~一刀視点~
「お初に御目に掛かります
呉郡太守 北郷一刀です」
片膝を付いて、そう名乗る
今、俺は洛陽 相国董卓に謁見している
何故か
黄巾の乱が終結してから洛陽での政争が勃発した
正確には黄巾の乱の所為で表面化しなかった燻っていた物が表面化しただけだ
その政争は董卓が洛陽に入り、十常侍を始末する事で治まったが今度は董卓が洛陽に常駐している
俺達の世界での董卓は悪の代名詞とも云える人物なので、情報を集めようとしたが間諜からの情報が集められない
だが、魯粛さんの伝手で情報を集めた所、洛陽では善政が敷かれているとの事
俺達の世界の情報が当てにならない世界(武将が女性なんだから)なので俺が直接出向いた
皆に反対されたが護衛もつけるとの事で、何とか押し切った
「呉郡でのあんたの評判は僕達も聞いているわ
で、わざわざ何しに月・・董卓様に会いに来たわけ?」
隣にいる釣り目、眼鏡の娘 おそらく賈詡が訊いてくる
「董卓様が洛陽で政争を治め、善政を敷いていると聞き及んで差し出がましくも進言したい事がございます」
「何でしょう」
儚げな少女 董卓が先を促すと
「直ぐにでも洛陽を離れ、故郷天水へ戻られるべきでしょう」
「何ですって!」
賈詡が激昂するが、構わず
「先程述べたように董卓様の功績は多大な物です
しかし、このままでは董卓様の事を妬む者が現れないとも限りません
そうなれば無用な戦が起こるでしょう」
こう述べると、賈詡も落ち着いて
「あんたの言う事は一理あるわ」
「でもそれは出来ません
洛陽はまだ復興途中でそれを放り出す事は出来ません
それに今、私達が洛陽を離れればまた政争が起きるでしょう」
董卓の意見も尤もだった
「それに、皇帝陛下から洛陽の復興を命じられているのよ」
賈詡が力なく、付け加える
「分かりました
ただ、もしもの事態の時には私の名を思い出して下さい」
「それは、どういう・・・」
「それでは失礼いたします」
俺はそう告げて退出した
俺が洛陽から帰還して間もなく、反董卓連合の檄文が袁紹から届けられた
その使者には同意する旨を伝え、使者が帰還した後で皆を特別会議室に集める
「今回の反董卓連合で、俺は董卓を助ける為に動きたい」
「えっ」
「それって董卓陣営に味方するの?」
巴の質問に対して
「いや、連合には参加する
その上で密かに董卓を保護する、そう云う考えだ」
俺の意見に対して
「一刀様、それは簡単ではありませぬ
しかし、不可能でも有りませぬ
ただ解せないのは一刀様は全ての諸侯を恭順させるか、攻め落とすと宣言されました
それなのに董卓を何故助けようとなさるのですかな?」
星の問いに
「董卓の悪名は全て出鱈目だ
しかし、この悪名はもう消せないだろう
ならばこの反董卓連合で為政者董卓は死んだも同然
ならば董卓を助けて、その配下の有能な人物を陣営に引き込みたいんだよ」
俺が実利の部分を告げると
「そう言ってるけど、本当は善政を行ってる董卓を助けたいだけでしょう
なんだかんだ言っても非情になり切れないんだから
そんな所も好きなんだけどね」
見透かされたか
それと鞘姉はさらりと、それも家族愛のようなつもりだろうが”好き”と言われて赤くなってしまった
「それに董卓さんって可愛いって言ってたよね~」
巴が要らぬおまけをつける
それに”可愛い”じゃなくて”儚げ”と言った筈だ!勝手に言葉を変えるな!
「いずれにしろ董卓を助ける事には反対しません
但し、無茶をしない との条件付きですが」
静里が言うと
「特に一刀様(さん)」
鞘姉と巴以外に声をそろえられた
「そんな無茶してないだろ」
「洛陽に行くだけでも無茶です!」
即座に否定された
~鞘華視点~
反董卓連合の集結地点へ到着した
他の諸侯も到着し、軍議が行われる
一君と私、それに静里が参加するが軍議とは名ばかりの茶番劇
決まったのは総大将は袁紹 先鋒は劉備
なんなのよ この連合は
しかし、曹操がずっとこっちを睨んでたわね
考えてみれば私達って三国志の三英傑(孫権を孫家と考える)に喧嘩売ってんのよね
改めて考えると、凄いと云うか馬鹿と云うか
軍議が終わり、天幕の外に出ると
「一兄~」
巴ちゃんが一君に抱き付く いつもの事ね
「あら、貴女も来てたの」
後ろから不機嫌な声 曹操だった
「来てたよ 小百合(こゆり)ちゃん」
小百合って曹操の事?
「なんなの その呼び名?」
「小さい百合の人だから、縮めて小百合
どう?」
この言葉に曹操が
「あんたも同じ位でしょうが!」
そうね、背も体格も
「私は威厳が無くてもいいもん
小百合ちゃんは威厳が無いと困るでしょ
ちんちくりんなのに州牧だと大変だね」
曹操に対しては毒舌モード全開のままね
「あんたはどこまで私を莫迦にするつもり!」
「どこまでを時間的に言ってるなら、泣いて土下座して私の靴に口付けして許しを請うまで
量を言ってるなら、無制限!
