オール・ヨシノ・ニード・イズ・キル(前編)
マリア様の庭に
フォースの隊列は乱さないように、白いセーラーカラーは
私立リリアン女学園。ここは
緊急事態が発生した。
地球がエイリアンに攻撃され、侵略は拡大の
侵略を阻止する
だが、人類は諦めない。やっと五戦目にして初勝利。戦死者と損害の低さは異例、圧倒的な勝利だった。
「この戦争、正直勝てると言い切れますか?」
「もちろん。宇宙人の侵略に対し、私たちは
番組インタビューにて。リリアン女学園、メディア担当の
「リリアン勝利の女神、
番組でインタビュアーは、スーパー戦士をこう紹介する。
「
再びインタビュアーは由乃に質問をする。
「戦況は変わります?」
「我々は戦い、必ず勝利します」
由乃が答えた後、番組の最後は入隊を勧める宣伝で締めくくった。
「さあ、あなたも今すぐリリアン女学園・統合防衛軍へ!」
リリアン女学園・統合防衛軍本部。通称『
『
あまり略になってないような気もするが、将軍の一人、
内容はこうだ。統合防衛軍はK市E海岸線から上陸作戦を
機動スーツを装備した部隊で押し切るというシンプルな作戦だ。当然、多くの犠牲者が出る。
「となると『責任者』として世の非難を浴びるのは私だ」
祐巳さんは困った顔をして、私を見つめていた。
「回避したいシナリオなのよ。まあ、
立ったまま聞いていた私を気遣って、祐巳さんは椅子に掛けるように
「運命の声に応えた行動だったと言えばいいんじゃない。人類を救うという」
私の助言を聞いて、それでも渋い顔をする祐巳さん。いつ見ても反応が分かりやすい。
「使命感のもとに弾丸作戦を実施したと」
「ううん、私のことはいい。由乃さんは作戦をPRして」
「了解」
「写真部とすぐ出発して。それから海岸で上陸部隊と合流ね」
「海岸? 上陸部隊? つまり前線へ?」
「そう、K市よ。
「嬉しい話ね……と、言いたいところだけど、私は実戦が苦手だからメディア担当になったのを忘れてない?」
祐巳さんはきょとんとした顔で、私を見つめていた。
「人にはそれぞれ役割があるのよ。私は正直言って、戦士には向いてないわ」
「そのようね。安心して、数十万の戦士が一緒だから」
「名誉ではあるけれど、お断りします」
私は
「じゃあ、
「紹介? これは命令よ」
「私は
「由乃さんのお姉さま、
ここで令ちゃんの名前を出すとは
「
言いたいことを言い切った祐巳さんは、書類を取り出しサインをしていた。どうやら私が作戦に
「祐巳さん。私のPRで大勢の女子高生が軍に志願したわ」
祐巳さんは次から次へと書類に目を向けたまま、サインを続けていた。
「彼女らが戦死すると家族は責任者を追求する。私があなたの名を
そこで祐巳さんは手を止め、書類から目を離した。
「
「それは
「明日の戦闘を、海岸で撮影する任務は辞退させてもらうわ」
「分かった」
「分かって頂けて何より。では、これで……
去り
「失礼」
私がビスケット扉を開けて去ろうとすると、扉の向こうには大勢が待ち構えていた。
「拘束して」
祐巳さんの号令で一斉に襲いかかる手下たち。
私は陣中突破を試みたが、通路を
『
大勢の軍志願者が集う乙女の
校内を走るバスには、英雄『菜々』のイラストが大きく描かれていた。『戦場のデコちん』という文字と共に。誰かがイタズラで書いたのだろうか。
目を覚ました由乃は、この光景を目にし、眠っている間にここへ連れ込まれた事を理解した。
私はグラウンドの隅っこに、荷物と一緒に置きっぱなしにされていたのだ。
「立て、三つ編み!」
「
「上級生に向かって何?」
「たてつくのか新入生め! バレエシューズを
「待って、
「どうしました?」
「ここはどこ?」
「太仲女子高等学校です。あなたは新入生ですね」
「新入生に見えるわけ?」
縦ロールは、私を見て頭の
「見えません」
「私は島津由乃。リリアン女学園の
「
縦ロールは、首を傾げていた。
「
私が
「説明してもムダのようね。令ちゃ……お姉さまと話がしたい。電話どこ?」
「上陸作戦が秒読み段階なんですよ。K市への侵攻直前です。この施設は封鎖中で、通信は禁止です」
縦ロールが持っているノートに目を向けると、学年と名前が書いてあった。この子は二年生だ。
「
「
「
「いいえ、
「なるほど」
ここで手をこまねいても
「私をよく見て。何かの間違いでここに送られたの。見れば分かるでしょう?」
私は瞳子ちゃんを
「どこかで電話をかけられるはずよ」
すると瞳子ちゃんは軽く
「何とかしましょう。こちらへ」
私は瞳子ちゃんと雑談を
「どうぞ」
着いた先は体育館だった。どうみても電話があるようには見えない。
「電話は
「そのとおり。あなたも嘘でなかったのは名前だけ」
瞳子ちゃんは手に持っていたノートを広げ、
「島津由乃。この者は『脱走者』で
なんてこと。祐巳さんここまでやる?
