日曜日
箒は一夏と先日約束した取材をするビルに向かっている
「一夏、時間は大丈夫か?」
「ああ、このままいけば約束の10分前に到着するはずだ」
お互いにいつも通りに会話をしている
しかし、箒の内心はとてつもなく浮かれている
(ふふふ、一夏と二人きりで出かけている……こ、これはデートと言っても過言ではないのではないか?)
最近、一夏と一緒になる機会が少ないと思っていた箒にとってこれはものすごいチャンスだと思っている
(……箒の奴、随分と浮かれているな。そんなに楽しみだったのか?)
(誰が見てもわかるくらいね)
大丈夫なのだろうかと考える一夏とジュディス
そんな考えを持ちながら三人は、目的地に向かって歩く
予定通り、約束の10分前に到着すると、建物の入口付近にスーツを着た女性が一人誰かを待っているかのように立っていた
一夏達に気が付くと彼らの前に行き、確認を取る
「こんにちは、織斑君と篠ノ之さんね? 私が黛渚子。君達が通っているIS学園にいる薫子の姉ね」
やりたいことがたくさんあるということで、少し急ぎ気味は建物の中に入る
因みにジュディスも入っているがもちろん一夏以外、誰も気が付いていない
取材のために通された部屋に着くと、渚子はすぐにインタビューの準備を始める
「今日の予定は今からインタビューをして、その後に写真撮影ね」
準備をしながら二人に予定を伝える
了承を得られたと同時ぐらいに準備が終わったようだ
「じゃあ、インタビューを始めるわね。まずは織斑君からでいいかな?」
「その前に一つ質問いいですか? ここで答えた質問の内容を勝手に編集することってありますか」
「あらら、どうしてそんなことを?」
一夏の質問に嫌な顔をせず質問を返す
「いや、俺は男性だから女性に受けるような意見に編集するのではないかと思いまして……以前、黛先輩も似たようなことをやろうとしていたもので……」
「あの子ったら……安心して。記事にする内容は事前に知らせるし、少なくとも私はそういうことするつもりはないわ。そんなことをするくらいならこの仕事をやめる。そのくらいの覚悟でこの仕事をやっているの」
彼女は自分の妹の行動に呆れながらも自分の信念を話す
その言葉と目を見て、一夏は信じることにする
「わかりました。すみません、話を中断させてしまって」
「いいのよ、では早速ね」
どのような質問が来るのか予想できないため、少々身構える一夏
「一番多かった質問から行くわね。女子高に入学した感想は?」
「え? ああ、そうですね……お手洗いとかが不便ですね」
IS関連の質問がくると思っていたため、予想していた質問と違っていたため、ちょっと答えるのに戸惑う一夏
「あらら、噂通り異性に全然興味ないのにね。ハーレム王になるとか言うのかと思っていたのに」
「いやいや、それはさすがに……」
渚子の対応に呆れる一夏
「さて、じゃあ次は篠ノ之さんに聞こうかしら。お姉さんについてだけど……」
話そうとした瞬間、箒は立ち上がって帰ろうとする
「ディナー券はいいのかしら?」
その一言で、箒は立ち止り、席に戻った
「ふふ、素直な子ね。質問を続けるわね、お姉さんについてどう思っているの? 代表候補について聞きたいわ」
「……専用機をくれたことには感謝しています。後代表候補についてですが、今の所興味はありません」
あまり感情を込めないで箒は答える
「そっか……そういえば織斑君と篠ノ之さんってどっちが強いの?」
「模擬戦の勝率で言えば俺の方が上です」
「そうなの? 篠ノ之さん」
「ええ……悔しいですが事実です」
箒は本当に悔しいという気持ちで答えている
「そうなんだ。じゃあ、いざという時は織斑君に守ってもらえるってことね」
薫子はにやけながら箒に話しかける
「……いえ、自分のことは自分で守らないといけませんから……守ってもらいたいけど……」
後半はこっそりと呟いていた
「へえー、織斑君、これは守ってあげないとね。何か一言くれないかな?」
「いや、まだ誰かを守れるほど強いとは思っていないので……そうですね……戦いを教えてくれる師匠と肩を並べてみせる」
「おお、それ使わせてもらうわね」
