白羊宮を飛び出して石段を駆け上がって行く横島と雪之丞。
「おっ?何かさっきと同じ様な建物が見えて来たぞ。あそこにアテナちゃんが居るのか?」
「いや、まだまだ先にも同じ様な建物が見える。おそらくこの階段を上りきった所に居るんだろう。当然、強い奴も其処にな。ふふふふふ、はーはっはっはっはっは!」
「「わーはっはっはっはっは!」」
二人は高笑いをしながら第二の宮、金牛宮へと走って行く。
その頃、ムウはと言うと。
「な、何故私がこの様な目に……」
ようやくめり込んだ壁からの脱出を果たしていた。
「いや、そんな事より先を急がなくては」
気を取り直し、ムウはアテナ神殿へと続く十二宮の階段を走り始める。
そして金牛宮へと辿り着くと此処の守護者である
「アルデバラン!アルデバランは居ないのですか」
呼んでも返事が無い事から自分の様に彼等に治療を受けて先に進んだのかもしれない。
そう思い、自分も先を急ごうとすると視線の先に倒れているアルデバランを見つけた。
「アルデバラン!」
その姿はさっきまでの自分同様に謎の敵に倒され、傷付いたままであった。
「酷い傷だ、まったく何という人達ですか。こんな傷を負ったアルデバランを見捨てて行くなんて」
流石はアテナの聖闘士、傷だらけの自分達を見捨てていったアテナの事は棚の上に置いたらしい。
ムウはアルデバランを治療をしようと近付くと足元にあった何やらビー玉の様な小さな珠を蹴飛ばした。
「ん?何だこの珠は」
よく見て見ると、珠の中には【癒】という文字が浮かんでいて、コロコロと転がるその珠がアルデバランの体に触れると緑色の光を放ちながらたちまちアルデバランの傷を聖衣ごと治していった。
「むぅ!こ、これは。そうか、私の傷を治したのもあの珠だったのか。しかしあの珠から発せられていた小宇宙にも似た力は一体?」
そうして体と聖衣の傷が消えるとアルデバランは意識を取り戻して行く。
「う、うう。俺は…生きているのか」
「アルデバラン、気が付きましたか!」
「ムウ、そうか、お前が俺を助けてくれたのか」
「いいえ、貴方の傷を治したのは私ではありません」
「何?では誰が」
「その事は走りながら話します。今は一刻も早くアテナの元へ」
「うむ、そうだな。では急ごう!」
―◇◆◇―
双児宮、巨蟹宮を抜け、獅子宮へと進みながらムウは今までの事をアルデバランへと話す。
傷付き倒れていた自分の傷を治し、アテナが美人だと知り、そして強い相手が居ると知るとアテナ神殿へと走り出した謎の二人組の事を。
「なるほど。しかし、もしやその二人もアテナを狙う敵ではないのか」
「いえ、それは無いでしょう。もしそうだとしたら私を助ける理由がありません。特に邪悪な小宇宙も感じませんでしたし」
とは言え、
横島だけに…
そして獅子宮の辿り着くと、其処ではやはり獅子座(レオ)の黄金聖闘士アイオリアが倒れていた。
その傍にはさっきと同様に【癒】の文字が浮かんでいる珠が置かれていた。
「まったく、いくら急いでいるとは言え治して行くぐらいの事はしてくれても良いでしょうに」
ムウはぶつぶつと呟きながら文珠を拾うとアイオリアの体へと当て、彼の体と聖衣を治していく。
「こ、これは…!ムウよ、何だその珠は?」
「私にも解りません。しかし、瀕死の状態だった我等の傷を一瞬で癒し、また聖衣すらも修復してしまうのです。本当に彼等は一体?」
「う、うう…」
「気が付きましたかアイオリア」
「ムウ、アルデバラン。お前達は無事だったのか!しかしこれはどうした事だ?奴等にあれ程までにやられた傷が…、それに聖衣まで元通りに修復されているとは」
「その事は後で、今はアテナ神殿に急ぎましょう」
「うむ、そうだな。急ごう」
アイオリアが立ち上がると三人は次なる宮、処女宮へと走り出す。
そしてその道すがら、ムウはアイオリアにも事の次第を話した。
「その二人、敵では無いと考えて良いのか?」
「ええ、私達の傷を治すあの不思議な珠を置いて行ってくれている事からそう考えても良いでしょう」
「二人共、処女宮が見えて来たぞ。シャカは無事か?」
アイオリアへの説明が一通り終わる頃、三人は第六の宮である処女宮に辿り着いた。
其処で彼らが見た物は……
「ひ、酷い…」
「何と惨い事を…」
「シャカ…」
其処には傷付き、仰向けに倒れたままの
傍らには【癒】の文珠が置かれてはいるが、その姿の余りの悲惨さにムウ達は呆然としていた。
横島が走り抜けて行った後であろう、シャカのその顔面には……
靴の足跡がくっきりと刻まれていた。