「明日の出撃を
瞳子ちゃんは
「
私は無言のまま、一方的に喋る瞳子ちゃんの話を聞きながら、体育館の中を突き進んだ。
「人の噂は怖いわよ。夜までに、ここの方たちは結論を出す『あなたは保身第一の
「でも、まだ望みはある。戦場で手柄を立てればね。戦いは
「地獄の戦場が
体育館の
「聞きなさい! この子は一年生、由乃ちゃん」
「由乃ちゃん、L分隊よ」
紹介された分隊は、六人で構成されているようだ。みんな私を奇怪なものを見るような目で見ていた。
「上級生じゃないの?」
「変わったお下げだ」
「意義ある朝を過ごしたようね」
各々に私の感想を述べる戦士たち。言われて気が付いたが、三つ編みが変な形になっていた。拘束された時に
構わず瞳子ちゃんは周りを物色しながら、話を始めた。
「明日の先陣を切るのは、あなたたち
瞳子ちゃんは、マットの下からトランプを見つけ、そのトランプを1枚ずつ、その場にいた精鋭たちの胸元に挿し込んでいく。
「可南子さん、私のギャンブル
「『地獄
「それはなぜ?」
「『運命を人に
「私は『運命』をどう定義していて?」
「『戦士たるもの運命は自らが支配せよ』」
瞳子ちゃんは、可南子ちゃんの胸元に挿し込んだトランプを、さらに深く押し込んだ。可南子ちゃんは
「今は
そう言って瞳子ちゃんは、私に笑顔を向けた。
「由乃ちゃんは脱走者よ。あなたたちの責任において監視するように」
「出撃は明朝六時ちょうど」
「彼女は間違ってここに来たという妄想を
瞳子ちゃんは必要事項を告げ終わると、後ろを向いた。
「出撃なんてムリよ」
私が抗議すると、瞳子ちゃんは私の肩を叩いた。
「感謝してよ。明日、あなたの新しい人生が始まるんだから」
背筋が凍りつくような物言いに少し
『訓練開始まで一〇分!』
「この服はよくない。着替えて」
私に着替えを差し出してくれた彼女は『ちさと』と名乗った。
「さあ、新しい日よ」
翌日早朝。お日様も昇らない内から、施設は出撃の準備で慌ただしかった。
「運命の声に応えて勝利しなさい。それが、あなたたちの任務よ」
瞳子ちゃんは見回りながら、精鋭たちに
私は、ちさとさんから剣道着そっくりな機動スーツを着せられ、身動きが取れずにいた。
「行くわ、ショータイムよ」
機動スーツが作動し、まるで風船から空気が抜けるような、奇妙な音が出た。
「な、何の音?」
ちさとさんは答えてくれない。気になるじゃない!