一夏の言葉を聞いて渚子は満足そうに頷く
「ふむふむ、じゃあそろそろインタビューは終了にしましょうか。次は地下のスタジオで撮影するから更衣室に行って着替えてほしいの」
「着替えるんですか?」
「そうそう、スポンサーの服を着てもらわないと私もかなり困るから」
一夏の質問に渚子は少々軽く答える。軽く言っているが実際は首が飛ぶらしい
そのまま二人は、それぞれ更衣室に案内された
(まったく一夏め、箒と肩を並べるか……ふふ、うれしいことを言ってくれるじゃないか)
箒は、着替えながら先ほどの一夏の言葉を変えて頭の中で復唱していた
(しかしこの衣装は随分と派手だな……特になんだ……こんなに胸元が開いているのは……)
(私に似合うのだろうか……)
いつもの自分では選ばないような派手な服装であった
だが、撮影をしなければ目的のディナー券を手に入れることはできない
そのことを考え、ついに着ることを決めて準備を始める
十数分後、準備が完了した箒は撮影スタジオに到着している
一夏はまだ準備中なのか撮影は開始されていない
(この撮影が終わったらどこか一緒に夕食を誘おう……そう、私から誘ってやる)
撮影日の前の日に、ルームメイトから借りた雑誌に載っていたレストランを思い浮かべる
そこで二人きりになっていい雰囲気になれば……
何としても誘わなければと決意した瞬間、撮影の準備が終わった一夏がやってきた。いつもと違いスーツを着ていたため、箒は見とれる
「お待たせ、早速撮影を頼もうか」
「あ、ああ」
すっかり箒は褒めてもらえると思っていたが、何事もなかったかのように撮影に挑もうとする一夏に後れを取ってしまった
一夏は事前にジュディスに自分の格好をチェックしてもらっていたり、偶然着付けをしてもらったスタッフの人と話が合い、程よく緊張がとかれていたため、落ち着いた対応をしている
一方の箒はいつもとは違う一夏がいることに緊張してうまく対応できていない
(何だこれは……私一人だけ緊張しているみたいでバカみたいではないか……)
「篠ノ之さん、顔が暗いわよ。笑顔、笑顔!」
カメラマンに指摘され、箒はとりあえず笑顔を作る
(いかんな……とにかくきっちりと仕事をしなければ)
その後も箒は、何度か注意を受けてしまう。一方の一夏はほとんど指摘されずにこなしている
そんな感じの撮影会が1時間ほど続いた。その撮影も終了し、本日の仕事は全て終わった
「お疲れ様! 今着ている服はそのままあげるから持って帰ってね。後、ディナー券だけど後日データを携帯に送るからアドレスを教えてね」
二人は渚子に自分たちのアドレスを教えて、そのまま帰る準備を始める
支度をするのに時間がかかると考え、建物の外で待ち合わせをしていたのだが、結局二人とも同じくらいの時間に支度を終えていた
「ようやく終わったな。まっすぐ寮に帰るか?」
「え、えっと……」
(言うんだ! 二人きりで外で食べたいと)
先ほどスタジオで言おうと考えていたことを話そうとした瞬間、着信音が鳴る
「すまん、ちょっと電話だ。はい、もしもし……え? いまからですか? まあ、ちょうど撮影も終わった所だったんでいいですけど」
(何だか嫌な予感がするのだが……)
一夏の話の内容を聞いて箒は不安に思う。そしてそれは的中してしまう
「悪い、箒。急用ができたから先に帰る」
そう言って一夏は走ってその場を去る。そんな彼を箒は呆然としながら見送っていた
(ど、どうしてこうなるんだ……だが次こそは……)
しかし、箒の不運は続く
次の日、朝の全校集会で専用機持ちに寄るタッグトーナメントの開催が発表される
一夏と組むチャンスと思い、集会が終了した後、教室で誘おうと考えた
だが
「すまん、もう組む相方を決めているから」
「な!? 一体誰だ!? シャルロットか? 鈴か?」
「えっと、簪だけど……どうしたんだ、いきなり?」
一夏の答えに驚き、彼に詰め寄る箒
いきなりの事だったため、一夏は驚きながらも冷静に答える
「い、いつの間に……だが」
一体何故、そう聞こうとした時、千冬がやってきたため、席に着かざるを得なくなった
