あまり突拍子もなく始めるのも味気ないとは思うのだが、如何せん時間がない。まずは把握し易いように時代背景(創世~現在に至るまで)を述べておこうと思う。
時間がないと言いながら、始める前に、二つ程言わせてもらうが、この手記に登場する神は、全知全能で、「世界やら人やらを創りました」というような存在ではないことに注意していただきたい。追々似たようなものにはなるが、俗にいう創造神ではない。しかし、人よりかは遥かに力を持っている。そんなところか。それと、(ここが肝心なところなのだが)神々の世界も人の世界と同じようにごちゃごちゃと色々なものが絡まっているもので、それはよく雁字搦めになってあちこちで不協和音を奏でたりもする。どこだって大して変わらない。格好をつけて普遍性なんて言ったりもするが、結局はそういうことなのだ。体裁も何もあったもんじゃない。
では、仕切り直して始めよう。
― 世界創造(アストミューク) ―
始まりと平等の世界。
神、人、精霊、動物が互いを尊重し合いながら、手を取り合って暮らしていた。
彼ら、彼女らは、小石から創られたとも塵から創られたともいわれるが定かではない。とにかく、これ等のものたちが共に生を享けたことは確かであって、使命を組み込まれていたかのように各々の宿命ともいえる行動を実行した。
神は、更なる世界を創ることと、人を統治する術を得ており、非の打ち所がない采配を振るった。人は神に続く知恵を遺憾なく発揮し、神の存在を支える敬虔を身に付けた。その敬虔は神の礎となり、敬虔なくして神は存在することが敵わなくなった。精霊は自然の力を司ることを生業とし、動物たちは天と地と海というように、多彩な場所を自由に住むことが出来る多様性を手にすると、多種多様な姿へと己の姿を変えていった。
各々の行動が落ち着くと、神は『下界』を創り、少し数が多かった人や動物たちに与えた。『下界』は、神々の慈愛に満ちた豊かな地となり、人と動物は神々に感謝の意を捧げた。
― 愚者戦争 ―
時は巡り移ろうにつれて徐々に暗雲が立ち込める。増え過ぎた人と神。傲慢な神に人が憤り、統治権を脅かす人に神が激怒した。
平和な時はあまりにも短い終わりを告げ、両者の不満は遂に争いという具体的な形となる。
多くの人が死に、敬虔を得られなくなった弱小の神々は朽ちていった。悪しき負の心は魔を生み出し、動物たちがその犠牲となる。
人が力を持った神に勝てるはずもなく、この争いは神の勝利にて終結する。しかし、神は人に恐怖を覚え、反乱した者たちの生き残りを『下界』に閉じ込めた後、『下界』を神々の恩恵から切り離した。
残る人も新たに創り上げた『天界』へと移し、“天界人”という名で区別した。
更に、人と神の負の気によって悪魔と化した一部の動物たちを即興で創り上げた『魔界』へと押し込み、目に見える範囲での神へ害を成すものを一時的に消し去った。
今後、再びこのような事が起こらぬように、神々の中でも優劣をはっきりさせ、一際力を持つ者が“神”と名乗り、翼を持ち、神に仕える者が“天使”となり、その両者をひっくるめて“高等神族”とされた。名もなき神々は神の座を追われ“神族”という括りを押し付けられた。
そして、“神”の横暴に反発した精霊たちは、『下界』に移された人“人間”と共に神々の場所である『神界』、嘗て楽園であった地と決別する。
― 神界の大混乱期 ―
そうして、神の中でも一際力を持つ最高神と呼ばれる神の暗躍が始まった…。
本書は神界の大混乱期の発端ともいえる、天界での一件を包み隠さず記したものである。
また、時代区分の命名は私が(もしくは一部の高等神族が)勝手に名付けたものであり、後世でも、そう呼ばれるかは分からないということを了承して頂きたい。ところで、勘違いしないで欲しいことがあるのだが、愚者戦争の愚者が意味するところは人だけに留まることではないということ。それこそ浅はかでおこがましいことこの上ない。
それにしても、これが禁書とならないことを願うばかりである。
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創作3部作の1部にあたるものです。
神話テイストになります。