「機動スーツは初体験なのよ」
「私は
答えになっていない。というか、そんなこと聞いてないし。
「私、慣れてないから味方を攻撃するかも」
「安全装置があるよ」
「どこに?」
「どこかな」
まともに相手する気は無さそうだった。
『立入厳禁』
この学校のどこかにある訓練場の一室。そこで彼女は筋トレに励んでいた。
「時間よ」
出撃の時を告げられた彼女は、機動スーツを身にまとい、大勢が見守る中、外の
「『戦場のデコちん』のお出ましだ。
彼女が歩く途中、余計な事を口走った戦士が、彼女――菜々に張り倒された。
同じく出撃するL分隊も、英雄の出撃を見守っていた。
瞳子は由乃を
「ちさとさん、由乃ちゃんの面倒を見て」
「一日中?」
「あの子は一日モタないわ」
次々に飛行艇に乗り込む戦士たち。その中で一人、逆方向へ進む戦士がいた。
「ちさとさん、捕まえて!」
「由乃ぉ!」
あっけなく捕まった私は、飛行艇内で固定され、瞳子ちゃんの最終説明を聞いていた。
「今日
『降下二分前』
「ビビっても構わない。勇気と恐怖は表裏一体よ」
「あら、あなたのスーツ何か変よ」
誰か私を見て言っているようだ。
「そうか、死人が着てるのね」
何の冗談か理解に苦しむけど、みんな笑っていた。
「自分の身は自分で守りなさい。助けは来ない」
瞳子ちゃんも機動スーツ着用で、一緒にスタンバイに入っている。
『一分前! 降下まで一分!』
「ねぇ! ねぇ! 安全装置の外し方は?」
この期になっても、私は機動スーツの安全装置について解除方法が分からずにいた。必死に隣のちさとさんに尋ねる。
「え? 何言ってるの?」
騒音が大きくて聞こえてないようだった。私の全身から血の気が引いていくのが分かる。
「嘘でしょ……」
『降下開始まで三〇秒!』
「合図を待って、スタンバイ! 降下ケーブル確認!」
ドオォォォォン!
瞳子ちゃんが号令を言い終わると同時に、飛行艇内で爆発が起きた。敵襲だ!
「降下! 行け!」
「行け! 行け! モタモタしないで!」
次々に降下ケーブルを使って落下していく戦士たち。もう待ったは無しだ。
「由乃ちゃんどうしたの!」
瞳子ちゃんに怒鳴られる。黙っていたら強制的に突き落とされかねない。私は決意して降下した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
降下中に他の人とぶつかったりしたけど、なんとか着地に成功。他の戦士たちも次々に着地していた。
「やった! 着地したわ!」
その直後、可南子ちゃんは落下してきた飛行艇の下敷きとなった。
寸前のところで避けて助かった私の額には冷や汗が出ていた。
「救援
菜々が叫んでいた。それでも菜々は敵を次々に撃破していく。さすがは初日に数百体を殲滅した英雄。
その戦いっぷりに見とれていると、菜々と一瞬目が合った。その直後に菜々の背後にいた飛行艇が大爆発を起こし、菜々は爆風の直撃を受けて私の目前へ吹っ飛んできた。
「ひどい!」
息絶えた菜々を見て、私は叫んだ。無茶だ、こんなの絶対に生き残れない。
「どこへ行くの! そっちは逆方向でしょ」
戦場から離れようとしたが、瞳子ちゃんに食い止められてしまった。
「話が違う。なぜ敵が待ち伏せを?」
ちさとさんが疑問を投げかけた。
「これじゃ全滅よ。全滅だわ!」
「落ち着いて!」
「しっかり立って!」
「まとまって」
「モモッチ、戦況は?」
「ちさとさん、側面を守って」
誰が何を喋ってるのか、全然わからない。敵の待ち伏せという想定外の状況に前線は大混乱していた。
「安全装置が……こいつの外し方は?」
この際、誰でもいいから教えて。そう願うも
「モモッチ!」
「五百メートル先に敵です!」
「もうっ!」
「あなたたち、死にたいの!?」
「攻撃準備! 構えて!」
「ギタイどもが襲ってくるわ」
「数秒待って! 近くに引き寄せるのよ」
私は偶然この時、地面から這い出ようとするギタイを見つけた。
「いたわ! ここよ!」
「うわあああああ!」
サイレンのように響く仲間の悲鳴。安全装置が外れず、私は何もできない。こうしてる間にも次々とやられていく仲間たち。もう後が無い。
『安全装置解除しました』
やった! どうやったか分からないけれど、思いつく限りの事をやっていたら安全装置が外れた。
マシンガンの反動で私は倒れてしまい、
「ははっ、はははは!」
やれば出来るじゃない私。だけれど、そう思ったのも
マシンガンにもう弾は残っていない。何か武器は……私は横に転がっていた対人地雷と書かれた箱を見つけ、握りしめた。
箱を手に取る動きに気付いたギタイは、私の上から襲いかかってくる。
来るなぁ! 私は箱を手にしたままギタイに叩きつけた。
ドオォォォォン!