(く、神というやつがいるのならば恨むぞ……何故一夏と一緒に……なれないのか)
そう思いながら席に着き、授業の準備を始める箒
因みに一夏は他の人にも言い寄られていたが、騒ぎすぎると千冬に怒られるため、そこまで騒ぎになることはなかった
(全く! 一夏のやつめ、勝手にパートナーを決めるとは……けしからん)
放課後、箒は不機嫌な様子で部活に向かおうとしていた
(しかし誰と組むべきか……)
「あら、箒ちゃん。どうしたの?」
「楯無先輩……いえ、何でも」
ふらりと現れた楯無に対して、箒は少し失礼な態度をとってしまう
いけないと思い、謝ろうとした時
「もしかして、一夏君を簪ちゃんにとられたからかしら?」
「な!?」
彼女の言葉に驚き、反応してしまった。それが答えになってしまったようだ
「あはは、なるほどね。ねえ、箒ちゃん……私と組まない? 実は私も簪と組もうと思っていたのに一夏君と組まれちゃったの。だから……一緒に戦わない? これでも私、生徒会長だから強いわよ」
楯無の勧誘を怪しいと思ったが、彼女の言うことも一理あると考える箒
(確かに楯無さんは強い。生徒会長は学内でも最強の生徒がなるというからこの人の実力は疑う必要はない……そうだな、一夏に思い知らせてやる)
「わかりました。一緒に戦いましょう」
「ありがとう。箒ちゃんは今から部活よね。私もお仕事とかあるから午後6時ごろに検査室に集合でいいかしら? そこで作戦とかを考えましょう」
楯無の提案に箒は、頷き二人は別れる
(随分と簡単に組めましたね。まあ、彼女のことを考えればあなたにとって簡単でしょうね)
(あら? でも失敗するかもしれないって考えてもいるのよ)
(フフフ、とてもそうは見えませんが)
箒がいなくなったのを確認してから楯無とローエンは話していた
(さて、早めに仕事を終わらせて検査室の準備をしておかないとね)
(私も手伝いますよ。楯無さん)
(いつもありがとう、ローエン。じゃあお願いするわ)
そう言って楯無も去っていった
楯無の考え
午後6時
検査室には二人の生徒がいる。楯無と箒だ
「じゃあ今日は、箒ちゃんの身体データと赤椿のデータを取りたいからそこに立っていてもらえるかしら? オペレーションは私がやるから。そのデータをもとに作戦を考えたいの」
「わかりました。ただ、時間がないですからふざけないでくださいね」
「もうわかっているわよ。それくらい……それにしても箒ちゃん、おっぱい大きいわよね。うらやましいって思う人多いんじゃないの?」
「! だからまじめにやってください!!」
「まあまあ、リラックスしてもらうためよ」
そんな箒の言葉に余裕を持って笑いながら楯無は答える。会話をしながらも楯無は彼女のデータを収集する
「……箒ちゃん、ごめんね。データをよく見てから指導方法とか考えたいから今日はもう帰ってもいいわよ」
「え? わ、分かりました……」
データを一通り確認した後、楯無は箒を検査室から出した
楯無が一人残ったのを確認した後にローエンは姿を現す
「何か気になる事でも?」
「ええ、入学時のデータと比較したんだけどね。ISの適性がCからSになっているの。上がること自体は問題ないんだけど……」
「その上がり幅……ですね。私も専門書を読んだことがありますが、これは確かに不自然ですね。まるで初心者が、いきなりその部門の達人クラスになるということですから」
「そうね。しかもSランク、これはローエンの言った通り、その部門でも最強と言われるレベルの人達に付けられるレベル。これは間違いなくあの人が関わっているわ」
「篠ノ之束……ですね」
ローエンの答えに頷く楯無。二人の表情は真剣そのものであった
(一体何を考えているのか……篠ノ之束は)
約3か月ほど更新できず、大変申し訳ありませんでした。
なかなか思い通りに書けず、時間ばかりかかってしまいました。
次回はテイルズオブフェスティバル開催の前後で投稿したいです……
難しいかもですが
感想・指摘等あればよろしくお願いいたします。
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