一兄を莫迦にしておきながら、その程度の覚悟が無かったとは言わせない!」
いや、言わせてあげなよ
「貴様~、華琳様に対しての暴言 一度は見逃してやったがもう許せ・・・」
夏候惇が激昂して、剣を抜こうとしたが、行動も言葉も停止させられた
一君が闘気をぶつけたから
夏候惇も一君と同等かそれ以上の武を持っているが、いきなり闘気を至近距離からぶつけられれば怯む
「そう、ただの無能で無い事だけは認めてあげるわ
今回、莫迦にした事は意外な物が見れたから目を瞑ってあげましょう
戻るわよ」
そう言って曹操は戻って行くが、去り際に
「言っておくけど、私がその男より劣っているのは身長だけよ!」
曹操の最後の言葉だけ、違和感が有った
もしかしたら”素”が出たのかな?
人より優れた能力と地位を持っていた為、誰も対等に付き合ってくれない
だから結果的に巴ちゃんの暴言で”普通の女の子”の部分が出たのかな
「じゃあね~、小百合ちゃん」
巴ちゃんはそんな事考えてないのは確実ね
「凄いな、あの曹操にあそこまで言えるなんて」
声を掛けて来たのは公孫瓉だった(軍議で自己紹介したので知っている)
「ふえ?」
巴ちゃんが間抜けな声を上げて公孫瓉をじっと見る
「な、なんだ?」
狼狽する公孫瓉に
「なんか不思議な人だね
一兄や鞘姉みたいに強そうに見えないけど、軟弱にも見えない
切れ者にも見えないけど、莫迦にも見えない
敢えて言うなら、う~ん 普通になんでも出来る人
万能普通人!」
「それって褒めてるのか、貶してるのか?」
「訊きたい?」
小悪魔の微笑みを巴ちゃんが浮かべているので、公孫瓉は
「辞めとく」
身内が迷惑かけます
「お~い、久しぶりだな」
今度は孫堅さんがやって来た
「お前等の評判がいいから殺しに行けないんだ」
物騒な事言わないでよ それより
「孫堅さん、仲謀さんの酒癖の悪さ 教えておいてよ!」
事情を説明すると
「悪かったな
お前等と飲む機会があるなんて思わなかったからな
まあ、その時犯っちまっても文句は言わなかったけどな」
孫堅さん・・・
「孫の顔を見るのも悪くないからな
あ~っはっはっはっは」
豪快に笑うな~
「北郷さん!」
劉備が険しい顔をしてやってくる
「何時か私の考えが正しい事を証明して見せます!」
一君に一方的に宣言して行った
宣戦布告・・かな
「お前達が『天の御遣い』なのか?」
今度は馬超ね
「お姉様~、ぶしつけすぎるよ~」
「そうか?」
馬岱と会話をしているが、礼儀を妹に注意される姉って・・
「だから、もうちょっと順を追って・・」
「そんなまどろっこしいのが嫌いなんだよ」
「好きとか嫌いの問題じゃないよ!
西涼の女の名誉に関わるよ」
「大袈裟すぎるだろ!」
姉妹喧嘩を始めたので、放置して戻る事にした
~一刀視点~
汜水関の前方に連合軍が陣を敷く
俺達は後方で待機
関羽が汜水関に向けて挑発するが、出てこない
更に今度は孫堅まで加わったが、まだ出てこない
すると静里が
「一刀さん、私の杞憂かもしれませんが・・・」
俺が先を促すと
「後方に警戒した方がよろしいかと
華雄があれだけ挑発されても出てこないのは、何か策を授かっているからと云う可能性が有ります
そうだとしたら、その策は私ならば・・・」
その時、後方から騎馬隊が突っ込んで来た
成る程、後方から別働隊の騎馬隊による奇襲
そして、それで混乱した所を汜水関から打って出て連合軍に打撃を与える
無茶だが成功すれば効果は有る
「俺達は後方の騎馬隊に当たる!」
こうして、汜水関の戦いが始まった
~あとがき~
最初の董卓との謁見で一刀が嫉妬による連合結成を見透かしたような台詞についてですが
個人的には「演義」の反董卓連合は原作と同じく、諸侯の嫉妬が多分にあると思っています
だから、あの台詞が出てます
董卓を密かに保護する
星の指摘の様に矛盾が有ります
でも覚悟を決めてもいきなり全てに対して非道になり切れ無い、そんな中での行動と理由付けです
巴は曹操にまた言いたい放題です
「小百合(こゆり)」に関しては「さゆり」だと問題が有りそうなので・・・ 芸能人にもいますから
曹操に関して巴の態度はこんな感じのままでしょう
逆に曹操が巴の無遠慮さを好ましく思うかもしれません
劉備は一刀への対抗心があの台詞に繋がっています
それが、良い方向にでるか、悪い方向に出るかは今後にて
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
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