地雷が大爆発し、ギタイと共に致命傷を負った私は、ギタイの青い血を大量に浴びながら、息絶えた。
「うわああああっ!」
気が付くと、見覚えのある景色が広がっていた。
目の前を走るバスには、英雄『菜々』のイラストが大きく描かれていた。『戦場のデコちん』という文字と共に。
私はグラウンドの隅っこに、荷物と一緒に置きっぱなしにされていたのだ。
「立て、三つ編み!」
肩を
「バレエシューズを
「待って、乃梨子」
優雅に縦ロールを二つ揺らしながら、その人は近づいてきた。
「どうなさいました?」
「瞳子ちゃん……」
「私の名前ですね。分かった、何です? 徹夜百人一首? どんちゃん騒ぎ?」
「分からない」
「なるほど。何とかしましょう、それを私に」
瞳子ちゃんは、私に押し付けられたバレエシューズを寄越すように促した。いや、そんな事より気になる事がある。
「今日の日付は?」
「あなたには――」
瞳子ちゃんは手に持ったノートからプリントを取り出し、私に見せて告げた。
「
私は瞳子ちゃんに言われるままに付いていった。
「でも、まだ望みはある。戦場で手柄を立てればね。戦いは償いとなるから」
「地獄の戦場が――」
「「
私は瞳子ちゃんと同じ台詞を言い放ちハモった。
「話の腰を折るの?」
瞳子ちゃんは
「あなたは、私の話を信じないでしょ」
「そのとおり。どこまで話したかしら?」
「地獄の戦場が……」
「地獄の戦場が、真の英雄を生み出す」
面倒なので今度は
「薄汚い寄生虫レズも、戦場で戦う時だけは皆、同格よ」
体育館の隅っこにいた集団の前で、瞳子ちゃんは足を止めた。
「聞きなさい! この子は一年生、由乃ちゃん」
「由乃ちゃん、L分隊よ」
紹介された分隊は見覚えのある人たちばかりだった。みんな私を奇怪なものを見るような目で見ていた。
「上級生じゃないの?」
「変わったお下げだ」
「明日の先陣を切るのは、あなたたち精鋭よ。私の胸は感動に震える、何たる誇り、何たる栄誉、ヘソまで涙するわ」
瞳子ちゃんは、マットの下からトランプを見つけ、そのトランプを1枚ずつ、その場にいた精鋭たちの胸元に挿し込んでいく。
「可南子さん、私のギャンブル観は?」
「『地獄
「それはなぜ?」
「『運命を人に委ねる行為だから』」
「私は『運命』をどう定義していて?」
「「『戦士たるもの運命は自らが支配せよ』」」
私は一字一句、間違うことなく同じ台詞を言った。この場面を私は知っている。
瞳子ちゃんは可南子ちゃんの胸元に、トランプを深く押し込んだ。
「今は皮肉に思えても、やがてその正しさが分かるわ」
瞳子ちゃんは、笑顔で私に答えた。
「行くわ、ショータイムよ」
ちさとさんの合図で、私が機動スーツを操作すると、作動した
「もう、気をつけて。着たことないの?」
「かもね」
「安全装置は?」
「分かんない」
ちさとさんは、一瞬
それから成すがままに機動スーツを着て、飛行艇に乗った。艇内で瞳子ちゃんが語る。
「あなたたちの責任は重大よ」
『降下二分前』
「ビビっても構わない。勇気と恐怖は表裏一体よ」
「ねぇ! ねぇ、あなた! そのスーツ変よ」
「そうか、死人が着てるのね」
みんな笑っていた。何がおかしいのか全然わからないけれど、あらゆる意味で私は笑えなかった。
「自分の身は自分で守りなさい」
「「助けは来ない」」
私は台詞をハモらせた。
「ハモった!」
ちさとさんのツボだったらしく、ウケていた。
「合図を待って。スタンバイ!」
瞳子ちゃんも機動スーツ着用で、一緒にスタンバイに入っていた。
『降下ロープ確認、三〇秒前!』
ドオォォォォン!