「と、兎に角シャカの治療をしましょう」
ムウは文珠を拾うとシャカの体に当てる。
文珠が光を放ち、アルデバラン達と同様に傷と聖衣を修復して行く。
そして傷が治るとシャカは無言で立ち上がる。
「シ、シャカ…」
「とりあえず、無事で何よりだ」
「さあ、先に急ごう」
だが、シャカは彼等の言葉には答えず、
「 くくくくく 」
と、俯きながら嗤うのであった。
「 くくくく、あの男、あろう事かこの私の顔を土足で踏み躙って行くとは…。許せん! 」
そしてその顔を上げると其処には。
「「「シ、シャカの目が開いた!!!」」」
凄まじい殺気と小宇宙を発するシャカがいた。
「三人共、何をしてるんですか?早く行きますよ」
シャカは振り向きながら真顔でそう言うが、ムウ達は。
「「「ぷっ!!!」」」
つい、噴き出してしまった。
何故なら体の傷と聖衣は治ったものの、その顔に付いた足跡だけは何かの呪いの様に残ったままだったのだから。
「何が可笑しいんですか?」
「「「い、いえ、すみません。何も可笑しい事はありません!」」」
「ならば急ぎますよ。あの男には少しHA・NA・SU事がありますから」
「「「わ、解った」」」
走り出したシャカの後を追いながらムウはあの男がオシャカにされない事をちょっとだけ祈った。
「なるほど」
走りながらムウはようやく正気に返ったシャカにも詳しい説明をしておいた。
何者かは解らない二人組が先を進みながら【癒】という文字が刻まれた珠を置いていってる事。
その珠は体の傷だけで無く、聖衣までもを一瞬で修復している事も。
「おそらくその珠は『文珠』と呼ばれる物に間違いは無いであろう」
「文珠?」
「シャカ、その文珠とは一体何なのだ?」
「この私も話でしか聞いた事は無い。霊力と呼ばれる力を極限まで凝縮させ、言霊を込めた文字を刻み込む事でそれらの事象を具現化させる神具だという事だ。この地上界には存在せず、神々の手にしか無い筈だがそれが何故、今此処に」
「その様な神具を持っているとは、彼等は一体…」
「もしかすると他の神に仕える闘士なのでは」
「それもこれも彼等にHA・NA・SIを聞いてからです」
「…その言い回しは止めぬか、シャカ」
天秤宮を抜け、天蠍宮に辿り着くと案の定この宮の守護者である黄金聖闘士、
そして……
「これが文珠か。なるほどな、伝説の神具と言われる事だけはある」
シャカは文珠を拾うとそれを調べながらも、その秘められた力に感心していた。
「シャカよ、詳しく調べたいのは解るがそれより早くミロを」
「うむ、そうであったな」
そう言いながら、ミロに文珠を使おうとするが……
「「「「ぷっ!!!!」」」」
倒れているミロの横顔にはやはり横島が踏みつけて行ったのであろう、足跡がくっきりと刻み付いていた。
「おのれぇーーーっ!あの男ーーーーーっ!」
ミロは怒りの形相で十二宮の階段を駆け上がっている。
勿論、シャカも同様だ。
二人の顔には未だに足跡が消えないまま残っており、その事を考えれば当然なのだろう。
「しかし、何故あの二人だけ顔を踏まれて行ったのだろうな?」
アイオリアがそんな疑問を口にすると、ムウが答える。
「おそらくは"顔"でしょうね」
「顔?」
「ええ、おそらく彼はいわゆる美形と呼ばれる男性にあまり言い感情を持ってないのでしょうね」
「そうなのか?なら…」
アイオリアは『俺達は』と続けようとしたのだが…
「言っておきますが私も彼等には酷い仕打ちを受けましたよ。そう、ちょうど貴鬼がよく読んでいる日本のマンガに出て来る様な飛ばされ方を…」
ムウは心底辛そうに、溜息を吐きながら呟いた。
つまり横島に"何もされてない"のはアルデバランとアイオリアの二人だけなのだ。
アイオリアがその事実に愕然としていると肩を叩かれ、振り向いて見ると。
Σd(゚∀゚ )
アルデバランがとてもイイ笑顔でサムズアップしていた。
アイオリアは声を出さずに泣いた。
続いてみよう。
(`・ω・)今回は黄金聖闘士達の合流がメインの為、横島達の出番はちょっとだけ。
シャカが文珠の事を知っているのは仏教系だからという設定。
神々がいるこの世界なら文珠があってもさほど不思議じゃない筈。
アイオリアは横島的にはギリギリセーフだったらしい。
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(`・ω・)タイトルに名前が付いても主役じゃない星矢と主役でもタイトルに名前が付かないリンク。
いや、だからどーしたと言われても困るんだけどね。