへのストレスで既に壊れてそうなのにねぇ」

 

爪に引き裂かれる彼女たち、内側から食い破られる親子、力任せに叩き潰される少女達、生

 

きたまま氷漬けにされてそのまま命を奪われた子、水球に閉じ込められてそのまま溺死さ

 

せられる、炎を受け焼き殺される、雷で焼き殺される………あげればきりのない目の前で殺

 

されていく者達。

 

彼の仲魔も、そして守ろうとした人も関係なく幾度も幾度もそれは繰り返されながら細部

 

が違う。

 

「まるで人生をやり直しているよう」

 

彼自身の死は此処には刻まれていない。

 

刻む必要が無いのだろう、彼は自分の死なんてものに拘っていない。

 

守れなかった弱さこそを嫌悪している、貫けなかった弱さを私は悔いている。

 

その時まで、その時にまで強くなろうとしなかった自分が悪かったのか、強くなれなかった

 

自分が悪いのか、考えながら自嘲した。

 

確かに弱かった私は悪だろう。

 

だが、我を通し横暴を振るった強かったあいつらが善であろうはずもない。

 

「この子なら………私は何を考えているのかしらね。まだ勝負の途中だというのに」

 

通路の遥か奥、彼、北郷一刀は其処で待つと言っていた。

 

「あぁ、でも復讐させてくれるなら考えてもいいかしら」

 

記憶を見せ付けられていく。

 

通路を歩みながら奥へと。

 

姿を変えた神を怨みながら。

 

勝負に勝ったのに姿を変える呪いをかけた忌々しき神へと恨みを募りながら。

 

北郷一刀ならわかってくれるだろうかと考えながら。

 

力を得ようとも、仲間をそろえようともそれ以上の暴力という理不尽に蹂躙されてきた彼

 

なら、私も受け入れてくれるのだろうかと考えながら。

 

稀有な仲間を共にする彼なら私も救ってくれるのだろうか、と。

 

電霊に機械に狂神なんて普通は仲間に出来ない。

 

そんな奇跡を起こしている彼なら、そんなことを思ってしまう。

 

姿を変えられバケモノと呼ばれ、その姿に引き摺られ心までその姿らしく染まってしまっ

 

た者達も救い出せるのでは無いかと考えてしまう。

 

彼の底抜けのような優しさと理不尽な暴力を憎む苛烈さに、そして守る為に渇望している

 

その心に、期待してしまう。

 

「ふふふ、バケモノになっちゃった私でも、人だった時のように笑える様になるのかしらね」

 

蜘蛛の足を動かしながら彼女は通路の奥を目指していく。

 

捕えていた女の子の代わりに自分の身体を代償に、と言って来た北郷一刀に期待しながら。

 

「どれだけ女の子が大切なのかしら?ふふふ、少し妬けちゃうかも」

 

足取りは軽く、彼女は更なる奥へと進んでいく。

 

考え事をしていたせいだろうか、彼女自身が石化して死ぬ時が其処にあったのを見逃しな

 

がら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それなりの広さを持つ部屋にそれなりの人数の男女が集まっていた。

 

目を閉じ、向かい合っている男女を中心にして輪を組むように。

 

目を閉じている一人は北郷一刀、もう一人の少女は雪蓮の妹である蓮華だった。

 

「華陀とか言ったわよね………一刀も蓮華も無事なんでしょうね!?」

 

雪蓮の苛立つ声に季衣という少女はオロオロとし、その場を見ているくるりと巻かれた金

 

髪を持つ少女は微笑みながら見守っていた。

 

問われた華陀は腕を組み、目を瞑り頷きながら大声で答えた。

 

「大丈夫だ!問題なく心臓も動いているし精神的にも安定している!何より―――――」

 

一息ついて更に続けた。

 

「何より、一刀の奴が大丈夫だといったんだ。それを信じてやるのも仲間というものだろう」

 

「でも、だったらなんで蓮華まで目を覚まさないのよ」

 

「む………」

 

その質問には華陀も口を噤んでしまったが、それは横から助け舟が出された。

 

「やっぱりアルケニーが保険か罠か、の為に何かしらしているんじゃないですか?」

 

助け舟を出したのはヒロコを助けようと悩んでいたフツオだった。

 

ワルオとヨシオと助けられたヒロコは外で一刀の仲間たちからの特訓を受けている。

 

ワルオの「機械神!?カッケェ!」などという言葉から発展したのだが、閑話休題。

 