飛行艇が敵襲を受けて爆発する。周りは大混乱に陥った。
「モタつかないの!」
次々にロープで降下していく戦士たち。あの時と同じなら、ここは降りるしかない。意を決して私は降下した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
私は
「着地したわ!」
続けて着地を喜ぶ可南子ちゃん。
「危ない! 後ろ!」
私は叫んだが、間に合わなかった。可南子ちゃんは落下してきた飛行艇の下敷きとなった。
私はひょっとしてと思い、辺りを見渡した。そこには菜々の姿があり、敵を次々に撃破していた。
「よけて!」
菜々に向かって叫んだ。だが、爆風は菜々の背後から迫ってくる。私は菜々の身を
「んもうっ、やられた」
体中が痛い。私は重傷を負ってしまった。菜々の方も、かろうじて一命を取り
「重傷? 血が……血が出てる?」
私が心配して菜々の様子を見ると、機動スーツが損傷していて、血が出ていた。
「胸に穴が開いてます」
菜々は苦しそうに答えた。
「穴が?」
私が驚いたその
「私のバッテリーを取ったの?」
菜々は大きな
「来るな! やめて!」
衝撃と共に、私の視界が真っ暗闇になった。
「うわああっ!」
気が付くと、見覚えのある光景だった。
目の前を走るバスには、英雄『菜々』のイラストが大きく描かれていて、『戦場のデコちん』という文字も書かれている。
私はグラウンドの隅っこで、荷物と一緒に寝転がっていた。
「立て、三つ編み!」
乃梨子ちゃんを無視して走り、私はグラウンドに向かってくる縦ロールを呼び止めた。
「瞳子ちゃん」
縦ロールは、いきなり名前を呼ばれて戸惑っていた。
「私はリリアン女学園の
「徹夜百人一首はしてない、そこのプリントは私を『脱走者』と、あなたは松平瞳子ちゃん、
「話を聞いて、私は全てを見てるのよ! この目で全てを見たの! 私たちは全滅する!」
「分かったわ、手を離して!」
矢継ぎ
「L分隊でしょ?」
「そのとおり」
「よく知ってるでしょ? 私を知ってる者は?」
「知らない」
「でしょ? 知らない!」
「あなたは
L分隊の六人全員知っていることをアピールした。最後の一人だけ名前が出てこなかったけど、多分聞いてない。
「体育マット上でポーカーを」
「黙ってよ」
瞳子ちゃんがうんざりとした表情で頭を抱えていた。
「可南子ちゃんの手はハートのフラッシュ」
「みんなの胸元にカードを挿し込む。そうでしょ?」
瞳子ちゃんに迫って確認した。
「信じられない話だけれど、本当なのよ。よく聞いてちょうだい、あなたたちの生死に関わる話よ」
「フゴッ、フゴォオ!」
私は
『一分前!』
「フゴフゴフゴッ、フグゥゴフゥフゴ、フフフゴフッ!」
「何言ってるの? 日出実さん、何て言ってる?」
ちさとさんは尋ねたが、日出実さんは首を横に振るだけだった。分からないってジェスチャーらしい。
「フゴォ、フゴォー!」
「合図を待って、スタンバイ!」
私の口に貼られたテープがやっと外れた。これで喋れる!
「この機は爆発する!」
言った瞬間、飛行艇は爆発した。
もう、この展開はどうしようもない。私は戦士たちと共に降下して着地した。
「やった! 着地したわ!」
可南子ちゃんが危ない!
私は助けようと向かったが、一緒に飛行艇の下敷きになって死んでしまった。
「あうあっ!?」
菜々のイラストが描かれたバスが走っていた。見渡せば見覚えのあるグラウンド。また最初に戻ったようだ。
「口にネジ込むぞ!」
面倒になってきたので途中省略。私は飛行艇から降下し、着地した。
「やった! 着地したわ!」
今度こそ! 可南子ちゃんが喜び叫んでるところへダッシュ、全力でタックルした。可南子ちゃんはよろけて倒れ、間一髪のところで飛行艇は頭上をかすめて落下。
救助成功、次は菜々を助けなきゃ。確かこの辺りに……周囲に気を取られ、正面にいた菜々に気付かず衝突してしまった。
バランスを崩した私たちは、そのまま不時着中の飛行機内へ倒れ込んだ。
「ごめん。助けようと……逃げないと皆殺しになるわ」
私は振り向きもせず真上に迫ったギタイを撃ち抜き、真横から現れたギタイも粉砕した。どこから出現するのか、もう身体が覚えていた。
「急いで、この機は爆発する」
菜々の手を取って、飛行機の外へと連れ出す。
「早く来て……待って」
私は正面から襲ってきたギタイを攻撃。ギタイが怯んで逃げた隙をついて叫んだ。
「今よ!」
周辺のギタイを撃ちながら菜々に呼びかける。
「早く!」
菜々は
「来て! すぐ爆発するんだって!」
菜々は、なかなか動こうとしない。そして、武器を捨てた。
「どうしたの?」
「目覚めたら、私を
飛行機が爆発し、私と菜々は爆炎に巻き込まれて死んだ。
(つづく)
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多くは語りません。マリみて由乃&菜々メインSF小説です。
完全なパロディです。苦情は受け付けます。
長いので前編、中編 http://www.tinami.com/view/780804 、後編 http://www.tinami.com/view/780849 の3つに分けてます。
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