「それじゃなんで私は入っちゃダメなのよ?」

 

雪蓮はぷぅ、と頬を膨らませて拗ねる。

 

「ここで待つだけなんて苦しいの」

 

その拳は強く握られており赤く、血が溜まっていた。

 

「また間に合わないかもしれない。また死なせてしまうのかも知れない。また失うのかもし

 

れない。もう既に一度、アクマの所為で助けられなかった、死なせてしまった、失ってしま

 

ったから………尚更なのよ」

 

もう一人妹がいたからこそ、今度こそ守りたい。

 

そんな悲痛にも似た願いが胸中を占めているのだろうと思っていた。

 

「ロッポンギで反魂香を使って成仏させた時なんて、本当に苦しかったわよ」

 

「随分と辛い目にあったのね………雪蓮はそれでもまだ彼についていくのかしら?」

 

それまで見ていた金髪の子、華琳が雪蓮に話しかけてきた。

 

「それとこれとは別よ。誰も一刀についていかないんじゃ、誰が一刀を救うのよ………例え

 

それを一刀が望んでいないとしても、私がそうしたいのよ」

 

「ふぅん………私には男の何がいいのかなんてわからないけど」

 

「こんなチ○コのことなんてほうっておけば良いのです!!」

 

「ねねちゃん………」

 

「女の子がそういうことを口にするのは感心しないわね」

 

「あぁ、貶していても手を握っていると説得も無いな」

 

「うぁぅ………」

 

ばたばたと手を慌てて放し、必死に否定するねねの姿に微笑ましく思いながらも、一刀が目

 

を覚まさないことを心配しながら皆、目が覚めることを待っていた。

 

そんな中、更に中に入ってくる人物がいた。

 

赤毛に触覚のように跳ねた髪を持つ長身の日に焼けた肌を持つ女性。

 

「華琳、準備できた………いってきます」

 

「あら、恋もう準備したの?そう、無理はしないようにね」

 

「ん………」

 

コクリと頷き短く返事を返し、部屋から出て行こうとする。

 

それを止めるねね。

 

「ねねも恋殿と一緒に行くのです!」

 

「わかった………ちんきゅーも一緒に行く」

 

その言葉にねねはビクリと一度身体を震わせる。

 

「ご主人様の敵は………恋が倒す………」

 

外に出てから決意にも似たように零れ出た言葉、それはかつてを思い起こさせるには二人

 

には十分だった。

 

 

 

 

 通路を進む彼女の先には闇が広がるばかりで、その暗がりはアクマである彼女からして

 

も経験したことが無いほどに深いものだった。

 

その闇の先確かな光を見た。

 

その光は遠く、手を伸ばしても果たして届くものなのかといぶかしむ。

 

その光の前に待たせてしまった彼がいた。

 

彼はただじっとその光へと続く道を見ていた。

 

その道は屍で出来ていて、その数は途方もないとても数え切れないほどのものだった。

 

屍の山を築き求めるものは一体何なのか興味が出てきた。

 

ただ、その光を求める姿はひどく危なげな雰囲気を纏い、尚更に儚くも猛々しい覚悟を祖の

 

背に見ることができた。

 

言葉をかけることもできず、吸い込まれそうなその背中をじっと見つめていた。

 

見惚れていたのかもしれない。

 

命の取り合いの勝負をしている最中なのにどちらも無防備に、背を見せ、ただ呆然と立って

 

いる。

 

「どうした、心臓を取ればそれで終わるだろう」

 

「………盗れないわね………目的を聞かせてくれないかしら?」

 

「世界を終わらせる、俺たちはそれを願っていた」

 

ズシリと来る空気、それは周りから放たれる。

 

殺気とは違う殺意………世界を憎んだものが出す殺意。

 

かつては私もそうだった………だからわかる。

 

この殺意は私が矮小だと知らしめる。

 

「(『世界』を愛しながら『世界』を憎むだなんて………私は『世界』を愛していただろうか?

 

憎むばかりで嘆くだけだった)」

 

目の前のただ一人から放たれるのなら、ただの偶然で片付けられた。

 

放たれたのは周りから、一刀が一刀である確固たる証………今までを形作る為に今までに

 

死んで消えていった一刀達。

 

その彼ら全てが『世界』を愛しみ守ろうとし愛した………だから憎むのだろう、その『世界』

 

を。

 

奪われる理不尽を。

 

断ち切られる命を。

 

踏みにじられてきた心を。

 

ただそれは怒りから来る反発ではない。

 

ただの憎しみから来る拙い理解からでもない。

 

義憤、正義感、敵愾心そんな綺麗なものではない。

 

そんな綺麗なものから最もかけ離れた、人を表す単純すぎる感情。

 

己が己であるための存在証明の為の行動。

 

ただ気に入らないと混沌とした無秩序の象徴ともいえる感情に突き動かされ、今の此処ま

 

でたどり着いている。

 

きっと、どの様な綺麗な理想を持ち彼に誘いを行っても歯牙にもかけられないだろう。

 

力こそが全ての混沌とした世界も、神々が治める秩序足る世界も彼には色あせて見えるの

 

だろう。

 

人が人である。

 

ただその為に動いているようにも見えた。

 

だからこそその心に彼女は引き込まれた。

 

「私の負け。『貴方』の死が勝負の分かれ目かと思えばそうじゃないんだもの」

 

「『俺』たちからしたら死なんて慣れたモノだからな」

 

「でしょうね………必要なら躊躇なく『自分の命』を掛け金にしそうだわ。ていうかしてき

 

たのね」

 

背中しか向けていないのに苦笑いしたのがわかる。

 

「(きっと仲間になったらそれを止めるんでしょうね、わたしも)」

 

その生き方は英雄という高潔なものでも、勇者という尊いものでも、化物という卑屈なもの

 

でもない。

 

ただひたすらにそれを求める求道者に似た生き様。

 

『世界を終わらせる』と願いながらもそれは既に過去形になっている。

 

それが意味するところは………彼らは成し遂げられなかったのだ、だから『同じ存在』であ

 

る北郷一刀と共にあり、重ねた同じ道程にて磨耗して消えていくだけの存在。

 

初めからその為だけに、己の命を一刀に預けている一刀達。

 

そしてそうしなければならない事が最も気に入らない、それがこの生き方を選ばせた。

 

それは成就するかどうかもわからない荒唐無稽で無理難題過ぎる求める願い。

 

それがこの『世界』における彼の運命。

 

「私は鬼女アラクネ、こんごともよろしくね。だんなさま」

 

きっと彼と共に歩く旅は楽しいものになるだろうから。

 

彼女はまだ何と呼ばれるようになるのかを知らない………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詠「詠と」

月「月の」

詠&月&へ「「「あとがきコーナー」」」

詠「アルケニーとアラクネって一緒の存在じゃなかったかしら?」

へ「おう、訳す言葉が違うだけだね」

月「何か変わるんですか?」

へ「ただ単に種族の変更くらいかな。原作だと妖虫のアルケニーだし」

詠「こっちだと下半身蜘蛛、上半身が女性のタイプにするんだったかしら」

へ「さすがにすっぽんぽんを出し過ぎるわけにもいかないしねぇ」

月「本来のプロットだと蓮華さんじゃなくて○○さんだったんじゃ?」

へ「プロットは投げ捨てるもの!という冗談は置いといて」

詠「またよからぬ事考えてそうね」

へ「実際にはプロット通りだよ。なんでこうなっているかは後々わかると思う」

月「問題は無いんですか?」

へ「まったくない」

詠「機械神とか出してるし、結構壊れてるものね」

へ「デウスマキナ自体は嫌いじゃないんだが、もう片方となるとどうにもw」

月「演劇を神様が出てきてというのでしたよね」

へ「過程とか意味ないものにしかねない終わり方になるからね。やっぱアレは白ける」

詠「それじゃ、主人公最強とかは?」

へ「スカッと爽やか、な締めなら特に問題ないんじゃないかな」

月「へぅ………オリキャラ多数とか………」

へ「終わりよければってのもあるけど、入れ替わりの頻度、戦力バランスがよければ」

詠「まぁ、あんたの好み聞いても仕方がないわよね」

へ「それはそうだ」

月「原作キャラが死亡とかはどうなんでしょう」

へ「ここだと普通にありうるというかやってる。適当な理由で生き延びる方が白け易いかな」

詠「問題はここだと誤解させやすいものがあるのよね」

へ「実際に地の文で書いてても違ってたりとかだな」

月「あくまでそういった答えに思考、考察が至ったとかなんですよね」

へ「なので矛盾が出たところでまったくおかしくありませんので!」

詠「はいはい、それじゃそろそろスペースなくなるから〆るわよ」

月&詠&へ「「「ではお休みの間アクマにお体を乗っ取られません様お気をつけて」」」

月&詠&へ「「「ではまた次回お会いしましょう」」」

 


 
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